『はなぢ』は花の名前など、植物に関する言葉を漢字変換するための、Macintosh ことえり用辞書です。テキストファイルも用意、登録単語はすべて、ことえりで云ふ「普通名詞」ですので、書式を Jedit などで適当なものに置換すれば、他の IM (或は他の OS )を使用してゐる方でも容易に取り込めると思ひます。
フリーウェア、個人的な使用ならば足すなり引くなりお好きなやうに。
.sit ファイル ......ことえり辞書 71KB (Mac OS 8.5 以降用)
.sit ファイル ......ことえり辞書 98KB (Mac OS 8.0〜8.1 用)
.zip ファイル ......テキスト 20KB
花の名前は、少し昔に書かれた文学作品などでは、しばしば、様様な漢字が当てられ、ギュスターヴ・モローの宝石を鏤めた衣裳さながら、眼に、煌めく如く、とよく感じたものでした。たとへば、上田敏訳詩集ではこんな一行に出逢ひます。
さてシモオヌよ、わが庭の春の花には苧環、遊蝶花、唐水仙、匂の高い阿羅世伊止宇...(レミ・ド・グルモン)
呉茂一訳ギリシア抒情詩選には、このやうな一文がさりげなく。
挿頭に編むは白すみれ、編むはやさしい水仙の花、桃金嬢に添へて編むはまたほがらに笑ふ百合の花。(メレアグロス)
遊蝶花、阿羅世伊止宇、桃金嬢などは、普通はまづ使用することのない漢字表記だとは思ひますが、漢字独得のイメージ喚起力によつて、未知の花でさへも、その形や匂ひ、性格などがすらすらと描きだされてくるかのやうな気がします。ついでに、苧環とはこんな花。
桃金嬢(てんにんか)とは myrte(銀梅花)のことださうですが、古代ギリシアのおほらかなエロースを一気に感じさせてくれる、ある種の文脈に於てはもはや他には代へられぬ日本語表記になつてゐる、とも云へさうです。遊蝶花は具体的になんの花を指すのかよくわかりません。単に文字通りなのかも。
ただ、誤解のなきやう。花の名前は常に漢字で書いた方が良いといふものでもありません。ひらがなであれ、羅甸名であれ、その時その場所に最良と思ふ選択をするべきです...。別の言ひ方をすると、花の名前はカナで書かねばならぬ、などど云ふ規制がもし仮にあるとするならば、そんなものは無視して好きなやうに書く、といふことです。ここは漢字を使ひたい、と感じた時にこの『はなぢ』が多少でも役にたつかもしれない、たつと良いんだがな、といふところです。
漢字変換する時に、現時点での標準的な Mac OS(おそらくはまた他の OS)では表示できない漢字があまりにも多いため、日常親しんで居る表記でも変換できない単語が結構あります。
たとへば、
「かりん」の場合、「花梨」は表示できますが、「りん」に櫨に似た漢字を置く「かりん」は出せません。
「さふらん」を旧約聖書文語訳風に「番紅花」と表示することは可能ですが、「#夫藍」(#は三水に自)と書くことは不可能です。
「どくだみ」は最初の一字がありません。等等。
また、植物名の漢字表記には別の問題もあります。 植物学的に、正しからぬ、或は混乱を招く漢字を当てた名称、時代とともに対象を変へた呼称、等があり、植物学者のなかにはその著書に一切漢字名を表記しないといふ態度をとるひとも居るやうです。それも一理、と思ふ方はこの『はなぢ』に注意深く接することを。
ともあれ、『はなぢ』は、多くを一般的な辞書から抜出し、文学作品に見かけた表記をそれに若干足したものであり、わたし自身の創作表記は混在させては居ないことを記して置きます。
最後に、「はなぢ」、ではなくて、「はなじ」、とするべきではないか、と疑問をもたれた方へ。まあ、dictionary の DI がたまたま「ぢ」と読めた、と云ふことにして置いてください。さういへば、旧かなでの変換には対応してゐませんが、惱むところです。一部、名残りがあるかもしれません。
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