少年たちの反撃


第三章 第一話 「家」

全能なる者こそ、すべてを恐るるなれ。             

ピエール・コルネイユ「シンナ」

 

 霞玉丸はそれから、家路に向かって一目散に帰った。途中、何度も後ろを振り向きながら。

 辺りはすっかり暗く、人影も少なかったため、走っている間はたった15分程度の距離が、何時間もかかるマラソンコースのように感じた。

 まだ玉丸の父親も、母親も帰宅していなかった。父親はいつも玉丸が眠り込んだ時間に戻ってくる。母親は夕方に一旦戻ってくるが、玉丸たちが帰宅する前に近所のコンビニに深夜パートに出かけてしまうのだ。

 台所のテーブルには玉丸と笑子の夕飯が用意されていた。玉丸はひとりでそれを片づけてしまうと、食器を洗って自分の部屋(正確には笑子との部屋だ)に入った。

 部屋は、玉丸の家は集合住宅なので、あまり広いとは言えない。二段ベッドの上段に向かって鞄を放ると玉丸はとりあえず宿題を片づけた。部屋には机が一つしかなく、それを占領できるのは笑子が帰ってくるまでだからだ。(笑子の勉強は長い。玉丸の目にはもたもたと同じことを何時間も続けているように見えるときがある。しかし、成績は笑子の方が良かったりするときもあるのだ)予習も済ますと玉丸は絨毯に横になって昨夜のことを考えた。

 暗く不気味な、粘土をこねあげたような部屋が脳裏に浮かんでくる・・・。

 自分はあの銀色の連中に、紺万太が「船」と呼んだ場所に連れて行かれてしまったが、玉丸にはさらわれる瞬間の出来事がどうしても思い出せないのだった。きっと眠っているうちに銀色たちはこの部屋に潜入して、玉丸と笑子を運び出したのだろうと、玉丸は考えた。だけどそれがなぜ自分と笑子だったのだろう?

 自分は(考えると情けなくなるが)それほどたいした人間じゃない。紺万太の方がよっぽど観察に値する人間だ。何たって超能力者なんだから。勉強だって自分は全然得意じゃない。嫌いな教科だって多いし、何より体育が嫌いだ。運動神経が欠けていて、球技などでチームを組まされた連中は玉丸がその中にいるのを知った瞬間に負けを覚悟するくらいだ。

 玉丸は部屋の天井を眺めて、自分がさらわれるシーンを考えてみた。まず「船」がこの集合住宅の屋上に着陸するところを想像した。

 まずそこから無理だ。昨晩の出来事を思い出して見て、(感覚的にだが)あの「船」はこの集合住宅の数倍は大きいものだった。住宅の屋上にあんな巨大なかたまりが乗れば、この建物はあっさり崩れてしまうはずだ。何より父親や母親をはじめ、この建物の他の階の住人が船に気づくはずである。いつか見た(何てタイトルかは全然覚えていない)SF映画では未来人を演じる俳優が、宇宙船の発する光に包まれて他の場所へ移動するシーンがあった。自分はあのようにこの部屋から船の中にさらわれてしまったのだろうか?

 この二段ベッドが占領している狭い和室にあの銀色たちが乗り込んで来たとは玉丸にはどうしても思えなかった。

 この集合住宅には玉丸の一家以外にもいくつかの家族の練があった。なぜそれらの家族をさしおいて自分と笑子がさらわれたのか、その点も玉丸には謎だった。

 この建物は北側にある公園から望むと、一見同じ部屋が積み木のように縦横に平凡に並べられている。銀色たちはルーレットでも使って自分たちの部屋をランダムに選び出したのだろうか?ルーレットのます目はいくつもあって、ボールが指すます目は、実は他の誰でも良かったのかも知れない。その中から自分と笑子がわざわざ選び出されたなんて、自分たちはなんて運が無いのだろうと玉丸は思った。

「また会おう」

 峠三三の話では、宇宙人に誘拐されたスミス夫婦は奇妙な手術を受けた後、そう言われたそうだ。言葉の通りにその夫婦は再び何度か宇宙人にさらわれて、あの奇妙な手術を受けさせられたらしい。その時の夫婦の恐怖が、玉丸には身にしめるほど実感できた。

 玉丸をさらった連中は同じような手術を玉丸に強要したが、すんでのところで紺万太に邪魔されてしまった。そして、紺万太は容赦なく彼らを皆、壁に埋め込んでしまった。玉丸は一瞬彼らの不幸に同情したが、すぐまた手術台に無理矢理乗せられたことを思い出した。

「人を勝手にさらっておいてその上、耳に針を刺すようなひどい事をしようとしたんだ。僕はがんじがらめで動けなかった。万太の超能力で壁に埋め込まれたのは災難だと思うけど、彼らが僕にしたことを考えれば当然の報いかも。そう決まってる」

