モーツアルト:歌劇『ドン・ジョヴァンニ』序曲
とりたてて大熱演というわけでもなく、だからといって淡々としているわけでもなく。ちょっとお手本っぽい演奏という印象。でも、つかみとしてはこの程度のテンションからの入りでいける。
メンデルスゾーン『ヴァイオリン協奏曲』
この曲知ってる。ホァン・モンラ(ヴァイオリン)の演奏技量は正確なのだと思うし、的確に反応して音を出していると思う。でも、どこかツンとお澄まししているような、優等生として弾けて当り前という姿勢があるような印象を受けた。
演奏後、3度目の拍手で舞台に出てきた時に、ヴァイオリンを持たず手ぶらだったのにはびっくり。「弾きませんよ」というポーズとしては明快だし、別に、アンコール曲を弾かなくたってそれは構わない。でもね、商売道具を置いてくるっていうのは、どうなのかな。チェロのソリストだって、重たくてもかさばっても、チェロを抱えて出てくるのにね。
ベートーヴェン『交響曲第7番』
半年程前に何故か突然好きになった曲で、目当ては第4楽章(私はこれを勝手に『撤収のテーマ』と呼んでいる)。あのリズム、あのテンポ、あの音色。うねる感じ、なびく感じ、弾む感じ。どれもこれも楽しかった。
いや、ほんとに、面白いですこの指揮者(ニコラ・ルイゾッティ)。まるで大げさな芝居をみているような、ダイナミック且つちょっと滑稽な指揮っぷり。情熱的なイタリア人が、感情が爆発したあまり人形振りになって、そのままガクガク指揮をしているような感じ。
パーン!と伸びる音を要求したときの、遠く高く伸ばされた右手の陶酔ぶり。ガッガッ!と連続音を要求するときの、ゴリラダンスのような両腕クロス。ピョコピョコ音を要求するときの肩のみの上下運動。どんどん音を下さい!というときの、まるで幼稚園児が砂場の砂をかき集めるような身振り。駆け上る音階で小刻みに頭を振る様子には、脳震とうか鞭打ちになるのではと心配になる。
先日のN響『惑星』で熱血指揮者・佐渡裕が見せてくれたような、あの跳んだり跳ねたりとはまた異なるルイゾッティの指揮。上半身を中心とした大運動。この人このままコンテンポラリーダンスが出来るのではないかと思えてくる。いろいろ楽しいなぁ指揮者って。
演奏終了。指揮棒を振りきったルイゾッティは、振り上げたままの指揮棒でまるで「よい子、よい子」するように楽団の上をぐるりと指して行く。コンサートマスターとその横のヴァイオリニストに握手を求め、ここで客席に振り返って満面の笑み。ぴょこっと指揮台を降りて、長い足でちょこちょこっと引っ込む。指揮以外の動きまで笑いを誘う人だ。
アンコール:モーツアルト『フィガロの結婚』序曲
クラシックコンサートというと、やたらと拍手をして5回・6回と指揮者を舞台に登場させることが多いのだが、今回の指揮者はせっかちだから(?)そんなまだるっこしいことはしない。確か2回目の登場で団員を紹介してから、やおら指揮台に載り、バン!と指揮棒を振り始める。
この人、『7番』の時にも思ったのだが、インターバルが短いんだよね。『7番』は特にリズム重視っぽいところのある曲だから、楽章と楽章の間をほとんどおかずに演奏するというのは曲にのりやすくてとても良かったのだ。