蜷川幸雄vsシアターコクーン4連戦の初戦。言いたいことはたくさんあるけれど、休憩時間を含めた約3時間を長いとは感じなかった。そういう意味では引き込まれる芝居。
ただ、正直言って見終わって「それなりに面白かったけど、だから何?」みたいな。脚本が書かれた1970年代の世相を表す効果音や、舞台に降る石や、舞台先端から天井を照らし上げた光のカーテンによる暗転、そして階段の舞台など、いろいろやってみました!ということは分かるんだけど。うーむ。将門の台詞じゃないが「整理されてない」んだよ。蜷川さーん、何がやりたかったの?脚本(清水邦夫)は面白いんだろうと思うんだけどね。よくわかんないよ。
将門(堤真一)は、まぁ、こんなもんかと。狂ったときも正気に返ったときのカッコヨサもそれなりだし。ただし、そろそろこのテの役は年齢的に厳しいかなという予感も。
三郎(段田安則)はとても美味しい役。周りが叫んだり突っ走ったりの演技でなければ、段田がもう少し演じ込めたと思う。それに、堤将門のアドリブにウケてちゃ駄目だよ、もったいない。声がかれていたのがとても気になるな。
五郎(高橋洋)は、どうなのかなー。決して下手ではないのだけれどね。女装して襲撃をかける場面は嘘くささ100%だし、桔梗とヤった後の上半身裸が意味不明にファンサービスだし。
えーっと。舞台に階段を作ってしまうことの演出上の不利については、『リア王の悲劇』でさんざん述べました。が、今回も「階段」という演技の制限、場面転換の制限に果敢に挑んで?見事に玉砕していますね。
『リア王の悲劇』に比べると動きやすい衣装なので、役者さんもそれなりに動けてます。タイトルロール将門を演じる堤真一はジャパンアクションクラブ出身だけあって階段の上り下りも、階段上での梯子移りも鮮やかです。でもね、根本的なこととして、何で階段なの?という疑問。演出意図という難しいことは分からないが、何だか気になる。
桔梗の前(木村佳乃)が、うーん。1幕目が終わったときの感想は「決定的に下手な役者が一人いる。」2幕目途中の感想は「彼女と2人だなんて段田ツライなー。」終演5分後の感想は「彼女にできる役をやらせてあげればいいのに。」
木村佳乃ってこれまでに観たことあるハズなんだよな。何だったかな?とかなり考えて、彼女のプロフィールを調べて、やっと思い出しました。『ミー&マイガール』で唐沢寿明の相手役だったのだ。その時の評価もびみょー。
そして今回。演技をしようとして何も出来ず、声は一本調子、衣装の裾が乱れまくり。美人女優さんですから、顔綺麗だし、手足長いし、身長あります。見栄えはイイです。でも、高貴な美しさとか、女帝の威厳のようなものを醸し出せる人ではないんですよ。それが、眉が無しメイクで顔怖くて、演技ができずに立ちつくしていて、いやはや気の毒としか言いようがない。私の中では、桔梗の前役は麻実れい、天海祐希、大地真央、篠井英介かな。うわっ、篠井以外はヅカ出身者だわ(笑)。嗚呼、いっそ、宝塚歌劇団娘役トップ歴10年超の花總まり…。
キビシー!といえば、ラスト間際で「帰ろうか」「帰ろうよ」と呼びかけあう、はな女(松下砂稚子)&つね女(五味多恵子)。どっちがどっちなのか分からないけれど、階段上の方にいた人、画期的に台詞が下手。
追い打ちをかけてあっちゃー!なのがラストの馬。おっかなびっくり階段を下りてくる様子が気になって気になって、締めくくりの将門の台詞を聞く余裕が持てない。そもそも馬らしい動きをしてないんだよ。歌舞伎座に行って大部屋役者さんに馬の脚を教えてもらうべきだね。
そもそも時代劇(歴史物)というのは、動きがとても難しい。慣れた人でなくては裾捌きも座ることもままならないし、台詞だって時代に聞こえない。だからこそ琵琶を鳴らして戦記を語る秩父坊(沢竜二)&甲州坊(富岡弘)の役は、時代物の素養がある人にやって欲しかった。観ていて「うわー、なんちゃって歌舞伎だー(失笑)」とか「義太夫に聞こえない(苦笑)」と思わせてしまうのは損だ。中村勘九郎(3月には勘三郎を襲名)や野村万作に演じさせろというような贅沢は言いません。せめて嵐広也(実は観たことないけど)とか、宮本亜門版『太平洋序曲』で語り部を勤めた浪曲の国本武春とか。いっそ落語の立川談志もいいかも。
別の人が演じてくれたらというなら、捨十(田山涼成)・右太(山下)・源左(二反田雅澄)の将門の影武書3人組に、麿赤兒がメンバーで入っていたら面白かっただろうな。
この舞台で良かったのは、ゆき女(中嶋朋子)。カーテンコールで役者が1列に並んだ時、中嶋の背の低さには驚いた。芝居を観ている時には、もっと身長があるように見えていたのだけれど、それは演技によって役者が大きく見えていたということだったのね。ゆき女のイッチャッテル感じが素敵でした。