ヘッドフォン道楽
このページには「工作」の要素のコンテンツは少ないです。
私が実際に長期間使って気に入ったヘッドフォンの数々をごく主観的に紹介してみました。
STAX SR-001
気軽に聴けるヘッドフォンが欲しくなり、これならと思って入手しました。
単三電池2本でも動きますが、屋内では電源アダプターを繋いで使っています。
STAX に関しては 有限会社スタックスのHomePage やファンによる STAX Unofficial Pageさんが参考になります。
特に、STAX Unofficial Page さんは社外のファンがやっているだけに手加減なしに微に入り細を穿って資料的価値も高いです。
耳孔に挿入する部分の交換可能なシリコーン樹脂チップはサイズが3種類用意してあります。
このドライバーには、導電体を蒸着した薄膜振動体、前後の電極の金属メッシュ薄板、周りのプラスティック・ケースと頼りない程の軽い素材ですが、音はきめ細かく、かつ外の音も構造上よく聞こえます。
音質的にはたいへんに満足しました。
実はこのイヤスピーカーは発表された時から注目していました。
かってFM-fan という雑誌でオーディオ評論家にして研究者、実践家の高城重躬氏(都立三田高校数学教諭、都立南高校校長、都立深沢高校校長を歴任)の連載していたエッセー「音の遍歴」に、STAX 社が高城氏の為に試作したインナーイヤ式イヤスピーカーの小さい写真と記事が載り、それを読んで羨ましくて堪らなかったのです。
ちょうどこのSR-001と同じくらいの円形の発音部からまっすぐなパイプが伸びて耳孔内に差し込むという過激なスタイルで、高城氏も万が一過大入力が加わったら、鼓膜を痛めると記しておいででした。
過激だけれど、使ってみたいものだと思っておりました。
と、思っておりましたら上記STAX Unofficial Page さんの SR-001試作機のページに、この試作機と思われる貴重なカラー画像が登録されました。
高城氏のエッセー「音の遍歴」はそのままのタイトルで共同通信社から1974年にFM選書のシリーズで単行本化されましたが、書庫の奥にしまい込んだままになっていました。この画像に触発されて、当時の記事を読み直したくなり書庫を発掘してようやくこの本を見つけました。
単行本240ページの「電話とヘッドフォン」の章の最後に『私の知っている限りで最高のヘッドフォンは(後略)』と、このヘッドフォンについて書かれていましたが、雑誌掲載時には載っていたこのヘッドフォンの画像はこの単行本には掲載されていませんでした。
FM-fan 誌上で見たのは粗い網点印刷の小さなモノクロ写真でしたが、確かにクリスタルイヤフォンを思わせるこのフォルムでした。
ところで、この本のこの文章の隣に『最近はマイクロ精機など他社からも優秀なコンデンサー型が出回りはじめた』と高城氏は記しておいでですが、現在に至ってもコンデンサーヘッドフォン型がマイナーなままなのは申し訳ない気もいたします。
なお、高城重躬氏はHiFi 再生の初期の時代から「原音再生」にこだわり、スピーカーは低音も含めて全てゴトーユニットのオールホーン型。そのドライバーユニットの開発にも協力し、当時日本にはなかった大型マグネットを得る為にスタッフがワーフデルだったかの英国製スピーカーをばらしてマグネットを取り出し、中に詰めてあった硫黄を取り除いたなどとの記事も工作魂を震わせたものでした。
同じく高城氏が開発に協力したSTAX のイヤスピーカーとゴトーユニットの高音用ドライバーユニットの性能競争のスリリングさを思い出すたびに、一介の民間人であった高城氏の日本のオーディオへの貢献の大きさに思い入ります。
退職金の全額を注ぎ込んでスタインウェイのフルコンサートグランドピアノを購入し、それを搬入してから部屋を新調したという、何よりもまず音楽を愛する人でした。ご自身も喜寿の記念にラヴェルの「水の戯れ」(難曲です)を弾きCD化した程の腕前だったとのことです。
1999年8月4日に永眠された記事を知った時には心から悔やみました。
