取材・文/森 美歌(Slow Media Works)  text by Mika Mori

☆生まれ

2004420日アースデイ

"もの"がたり

ペルーで出会ったおばあちゃんの魔法。それが年月を経て「水筒」というかたちで3つの文化の素敵なコラボレーションを生み出した。今回は、そんな「クリキンデの水筒」のはなし。これぞ、おばあちゃんの魔法がかかったホントの魔法瓶!

●はじまりは、水筒ムーブメント

話は、スローウォーターカフェ(有)代表の藤岡亜美が大学生だったころにさかのぼる。「水筒を持つことは、自動販売機を使わないで、好きな飲み物をいつでも、どこでもエコロジカルに楽しめることだよね!」と、NGOナマケモノ倶楽部 で水筒ムーブメントを企画、考案、実行することに。「まずは自分からやろう」ということで大学に毎日水筒を持っていったところ「かわいい水筒だね!」とみんなに褒められたことがきっかけで、水筒の歴史を調べたり、骨董市や旅先で見つけた水筒を集めたり、とちょっとした水筒コレクターになった。そして大学3年の夏休み、ペルーを旅したときに先住民のおばあちゃんの作った水筒ホルダーを発見。運命の出会い!このホルダーはまわりのみんなに大人気だった。「これは流行る!」と感じた亜美は、オリジナル水筒グッズを作り始めた。
 

●水筒を作りたい!町工場に頼むのだ!

最初の水筒作りは、ナマケモノ水筒。ステンレスの水筒を買って、それにシールを貼って販売した。でもいつも「もっといい、オリジナルの水筒が作れないかなあ」と思っていた。思い続けて3年たったある日、燕三条にあるアウトドアグッズ会社
(株)スノーピーク 社長の山井さんに会ってその話をする機会にめぐまれた。山井さんはそのアイデアに賛同、水筒作りが始まった。山井さんが紹介してくれたのは、三条に昔からある町工場。この町では、金属の円形を作る技術が発達し、昔からはさみや筒などが伝統産業として発展してきた。とはいえ「中国に大量生産を依頼するほうが安い」という社会状況の中で、多くの町工場がつぶれていった。その中で生き残っていた町工場に会い、話をした。町工場も共感してくれた。こうして美しいデザインを持つこだわりの水筒作りが始まった。
 

●クリキンデのロゴとの出会い。

そんな美しい形の水筒作りと平行して、そこに載せるロゴも考えた。そこで、思いついたのは、亜美が3ヵ月間暮らしたエクアドルに伝わるハチ鳥クリキンデのストーリー。エクアドルにキチュア族のあいだには、こんな話がある。
 

ある時、アマゾンの森が燃えていた。
大きくて強い動物たちは我先にと逃げていった。
しかしクリキンデ(金の鳥)と呼ばれる小さいハチ鳥だけが、そこに残った。

そして、 口ばしに1滴ずつ水を含んでは、
飛んでいって燃えている森の上に落とした。
また戻ってきては、水滴を持ってゆく。

それを繰り返すクリキンデを見て、大きくて強い動物たちは、馬鹿にして笑った。
「そんなことをして、森の火が消える とでも思っているのか」。
クリキンデはこう答えた。

「私は、私にできることをしているの」。
 

水筒を通じて「私にできること」を実践したい、その想いを運ぶために、山井さんと話した結果、ロゴはハチ鳥に決定した。そして、亜美は「ハチ鳥をかこう」と図書館に毎日足を運んだ。でもうまくできなかった。「困った。どうしよう・・・。」息詰まったとき、ふと大学のゼミの教授である 辻信一 の研究室でみたカナダの先住民ハイダ族の漫画家マイケル・ニコル の絵を思い出した。彼の漫画は、のそのそ動く熊や動きのある動物ばかり。「あ、あれだ!」心がことりと動いた。うようよ動いている動物たちの絵。もしもハイダのハチドリの絵を入れられたらハイダとエクアドルと日本の文化が3点で結び付けられる!すぐに、辻信一を通じてマイケルに依頼。「ハイダの森のようなひと」マイケルは、その場でラフを書き、ファックスで送ってくれた。