 その時、笑子が帰って来た。玉丸は笑子が風呂に水を入れ(笑子の役割なのだ)、夕食を片づける音を聞きながら「あの銀色たちはまた来るんだろうか?」と思った。

「あの銀色たちにも仲間がいるはずだ。仲間が壁に埋められているのを見て、彼らはどう思うだろうか?僕がやったとは思わないにしろ、犯人をさがすだろうな。まさか

放っておきはしないだろう」と玉丸は思った。

「乗組員のいなくなった船がどこにいったか知る由もないけど、あの船はいまごろ銀色たちの仲間に見つかっているに違いない」玉丸にはそんな確信があった。

 何となく寝る時間になっても、玉丸は布団に入る気にはならなかった。笑子は宿題を済ますとさっさと寝てしまっていた。寝るまぎわに「玉ちゃん、まだ宇宙人のこと気にしてるの?しつこいわね。きゃははは・・・」と言い残して。

「うるさいな」玉丸はテレビをイヤホンで聞きながら、なげやりに答えた。

 玉丸は今日は一睡もしないことに決めていた。理由はまた銀色たち(の仲間)が自分をさらいに来るかも知れないと思ったからだ。そのことを考えると寒気がした。銀色たちが自分の仲間をどれだけ大切にしているかは知らないが、仲間がどうやって壁に埋め込まれたかには、興味を持つかも知れないと思った。そうなればまた玉丸自身の前に彼らの仲間が現れるかも知れない。最悪、彼らはこの僕がそんな真似をしたと

勘違いするかも・・・。

 ぞっとしない考えだがありえないことじゃないと思った。もちろん玉丸の前に彼らが、二度と現れない可能性だってある。そうあって欲しいと玉丸は思った。銀色たちが壁にどうやって壁に埋め込まれたかを知りたければ、紺万太に直接尋ねに言って欲しいと思った。紺万太の心配は玉丸は微塵にも考えなかった。玉丸の中では、あの少年に恐いモノがあるのか疑問だったからだ。銀色たちが紺万太の前に現れた瞬間、彼らが吹っ飛ばされる様子が目に浮かんだ。万太に心配は無用だ。

「自分にもあんな力があったらなあ・・・」と玉丸は思った。万太のことを考えると

玉丸はわずかにほっとした。また銀色たちにさらわれても、また万太が助けてくれるような気がしたのだ。

「玉ちゃん、テレビがまぶしいから、さっさと布団に入ってよ。眠れないじゃない」笑子がベッドの中から言った。

「それと、暑いんだから窓を閉めっぱなしにしないでよね。網戸にすりゃいいじゃない、誰かが入ってくるとでも思ってるの?」

「うるさいな、早く寝ろよ」

 玉丸はぶつぶつつぶやきながらベッドに登った。夜明かしは横になりながらできるさ、と考えた。しかし、昨晩より寝不足気味なことと、一日中銀色たちのことを考え続けた疲労で、玉丸は瞼が重くなるのを感じた。眠るまいと考えるほど、頭は真っ暗になっていった。

 そして、霞玉丸は再びさらわれた。


第三章 第二話 「女」

「なぜ私は移ろい易いのですか。おお、ジュピターよ」と、美が尋ねた。

「移ろい易いものだけを美しくしたのだ」と神は答えた。             

ゲーテ

 

 うたたねから醒めたように、はっと目覚めると霞玉丸は花畑にいた。

 辺りはまぶしい輝きに包まれた虹が舞っているような、霧に包まれていた。

 玉丸は大理石でできたシンプルなベッドから身を起こすと、信じられない想いで辺りを見回した。

 ベッドからは遠くまで見ることはできなかったが、いろとりどりの花畑は霧の奥までずっと続いているようだった。玉丸には花の種類はあまりわからなかったが、ここには世界中のあらゆる花が、季節に関係なく咲いているようだった。

「ここは・・・?」玉丸はほんの2・3秒前には起きていたのに、と思いながら自分に何が起こったのか考えた。

「どうやら僕は、またさらわれてしまったらしいぞ」というのが頭に飛び込んできた考えだった。

 突然、恐怖がわいてきた。汗を寝間着にうっすらと感じる。あの銀色たちがまた現れるのだろうか?という暗い不安が、むくむくと胸の内から現れはじめた。

 玉丸はベッドからおり立つと、霧の中をしばらくさまよった。どこにも壁や出口らしいものは無かった。ここはあきらかに部屋等ではなく、正真正銘のどこか知らない無限を思わせる美しい花畑なのだ。