高城重躬氏の功績についての資料と元ソプラノ歌手の奥様が今もお屋敷に保存しておられる高城システムの画像入り訪問記は参考になります。
この2つのリンクはいずれも「本と音楽のクロスオーバー情報サイト SMART」 さんのページ内のコンテンツです。
さらに、高城重躬氏のご自宅そのものを『高城重躬記念館』とし、そのオーディオ装置維持・運営を目的とした『高城重躬オーディオフォーラム』が2002年7月に発足していました。
ここに主旨と連絡先とが記載されていました。
SR-001の問題はこのアダプターです。
前面にはイヤスピーカーの接続コネクタと並んで電源スィッチ兼音量ボリューム、背面には電源アダプター接続コネクタ、側面にLine 入力接続コネクタという陣容で全てのケーブルを接続すると、ゲームマシン用のアップスキャンコンバーター「VGA デミロ」のごとき様相になります。
シンプルで優れたデザインの管球式イヤスピーカー専用アンプSRA-3S を作ったのと同じメーカーとは思えないダサさです。
だいたい、このLine 入力接続コネクタの位置ではメーカーが意図した(だから電池内蔵式)、屋外に持ち出しての使用の為にポケットに入れる訳にはいかないではありませんか。
2009年4月7日更新
イヤスピーカー接続ソケットや音量ボリュームツマミのある操作面を見ると、電池電圧が充分を示す緑のLED と電池電圧不足警告を示す赤LED とが並んでいます。
今なら1つの素子で緑・赤を発光させるLED もありますのでここを1つにまとめ、その分イヤスピーカー接続ソケットも右に寄せれば、左端にLine 入力接続コネクタを設けることもできそうです。
そうすれば、このアダプター側面には何も突起物は無くなり、扱いは随分と楽になるのではないかと考えます。
LED の位置だって何もここにこだわることはなく、音量ボリュームの0ポイントのところに移してもいいでしょうし、また発光ユニットは内部の別のところに置いてそこから光ケーブルを延ばして先端部を表面に露出させれば、入力接続コネクタを設ける自由度はさらに高まるのではないかと思いました。
ETYMOTIC RESEARCH ER-4S
STAX とも繋がりのあるウエルケンアライドの新井社長とビジネスマン同士の勉強会で知り合いになり、アメリカにこういうヘッドフォンがあると紹介されて1ケ月貸していただいて病みつきになったのが、このETYMOTIC RESEARCH 社(以下ER 社)のER-4S です。
本来は補聴器の専業メーカーで補聴器用LSI ではトップクラスのシェアですが、そこが唯一HiFi 用に作ったヘッドフォン(ER 社は「イヤフォン」と自称)がこれです。
ER-4S は通常のステレオ再生用、バイノーラル再生専用のER-4B もあります。
当時、ER 社は日本に販売代理店も持たず、そもそも日本で売る気もなかったとのことで、それならと新井社長は日本に代理店をと活動を始めたのですが、癌に冒され惜しくもお亡くなりになりました。
私は1ケ月貸していただいた後で我慢しきれずにアメリカのヘッドフォン専門ショップHeadRoomから個人輸入しました。
ショップとは言っても、ここは独自設計のマニアっぽいヘッドフォン専用アンプや旅行用ヘッドフォン・システム・バッグも製造販売しています。
現在は イーデンのような代理店も出来て気軽に購入できるようになりました。イーデンでの39,800円という価格ですが、私が個人輸入した時には税関から関税を請求されて総額4万円を越えました。もしかしたら、現在は本体を値下げしているのかもしれません。
持ち運び用の柔らかくて丈夫な起毛布ケースに入っていて、驚くほど小さな発音部の先に一見シリコーン樹脂に見えながら実際はウレタン製のチップが嵌め込んであります。
この3枚のヒレが耳孔に差し込まれた時に、鼓膜から外気までに3室の空気層を構成し23dB もの圧倒的な遮音特性を生みます。これは耳全体を覆ういわゆる「密閉型」のさらに上をゆきます。
