臨床研修必修化の成果


あらゆる点で、日本の医療制度は曲がり角にさしかかっていたところで、必修化で加速がついて国や地方自治体が描いたカーブを医療制度は曲らずに真っすぐに突進したと言えるような気がする。..厚労省の打ち出した臨床研修必修化は、日本の大学医局制度をやっと根底から破壊したという意味でエポックメイキングと言える。 昭和40年代の大学紛争はもともと医学部無給医局員のインターン制度の矛盾から生じ、結果としてインターン制度は無くなったがもともとの大学医局制度は温存され、やっとこれで封建的な大学医局制度は終焉を迎え、その封建的な制度に依存していた地方の病院には医師不足が顕在化したわけだろう。

 臨床研修必修化について色々と意見があるようだ。つまるところ、これによって地域医療制度が崩壊の危機になったことは確かだろう。しかし、この臨床研修必修化は崩壊の切っ掛けに確かになったのだが、これが主要な原因とは思えない。あらゆる点で、日本の医療制度は曲がり角にさしかかっていたところで、必修化で加速がついて国や地方自治体が描いたカーブを医療制度は曲らずに真っすぐに突進したと言えるような気がする。

 臨床研修必修化も数年も経てば、大都市部から溢れた若い医者が地方や大学に戻ってくるから問題ないとした識者も居た。現実はそうはならなかった。若い医師はどこに行ったのだろう?少なくとも魅力の無い地方郡部と大学医局には戻らなかった。魅力のある地方病院や大学医局とは何だろう?それは医師としてのプライドを満足させる職場だろう。

 私も含めて医師はプライドが高い。麻生総理に言わせれば社会的常識に欠けるほどプライドが高い。プライドを満足させるのは単純な収入の多さではない。若い医師は都市部から地方郡部に来ないと言うが、都市部の病院は給与が(相対的に)安い上に激務。それでもなお都市部の病院に居るメリットは自分にチャレンジが出来るから。整った検査機器と治療薬(今や地方郡部の病院には経営合理化のために治療薬さえ満足にない、そしてある薬品もジェネリックという名のゾロばかり)、そして何より刺激的な助言や情報を与えてくれるスタッフや環境(研修会や講演会が都市部では多い)の整った都市部病院には魅力がある。医師としてのプライドを満足させる。

 臨床研修必修化で、若者は何が魅力的かを自分で判断できるようになった。大学医局の呪縛から解かれて、自分にとって何が必要でどこに行けば良いかがわかるようになった。それはそれで結構だし、至極当然のこと。厚労省の打ち出した臨床研修必修化は、日本の大学医局制度をやっと根底から破壊したという意味でエポックメイキングと言える。昭和40年代の大学紛争はもともと医学部無給医局員のインターン制度の矛盾から生じ、結果としてインターン制度は無くなったがもともとの大学医局制度は温存され、やっとこれで封建的な大学医局制度は終焉を迎え、その封建的な制度に依存していた地方の病院には医師不足が顕在化したわけだろう。

 研修制度を1年短縮、あるいは旧来の医局制度復活など考えない方が良いだろう。賽は投げられルビコン川を渡ってしまった以上は、後戻りはできない。そして良い面も出ている。今までのような徒弟制度で、先輩医師の黙って見ていろ、技術は盗めのような旧態然たる教育指導方法はすたれ始めた。やっと研修らしい研修と教育らしい教育がスタートしたわけだ。では、地方郡部(に限らないが)の医療制度崩壊はどうするか?と言えば、金と人材を注ぎ込むしかないだろう。ただ単にかけるコストが少ないだけ。臨床研修必修化と今の(ただ単にコスト削減による)医療制度崩壊とは切り離して考えるべきだろう。良い研修制度を支えるにはコストがまたかかる。どう転んでも医療費はかかるはず。


 

Posted: 月 - 2月 9, 2009 at 11:59 午後         |


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