 そして銀色たちのすがたはどこにも見えなかった。もしやと思って紺万太と霞笑子の姿を探したが、見つけることはできなかった。二人を呼んでみたが、応答も無い。

「どうして、こんなところにいるんだろう?」玉丸は拍子抜けしたように、へそのあたりをぼりぼり掻くとベッドまで戻った。

 一瞬、これは夢かも知れないと考えた玉丸は、ベッドをこつこつと手で叩いてみた。大理石のベッドは硬く、ひんやりと冷たくて存在感があった。

 その時突然、背後に人の気配を玉丸は感じた。誰かがベッドに近づく音がしたのだ。玉丸は一瞬の緊張とともにさっと振り向いた。

 そこには髪の長いほっそりとした少女が立っていた。

「花を踏まないで。花が痛がっているわ」少女はベッドの傍らの石の歩道を指さした。そこに行け、という身ぶりだ。

 玉丸ははっとして自分の裸足の足をその細い歩道に乗せると「ご、ごめんなさい」と思わず言ってしまった。

 髪の長い少女は歩道から、ベッドに腰掛けると、玉丸に向かって言った。

「あなたは誰?」少女は言った。

「え?ぼ・僕は霞、霞玉丸って言うんだ」あたふたして、玉丸は答えた。

 今まで出会ったこともない少女を目の前にして、玉丸の心臓は急に鼓動を早く打ち始めた。玉丸は普段からあまり女の子とは口をきかない。きかないというより、きけないのだ。笑子は兄妹だからという理由でそれなりに話はできるが、それは笑子を

女性扱いしていないせいかも知れない。

 玉丸は目の前の少女の自然な美しさに圧倒された。腰まで届くウエーブがかった黒髪。あまりにも均整が整った顔立ちとプロポーション。体には薄い生地のピッタリした白一色のスーツが首から爪先までを包んでいる。顔には自然な微笑みが浮かび、玉丸は、東洋系とも西洋系とも判別しにくい少女の美しさを「ギリシャの彫刻が動き出したらこんな感じなのかな」と考えた。よく見ると少女の胸にはうっすらと乳首のかたちがうかがえるではないか。玉丸は、身体の中で急に火がたかれたように感じた。

 自分の顔は見えないが、赤い色を通り越して、今は紫色になっているに違いない。

「かすみたままる。面白い名前ね」少女は微笑んで言った。

「う・うん。みんな「玉」とか。「玉丸」とか呼び捨てにするよ」

 玉丸はなるべく少女と目を合わせないように答えた。少女の方に顔を向けられなかったのだ。

「ここへ、来ることが出来る人は少ないのよ。ようこそ、霞玉丸くん。私の名前はフォーリンよ」

「フォーリン?」

 澄んだ河が流れるような声で少女はそう言うと、腰まで伸びた髪をまとめて、背に預けた。長いまつげの奥に輝く大きな丸い黒い瞳を玉丸に向けると、少女はくすくす笑った。細い顎が小刻みに揺れる。玉丸は自分がだらしなく寝間着を着ているのに気づくと、顔を赤らめて着物のすそを直した。

「ご・ごめん。さっきまで部屋で寝てたんだ。どうやってここに来たのかさっぱりわからないけど・・・。でも、こんな広くてきれいな花畑ははじめて見たよ」

 玉丸は辺りを見回して思った。美術の授業の時、玉丸は想像画を描けと言われて、花畑を描こうとしたことがある。いろんな絵の具を混ぜて、色とりどりの花をキャンバスに並べるつもりだったが、それは失敗してしまった。絵の具は混ぜるたびに汚く、黒に近づいていったからだ。

 しかし今、玉丸の前に広がる花畑は、様々な色の花が咲き乱れているにも関わらず、完全な調和を保っていた。

「花はどんなに重なっても、汚くはならないんだね」玉丸はその時の事を思い出してつぶやいた。霧は雲のように一カ所にとどまらず、ゆるゆると常に流れ、果てなく続く花畑をかいま見せた。

「そうよ。本当にきれいなものは、いくら重なっても汚れないのよ」

 フォーリンは答えた。

「ここはどこなの・・・?」

「ここはエンテレケイア」フォーリンは言った。


第三章 第三話 「男」

夢見る男の夢のなかで、夢見られた男が目覚めた。             

ボルヘス

「エンテレケイア?」

 玉丸はその不思議な言葉を、フォーリンという名の美少女に続いて言った。

「知らないなあ。地理の授業では習わなかったよ。まだ習ってないだけかも。どこの国なの?ここは」

「国?ああ地球の概念ね。ここは地球ではないのよ」

 フォーリンは言った。

「地球じゃない?」

 玉丸はぎょっとした。地球ではないという言葉から、玉丸は宇宙という言葉を連想した。ここは地球じゃない星なのか?

