作者から

 人間の頭の中にはいったい何がつまっているのでしょうか。ワードバスケットで遊んでいると、いつもそう思います。

 「スカイライナー」「有馬稲子」「ゴビ砂漠」「クジラ」「ライムライト」・・・こういった、一見何の関係もない言葉どもが、頭の中のどこか自分でもわからないところから、もよもよと涌いて出てくる。これはなかなか不思議な体験です。

 ワードバスケットを初めて遊んだ人の中には、お地蔵さんの如く固まってしまい、最初から最後までまったく何もできませんでした、なんて人が結構います(あなただけではありません、安心してください)。そういう人は、自分の頭の中にびっちりつまっている言葉の群れにフタをしちゃってるわけです(何だか妙な宗教みたいな言い方になってきたな)。ところが、このフタってのは意外に簡単にポコッとはずれるんですね。そこのお地蔵さん、だまされたと思ってもう2〜3回ワードバスケットをやってみましょう。あら不思議、ある時突然、自分でも知らなかった(というかふだん意識してなかった)言葉の有象無象がワラワラと出てくるようになります。本当です。これをかっこよくいうと「覚醒」です。普通にいうと「慣れ」ですが。

 ワードバスケットのファンなら誰しも経験したことがあるでしょうが、ここぞというとき自分の口から思ってもみなかった言葉が飛び出してくるのは、えもいわれぬ快感です。尾籠な例えで恐縮ですが、頑固な便秘が治ったとき、というのがかなり近いのではないでしょうか。

 しかし、ワードバスケットの効用は、自らの無意識を開発して超能力者になることではありません。宿便すっきり、健康な毎日、でもありません(そういう風に読めたとしたら、私の文章力かあなたの読解力のどちらか、あるいは両方に問題があります)。

 「みんなで遊ぶと楽しいよ」。これがワードバスケットの本懐です。

 「ゲーム脳」なんて駄法螺を、わたしゃこれっぱかりも信じちゃいませんが、それでも中学生の愚息が長いことモニターに向かってると「ちょいとこっちをお向き」みたいな気にはなります。試しに目の前でワードバスケットをぶらぶらさせてみたら、見事に食いついてきました。今ではTVゲームをする時間は以前の半分です・・・なんていうと、インチキな通信販売の「お客様の感謝の声」みたいになりますからやめましょう。忘れてください。

 ともかく、人間相手に遊ぶゲームは格別ですよってことです。もちろんワードバスケットだけではありません、いわゆるアナログ・ゲームの極楽世界というのは、とてもとても言い尽くせないものではありまして・・・ま、それはおいおいね。

小林 俊雄