ザクセンヴェルケGR3831 によるモノラル再生の追求
以前は「雑記」の中の1章だったのですが、容量が大きくなったのでページを独立させました。
2010年12月21日:
古いLPレコードやSP盤からの復刻CDがだいぶ集まってきてしまいました。
むろんステレオ配置したスピーカーでずっと聴いてきたのですが、これらのレコード盤が製作された当時は単一のスピーカーなり蓄音機なりを前提として音がつくられていたはずです。
モノラル時代の録音は単一のスピーカーで聴くべきではないかとはずっと思っていました。
その時代のスピーカーをモノラル配置で聴く機会がVINTAGE JOIN さんのイベントであったので、参加してみたところ随分と心を惹かれる鳴りっぷりのスピーカーがありましたので思い切って入手しました。
20cm 口径の東ドイツ製フィールドスピーカーのザクセンヴェルケGR3831 を更に古い1930年代(東西ドイツ分裂前です)の単板製エンクロジャー・・・というよりラジオスピーカーの箱に収めたものです。
GR3831 の励磁電源は80V 75mA規格で使用し、対応する外部電源も付けてもらいました。整流はジーメンス製セレンでコンデンサーインプット型です。
調べてみますとこのユニットは1935年から1955年に掛けて製造されたとありました。
最初、てっきり正面のしぼった布面が米国RCA Victor Lumiere No.1 のように襞状に折られた振動板であると勘違いしたのですが、こちらは当時の装飾的なクロスでした。若干の傷みはありますが手元でよく見ますと実に細かい模様の入った布です。
裏蓋を開けてみましたら薄いグリーン塗装のきれいなユニットです。
更にスピーカー・ユニットのエンクロジャーへの固定法は前面フレームのネジ孔を通してボルトでフロントバッフルに留めるのではなく、後方マグネット(電磁石)部分を堅木に固定し、その堅木をエンクロジャー底面に固定するやり方で、ユニットの前面フレームとフロントバッフル裏とは非接触です。
事実、その隙間にコピー用紙1枚を横からかるく差し込むことが出来ました。
フレームの孔から指で触ってみますと、支持はベークライト製の蝶ダンパーのようです。
堅木と電磁石ヨークとの固定は、ヨークに開いた穴に金具をボルト締めしその金具を堅木にネジ留めするものでした。
ヨークが見慣れた「ロ」の字型でなく「コ」の字型であるのは面白いですが、どんな理由からでしょうか。
磁気回路裏に"VEB Sachsenwerk" のシールが貼られています。
ラグ端子の外側2つがヴォイスコイル、内側2つがフィールドコイルです。
面白いのは画像下の方にあるようにフレームからヴォイスコイルー端子にリード線が接続され、フレームアースとなっている点です。
ヴォイスコイルから伸びるケーブルは自信満々の細さです。
モノラルアンプを都合しなければなりません。
2010年12月23日:
モノラル専用のアンプの手持ちはないので待機中のステレオアンプを使うことにしましたが、片チャンネルのみの使用ではいかにももったいなく思いました。
タムラのインターステージ・トランスTD-1 がありましたので、これを使ってBTL アダプターを製作しました。
BTL アダプターと言っても間に合わせです。タムラTD-1 を図のように結線し、入力したモノラル音声信号をOUT1 では同相出力、OUT2 では位相反転出力として取り出すだけのものです。
トランスにラグ板を立てて空中配線のままでは扱いにくいので100円ショップで買ったプラスチック箱に格納しました。
使用したメインアンプはキットを製作した三栄無線製SA-MOS A級増幅10W無帰還MOS-FET アンプです。三栄無線は秋葉原ラジオ会館4階の現在はアゾンレーベルショップのお人形達のショーケースになっている位置にあった、オーディオ部品とアンプのキット専門店でした。
音質は良いのですが発熱がなかなかのものでした。
BTL アダプターからの反転出力、非反転出力をメインアンプのRとLに入力し、出力端子のRとLの両プラス端子から出力を取り出します。
理屈の上ではこれでBTL 出力が得られますが、いきなり貴重なザクセンヴェルケGR3831 に接続するのは乱暴なので、テスト用スピーカーに繋いでBTL アンプとしての動作確認をしばらく行う予定です。
大丈夫となったら、改めて正式に接続します。
なお、このメインアンプの片チャンネルのみの使用でのGR3831 の試聴は既に行なっており、張りのある音色が楽しめましたが、なにしろ何十年も眠っていたスピーカーですので、まだ本調子とは思えません。