外部雑音が大きいからヘッドフォンのボリュームを大きくしがちなのが普通ですが、そのバックグラウンド・ノイズが無くなるので小音量でも細かい音まで聞こえます。また鼓膜から振動板までの空気量も一般的インナーイア式ヘッドフォンより小さく空気の逃げもないので、鼓膜の直接駆動に近くなります。
(逆に言えば、まかり間違って大音量をかけてしまうと鼓膜が痛み、それこそ補聴器の世話になることになります)
その結果、このイヤフォンの周波数特性はアンプの出力のごときフラットになっています。かつ振動量も少なくて済むので歪みも低いです。
音質も繊細さと迫力を合わせ持ち、STAX SR-001 に迫る立派な音です。
通常のヘッドフォン端子で使用しますのでSR-001 よりこちらを多用するようになりました。
ウレタン製チップは汚れたら交換でき、またスポンジ式の耳孔チップにも交換できます。このスポンジ式チップを発音部に嵌めてから指で一旦押し潰してから耳孔に差し込むとゆっくりと元の形に膨らみ、耳道の形にピッタリとフィットします。
さすがに補聴器専業メーカーの発想です。
音の傾向の好みから私は白のチップを愛用しています。
なお下のテーブルクロスの布目の大きさから判断できるように、発音部はたいへん細く、特の先端の音道部はマッチの軸木なみです。
その先端はメッシュになっていて、ここがEar Wax で塞がったら交換用のメッシュ付きチップと取り替えます。
BANG&OLUFSEN A8
ER 社のER-4S はアダプター不要で普通に使え音質も素晴らしいのですが、そのケタ外れの遮音特性が問題になるシーンがあります。
これを使っている時には外の音が聞こえません。電話の音も聞こえなければ玄関のチャイムも家人の呼び声も聞こえません。
屋内ではそんなの贅沢な悩みと言えますが、屋外の使用では安全にかかわります。緊急アナウンスや警笛なども聞こえず、電車や飛行機内では機内放送も聞こえません。
もっと気軽に使えてよい音をと思っていたら、昔からLP レコードの再生の為にSP-12 カートリッジを使っていたBANG&OLUFSEN(以下B&O)から精密な作りの小型ヘッドフォンA8 が発表されました。
横浜駅そばのB&O 横浜ポートサイドで思いきって入手しました。B&O 製品一斉値上げの1日前のことでした。(笑)
硬質の革製収納パックに入っています。
デザインも素晴らしいし、耳にフィットさせる為のシャフトの長さの伸び縮みと発音部の回転、耳掛け部のヒンジの動きの精密でありながら生物的な滑らかさが見事です。
動きの自由度の高さのせいもあり、慣れないうちはうまく耳孔と発音部が一致しにくいこともありましたら、一旦正しく装着したらたとえジョギングをしても外れない確実さでホールドします。身体に接触する面積も多いので重さも意識しません。(もともと軽量ですし)
デザインの良さのゆえか「デザイン9割、音1割」としたり顔の評価をする人もいますが、どうも実際に音を聴いていないとしか思えません。
爽やかで癖がありません。細かい音まで繊細に聴かせますし、迫力もあります。ただ耳孔と発音部の接触次第で低音部の量感は多少変わります。
もっとも耳孔と多少ズレていてもオープンエアー型の音作りがなされていますので、低音がカラ振りになることはありません。
私はパソコン・ゲームのプレイというくだけた用途をはじめとして、現在最も常用しています。
発音部のアップです。シャフトから発音体を支えているのはアルミ板なのですが、デザインと研磨加工のマジックでアルミ板ではなくアルミブロックに見えます。
耳たぶの後ろに回り込む部分は柔らかくゴムで被覆されていますが、途中のアルミリングがアクセントのポイントになっています。
シルバーと黒というデザイン・コンセプトはヘッドフォン・ジャックの金属部が流行りの金メッキでない、というところにも現れているのだと思います。
本当に接触抵抗を減らすための金メッキは、かなり厚手でないと効果が薄いです。薄いメッキは使用中に剥がれてきてかえってまずいです。
