脚本が三谷幸喜、出演に伊東四朗(山本龍二とのダブルキャスト)と佐藤B作と聞いて気になっていたのだが、ぼんやりしているうちに前売りは完売。「しまった、しまった」と苦笑いしていたところ、「チケットが余ってしまったので救済してください」とのありがたいお誘いを頂く。それで私はいそいそと下北沢へ出かけた。
第1部は『お楽しみバラエティ東京オードブルショー』と銘打ち、団員総出のダンスで開幕。このダンスは、まぁ、何と申しましょうか、一寸上手な素人って感じでしたけど、団員が楽しそうだったので、それはそれでヨイのではないかな、と。続いてのコントには笑わせて頂きました!松嶋菜々子とのデートを妄想するやりとりのくだらなさは、あっぱれ。何度かのけぞって笑っちゃいました。
で、この1部の締めにもう一度ダンスが有りまして、最後に上半身脱いだ一部団員が背中を見せると、そこには「ヴォードヴィル30」と日焼けで書いた文字が!という趣向。「30」の文字(東京ヴォードヴィルショーは創立30周年)を背中に背負ったお姉さんが勢いよくTシャツを脱いだとき、その綺麗な胸がしっかり見えちゃったのはお得でした(笑)
休憩時間には、Tシャツまたはパンフレットが当たる座席券抽選もありまして、私の目の前に座っていたお姉さんがパンフレットを無料でもらえる権利を獲得していました。
さて、休みを挟んで後半が、約2時間途中休憩無しの『その場しのぎの男たち』。明治24年の大津事件を題材に、人柄だけが取り柄?!の松方正義総理大臣(佐渡稔)を筆頭とする内閣主要陣のバタバタぶりを描いた政治喜劇。
現実の世の中は衆議院選挙まっただ中という時期もあわせて味わうと、政治は喜劇だとしか思えない(笑)。頑張れダメな男達!って声援を送りたくなっちゃう。
いい人らしいことは確かだが、政治的判断能力が欠如していると思われる松方総理は、見舞いの雷おこしをニコライが受け取ってくれなかったと嘆いている。西郷従道内務大臣(坂本あきら)は開けっぴろげでおおざっぱで、足が強烈に臭い! 青木周蔵外務大臣(市川勇)は西郷といっしょにコサックダンスでこの外交の危機を乗り越えようとしている。後藤象二郎逓信大臣(石井愃一)はお追従しか頭にない。陸奥宗光農商務大臣(佐藤B作)は策士だけど、とにかく全てがその場しのぎ。
このダメダメ政治家達が、前総理であり政界の黒幕である伊藤博文(山本龍二)に負けまいとジタバタするわけだ。政治風刺というと辛辣だけど、伊藤博文の台詞にもあるように「打つ手、打つ手が面白いようにはずれていく」んだから、とにかく笑って楽しんじゃえ!ってコトなのよ。
勘違いと、読み違いと、やり違いと、くい違いと。これをもってして、外交三流だとか、危機管理能力の欠如だとか、そういう政治批判をすること自体が無粋だからね。
「陸奥くーん、次、どうすんのー?」という伊藤博文の突き抜けた黒幕ぶり、苦悩する陸奥の姿は滑稽で、とにかく全てひっくるめて人間万歳!(笑)
大津事件の犯人・津田三蔵(まいど豊)の政治家批判に対する、伊藤博文の「いいじゃないか、誰だって自分が一番かわいいんだ。自分のことしか考えていないからって、何でそのことで政治家だけが批判されなきゃいけないんだ」という回答、素敵でした。よっくぞその台詞を言わせた!この台詞を聞いてしまったら、政治はしょせん政治家の人生ゲームなんだってことがよーーくわかって、嬉しくなる。
とにかくね、たくさん笑いました。このお芝居に誘ってくださった知人は、笑いすぎて涙うるうるで視界が霞んだそうです(笑)。山本龍二の伊藤博文がよかった。伊東四朗でも観たかったなぁ。
恥ずかしいことに、私はこの芝居を観るまで大津事件の存在すら知らなかったし、登場人物も伊藤博文と陸奥宗光しか名前を聞いたことがなかった。西郷従道に至っては、当初西郷隆盛と勘違いしていて、あれぇ?西南戦争って憲法発布の後だったっけ?などとアホなことを悩んでしまったのだ。
<おまけ>
明治18(1885)年:内閣制度制定、初代総理大臣は伊藤博文
明治22(1889)年:大日本帝国憲法発布
明治23(1890)年:第1回帝国議会開会、教育勅語発布
明治24(1891)年:大津事件
明治27(1894)〜28年:日清戦争、下関条約の日本全権は伊藤と陸奥