自称☆芝居道楽委員会

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ニンゲン御破産

2003年2月7日(シアターコクーン)

松尾スズキ&中村勘九郎である。これを期待するなと言うのが無理な相談だ。私のお目当ては勿論、勘九郎がどれだけ松尾の世界に馴染みつつ底力を見せつけるかという点。その他にも2001年の『ブルー・ルーム』が印象的だった秋山菜津子、2002年の『ゴドーを待ちながら』ラッキー役で過激な壊れっぷりを披露した小松和重、そして、これが「はじめまして」になる宮藤官九郎と気になる役者はたくさんいる。
演劇雑誌を中心に各方面で取り上げられ、前評判も煽りに煽っている。2月の舞台の中で最もチケット争奪戦の激しい公演の一つであろう。私が当日券に並んだのは平日夜の部(6時売り出し、7時開演)であったが、それでもチケット売り出し1時間15分前には既に20人近くが並んでいた。幸い、2階後方ながら中央ブロックの席を確保できた。芝居道楽の神様に感謝♪

元松ケ枝藩勘定方で現在は狂言作者を目指している加瀬実之助(中村勘九郎)が、自分の過去を鶴屋南北(松尾スズキ)と河竹黙阿弥(宮藤官九郎)に語るという形で物語は進行する。
松尾村のマタギで武士にあこがれる黒太郎(吹越満)と灰次(阿部サダヲ)&幼なじみのお吉(田畑智子)らと、実之助の許嫁・お福(秋山菜津子)や松ケ枝藩の瀬谷(浅野和之)と豊田(小松和重)、さらには遣り手婆(片桐はいり)等胡散臭い面々が入り乱れ、てんやわんやのニンゲン劇である。

正直なところ、実之助の脱藩にまつわる黒太郎&灰次兄弟との出会いを描いた1幕目はダルイ。どこか間延びした状況説明を聞いているようで、もどかしいのだ。大人計画を知らない勘九郎ファンのために初めは松尾ワールドを薄めにしている…という展開ではない。単に松尾が脚本をあれこれ吟味しすぎて、かえって散漫になっている感じ。

しかし2幕目と3幕目はよく走っている。敵討ちなんて!の動揺から「ええじゃないか♪」、安蔵座(アングラ座)の野外公演「偽大老暗殺偽生首」(タイトルちょっと違うかも…)への運び。ヒュースケン殺害の芝居を思いつき口立てする勘九郎さすがの見せ場。実之助が実ハ…の歌舞伎お得意のどんでん返しから、終幕の恍惚として舞台を楽しむ年老いた実之助まで。バタバタと話が転がるだけに、逆に骨格が見えやすくなっていて、人物の動きの意味もわかりやすい。
個人的にはお吉の「お願いしますよ」の連発が少々鼻についたが、今回、よく頑張っているのは黒太郎、灰次&お吉だろう。他の役者陣も、本水のプールに飛び込んだりあるいはプールから這い上がったりと相変わらずの体を張った(?)芝居を見せてくれたし、イメージしていた通りクドカンは飄々としていた。

良くも悪くも、期待というか予想通りの舞台。勘九郎のラブコールに答えて書いた脚本として、あるいは勘九郎と大人計画で構成する舞台として、成功しているのかどうかという点は微妙。1幕を大幅にカットして上演時間も短縮し、下北沢の小劇場などで上演した方が「事実は小説よりも奇なり」で「ニンゲン御破産」な雰囲気がドロドロと出て良いのではないかと思う。

そういえば、松尾スズキが作・演出・出演の立場として舞台上から「携帯電話の電源を切ってください」とお願いするシーンが、開演10分程度のところであった。だが、それにも関わらず、3幕目で客席から携帯電話だかアラーム時計かは不明ながら電子音がしたのは、本当に嘆かわしいことだ!!

採点:★★☆☆☆

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