本格ゴシックホラーの決定版と聞くと、どうにも味わってみたくなる。将に怖いモノ見たさ。しかも斎藤晴彦が出演しているとなると興味はいや増しに増すのである。当日券の列に並び、前から8列目のど真ん中を確保。道楽の神様、ありがとうございます。
忌まわしい体験をした中年の弁護士キップス(斎藤晴彦)が、その遭遇した事件を若い俳優(上川隆也)と共に芝居形式で再現してゆくという物語。
身寄りのない老婦人が死んだ。しかし片田舎の地元の人々は彼女の名前にさえ震え上がる。一人、老婦人の館に泊まり、弁護士として遺産整理をするキップスに降りかかる不可解な出来事。墓地で見かけた、やせ細った黒服の女とは?
恐怖の中味や最後のオチはネタバレになるので書かないよ〜。
椅子と、人が二人座れるくらいの大きさがあるバスケット、俳優が着替えるコート、そして舞台奥のカーテン越しに見える情景。たったその程度の道具で、舞台は電車の中、馬車で揺られる場面、イギリスの片田舎の荒涼とした館を作り出す。劇場というマジックが見事なまでに利用され、観客の想像をかき立てる。俳優が二人しか出てこないからこその、濃密で緊迫した空間が出来ている。
朴訥とした中年弁護士キップスから馬蹄、町の好人物などを演じ分ける斎藤の渋くて巧みな演技。俳優として若きキップスを演じる上川の、真っ直ぐでしかも強弱の付いた演技。
この二つが綺麗にかみ合っている。これは舞台なのか、それともキップスのお芝居の稽古なのか。現実とどこか錯綜するこの味わいは、まさに舞台ならではだね。
ちなみに、私は途中で最後のオチが読めてしまったけれど、それでもかなり恐怖した。お子さんがいる方は注意、かな。