○夏の思い出から
(2008.9.21)
自分だけの顔がわからなくなったときには
どこかにあるような顔をして笑って見せることもできるだろうが
この胸の奥でしくしくと痛んでいる種が許さないのだ
遠くで吠えている山猫は私だろう
窓の向こうで鳴いている烏は私だろう
森でごそごそ戯れている葉擦れは私だろう
言葉が死んだ朝に最適のダンス
こわれた玩具の記憶に繋がれた絵本のページ
汚れた白いシャツと地図にない国を探した夏休み
あなたの笑い顔が嫌いなのだ
その向こうに何もない笑いが怖いのだ
なにも見つけられない私の胸が悲しいのだ
巨人は山の向こうから一つ目を覗かせる
私は屋根の下で暗い口笛を吹き
血まみれの私の首を差しだしてみせる
雨が降り陽が照って風が吹き渡り
悲しいくらいに人間であることを歌えれば
いまのところはなんとかやりすごせるだろうか
見飽きた顔をいくら映してみても
自分の顔がわからなくなるときには
この胸の奥で疼いている欲望の種をどこかに植えにでかけようか