 何となくだったが、玉丸はここが地球ではとても見られない風景だということを、先刻からうすうす感じてはいたのだ。人が夢に見る風景がそのまま具象化されたというのか・・・花畑にしろ、霧にしろその広がりは地球の風景とは異質で、まさに底が無いという感じなのだ。

 花畑はどこまでも広がっていた。地球では景色は、空気があるために遠くのものは

かすんで見えるが、この場所は空気がないのか、地平線がいつまでたっても見えないのだ!空と大地の境目は玉丸の視野には理解しがたいが、まるで融け合っているかに

見える。

 空をは地球の青空ではなく、紫がかっている。まるで宇宙が透けているようだ。日はまぶしく照り輝いていたが、何層も重なる雲の間からは星の輝きが見えた。

 そこには永遠という言葉では、はかりきれないような広がりあった。

 人の脳みその許容量を超えた世界の存在があった。

 玉丸はこの世界が自分の頭には入りきらないという恐怖−人は自分の手には負えないものを恐怖するのだ−を一瞬、感じた。

 そのためにここには霧が舞っているのかも知れない。世界のすべてを見せないために。霧はゆるゆるとその姿形を変えて玉丸を包んでいる。風もないのに。

 ここに来たときはあまりの世界の美しさに心奪われたが、紺万太と霞笑子の姿を探したときに、若干であるが、孤独感を味わったのを覚えている。

 ここは宇宙のどこかなのか?

 そして玉丸の中で宇宙という言葉は、銀色たちにつながった。

「ふぉーりんさん・・・いいにくいな。フォーリンって呼んでもいいのかな?」

「いいわ。みんなそう呼ぶわ。霞玉丸くん」

「僕は玉丸でいいよ。フォーリン・・・君はあの銀色たちの仲間なのかい?」

 玉丸はそうであって欲しくはないと思いながらも質問した。

 質問は彼女さえもが、人間ではないような感じがしたからだ。

 彼女があの銀色たちの仲間であるなら、この世界も彼らのものなのだ。玉丸は心の奥底で、こんな世界を所有する生き物が存在する事に対して圧倒された。フォーリンが銀色たちの仲間であるなら−そうであるなら、玉丸はもうどこにも逃げられないような絶望を感じたのだ。

 ところがフォーリンはそんな玉丸を不思議そうに眺めて言った。

「銀色たち?」

「知らないかい?背は僕よりもっと高くて、目がとっても大きくて真っ黒なんだ。僕が銀色って呼ぶのは、全身に銀色の不気味なスーツを着てるからなんだ」

「知らないわ。背の高い人たちは大勢いるけど」

「ここには他の人もいるのかい?」

「そうよ。エンテレケイアの人よ。そしてあなたと同じ、地球の人もいるわ」

「同じ人?もしかして紺万太っていうのかな?笑子では?」

「違うわね」そう言ってフォーリンはくすくす笑った。フォーリンには玉丸のそんな言葉がなんとも的外れでおかしいらしく、必死に笑いをこらえているようだった。

 突然、フォーリンは立ち上がると歩道を駆け出した。

「ついてきて!」そう言うとフォーリンは霧に隠れてしまった。

「ま・・・待って」玉丸は急いでその後を追った。

 花畑はいつまでたってもとぎれなかった。しかし運動が苦手の玉丸には不思議だったが、いつまでたっても息が切れないのだ。マラソンは特に嫌いだったが、ここでは

いつまでも走っていけそうだった。

 フォーリンはよく見ると裸足だった。長い髪をたなびかせて、走るのが好きでたまらないといった感じで軽やかに駆けていく。まるで野生の馬を見ているようだった。

 霧を抜けると花畑が現れる。その花畑を越えると霧が現れ・・・そんなことを何度か繰り返した。そしてついに玉丸が大きな霧のかたまりを抜けると、歩道と花畑は小さな渓流でとぎれていた。

「どこにいったのかしら?」立ち止まったフォーリンはきょろきょろと辺りを見回している。誰かを捜しているようだ。

 そのうちフォーリンが岩をいくつか越えて上流へ登っていくと、上半身が裸の少年が、渓流の中ほどにしゃがんでいるのを見つけた。フォーリンは玉丸の方を向いて、しいっと指を口にあてて静かにするよう合図した。少年は岩の間に腕を伸ばして、魚をつかもうとしているのだ。気合いとともに少年がさっと手を伸ばすと、次の瞬間には少年の手のひらに、玉丸が見たことないような色鮮やかな河魚がおさまっていた。少年が満足げな笑みを浮かべて魚をかかげ、玉丸の方へさくさくと草を踏んで向かって来た。

「簡単だとわかっていても、それが出来たときはうれしいもんだね」体中に水をしたたらせて少年は言った。

「ここの魚は大きな敵がいないから、動きが鈍いんだ。おまけに派手な色をしてるから見つけやすいしね」

 フォーリンは魚を少年から受け取って、感嘆の笑みを浮かべている。

「あの・・・僕は」

 霞玉丸は少年を見て一瞬、峠三三を思い出した。雰囲気が似ているのだ。こちらの少年は若干、年が上のようだったが。

「ぼ・僕は玉丸」

 玉丸はなぜか胸がどきどきして、それだけしか言えなかった。

 少年は長い髪を上げ、豊かな唇をにっこりさせて、笑みを浮かべた。

 少年の優しげな顔立ちは女性的に整っており、日に焼けた上半身は、顔立ちとはアンバランスに筋肉質だ。奇妙なことに彼は素足をのぞかせて、ぼろぼろの学生服ズボンをはいていた。玉丸が緊張している間に少年の方から、玉丸に話しかけて来た。

