胃瘻とメリーゴーランド


そして研修医時代はIVHが始まって数年という時期で、その頃の古い先生は、リカバーする見込みのある人しかIVHはしなかったと言っていた。... 自分としてはそんなしゃべることも出来ない、意思の疎通もままならない患者さんでも声をかけ、オデコに手をかざし(発熱してないか診る)、下肢に手をあてる(浮腫はないか、末梢循環はどうか確認する)ことで生命を感じ元気なら嬉しく思い、調子が悪ければ心配になる...まるで止まらないメリーゴーランドのようなもので、一度乗ると降りるまで、忙しく騒がしくにぎやかに回るしかない。... やがて必ずいつか患者さんはこのメリーゴーランドから降りる時がくる。

 私の担当する三十数人の入院患者の三分の一以上が胃瘻を作っている。15年ぶりに臨床しているが、15年前には胃瘻なんてなかった。そして研修医時代はIVHが始まって数年という時期で、その頃の古い先生は、リカバーする見込みのある人しかIVHはしなかったと言っていた。IVHだけでは長期の管理は難しく、胃瘻技術ができてこそ長期管理が出来る。胃瘻が延命技術とは言えないが、なんとも言えない側面がある。しゃべることは出来ないが、胃瘻患者さんで話しかけて、首で返事をしたり、手を握ってコンタクトする患者さんが居る。胃瘻があるからこそ生きて過ごせる。自分としてはそんなしゃべることも出来ない、意思の疎通もままならない患者さんでも声をかけ、オデコに手をかざし(発熱してないか診る)、下肢に手をあてる(浮腫はないか、末梢循環はどうか確認する)ことで生命を感じ元気なら嬉しく思い、調子が悪ければ心配になる。

 患者の家族の中には、胃瘻造設を拒否しようとする家族が居る。しかし、胃瘻を作らずいつまでも点滴というわけにもいかない。IVHでも長期管理用があるが、それでも胃瘻でも同じ発想だろう。胃瘻を作らないなら病院では管理できない。病院とは生きる為の施設であって、スタッフもその為に組織されている。点滴だけで日に日に消耗していくための収容施設ではない。胃瘻を拒否するなら退院してもらうしかない。が、胃瘻を作っても在宅管理が可能なら退院してもらうわけだが。胃瘻の是非を議論するつもりもない。これで患者さんが生きることが出来れば選択肢はこれしかない。

 医療技術とはそういうパンドラの箱のようなもので、開けたら世界が変わる。世界が変わったが、別の悩みも増えたような気がする。医療の技術開発は止まらない。なぜ止まらないかと言えば、それが単純に言えば進歩だから。そして技術革新はビジネスチャンスでもある。次から次へと新規開発製品が出て来る。まるで止まらないメリーゴーランドのようなもので、一度乗ると降りるまで、忙しく騒がしくにぎやかに回るしかない。でもそれほど心配することもない。やがて必ずいつか患者さんはこのメリーゴーランドから降りる時がくる。乗り疲れた医師も看護師もやがてメリーゴーランドから降りる時が来るだろう。



 

Posted: 火 - 6月 12, 2007 at 10:26 午後         |


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