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(左)亜美が挑戦したいろんなハチ鳥の絵。(右)マイケルの絵は、こんな感じのデザインが多い。

●ハチ鳥のデザイン

デザインを送られてきたときの亜美の想いは、ひとことで言うなら「はっとした」。魂と水のところに丸が描かれた、ちょこっと悪そうなハチドリのイラスト。「人と何かするってすごい!」とワクワクした。こうして、日本の伝統的な手法と、エクアドルのキチュア族のハチ鳥と、カナダのハイダ族のイラスト、つまり、3つの文化が結びつき、1つの水筒ができあがった。「今はそんなに営業できていない」と語る亜美。「でも、友達が持っていたので探しにきた。買いにきた」など、みんな探して買ってくれるという。何よりも、買っていくお客さんが、みんなとても嬉しそうなのが印象的だそうだ。毎日、大事に大事に持ってもらえる水筒。3つの文化のつながりを感じられる、素敵な日々の相棒となってくれるはず。

インタグコーヒー 〜人と地球と心に優しいコーヒー

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☆ここがスゴイ!

1)3つの文化のコラボレーション
エクアドルのキチュア族に伝わるハチ鳥の話と、ハイダ族のイラスト。それに、日本に脈々と行き続けた町工場が作った水筒。
3つの文化のコラボレーションが、この水筒。

2)こだわりの抗菌仕様
水筒業界を調べているとステンレスとフッ素は本来相性が悪いのに、磨く手間を省くためにフッ素加工行い、そのうえ、抗菌を化学処理でふきつけているということが分かった。そこで、この水筒では化学処理を行わず、時間がかかっても、しっかりと中で磨いて抗菌するようにしてある。

3)立役者、スノーピークの存在
スノーピークは、日本が世界に誇る、高品質のアウトドアブランド。そんなスノーピークの社長の山井さんと亜美が出会ったからこそ、そして、その「ものづくり」へのこだわりが響きあったからこそできた、この水筒。想いがつながって、この水筒がこの世に生まれた。

 

☆SMW流アレンジ

今回は、スミューにも参加しているスローウォーターカフェの藤岡亜美流の、ハチ鳥のアレンジを紹介します!

スローウォーターカフェは、このハチ鳥を自由に飛ばすことにしました。とても素敵なロゴなのでその使用権を独占せず、ハミングバードプロジェクトの中で「環境に対する取り組み」をする人々は自由に使えるようにしました。例えばミッキーマウスは、世界にそのライセンスの売買とともに広まったけれど、このロゴは樹を植えたり、自分にできる省エネをするというような、小さなでも確かなひとつひとつの取り組みと共に大きく広がってゆくことを目指しています。それは、ブランドの新しいあり方へのチャレンジでもあると思います。

革命の象徴としてチェ・ゲバラのアイコンが世界中にみられるように、この少し悪そうなハチ鳥が水筒からばたいて世界を飛び回り、いつか緑の再生したペルーやエクアドルの市場でセーターの模様にでも編み込まれているのをみるのが楽しみです。

ハチ鳥水筒を持ってスマイル!のお客さま。ここにも、つながりが。

★インフォメーションはこちら

スローウォーターカフェ(有)
(株)スノーピーク 
ハチ鳥を描いたハイダの漫画家マイケルのサイト
亜美が代表を務める、スローウォーターカフェ(有)のblog

 

森 美歌(もりみか)

明治学院大学卒業。在学中にはNZで先住民族マオリの研究をしたり、エクアドルに行ったりして、いろんな影響を受ける。現在は某英語学校の広報をしながら仲間たちとスローなメディア活動を展開中。