マグネティック・ヘッドフォン専用アンプ
コンデンサー型ではないヘッドフォンを再生するためのアンプです。
誠文堂新光社のムック「オーディオクラフト・マガジン 5」に掲載された井上博文さんの「ヘッドフォンアンプ/BTL アンプアダプター」の製作記事を参考にしました。
なによりスピーカー駆動用パワーアンプの出力に抵抗を入れてパワーを制限させるのではなく、最初からヘッドフォンを駆動することを目指した設計思想が気に入ってしまったからです。
とどめが、かなめのオペアンプが民生オーディオ機器用のNE5532 (プラスチックパッケージ)の10 倍の価格だけれどノイズ特性が段違いの工業機器用OP-27(金属パッケージ)を使用する、ということでした。
記事での売り物の一つだったBTL アンプアダプター回路は不要なので搭載しておりません。
記事通りにつくってみましたが、雑音は全く感じられずしっかりとヘッドフォンを駆動してくれました。完全無調整ということもありがたいところです。
ちなみにアンプの上に載せてあるのは、大きさ比較のためのガチャポン人形です。
電源スイッチの上のエンブレムはメインパーツのオペアンプOP-27 のメーカーのアナログデバイセズのものです。
ほとんど製作記事通りの内部です。電源のコンデンサー出口にメインアンプ用に余っていた双信電機の4端子円筒形マイラーコンデンサーを入れて、更に電源からの高域パルスノイズの除去を考慮しました。パソコンのそばでも使うことを配慮したおまじない代わりです。
基板上のデカップリング用の佐賀三洋OSコンデンサーの紫の外皮が鮮やかです。(さらにOSコンデンサーはリード線がOFC になっている高級型を使いました)
・・・問題なのは、この製作記事は実体回路図と配線図双方について電解コンデンサーの極性表示のミスプリントが目茶苦茶に多かったということです。多過ぎてここで指摘するのはやめておきますが、この記事の指示通りに配線したら、電源投入直後に電解コンデンサーが爆発します。
(「爆発」はたとえではありません。文字通り内部の電解液が煮えて破裂するのです)
さすがに、次の「オーディオクラフト・マガジン 6」では巻末にこの記事の訂正とお詫びの記事が載りましたが・・・それはもう私がこのアンプを製作した後のことでした。(笑)
製作予定のかたはこちらの訂正記事の併読をお勧めします。
それともう1点、この製作記事は初心者を配慮して各半導体のピンの見方を載せてあるのですが、出力トランジスタの2SB649A と2SD669A の2つが記載されていません。実はこの2つは似た形で表と裏の見分けも慣れてないと分かりにくく、別にトランジスタ規格表などで確認することをお勧めします。
STAX SR-X
STAX のイヤースピーカーSR-3 を知人の家で初めて聴いて以来、憧れ続けてようやく手に入れた最初のイヤースピーカーです。専用アンプSRA-3S も同時に手に入れ、それ以来私の音楽鑑賞の際の標準機として、とても長い期間にわたって世話になりました。
途中で一度具合が悪くなった時に、雑司ヶ谷宣教師館にあったSTAX 本社に持っていって修理を受け付けてもらいました。
まるっきりの住宅地の中に佇む洋館に「これが、あのスタックスの本社?」と驚いたものです。その時に応対していただいた社長が、応接間に設置してあった長身の衝立のような当時のこの会社の最高級コンデンサー・スピーカーでフラメンコのレコードを聴かせてくださいました。
本当に紳士を思わせるかたで、洋館の応接間で奏でられる思い掛けない程パァンと張りのあるフラメンコギターの音に聴き入ったものです。
コンデンサー・スピーカーはもっと弱々しい音だと思っていたものですから本当に意外でした。
私の「洋館」への思い入れも、この時の体験が元だったと思います。
その社長さんも既に亡くなられました。
現在の有限会社スタックスは埼玉県入間郡三芳町に移りました。
ヘッドパットのビニール被膜がもうボロボロになったので、そろそろ取り替えようと思うのですが、まだ部品が残っているかなあ?
