劇場を出てからすぐに思い出したのは、夢枕獏『陰陽師』での安倍晴明の台詞。「世の中で一番短い呪とは名だよ…云々」でした。「やっぱ日本は言霊信仰の国だからね、気持ちが言葉で表されたら、その時点で気持ちは実体をもって言葉の主及び相手に影響力(拘束力)を持つんだよね、やっぱね」なんて、思ったのである。
言葉、とは何だろうか。伝える、というのはどういうことなのだろう。
波多野(岡田達也)の第2の声(心の声)を浴びせられた人物は、その言葉に縛られる。波多野が「死んでしまえ!」と、常人には聞こえない第2の声を浴びせたために、何人もが命を絶った。何故聞こえないはずの第2の声が、相手の行動に影響力を持つのか。ユーリ(岡内美喜子)の場合は声の喪失だった。但し、彼女は自らの声に対するコンプレックス(暗示)が根底にあるため、波多野の第2の声は声の喪失のキッカケに過ぎない。ユーリは波多野に肩を押されるかたちで自ら声を封じた、ようにみえる。
実際に音声に出された言葉なのか、あるいは心の中の第2の声なのかという違いはあっても、結局の所、言葉というのは「呪(シュ、あるいは、のろい)」なのだ。時には口ほどに物を言う目も手伝って、相手に伝わった言葉は「呪」となって相手の言動を縛る。あああ、だから言葉は難しい。
と、ここまで書いてきて、自分が何を書こうとしているのか分からなくなってきてます。(やれやれ。)なので、以下、簡単に感想を(苦笑)
物語の展開は、途中3分の1位まで来てほぼ完璧に読めてました。それでもテンポの良い場面転換と、登場人物のわかりやすい役割分担のおかげで、最後まで舞台に惹きつけられましたよ。
最後、微妙に読み違えたのは姉・雪絵(忍足亜希子)が弟・波多野を説得した時の台詞(手話)ですね。姉の説得に衝撃を受けて弟が自殺するという筋は予想通りだったのですが、その台詞は「今までありがとう。でも、もう、貴方は殺さないで。私は大丈夫だから、貴方は貴方の為に、生きて」という、お互いの独立宣言のニュアンスが強いのかなぁと思ってました。それで波多野は姉に必要とされなくなったと感じて自殺するのかな、と。
それにしても…ユーリって聞くと、どうしても萩尾望都『トーマの心臓』のユリスモールを連想してしまうんですけど。だから、どうって訳ではないんですが、ユーリが奪われたのは声ではなくて翼なんだよね…(笑)。
あと、ですね、「波多野は、私(雪絵)の心の中に棲んでいる…云々」の台詞で、岩崎陽子『王都妖奇譚』のラスト「私の中に棲めばいい…共にありましょう…云々」を思い出した私はアホですか?(笑)