「ようこそ、エンテレケイアへ。ぼくは心郎(こころう)。君はここを1225番目に訪れた地球人だ。1224人目からずいぶん待ったよ。君はここに永住してくれるかい?」


第三章 第四話 「魚」

ある人物を真に理解するためには、

その人物の頭のなかに入るしかない。             

ルドルフ・シュレーダー

「今なんて言ったの?永住?つまりずっと住むってこと?」

 霞玉丸は信じられない思いで、心郎と呼ばれる少年に尋ねた。少年は端正な顔立ちの中に真剣さを浮かべている。

「そうだよ。エンテレケイアに来ることが出来る地球人は、とても少ない。一生に一度しかめぐってこないチャンスだ。生きているうちは、来れない人もいる」

「ちょ・ちょっと待って!いったい何の話?」

「玉丸くん・・・玉丸くんって呼ばせてもらうよ。ここには地球人は、僕一人しかいないんだ。ここにはかつて1224人の人間がやって来たが、みんな帰ってしまった。誰も戻っては来なかった。僕だけがここに残ったんだ。」

「そんなことを言ってるんじゃないよ。僕は・・・ここに!いつの間にか・・・部屋で寝てる間に来てたんだ。ここがどんな所かも全く知らないんだ」

 心郎は少し困った表情を見せて、フォーリンの方を向いた。フォーリンは「しまった」といった表情を見せて心郎に言った。

「ごめんなさい。まだくわしい話しをしてないのよ。久しぶりのお客様だったから、

ついうれしくって」フォーリンは顔を赤らめ言った。

 心郎はすこし軽い溜息をついて続けた。

「そんなことは問題にはならないよ、玉丸くん。ここは君の見たままの世界だよ。必要なモノは大抵そろうし、不自由を感じることは絶対ない。約束するよ。君の理想郷・・・というには不完全だが、住むにはいい場所だ」

 いったい何の話だ?この二人は何を求めているんだ?と玉丸は思った。

 自分はここにやって来たくて、来た訳じゃない。そりゃ素晴らしい所だとは思うし、いつまでもここにいたくなる世界だ。あまりに底が深くて恐怖さえ感じるが、魅力的な世界であることは間違いない。

 だが自分は・・・無理矢理にとは言わないが、いつの間にか連れてこられたんだ。 おまけに、永住してくれるかい?と突然に言われてすぐさま「はい」と答えられる訳がない。そんな心の準備なんて全然、出来ていない。

「そんなことを聞いてるんじゃないよ。ここに来たのは僕の意志じゃないってことさ。僕はてっきり、最初は銀色のやつらにまたさらわれてしまったのかと思ったんだ。君たちは本当にあいつらの仲間じゃないのかい?」

「さっきも言ったわね。銀色って何の話なの?」魚を抱えながらフォーリンが言った。

 魚はつるつると動き、そして重いようだった。それに気づいた心郎は魚をフォーリンより優しく受け取り、自分で抱えた。

「銀色って何だい?」

 心郎が尋ねる。優しげな黒い瞳は今、疑問を浮かべている。

「銀色ってのは僕を誘拐して、大きな針を耳に突き刺そうとした連中さ。地球の人間じゃないと思うけど、ひどい連中だよ。僕の妹の笑子は、耳の中に小さな球を埋め込まれてしまったんだ」玉丸が言った。

「球?」

 フォーリンが心郎に尋ねた。

 心郎はそれを手で制した。玉丸の話を興味深げに聞いている。

 玉丸は続けて銀色たちの外見を説明した。心郎の表情は次第に険しいものになっていった。まるでそんなひどいことは聞いたことがない、というような表情だ。実際、玉丸の目には心郎がすこし無知な部分を持っているように見えた。同じ地球人として、彼には何か、心安らぐ暖かい親近感を感じていたが、まるで外国人と話しているような感じがした。言葉は通じるが、身ぶりや手振りが通じないというそんな「もどかしさ」を感じたのだ。

「僕はかろうじて助かったんだけど、それはあいつらを紺万太っていう僕の友達がやっつけたからなんだ。だけど、きっとあいつらはまた僕の前に現れると思う。そう思っていた矢先に、僕はここへ連れて来られたんだよ。ここには君たち以外の人が

