8月は戦争の季節だった
毎年、8月は広島長崎原爆投下と敗戦の日というので、日本では戦争の季節でした。でも最近は段々と戦後ではなくなり、戦前になったとシニカルに述べる御仁も増えてきました。自衛隊の航空幕僚長がトンでもない懸賞論文を書く時代になったのも偶然ではないのでしょう。
毎年、8月は広島長崎原爆投下と敗戦の日というので、日本では戦争の季節でした。でも最近は段々と戦後ではなくなり、戦前になったとシニカルに述べる御仁も増えてきました。自衛隊の航空幕僚長がトンでもない懸賞論文を書く時代になったのも偶然ではないのでしょう。 戦争と言えば、戦場しか思い浮かばないのが普通かもしれません。が、『脱出』という吉村昭の短編集があります。日本の敗戦前後を描いた短編で、軍人や闘いの話ではないのがかえってリアルな敗戦を描いています。反戦小説でもなんでもない、淡々と敗戦前後の日本を描いています。 表題と同じ『脱出』は、敗戦直後にソ連に侵略される樺太から北海道への脱出を描いています。北方四島復帰などと言っていますが、私からすれば樺太を返せと述べたいのですが。主人公は小舟で北海道へ脱出するのですが、最初は戦争や敗戦が遠い国の出来事のように思われ、次第に敗戦の過酷さが周りに漂い最後に渦中に放り込まれて放心状態で生き延びる流れで描かれています。全編、そんな感じの短編集です。『他人の城』では沖縄から本土へ疎開する途中の輸送船が雷撃をうけて突然戦争のただ中に投げ込まれます。『珊瑚礁』では南海の楽園のような生活が一変するサイパンでのジャングル逃避行が描かれています。 『焔髪』と『鯛の島』はもっと静的な戦争風景、敗戦風景が描かれています。前者は空襲を避けるための仏像の疎開を描き、脆い仏像は疎開のために壊れ米軍の美術品としての接収はないだろうと安堵する僧侶の解放感が描かれています。後者では戦災孤児のすさんだ心模様のエピソードが悲しく描かれています。この戦災孤児の描写から、野坂昭如の傑作『アメリカひじき』を思い出しました。こんな小説を読み返すと、本当に平和になった日本に生まれ育ったことに感謝したくなります。
Posted: 水 - 8 月 5, 2009 at 10:13 午後
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