世間的には「椎名桔平、4年ぶりの舞台でゲイカップル役に挑戦!」というコトが売りなのでしょう。のっけからパンツ一丁の俳優が舞台を横切るし、それなりに綺麗な体型の俳優がゲイバーのダンスを披露するし、篠井英介は黒い革の下着姿だし。ま、そ〜ゆ〜方向を狙ったんだろうな、というあざとい演出が目立つわけですよ。
別に、言い訳?するつもりは無いけれど、私としては、以前tptで演じられた同作品が評判が良かったので、tptで見られなかったから今回観てみようと思っていたわけです。多少は、篠井英介が何をやるのか興味深かったってコトもありますけどね。正直、椎名桔平はチェック外でした。期待していなかったという意味も込めて。
tptの『ベント』は客席数が120あるかどうか、観客はぎゅうぎゅう詰め状態でひな壇に座り込む、というベニサン・ピットで上演された。今回のPARCO劇場は、458席ある中規模の劇場だ。考えてみれば、って考えるまでもないのですが、劇場の規模が違う。舞台の大きさが違う。空間の濃密さ加減が違う。客層が、たぶん、違う。
つまりね、カスカスなんですよ、舞台が。登場人物が少ないのに、装置が簡素で舞台の奥まで見せてしまっているから、よほどに役者が頑張らないと、舞台空間を埋められない。
で、埋まってない。
マックス(椎名桔平)とルディ(高岡蒼佑)が肩を寄せ合うようにして逃げている場面、マックスがホルスト(遠藤憲一)に取引を告白する場面、そのホルストの死体をマックスが抱きかかえたまま崩れる場面。どこをとっても空疎。グレダ(篠井英介)の黒下着も何だかとってつけたようだし。う〜ん。
決定的に伝わらなかったのが、マックスとホルストが言葉だけで(体に触れずに)セックスする場面。
二人が2メートルくらいかな?離れて立って、二人とも客席を向いたままで「俺は今、あんたを抱いている」「感じているか?」「あんたを離さない」「唇をあわせる」というようなやりとりをするわけなんだが…。
セクシーさも、愛も、極限での心の交流も残念ながら感じなかった。少なくとも後方の席だった私には、空疎な言葉しか聞こえてこなかったんだよね。ある意味クライマックスでしょ?ここ。
別に、役者が私のタイプじゃないとか、そ〜ゆ〜ことじゃなくて、芝居が出来てないんだよ、基本的に。人間愛を歌うには演技が軽すぎるし、BGMも妙にテンポが良すぎて第2次大戦下のベルリン、ナチスの強制収容所という重たい雰囲気が出ない。見終わって、だからど〜した、みたいなね。
脚本の良さが全く見えてこなかった。 たぶん、人の心の奥深いところをえぐっており、泣けるんだろうけどね。残念。