それでもヌヴーの弾くシベリウスのヴァイオリン協奏曲(SP盤からの復刻モノラルCD)は朗々と響き、ステレオ配置のスピーカーではないモノラル配置の芯のある音に改めてこの聴き方の魅力を覚えます。
計画変更しました。
UP103 改造の平面型テスト用スピーカーで長時間音楽を鳴らし異常がなくBTL 動作に安心しましたので、いよいよ本番のGR3831 に接続し試聴を開始しました。
音はちゃんと出たものの、気がつくとアンプのボンネットの上からうっすらと煙が昇っています。
慌てて電源を切って事なきを得ました。ボンネットを開いてチェックすると発煙箇所は電源トランスでした。
BTL 動作では駆動しているスピーカーのインピーダンスが実質的に半分になります。
テスト用スピーカーUP103 のヴォイスコイルのインピーダンスは8Ωですから、BTL 動作でのアンプの負荷は4Ωです。これは動作保証範囲内です。
ところがザクセンヴェルケGR3831 ヴォイスコイルのインピーダンスは4Ωです。BTL 動作時は2Ωに相当します。
おまけにA級増幅回路ですから常に最大出力時の電流が流れっぱなしになります。
電源トランスが悲鳴を上げたのでしょう。
BTL 化プランは諦め、もったいないですが片チャンネルを空けたまま通常の動作で聴くことにしました。
そのつもりでこのスピーカーを聴き込むと、細やかな音を反応良く再生するだけでなく、激しいクレッシェンドでも腰砕けになることもなく朗々とフォルテシモを再生してくれました。
この2枚の画像はエンクロージャー背面です。
元々は別の、おそらくはマグネティック型スピーカーが格納されていた箱とのことでした。
"RICHTER WRH"との銘板は、ドイツのラジオ製造業Wilhelm Richter, Hannover-Linden のことのようです。
この銘板の文字で検索して、ようやく正体らしいものが分かりました。
このエンクロージャーは1930年製のUnbekannt(不詳)に近いモデルらしいです。
検索した画像によるとUnbekannt (名称不明)に入っていたマグネティック型スピーカーは直径24cm で真紅のコーン紙を持つものだったようです。
ここまで分かってくると、エンクロージャー共々これから大事に使ってゆこうという気持ちがいや増します。
モノラル専用のスピーカーを格納する場所は試行錯誤の末に可動式のラックに収納することにしました。
頑丈なLuminous の縦横45cm のスチールラックを入手し、椅子に座った耳の高さにエンクロージャー中心が来るよう、棚の高さを合わせました。
最低部には重いVIP 製のレコード・クリーニング・マシンを格納して重心を低くしました。
また上段にはセガトイズの演奏可能な1/6サイズ自動ピアノを飾りました。クリーニング・マシンと自動ピアノはこれまで置き場所に困っていたものですが、ようやく音楽関係専用ラックに収納できたことも年末大掃除の趣旨に合わせての成果です。
ザクセンヴェルケ用フィールド電源はエンクロージャー背後の棚に収まりましたが、MOS-FET メインアンプは場所に困ってラック最上段に置きました。もっと小型のモノアンプならエンクロージャーと同じ棚に置けるのですが。
普段はこの背後の本棚とCD棚の間の幅50cm の隙間にスチールラックごと移動して収納していますので、部屋を狭くはしていません。
ザクセンヴェルケのエンクロージャーは底面コーナーに方解石のような平行四辺形の木製脚部があります。これを隙間だらけで共鳴しやすいスチールラックの上に置くのは安定上も音質上も抵抗があります。
贅沢にデュポンコーリアン板を敷いてその上に設置しました。
残る問題はスチールラックと床の間の移動用のキャスターです。総ナイロン樹脂製なのですが、音質的には再生時には硬質の固定脚になる方が良いのか、このままで良いのか、あるいは業務用というゴムタイヤのものが良いのか問題は残ります。
モノラル信号化
2011年1月29日:
モノラル・メインアンプを駆動するモノラル信号について考えてみました。
せっかく左右のアンプで増幅して来た音声信号を片チャンネルだけ取り出すのは、電力的に何としてももったいないです。
左右をミックスしてモノラル化してやれば、鑑賞時に同じ音量に調整しての再生なら同相の音楽信号はそのままですが、左右それぞれのチャンネルで発生したノイズ分は相対的に半分になるのではないかと考えました。
ミキシング・アンプを使うのは大げさですし、抵抗だけでのミキシングはエネルギーが減りそうで気が進みません。
ライントランスを使ってのミキシングを考えました。
上で失敗したトランス式BTL アダプターを流用しての入力・出力を逆に使い、かつ入力側となった片チャンネルが位相反転していたのを同相にハンダ付けし直すだけです。
