かの有名なシェイクスピアの『ハムレット』を元ネタに、その舞台裏を描いた作品である。しかもこの脚本を書いたのは、ヨーグルトの国(笑)ブルガリアのネジャルコ・ヨルダノフなのだ。つまり、チョット意表をついたところからやって来た作品なのだ。これは観ねばなるまい。
『ハムレット』ではデンマーク王子ハムレットが、先王(父)の死は現王(叔父)による他殺だと疑い、その殺人現場を描いた芝居を王の前で披露する、という劇中劇の場面がある。この『ゴンザーゴ殺し』は、まさにその芝居を演じることを命じられた芝居一座の物語。
ドサ廻りの旅一座に転がり込んだ儲け話、それがハムレット王子からの芝居上演の依頼。あからさまに王に楯突くような芝居を上演して王の怒りを買いたくはない。しかしギャラは法外。座長チャールズ(石波義人)は、陰謀渦巻く宮廷の権力争いに巻き込まれたくはないものの、いつのまにか渦中に…。
旅一座を丸め込むのは、『ハムレット』でも重要な役割を演じるハムレットの友人・ホレイショー(水野龍司)と、ハムレットの恋人・オフィーリア(吉田直子)の父であり大臣のボローニアス(内田稔)。実に巧く『ハムレット』の登場人物達が顔を出し、この芝居に『ハムレット』の裏話としてのリアリティを与える。
座長チャールズを筆頭とする旅一座は「何か、ヤバイような気がする」と思っているし、座長を巡る微妙な家族のいざこざも抱えている。それでも、報奨金の目もくらむ額面の勢いに後押しされるように、芝居の上演に踏み切るに至る。
このあたりの展開が巧妙で面白い。中でも、ご老体のベンボーリオ(高木均)のとぼけた味わいが、ドタバタしがちな一座の雰囲気を軽妙洒脱に引き締める…ってゆ〜か緩める(?)。
結局旅一座は、王弟が王を毒殺するという芝居を上演したことで、国家反逆罪でお縄になる。この時に彼らを調べ上げる刑吏(金子由之)の国家感というか権力志向というか、「まず罪ありき」な姿勢が、これでもかと云わんばかりにおもしろ可笑しく演じられる。それでも「刑吏って厭な奴だなぁ」とは思うが、観ていられないような嫌悪感にまではならず、それどころか妙に惹きつけられてしまうあたり、巧い。
ラストのどんでん返しは見事。ホレイショー!!君は上手に立ち回ったのだなぁ。『ハムレット』ではハムレット自身を含む主要人物の大半が死んでしまうのだが、その中で唯一の生き残りであり重要参考人がホレイショーなのだ。なるほど、したたかな男なのだ。
いやぁ、今度『ハムレット』を観る時は、かなりナナメな視線で見てしまいそうだ。