それにオーディアがらみでなく、また雑司ヶ谷宣教師館に行ってみたく思います。
STAX SR-Λ Professional
STAX がメルセデス・ベンツ社からの車の騒音をチェックするためのコンデンサーヘッドフォンの開発を受け、特注品を作り上げ、その結果大振幅がとれてこれまでの弱点だった低音が迫力が出せるようになったので、市販品としてリリースした機種です。
オーディオフェアで聴いてパワフルに変貌したこの再生音に驚き、SR-X でヘッドフォン遍歴はもうする必要がないとずっと思っていたのに、矢も盾も堪らずに手に入れてしまいました。
SR-X の繊細な再生音は受け継ぎながら、力強さが素晴らしいです。
現在、本格的に腰を据えて音楽を聴く時にはこれを常用しています。
STAX SRA-3S
STAX のイヤースピーカーSR-3 の時代の純正 専用アンプです。
出力管は6FQ7ですが、それ以外の増幅素子はトランジスタです。フォノイコライザーも内蔵していましたので、入手した当時はリアパネルのREC.OUT からの出力をメインアンプ(レベル・ボリューム付き)に繋いでのプリアンプ替わりにも使っていました。
SR-X と組んでとても長いこと使ってきましたが、6BX7 イヤースピーカー専用アンプを組み上げてからは第一線を退いて久しいです。
なにより前面パネルのデザインが無駄がなくて実に見事です。
内部は前後に長いプリント基板を垂直に立てて配置し、その上に出力管を立てています。
その部分を底面から光を当てて、上面パネルから撮りました。
出力管を囲む上下左右のパネル4面にはスリット(底面は大きな丸穴の連続)を設け、空冷に配慮したスマートな設計です。
リアパネルを締めるネジ頭は銅メッキ・・・ではなくて錆です。
手入れの悪さがモロに報いました。
入力端子板が、秋葉原ガード下で売っているものそのものです。おまけに取付け方もアマチュアっぽいです。
2列目の「COND.PU」とはSTAX 製コンデンサー・カートリッジの専用イコライザー・アンプからの出力を受けるものですが、要するにLine In です。
STAX 製コンデンサー・カートリッジは高周波型(RF型)のCP-X、エレクトレット型のCP-Y がありました。いつか手に入れたいと思っていたのですが、STAX 社本体が色々あり現在の新生STAX 社にはコンデンサー・カートリッジは製品にラインアップされていません。
LP を聴く需要の減少もありますが、それ以前にコンデンサー・カートリッジを組める職人さんがいなくなってしまったのだそうです。
6BX7 SRPP OTL 方式STAX イヤースピーカー専用アンプ
「D.I.Y. オーディオ」(芸文社 GEIBUN MOOKS 81 号 昭和57年)に掲載された森川忠勇さんが設計した真空管式コンデンサー・ヘッドフォン専用アンプです。
鈴蘭堂のアルミケースに組込み、普段は金属ボンネットを被せて使用しています。
STAX SR-Λ Professional は回路図(下に一部掲載)通りにV3 のプレート出力にC4(スプラグ ブラックビューティー)を通した音声出力を掛けています。STAX の通常型イヤースピーカーはこの記事中の提案をいただいて、C4 を通さずにV3 の上下のプレート出力550V を 固定極に掛けています。
前面の2つ並んだ接続コネクタの左側がProfessional でコネクタ中央の穴を赤いプラスティックを埋め込んで塞ぎ、うっかり通常型イヤースピーカーを接続することがないようにしてあります。
(通常型イヤースピーカーのコネクタは6本足、Professional 型は中央ピンのない5本足)
