2005年5月30日から6月6日まで、開催中の愛・地球博におけるニュージーランドナショナルデーに合わせて、同国海軍のANZAC級フリゲイト、テ・マナ HMNZS Te Mana F111と給油艦エンデヴァー HMNZS Endeavour A11が名古屋港に来航しました。6月4日に名古屋港ガーデン埠頭で開催された一般公開の折に見た、艦内外の各装備を紹介します。




ガーデン埠頭に停泊するテ・マナ。1番艦のテ・カハTe Kaha F77に続いて1996年6月28日、オーストラリア・ビクトリア州ウイリアムズタウンのテニックス・ディフェンスシステムズTenix defence systems PTY LTDにて起工、1997年5月10日進水、1999年12月10日就役したニュージーランド海軍最新のフリゲイトである。全長118m、幅14.8m、満載排水量3,600トン。主機はCODOG・MTU 12V 1163 TB83ディーゼル2基とLM2500ガスタービン1基、出力30,172馬力(内訳をクルーズ4,828馬力、ブースト33,600馬力とする資料あり)。可変ピッチプロペラ2軸、最大速力27ノット、乗員163名。母港はオークランド。なお艦名のテ・マナとは、先住民の言語であるマオリ語で「力」の意味。ちなみに1番艦のテ・カハは「武勇」の意味であるという。



国道1号を夜通し走って着いた名古屋港ガーデン埠頭、到着後駐車場がまだ開いていないので、とりあえず早速テ・マナとエンデヴァーを見に行く。エンデヴァーは軽荷状態か喫水が結構上がっている。万博が開催され経済も上向き、全国で唯一明るい話題が多く盛り上がる名古屋は万博ナショナルデーに合わせて来航する艦船が例年になく多く、フネ屋さんの間でも2005年は名古屋が熱い! 今回の来航もニュージーランドナショナルデーの関連行事として行われたもので、前日6月3日には乗組員有志、テ・カハ社中の皆さん(ウソ)とマオリ族による伝統舞踊がナショナルデーイベントとして万博会場で行われている。
その後昼前に名古屋港遊覧船に乗船して撮影した海上からのショット。エンデヴァーは韓国の現代重工業で建造され1988年4月就役した、現在ニュージーランド海軍唯一の給油艦で、満載排水量は12,390トン、搭載量はディーゼル燃料7,500トン、航空燃料(ガスタービン用も含まれる?)100トン。武装はCIWSなどを含めて一切ない。最大速力が13.5ノットと若干遅いため、テ・マナはここまで足を揃えてやってくるのは大変だったろう。
テ・マナの属するANZAC級はドイツ、ブローム・ウント・フォス社が輸出専用艦艇として開発したMEKO200形フリゲイトを基にオーストラリア・ニュージーランド両国が共同で開発・建造するもので、21世紀の両海軍を支える、そしてニュージーランドにおいては数少ない大型水上戦闘艦である。1996年5月、1番艦であるオーストラリア海軍のアンザックHMAS Anzac FFH-150を皮切りに、2005年までにオーストラリアが8隻、ニュージーランドが2隻を就役させた。なお、ニュージーランドでは退役するリアンダー級4隻をリプレースするために同数4隻を建造予定であったが、予算難で建造は2隻で終了している。

ANZAC級のプロジェクトは1987年に開始されたが、このクラスの建造のため両国でジョイント・プロジェクトを編成、モジュラー構成でカスタマーの要求に合わせた仕様が作れるMEKO型のメリットを生かし、船体の中央部から後部をウイリアムズタウンで、船体前部をオーストラリアのニューカッスルとニュージーランドのワンガレイで建造し、ウイリアムズタウンで組み合わされた。甲板上構造物はワンガレイで建造し、進水後取り付けられている。原設計は前述の通りMEKO形のため、主契約者はテニックス・ディフェンスだが、サブコントラクターとしてブローム・ウント・フォス、エンジンコントロースシステムを担当したシーメンス、戦闘システムを担当したセルシウス・テックなどの現地法人も建造を担当している。

