自称☆芝居道楽委員会

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AMP「SWAN LAKE」

2003年3月1日(オーチャードホール)

白鳥はトリプルキャスト。映画『リトルダンサー』にわずか数分出演しただけで観客に強烈な印象を与えたアダム・クーパー。戯曲『ニジンスキー』やベジャール振り付け『M』にも出演した東京バレエ団の首藤康之。そして俊英ジーザス・パスター。
チラシの挑戦的で野性的な男性白鳥群を見たときから、何としてでもこの舞台を観なくては!と意気込んでいた。そして今回、オリジナル・キャストのアダム白鳥を10列目の席で観劇した。

幼年の王子(サイモン・カレイスコス)がベッドで白鳥のぬいぐるみを抱える姿がかわいい。幼少の彼にとって、味方はぬいぐるみしかいなかったのかな。そんな彼を窓から見下ろす白鳥(アダム・クーパー)の筋肉質なシルエットが挑発的。

王子(ベン・ライト)を取り巻く宮廷のしきたりは息苦しく、女王(マーガリート・ポーター)との間もなんだかギクシャクしている。
王子が女王である母の愛情を求める、という筋立ては『エリザベート』にも見られるが、この『白鳥』では「ママは何処にいるの?」などという甘い展開ではない。近親相姦を思わせる王子の体当たり。女王は何を拒んでいるのだろう?と邪に考えてしまう。女王自身は美形揃いの近衛兵(?)からお気に入りを選んでは連れ回しているからね。

そしてまた王子はガールフレンド(トレイシー・ブラッドリー)との仲も執事(スティーブ・カークハム)の暗躍で巧く行かない。
それにしてもガールフレンドのお茶目なこと。女王や王子と一緒に見に行ったオペラハウスの(将に)ロイヤルシートで、派手に鼻をかんだり、観劇中にお菓子を食べる&王子や女王に勧めたり(笑)。劇中劇のトロカデロみたいな(失礼!)蝶の姫様がなかなか愛嬌があったね。
困ったことが起こるたびに、手を口のあたりに持ってゆく王子の仕草が、彼の傷つきやすい心を表している。

王子は猥雑なソーホーのクラブに足を運ぶが、結局打ちのめされる。放り出されたクラブの外壁にもたれた彼がかいま見た(感じた)白鳥の群舞のなんと力強く野性的なことか!!薄いカーテン越しに見える白鳥のうねり。鍛え上げた筋肉が躍動する様はいかにも荒々しいが、それが逆に、人間社会に息苦しくなっている王子には生き抜く力に見えるのだろう。
セント・ジェームズ公園で自殺を考えるが、かの有名な曲にあわせて王子に迫る白鳥の群に、王子の心は躍る。片方の腕は頭上で肘を折り曲げ、反対の腕を横に伸ばした独特の白鳥スタイル。腰を折り、両手を後ろに回して睨みつけるように迫る白鳥。
これまでのチュチュ白鳥からはイメージどころか位置づけそのものが大きく異なる。チュチュ白鳥は「本来人間なのに白鳥にされてしまって悲しい」という、儚げな感じがあるが、男性白鳥は白鳥のパワーを生きている。例えは悪いけど、アフリカで大地を激しく踏んで生きている部族みたいな強さ。
白鳥が登場してすぐは、あまりの力強さに「もうちょっと柔らかくてもいいのでは?」と思った。しかし、観ていくうちに猛禽類というか凶暴な誘惑というか、とにかく王子を強烈に惹きつけるにはこれだけのものが必要なんだと思うようになった。

3幕の舞踏会ではアンサンブルのステップも見物だが、やはりストレンジャー(アダム・クーパー)の革ジャンが蠱惑的。とにかく彼は舞踏会参加者を籠絡しまくる。この時の王子の、惹かれている心があるが、しかしそれを拒む心もある、という表情がまた切ないんだわ。自分を支えてくれる白鳥とそっくりの男性が、一人の男として自分の前に姿を現す。まさに夢にまで見た人。が、女王もストレンジャーにみごとに陥落する。

想い人・ストレンジャーと母を失い、王子はどん底に。
「王子を愛する者などいないのだ」と言わんばかりに厳しく向かって来る白鳥達。小突き回される王子を救いに来るのはやはりあの白鳥。「王子が死んだのでは?!」と嘆く白鳥の叫びは鋭く、その後、息を吹き返した王子を守ろうと仲間を裏切る白鳥の姿は痛々しい。王子と白鳥が互いに手を差し出すようにして求めあうが、それはかなわない。王子のベッドに次々と白鳥たちが群がり、裏切り者の白鳥に退路は無い。あんなに強く激しく踊って見せた白鳥が、今は仲間から追いつめられるのだ。
「嗚呼!自分を支えてくれたあの白鳥はもういないのだ!もう、自分に残されたものは何も無い…」女王が王子の部屋に見たものは、ベッドに崩れ落ち、もはやぬくもりの抜けた王子の遺体。そして、窓の向こうからは、あの白鳥が愛おしそうに王子抱いて部屋の中を見下ろす。

こういう結果でしか、欠落した愛情を埋める方法はないのかと思うと、王子が落命したラストは本当に涙が出た。王子と白鳥がゲイの関係(って表現変だけど…)にあるとか何とか、そんなことはど〜でもいい。ゲイだろうとバイだろうとストレートだろうと、とにかく愛情を求める王子の心の旅の物語なのだよ、これは。
チュチュ白鳥と王子の(それはそれで素敵なメルヘンだが)ご都合主義入ったハッピーエンドより、私はこの『SWAN LAKE』の方がしっくり来るエンディングに思えた。

採点:★★★★☆

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