なお、シンプルな回路だけに個々の部品の品質の影響が大きいと考え一旦作った後で回路内の電解コンデンサーを全てルビコンBlack Gate に交換しました。その際にBlack Gate のメーカーのジェルマックスにアドヴァイスをもらい、電源部のチョークトランスを金属プレート抵抗に置き換えました。
電解コンデンサーの交換で音は繊細さを増しながらアタックに対しては迫力も増すというよい結果になりました。
「D.I.Y. オーディオ」はアンプの他にも江川三郎さんによるスピーカーやレコード・プレイヤーの自作記事が載っていて、上滑りでない面白い本でした。
レコード・プレイヤーの自作記事に至っては厚手のガラス板から丸くターンテーブルを切り出し周辺をダイヤモンドヤスリで削って真円にし、別の板ガラス上に重ねてその間に金魚のエアポンプで空気を送り込んで浮上させて糸ドライブで回転させ、かつターンテーブル・シートはテクニカの金属製真空吸着シートでレコードをがっちりホールドするという目まいのするような遊び心に満ちた記事でした。
出力真空管6BX7 はプッシュプル回路なのでむろんペアチューブです。購入したのは秋葉原デパート5Fの自作アンプ専門店の三栄無線です。店頭のその場でバルブ・チェッカーで特性の合った6BX7 を選別してペアを組んでくれました。
真空管の他、シャーシ、アルミ板、真鍮板などの部材、高品質の抵抗、コンデンサ、ソケット類などの部品、ラックスキットやここ独自の設計の真空管アンプや半導体アンプのキットも扱っていおり、製作上の疑問にも相談に乗ってくれる頼りになる店でしたが、その三栄無線は今では存在しません。
ところで、まず本自体がもう市場には流通していないとは思いますが、この「D.I.Y. オーディオ」のこのアンプの回路図には1点、ミスプリントがあります。
出力管V3 の上下のグリッドに繋がる抵抗R7,R8 の中点がV3 の上下のカソードに直結しています。
私が手で丸を書き加えた部分です。ここを繋いでしまうとSRPP 回路が構成されません。
出版社に文書で問い合わせたところ、ミスプリントと認めた回答が来ました。
ここを接続してはいけません。R7 とR8 の中点はGND へと落とします。
このムックは今でも充分に面白く、またこのアンプ自体もたいへんによいアンプであるだけに残念に思っていました。今や参考にする人はいないとは思いますが、この場でフォローさせていただきました。
2010年2月28日追記:
書斎のシステムでも高品位なヘッドフォン・リスニングがしたくなり、現在このアンプを書斎でSR-X 用に使用中です。
イヤスピーカーのコネクターの向きを正面に向けたいところですが、棚の奥行きが狭くてやむなく今はこの置き方です。何とか工夫したいところです。
SR−X はノーマル・バイアスなので、現在STAX から発売されているドライバー・アンプでは駆動は出来ず、皮肉なことに選択肢はこの自作アンプしか存在しない状況です。
STAX の旧モデルの愛用者の為に、森川さんが代表をつとめる(株)オーディオ専科にて、このアンプを現在の部品を使ってリファインしたキットとして発表してくれればとも思います。
このオーディオ専科ですが、このページを読んでくださったかたから貴重な情報をいただきました。
本社の方に500円分の切手を送ると、修正されたこのアンプのオリジナル回路図を送ってもらえるとのことでした。
お報せいただき、ありがとうございます。
書斎のシステムではイヤスピーカーSR-X を楽しめるようになりましたが、居間のシステムでイヤスピーカーSR-Λ Professional を駆動するドライバーを調達せねばなりません。
悩みましたが、中途半端な心残りのないようSTAX SRM-007tA を入手しました。
むろん、プロ・バイアス式イヤスピーカー専用です。
イヤスピーカー遍歴はSR-Λ Professional で終りと思っていましたが、知人に聴かせてもらったSR-007 の音に心が動き、将来的にそちらを導入する際に見合ったドライバーをとの思惑もありました。