こちらは参考映像として掲載する、2004年10月に晴海に来航したオーストラリア海軍のANZAC級2番艦、アルンタHMAS Arunta FFH-151。この時もホストシップのむらさめとメザシで着けてしまい、単体で撮ることはできなかったのだが、「むらさめ」型との大きさの対比は良くおわかり頂けると思う。むらさめは基準排水量4,400トンで一回り以上大きく、兵装も強力だが、備砲だけは76ミリと小さなANZAC級が装備する5インチ砲に負けてしまっている。オーストラリア海軍の艦の塗装はかなり緑がかったグレイで、ニュージーランドのものともまた異なっていることに注意。
前部に1門のみ搭載される5インチ砲、Mk45。アメリカ海軍のアーレイ・バーク級フライトIIA3番艦、ウインストン S.チャーチルUSS Winston S.Churchill以降が装備する、砲身長を延長し62口径とした最新モデルのMod4で、丸みを帯びたシールド形状の従来型54口径のMod2に比べ、ステルス性を意識した角張ったシールドを装備しているので容易に区別できる。ちなみに1番艦のテ・カハ、またオーストラリア海軍のANZAC級も前期建造艦はMod2を装備しており、上のアルンタが装備しているのもMod2である。
対空レーダーはAN/SPS-49(V)8ANZ。言わずと知れたアメリカ海軍の空母からフリゲイトまで大小あらゆる艦船が標準装備するLバンドの2次元対空捜索レーダーで、レイセオン製。「ANZ」というサフィックスがANZAC級用にモデファイされたモデルであることを伺わせる。
メインマストと、艦橋上に搭載されているMk45管制用セルシウス・テック(現在はサーブと合併)製9LV453射撃指揮レーダー。横には光学照準装置も備えている。なお艦全体の戦闘指揮システムも同名の9LV453Mk3となっており、CICのコンソールにもあらかたセルシウス・テックの名前が入っていた。シースパローの射撃指揮は別にMk73mod1(マスト中段頂部の裏側が見えている円盤)を備える。
ANZAC級はどのような経緯かわからないが、当初(そして現在に至るまで)5インチ砲、シースパロー、短魚雷とバルカン・ファランクスが武装のすべてで、対艦ミサイルのハープーン、対潜ロケットのアスロックなど水上打撃力の根幹となる攻撃ミサイル類を一切持っていない。予算節約のため当初最小限の装備でとりあえず上げた、というのがその主な理由らしいが、技術的には後からブロックごと追設できるMEKO型ならではのモジュラー構造ゆえ可能になったやり方で、後述するようにオーストラリア海軍ではスタンダードも追加装備する予定であったが、ニュージーランド海軍では将来的にもハープーン搭載と発達形シースパローへの換装位しか予定されておらず、世界的なレベルで見れば沿岸警備船に毛の生えたような武装しか持ち合わせていない。大型水上艦がすでに実質ANZAC級2隻であること等を勘案するに、同国の戦略的状況と防衛政策、そして同じオセアニアにあってオーストラリアとの違いが見えてくる。つまり、ニュージーランドに侵攻を企てる国などいないのでは?ということである。
上甲板中央にあるMk32Mod5三連装432ミリ短魚雷発射管。各チューブにMk46短魚雷を装備する。退役したリアンダー級からリサイクルしたものらしい。なお、ANZAC級はソナーとしてハルマウントのトムソン・シントラ製スフェリオンBを装備する。