いるらしいけど、もしかしてそいつらが僕をさらったやつらかも!」

「もしかして地球は今、外星人と戦争しているのかい?」心郎が言った。

「そんなことしてないよ!何のことさ?」

「君らはまだ異星人と遭遇していないのかい?」

「してる訳がないじゃないか」

「君は何か特別な人間なのか?たとえば軍隊にいるとか」

「僕は14才だよ!ただの中学生だ。さっきから何を言ってるんだよ!」

「ごめん玉丸くん。ここでは地球がどうなっているのかはさっぱりわからないんだ。だけど言えることは、ふたつある。ひとつはここには君をさらうような連中はいないってことだ。みんな地球って星がどこにあるかも知らないからね。もう一つは僕たちが君を連れてきたんじゃない。君から・・・君自身が望んで、このエンテレケイアに来たんだ。そうじゃないと、ここには誰も来れないんだ。ここは君の夢の中だからね」


第三章 第五話 「夢」

神から見ればわれわれは悪童の目に映った蝿同然。

神は気紛れに人を殺すのだ。             

シェイクスピア「リア王」

「夢?」

 霞玉丸はしばらく呆然として、心郎に聞き返した。

「くわしく説明してあげたいけど、説明するのは・・・初めての人にはちょっとむずかしいかな。何しろ僕自身もよくわからないことだからね。だけど、今言った言葉が、それを説明するのにわかりやすい言葉であると思う。そう、ここは夢の中さ」

「夢の中?ここは夢なの?さっきは夢じゃないと思ったけど・・・ベッドを叩いた時は少し痛かった。でも、ここは夢だったのか!どうりで信じられないと思ったよ。ここは現実にしちゃ・・・何というか広すぎるし、奇麗すぎるんだ」

「自分に信じられないからと言って、それが存在しないことにはならないよ」

 心郎は腕の中の魚を持ち直し、気持ちのいい声を響かせて笑った。

「だけど、こんな・・・こんな世界があってたまるもんか!」

 霞玉丸の頭はぐるぐる回転した。こんな現実感のある夢は初めてだ。夢は眠りに落ちると、うすぼんやりとした感覚の中で展開されると思っていたけど、こんなに圧倒的な存在感を見せつけるように迫ってくるなんて信じられない。

 玉丸は一瞬、目眩に襲われると渓流の岩に座り込んだ。

 そして、急に何だか情けない気分になってきた。まるでここは、どこかのテレビ局のセットで、誰か知らないおおぜいが、こぞって玉丸を何か悪質な番組にこっそり出演させているような錯覚にとらわれた。ただでさえ人の良い玉丸は、まだ自分がだまされたことに気づかず、隠しカメラでその間抜け面を全国ネットで放送されているのだ。みんなそんな玉丸の様子を見てくすくす笑って見ている。

「なんて馬鹿な奴だ!あんなトリックにひっかかるなんて、普段からよっぽど間抜けな生活をしているに違いない。よくあんな奴をテレビ局は見つけてくるもんだ。あの顔を見ろよ」

 そんな視聴者の声が聞こえるようだった。・・・そんな冷たい被害者意識が波のように玉丸を襲った。

 かすかな悲鳴が聞こえた。

 フォーリンが悲鳴をあげたのだ。玉丸が急に動いたため、びっくりしたらしい。心郎はそんなフォーリンを支えようとして、魚を河に落としてしまった。魚はまさに水を得た感じで、一瞬にして河の中に消えてしまった。

 玉丸にはそれが、テレビを観てげらげら笑う無責任な視聴者の声に聞こえた。

 座り込むなり玉丸は、何か胸のうちからふつふつとわいてくる怒りにも似た笑いがこみ上がってくるのを感じた。ここの日差しは、やってきた時は心地良いものだったが、じわじわと沸いてくる冷や汗とともに、玉丸には今はそれが不快に感じられた。

 玉丸の頬はひきつり、自然に口はひくひく震えた。

「ははは・・・。夢といわれれば・・・そうかな?って気がするよ。よくよく考えれば、僕のまわりは信じられないことが・・・いっぱいだ」

「玉丸くん?」

 心郎は玉丸の様子を見て、心配げな顔をのぞかせた。

「僕は・・・僕は双子の兄貴だけど、妹の笑子とは顔も、性格も全然似ていないし、妹だと実感したことも・・・ないんだ。あいつ生意気でさ。あいつの方が頭の回転が早いし、成績だっていいんだ。それに比べて僕は・・・ははは。ろくな人間じゃない。スポーツだって何もできない。いつもみんなの足をひっぱってさ。僕が入るとチームは負けるっていう外れたことがないジンクスだってあるんだ。ははは・・・おまけに僕は泳げないんだ!笑子はそんな僕を毎年夏が来ると、いやみったらしくあのけたけた響く声で笑うんだよ「今年は泳げるといいわね」なんてさ」

「玉丸くん・・・。待ってくれ。僕の話を聞いてくれ」

「それに僕は今日、情けないことにさ。体育の授業の時、ボールが顔面にぶつかって気絶しちゃったんだ・・・ぶっ倒れたんだよ。いつもはボールになんか触れもしないのに!保健室で泥だらけで寝てたんだ!」