いわゆる「真空管らしい暖かみのあるふっくらとした」などという面は毛筋ほどもない、すっきりとした透明な音です。
ER-4S=>ER-4B変換アダプタの製作
上で触れたETYMOTIC RESEARCH のER-4S はステレオ録音の再生用イヤフォンです。
ETYMOTIC RESEARCH にはこれとは別にER-4B というバイノーラル再生用の機種があり関心がありました。実はER-4S とER-4B は発音体自体は同じでケーブルの途中にある膨らんだ部分にイコラーザー回路が組み込まれていて音質決めをしています。
ですから、ケーブルを交換すればER-4S とER-4B の双方の音が楽しめるのですが、発音体とケーブルを接続する部分は頻繁な抜き差しをするようには作られていないとのことでした。
ところが「ヘッドホン紹介ページ」さんの「要チェックヘッドホンリスト」のページにER-4S とER-4B とを相互変換する簡易型の外付けアダプターの回路図が載っていました。
そのページの一番下「ER-4シリーズメモ ER-4B<=>ER-4S変換アダプタ」です。
ER-4S をER-4B に変換する回路はハイパスフィルターです。解説には、このアダプタを使うとイヤホンの能率が約6dB低下するとあります。
スピーカー駆動ケーブルの途中に抵抗成分を入れるのはややためらいを覚えますし、ダンピングファクターも低下しますが、オリジナルのER-4シリーズが既にケーブルの途中に抵抗やらコンデンサーやらを仕込んだイコラーザー回路を組み込んでいるので細かいことは気にしないことにしました。
回路は「ヘッドホン紹介ページ」さんに掲載されたもののままです。
部品は全部揃えても千円以下です。
ケースは小型回路用の蓋付きプラケース、標準ステレオプラグ、ステレオミニジャック、100Ωと3.3Ωの1/2W 型抵抗と0.47μFのポリエチレンコンデンサー各2個です。
プラケースの前後に穴を開け、標準ステレオプラグのスリーブを先端から5mm 程でカットしてナット替わりに使ってプラグをプラケースに取付け、ステレオミニジャックも付属のナットで反対側に取り付けます。
標準ステレオプラグとプラケースとの結合部分は抜き差しで力のかかる部分でもありますので、ケースを斜めに傾けておいてエポキシ樹脂接着剤をたっぷり流し込んでおきます。
このプラケースは接着剤の効きにくい材質のようですが、内側一杯に充填しておけばガタ付くことはないと思います。
配線が終了した様子です。
ステレオミニジャックの左右の隙間にはホットグルーを底から上まで充填しておきます。標準ステレオプラグの側の対策と同じくガタ付き止めです。
標準ステレオプラグ側もついでにホットグルーでたっぷりと覆っておきました。
プラケースの蓋をパチンと閉じれば完成です。
プラグの根本に充填した樹脂が効いて、プラグを持ってもグラグラした感じはありませんし、そこそこの重量も安っぽさを軽減してくれました。
ミニジャック側です。
聴いてみないことには話になりません。
さっそくヘッドフォン・アンプにこのアダプターを付けて鳴らしてみました。
確かに能率が6dB低下するだけあって、無使用時よりボリュームを上げなければなりません。
高域は「ヘッドホン紹介ページ」さんの紹介通り上昇していました。記事では「ブライトな音」と表現されていました。
実際のER-4B と聴き比べているわけではありませんが、高域の上昇は「やかましい」と感じる程ではなく、不快感はありませんでした。
好みによって使い分けしてみるつもりです。
バイノーラル録音ではどうしても音源に対してマイクが「オフ」になりがちなので、高域の低下分を補償するためにER-4B は開発されたものだと思います。