BTL 化の時に失敗したとは言え、転んでもタダでは起きません。浅野総一郎翁の「九転十起」の精神です。(笑)
ちょっと見ただけではどこをどう変えたか分かりません。
端子7と8の接続が9枚上の画像とは逆になっています。
ただ鉄芯を共有しているだけに、IN1 からIN2 へ、IN2 からIN1 へと前段回路の出力側に向けて音声信号が互いに逆流しないかということが気にかかります。
これの参考にした佐久間式パワーアンプではLINE 入力のステレオ信号のモノラル化する際に、タムラのTN-347(一次側50k(12.5ksplit):二次側100k(25ksplit))を使い2つの音を1つにミキシングしています。(参考:無線と実験 1987年3月号「CDのための直熱管アンプ二題」)
それに対してこちらのTD-1 (一次側600(150split):二次側600(150split))ではどうなるかは、未知数です。
この点を他の機器で確認してからシステムに取り入れます。
追記:
問題がないことを確認しましたので、扱いやすいように100円ショップで入手した透明プラケースに穴開け加工をして収納しました。
さらに聴き慣れた音楽でステレオ信号のモノラル信号化をしましたが、聴感上おかしな音質バランスではありませんでした。
横に倒してホコリの侵入を避け、アクティブ・フェーダー後の出力先切替器の背後に置いて接続しました。
モノラル真空管アンプの入手
2011年6月12日:
A級増幅MOS-FET アンプの片チャンネル使用での再生音はそつなくきれいな音ですし、強音でも破綻することもありませんが、どうもピンとこないものがあります。
なによりA級アンプを片チャンネルのみ使用ということは、「浪費」にしか思えません。
VINTAGE JOIN さんがフィールド・スピーカー用の真空管モノラルアンプを開発中とのことでしたが、完成したとのことでさっそく聴きに行きました。
真空管1本のみ、出力は4Ωのみ、出力はたぶん2W ほどというドイツ製古典スピーカーを鳴らすことしか想定していないアンプです。
持参したモノラルCDでクナッパーツブッシュの指揮するウィンナワルツを聴きました。電源を投入した直後は音がお団子状態でいまいちかと思っていたのですが、30分ほど聴き続けてアンプとフィールド・コイルが温まってきてからは元気で分離の良い音が鳴るようになりました。
その音色が期待していた傾向のものでした。
50年前の古典録音だけではなく現代のギターのCDも聴かせてもらいましたが、鋭い立ち上がりが生々しいです。
真空管はECL11 という三極管と四極管との欧州製の複合管です。
各ピンの形や配置からして見慣れた米国、日本製の真空管とは異質です。
ソケットもピン配置もそうですが、くびれたピンに合った接点を持ち、これ単体で日本の市場に出廻っているものかどうか分かりません。
出力トランスも古いドイツ製とのことで、電源トランスと共に一度木製の単板に取り付けてからスペーサーで浮かせてアルミシャーシに取り付けています。
トランスからの振動回避の点から最初は木製板の上に全回路を組み付けて試作したのですが、信号系へのノイズの混入の点から金属シャーシの採用となったそうです。
整流回路はジーメンス製のセレン素子を採用していました。
モノラル再生専用のフィールド・スピーカーのラック最上段に設置し、休日の午後を良いことにいろいろなモノラル音源やステレオのトランス合成によるモノラル化音源を楽しみました。
半導体アンプでの再生音とはやはり音の響き方がずっと納得できるものとなりました。
音源を選ぶことは選びますが楽しく聴ける再生音となったことがなにより嬉しいです。
この真空管ECL11 が発表されたのが1939年7月とのことですが、 スピーカーのザクセンヴェルケGR3831 が1930年代から1950年代の製造で、音量調節がテレフンケンのアクティブフェーダーW690 mono と、すっかりドイツ・オーディオ・マニアじみたシステムになってしまいました。
これで1950年代録音のドイツ音楽を再生すると、悪ノリ感溢れることものぐるほしけれと清少納言ならブログ書きそうな気配となります。
課題としては、大音量再生時にスピーカーの振動がラック全体に伝わっていましたので、アンプへの振動の逆流の防止を考える必要があることです。
これはむしろアンプ側よりスピーカーの設置法を工夫することが正攻法と考えます。
あとは全般的な地震対策です。
同人サークル「瀬」
檸檬児
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'2011-8-18