「玉丸くん・・・」

「僕にボールを投げたのは、万太っていうんだ。もちろんそいつはスポーツ万能なんだ。おまけに、本当は・・・本当は秘密なんだけどさ・・・何と、あいつ超能力を使えるんだぜ。にらむだけでどんなモノも吹っ飛ばせるんだ!すごいだろ?テレビにだって出てるんだ!テレビスターってやつさ。時には隣の学校からサインをもらいに来る女の子もいるんだぜ。勉強もスポーツもできない僕とは雲泥の差だろ?それにくらべて僕は、何やってもうまくいかない。まったくついていない。運が無いんだ。昨日なんて寝間着のままで、よりにもよってあんな変な銀色たちに蛙のように実験台に乗せられたんだ!何て運が悪いんだ!あの時は気づかなかったけど・・・僕は・・・僕はあの時、格好悪くおしっこをもらしてたんだ!」

「玉丸くん。お願いだ」

 玉丸の瞳からはぽろぽろと涙が出てきた。涙は玉丸が両手で瞼を押さえてもあふれでて止まらない。いつからか、人は泣く時間を失うけれど、行き場のない涙はどこにたまっているんだろう?そんなことを一瞬、玉丸は考えた。

「いやだ。君の・・・言うことなんか信じないぞ。君が言ったことなんか信じるもんか。これが夢だって?・・・ベッドを叩いたら痛かったぞ!こんな夢なんかあるもんか。どうしてみんなでよってたかって僕を痛めつけようとするんだ。僕は誰も傷つけようなんて思ってないのに・・・」

 玉丸が昨日から今日のことを思い出すたび、涙は溢れ出てきた。僕の身体のどこにこんな涙があったんだろう?くやしさと情けなさの中、そんな思いも重なった。口の中にしょっぱい味がする。鼻水が流れ込んで来ているのだ。こんな現実味のある夢なんて初めてだ。それとも僕は寝ながら泣いているのか?

「うっうっうっ・・・どうしてだ。僕を放っておいてくれないんだよ」

「玉丸くん。お願いだ。僕の言うことを聞いてくれ」

「僕は・・・僕は・・・うっうっ」

 心郎は玉丸の傍らにひざまずくと、玉丸を見上げた。玉丸の顔は涙と鼻汁でぐしゃぐしゃだ。

 心郎はいつの間にか学生服の上着を着ていた。上着はぼろぼろで、何年も経っているものらしかった。玉丸には少し古いデザインであるように見えた。

 心郎はそこからハンカチを出すと玉丸に差し出した。ハンカチも上着同然、ぼろぼろだった。玉丸はそれを受け取らず、払いのけて河で顔を洗った。寝間着の袖で顔を拭いた。気分はすっきり晴れたわけでは無かったが、なぜだか心のわだかまりが晴れたように玉丸は感じた。心郎とフォーリンは夢の住人かも知れないが、少なくとも彼らには罪はないのだ。勝手にこんな夢をつくりあげた自分が悪い、と玉丸は思った。

「教えてよ・・・この夢はどうしたらさめるんだい?」

 玉丸の瞳から涙はさらに、はらはらと流れたが玉丸はそれを拭いはしなかった。

「君が望めば・・・」心郎は答えた。

「僕はこんな奇麗なところを去りたくなんかないよ。本心さ。ずっとここにいたい。だけど夢の「外」には父さんや母さんもいるし、にくったらしいけど、妹の笑子もいる。友だちもいる。万太や三三っていうんだ。黙って自分だけが、こんなイイところで住むなんてできないよ」

「でもここにいれば、君が話した銀色の連中には会わないぞ」

「僕は・・・弱虫だけど。あれが何だったのか、はっきりさせたいんだ。あの銀色たちは僕を使って、何か良くないことをしようとしたのかもしれないけれど、それが何だか知りたい。銀色の何人かは僕の友だちがやっつけたけど、あいつらには仲間がいるはずだ、と僕は思うんだ。僕の友だちの話・・・峠くんの話だと世界中で僕と同じような人がいるらしい。僕はなぜ、銀色たちがそんなことをするのか知りたいんだ」

