1部『ミレニアム』と2部『ペレストロイカ』を併せた上演時間が6時間を超えるのである。しかも、ふかふかのソファーに3時間×2部ではない。ほんのお情け程度の厚みしかない座布団が、野球場のベンチに乗っているような、そんな劇場である。2部を通しで観ることは、かなりの勇気というか、根性が必要だと思われた。しかし、こういうものは勢いで観てしまわないと、結局見逃すハメになってしまいそうだったので、気合いを入れて劇場に足を運んだ。
ゲイとエイズと愛と人間と世間と神と預言者と…。1992年にロンドンのナショナル・シアターで初演されたときは先端であったろう内容も、今ではちょっと古い気がしなくもない。レーガン大統領と共和党、ローゼンバーグ事件やモルモン教への偏見など、知識不足で分からないこともいくつか有った。
しかし、人物が活きているその演出によって、普遍的なテーマが力強く押し出されてきて、客席までもが舞台と同じ混沌の世界に投げ込まれたような感覚になった。知らない単語が出てくるなんて些細なことは、全く気にならない。舞台の状況が多少現在の自分と違おうと、起きていることは明確。問われているのは人の心のありよう。ロバート・アラン・アッカーマンの演出は、それを見事に描き出している。
とにかく登場人物全てが濃い。
電話一本で権力・影響力を誇るロイ・コーン(山本亨)は、そのあまりの傲慢な態度が笑いを誘うほど。「保留!」と言うだけの台詞ですら、迫力があるのだから恐れ入る。
精神安定剤の飲み過ぎでトリップしているハーパー(中川安奈)のぶっ飛び具合も、現実と幻想の瀬戸際加減が心地よい。
2部『ペレストロイカ』で決定的に弾けた天使(チョウソンハ)が強烈。叫び続け、かなり強引に一人の人間・プライアー(斎藤直樹)を預言者にしたてようとし、しかも漫画のような?登場のしかたをする天使というのは、実に革命的。
魅せられた6時間だった。これだけの時間、観客をぐいぐいと引っ張って行ける、力のある役者が揃っていたことが、まず素晴らしい。そして、きちんと演出がなされていたことによって、より充実度の高い舞台になったのだと思う。これだから芝居道楽は止められない。