艦内に足を踏み入れる。構造や色遣いが自衛艦とはまったく異なり、天井の配管や電線の取り回し等興味深い。これは上甲板レベル、士官室の並ぶ区画で、左右方向を結ぶ通路を右舷側から左舷側に見渡したところ。右の写真はこの廊下の途中にあった、2002年7月に統合任務部隊を編成した際に贈られた感謝状の隣にあった、イギリスのタイプ42級駆逐艦、ノッティンガムHMS Nottingham D91の写真とクルーからの寄せ書き。
上の写真の廊下を撮影した場所の所で曲がり、階段を上った所にあった01レベルの謎の部屋。一応配置図にはエレクトリック&コミュニケーション・コンテナルームとなっているが・・・MEKO型の特徴であるモジュラー構成を象徴するように、電気や通信機器がコンテナに収められてこのスペースに置かれており、間取り上デッドスペースとなってしまったのだろうか。見学時にはプロジェクターにビデオが流され、奥にはフィットネス用の器具が置かれ女性乗組員がレオタードのような格好でトレーニングをしていた。そんな所を写真に撮っていいのだろうか・・・護衛艦にも水線下にはこういうスペースがあるのかも知れないが、上甲板以上にあるのは珍しいと思われる。この写真は艦尾方向を見たところで、この奥は恐らく煙突の煙路、右側はガスタービンの吸気ダクトとなる。
上の写真の左方に見えるコンテナの手前を通り、右舷側の通路を艦首方向に進む。この写真の右側が上写真の左側のコンテナになる。これは電気関係の断流器やインバータ、安定化電源をまとめたコンテナのようで、シーメンス製。この奥がCIC(Combat Information Center)になる。配置図では単に「オペレーションズルーム」となっていたが・・・いずれにしろ、CIC(イギリス海軍流に言えばCDC)は艦の作戦中枢で、護衛艦などでは一般人の立ち入りなどは夢のまた夢だが、今回は順路に組み入れられていた。ただし室内は全面撮影禁止。
CICの奥、艦首側艦長室の区画に抜け、また急な階段を上がると、ブリッジに到着。ウイングを広く取っているせいか比較的狭く、はつゆき型より一回り小さい印象。ただし、配置人員もかなり少なくなっているようで、すでに海外の艦艇では常識のブリッジコントロールのため操舵・速力調節は各1人、あと航海とレーダー、見張りの5人で動かせそうな勢いである。一番奥に見えるのがエグゼクティブ・オフィサー(司令官)席。
右側を望む。右奥は艦長席、また右側写真はブリッジ後部の海図台や通信機器。中心にある白いパネルはスペリー社製のINSのコントロールパネルで、艦の前部と後部2つに独立して搭載しているようである。
左舷寄りの操舵・速力調節コンソール。こちらもシーメンス製であった。
操舵部のアップ。旧来の舵輪にこだわらない姿勢が気持ちいい・・・けど、気分出ないな〜。中央の円形の方位指示器はヘンシェル製。その上は舵角表示、右上はイルミネーションコントロール、右下は消磁装置、左は各種モニターランプ。操舵ハンドルの左側は自動操舵装置。
速力通信器と言うかスロットルのアップ。「エンジンテレグラフ・ブリッジコントロール・ユニット」と書かれている。前進10ノッチ、後進5ノッチ(っていうのだろうか)の目盛がある。こちらもシーメンス製。
左写真:海図台の上に吊されている装置類。左が衛星を使用したデジタル遭難信号、GMDSS送受信装置、右はGPS。