「さっき僕は外星人の話をしたね。確かにこの宇宙には恐ろしく、危険なやつもいるよ。銀色はその連中なのかも」

「恐くない、と言ったら嘘になる。だけど、僕は戻りたいんだ。ごめんよ」

「そうか・・・残念だな」

「二度とここには来れないのかな?」

 この質問に対して、心郎とフォーリンは顔を向かい合わせて、まるで事前から練習でもしていたかのように、ぷっと笑い始めた。

「そうでもないわ」答えたのはフォーリンだった。


第三章 第六話 「露」

両手にいっぱい草をつかんでぼくのところに見せに来ながら

子供がきいた、

「草ってなあに?」

どうしてぼくに答えられよう、子供と同様ぼくにだって

草が何かはわかっていない。             

ウォルト・ホイットマン「草の葉」

 フォーリンは数歩、歩いて花畑へ戻ると、ひとつの花を取って戻ってきた。

フォーリンの手には花束があった。

「勿忘草(わすれなぐさ)の花言葉って知ってる?」

 フォーリンはにっこり微笑んで、今摘んできた花の何本かを玉丸に差し出した。

「花言葉は、もともとフォーリンの頭には無かったんだ。僕が教えたんだよ」

「いやだ、心郎ったら。いいじゃない。たまには私に言わせてよ。勿忘草の花言葉は

簡単よ。「私を忘れないで」っていうの」

 霞玉丸には二人が何を言ってるのかわからなかった。差し出された花を手にして、玉丸はぽかんと口を開けてそれをしばらく眺めた。勿忘草は美しく、その小さな花びらは、朝露に濡れているかのように光っていた。

「みんな、ここへ来ると最初はこの世界の広さに圧倒されて、帰りたいっていうんだ」心郎が訳知り顔でうなづく。その表情は玉丸がまた泣き出さないか心配で、その言葉もおそるおそる出たものだ。

「ただ世界が広いってだけなのにね」

 フォーリンも合わせてくすくす笑う。

「何のこと?何を言ってるのさ、二人とも」

 玉丸はまだ、二人が何を言ってるのかわからない。まるで額にある眼鏡を、本人が気づいていないのを笑われているようだ。

「玉丸くん、ごめんよ。実はチャンスはもう一度だけあるんだ。君はもとの世界へ戻れる。そして、この花を向こうの世界で思い出せば、エンテレケイアにも戻ることが出来る」

「何のこと?」

「君が向こうの、今まで眠っていた部屋へ戻った後、この花のことを思い出せば、再びここへ来れるのさ」

「何だ!そんな簡単なことなの?」

「だけど、この花のことを二度と思い出さない人もいる。今まで、誰も思い出さなかった。誰もここへは戻っては来なかった。いや、思い出したのかも知れないけれど、ここに来たいとは思わなかったのかもね」

「そんな・・・僕はきっと思い出すよ!」

「待ってるよ」

「ああ。きっと戻って来るよ」

 玉丸は空を見上げた。星が透けた青空には今、土星のような輪を持った巨大な惑星が空をおおっていた。よく見ると輪っかが小さな氷の結晶であるのが見える。しかし、それでもエンテレケイアの日差しは変わらず、さんさんと降り注いでいる。先ほどの不快に思ったのが嘘のようだ。今まで気づかなかったが、玉丸のまわりの霧はいつしか心地よく流れる微風とともに晴れていた。

「ここは夢の世界じゃないね」玉丸は言った。

「僕にはこんな想像力はないもの」

「いや、夢なのさ」

 心郎は答えた。

「エンテレケイアは全宇宙の生き物の想像力が支えているんだ。宇宙には生き物ひとりひとりの夢を実現させて描く許容量があるんだ。つまり、誰かが一瞬に考えた思考は、宇宙のどこかで必ず形になっているんだ」

「そんな・・・宇宙がそんなに広いはずがないよ!」

「みんな、そう言うのさ。だけど考えてごらん?宇宙は意味もなく存在しているんじゃない。誰かのため、宇宙は宇宙自身のために存在している。宇宙を構成しているのは単に原子や分子だけじゃない。それを構成する力が必要なんだ」

「それが想像力ってこと?」

「正確には違う。だけど宇宙の構成と僕たちの思考は、お互いが存在しないと成り立たないと考えていいね」

 そこではたと、玉丸は思い立った。一番肝心な点を聞きそびれていたのだ。

「エンテレケイアに来れる人は少ないと言ったね、心郎くん」

「そうだよ」

「どうして僕はここに来れたの?」

「それはまた、君がここに来れたときに教えてあげるよ。僕にもそれはよくわからないんだ。僕がどうしてここに来れたのか、僕自身にもよくわかっていないんだ」

「僕の友だち、笑子や父さん、母さんたちも来れるかな?」

「わからない。だけど可能性はあると思う」

 まだまだ聞きたいことはあったのだが、玉丸はここが引き際だと感じた。エンテレケイアでは時間の経過がどうなっているのかわからないが、かなり長い時間が経っているような気がした。部屋がどうなっているか、さすがに心配になってきた。

「家に戻るよ」

「そうか。残念だな」

 そう言って心郎とフォーリンは手を差し出した。

「いや、僕は握手なんてしないよ」

 玉丸は二人に向かってそう言った。

「だって僕は、必ずここに戻って来たいんだ」勿忘草を見て玉丸はそう言った。

第三章終わり 第四章につづく


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