自称☆芝居道楽委員会

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二兎社「新・明暗」

2004年11月4日(世田谷パブリックシアター)

私にとって初めての永井愛(脚本)である。前回公演が好評のため、キャストもそのままに絶好調上演中と聞き、これは行かねばなるまいと慌ててチケットを確保する。

前半は、痔に悩む夫・津田(佐々木蔵之介)と、オペラを見に行きたい妻・延子(山本郁子)の愛情のさぐり合い。後半は痔の手術を受けた夫が、過去に自分を振った清子にその理由を聞きに行く葛藤の旅。

夏目漱石は『坊ちゃん』に限る。私、『こころ』の先生のような、常に悶々と悩んでいてちっともスッキリしない男、過去の己の行為にいつまでも後悔し続ける男、決断して行動に踏み切ることが出来ない男は大嫌いなんである。よって、原作である『明暗』は読んだことがないが、読んだとしても「うがぁ〜っ!この津田って男は、どうしてこぅ、うじうじ優柔不断なの!うぜぇ!」と本を放り投げているだろうことは想像に難くない。

で、勿論この芝居においても津田は「だぁ〜っ、しっかりしろ〜!」というダメ男ぶりを発揮しているのだが、それでもどこか「頑張れ、津田!」という前向きに応援したい気持ちにさせてくれる。これが永井愛の脚本の力であり、津田を演じる佐々木蔵之介の演技力であろう。
前半の延子との夫婦げんか(駆け引き?)では、延子は醜いまでに津田にすがり、しかも津田を丸め込もうとする。同じ女として「こういうタイプって嫌」とはっきり思わせてしまうだけの嫌みっぷり。正直最初はどうしてココまで延子をエゴイストに描くのか疑問だった。モールアルト『魔笛』の「パパパの歌」を使った「パパに言わなきゃ♪」は面白かったけど。

さらに、よくよく観ていると、実は津田も延子に負けないくらいしたたかに立ち回ろうとしているのである。それが痔という滑稽な負い目のせいでちょっと気の毒な旦那さん、という役回りに見え、且つ延子のしたたかさを際だたせている。くぅ〜、いい男はそれだけで得だね。

うって変わって、小林(下総源太朗)って何なんですか!?意味わかんないです。特に毎回去り際に言い残す「寂しいよ!」という台詞。何がどう寂しいのか全然わからん。伝わらない。人民の悲しさや、労働者の苦悩や、最下層に生きる儚い希望を訴えたいらしい(あくまで善意の想像)のだが、単なる大仰な狂言にしか見えない。ドストエフスキーの場面はなんとか我慢したのだが、延子に因縁つける場面では、あえて思考停止するしかなかった。
見るに堪えない、聞くに忍びない、金払いたくない。この役者はこの役を理解していないのではないか、あるいは観客に何かを伝える気が無いんじゃないか、と疑わざるをえなかった。猛省を求める!

ラスト、津田の「待って。もう少しここの空気を吸わせて」。自分で決断して自分で戻ってきた現実の場所でありながら、それでもまだ少し理想の世界に未練がある風情。その、空を見上げた遠い視線に、男の哀愁を観たような気がした。

尚、今回この芝居では、ごくごく個人的な理由で、あえて「勘違い」を楽しませて頂きました。おかげでちょっと幸せになれました。ありがとうございます。

採点:★★★★☆

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