本物のバイノーラル録音の作品をこれから聴いて確認してみました。
定位などは変わらないように聞こえます。高域が上昇していることはステレオ・ソースと同じです。
或いは本物のER-4B では途中のイコライザーの部分で周波数特性だけではなく、左右の信号に対して何らかの位相操作を加えているのかも知れません。
クリーン電源の導入
2007年4月29日更新
STAX のイヤスピーカー用システムが、現時点のコンポーネントでやるべき手は打ち尽くしたと考えたので、限界突破を目指して思い切って光城精工のクリーン電源Mt1000 を導入いたしました。
光城精工のクリーン電源は STAX Unofficial PageさんでSTAX イヤスピーカーにとっての電源の重要さを語っておいでの際に紹介された電源メーカーとして注目していたところです。
出力は4つの交流100V 60Hz の電源コンセントがあります。
イヤスピーカー用自作真空管6BX7 OTL アンプ、金田式自作DC プリアンプ、SACD プレイヤーMarantz SA-8400 、Phono イコライザーアンプSHELTER Model 216 の4台の電源コードを接続しました。
高額な電源だけに効果がなかったらどうしようとドキドキものでしたが、暗雑音レベルが一挙に低下したおかげで楽音の一音一音がくっきりと浮き上がってきたことに感激です。
(逆に、これまで電源による音の濁りがここまであったのか、と思いました)
よく「アンプを上級機に変えたような」などと言う形容がありますが、今回の場合音色そのものは変わっていないので、むしろ「演奏会場が変わったような」と言う感じです。
さらに力感が増して聞こえるのは関東在住の私がずっと100V 電源周波数50Hz の環境に慣れていたのが60Hz になったので、電源のエネルギーが2割増になったこともあるのかもしれません。
これに困ったのは、イヤスピーカーでここまで改善されるなら、ラウドスピーカー系のシステムもクリーン電源を入れたら改善するのではないかと言う当然の欲です。
こちらはなまじマルチ・アンプをやっていて電源コードが5本もあるので、どうしようかと考え中です。
なおラウドスピーカー系での再生もソースであるアナログプレイヤーのPhono イコライザーアンプとSACD プレイヤーの電源が既にクリーン化されているため、音の濁りが大幅に減少しています。
私はイヤスピーカーで聴く時が最もシビアに聴き込みますので、出来るところまでやり尽してやろうと同じ1kW 出力でもMt1000 より安い機種もあったのですが、微小信号を扱うだけに少しでも高品位なものをと思い切って上位機種のこれを導入しました。
努力と工夫で音質向上はある点までは行くのですが、どうしても投資をして新しいものを導入しないと手に入らないものもあると言うのが実感です。
水道水でそれまでコロンビアを淹れていたのをブルーマウンテンを淹れてみてこりゃウマいと思っていたところ、井戸水で淹れてみたら基本から味が違うことに驚いた、という感じです。
A級増幅ヘッドフォン・アンプ・パーツセットの製作
2010年10月11日更新
左の画像をクリックして入る製作コンテンツは別のページ内に移動させました。ここからジャンプして読み終わってもここには戻れませんので御注意ください。
画像はこのヘッドフォンを正しく駆動するアンプが欲しいと思うきっかけちなったオーストリア製AKG-K701。
ヘッドフォン・スタンドは2010年10月10日の真空管オーディオ・フェアの山越木工房さんで、会場特価にて手に入れたもの。
背面にコードを引っ掛けて収納する取っ手のアイデアが斬新で実用的です。
同人サークル「瀬」
檸檬児
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'2010-10-11