右写真:INSコントロールパネルの上部、表示部とテンキーのアップ。

左写真:後部壁面にある傾斜計。上が20度までの精密スケール、下が60度まで刻まれている。

右写真:艦長席の横窓下にあるインターコムの送受信器。左上に見えているのはワイパーのスイッチとツマミ。

左写真:窓上部の表示器類。左の黒いのは風向計、右隣がデジタル針路表示器、一番右は舵角表示器。

右写真:その右隣にあるマスタークロック。左からGMT、ローカルタイム(明石標準時)、タイムゾーンを表示中。

レーダーディスプレイの頭上にあるモニタでは後部ヘリ甲板の様子を見ることができる。画面に映っているのは・・・あれれ、懐かしい機体じゃないですか。
ウイングから艦首を望む。左側はエンデヴァー。テ・マナのブリッジ前、01レベルにはMk36Mod1・SRBOC(Super Rapid Blooming Offboard Chaff)チャフランチャーが両舷に装備されている。中央部は広いフラットなスペースが取られており、本来はここにもVLSが装備できそうなものだが・・・オーストラリア海軍のANZAC級は当初SEA1443フェイズ2WIPと呼ばれる能力向上計画でスタンダードを装備し長距離防空能力を持つことになっていたが(結局中止)、その際はここにVLSが仕込まれることになっていたのだろうか。ただし、当艦の艦内配置図では下にも別の目的の部屋が詰まっており、そのままでは追加装備は無理なようだが・・・それが改造前提の部屋割りなのか、ニュージーランド海軍は当初よりスタンダードを追加装備する予定がなかったかなのか、どちらかは不明。
煙突は2本がV字型に設けられている。「バニー・イアー」と呼ばれたTRUMP(Tribal class Updete and Modernization Project)改装前のカナダ国防軍海上部隊の駆逐艦、イロクォイ(トライバル)級を思い起こさせる形状だが、どういうメリットがあるのかわからないが、当級のタイプシップと言われているポルトガル海軍のヴァスコ・ダ・ガマ級をはじめMEKOシリーズは皆このV字煙突を採用している。ドイツ海軍のブランデンブルク級、韓国海軍のKDX-1・広開土大王級も角張っているがV字煙突。なお、左舷煙突のみ、前部半分はIRサプレッサー(高温の排気の温度を下げる赤外線低減装置)が仕込まれている。

上の写真は煙突の側面に取り付けられているニュージーランド軍の国籍マーク、国鳥のキウイ。

02レベル後部、煙突の後ろにあるMk41Mod5垂直発射システム。セルと呼ばれる1発分の発射ボックスが2×4で8個並んでいる。収容されているのはいわゆるNATOシースパローと呼ばれるRIM-7P短射程艦対空ミサイル。Mk41は現状8セルのみであるが(64や32セルが標準で、当艦のは最小単位。こんなミニVLS初めて見た)。隣には同じ分のスペースが空けられており、将来的には16セルを設けることができるようにはなっている。ただ、いずれにしてもこれが現状唯一のミサイルで、しかもミサイルの性質上最後の守りであり、攻撃ミサイルは皆無。16セルではアスロックを入れようにもセルの奪い合いになりそうである。オーストラリア海軍ではシースパローはESSM(Evolved Sea Sparrow Missile)と呼ばれる発達形への換装と、1セルに4発収容できるいわゆるクォドパック化が予定されてはいるが・・・
02レベル後部からVLSと煙突を見る。右はメインマスト後部の旗甲板で、SPS-49のマウント部との間に結構広い空間があるが、ここに将来はRGM-84ハープーン対艦ミサイルの4連装キャニスターランチャー、Mk141を2基装備する予定と言われている。
ホストシップとしてガーデン埠頭の東側、テ・マナと直角の角度に停泊していたDD123しらゆき(横須賀地方隊第21護衛隊・横須賀)。前の週の海上保安庁観閲式に海自派遣の受閲艦として参加しており、なかなか忙しい日々のようである。当初は一般公開は行わないとのことだったが、カールスクローナの時と同じく、現場判断?でか公開を行っていた。
エンデヴァーの艦橋と、テ・マナの02レベル後部に装備されたMk16Mod2バルカン・ファランクスCIWS(Close In Weapon System)を見る。ファランクスはオーストラリア海軍の方では現状設置されておらず、ニュージーランド海軍のANZAC級独自の装備。ちなみにエンデヴァーは今回は公開は行われなかった。
ANZAC級は後部にヘリ甲板を有し、対潜ヘリ1機の搭載能力を持つ。当艦が搭載するのはカマンSH-2Gシースプライト(シリアルNZ3601)。かつてLAMPS(Light Airbone Multi Purpose System)Mk1と呼ばれアメリカ海軍のフリゲイトに搭載されていた軽ヘリコプター、SH-2D/Fの改良型で、ANZAC級の就役に合わせて導入されたもの。本家アメリカ海軍では予備役からもすでに退役しているが、ニュージーランド海軍はまず5機の米海軍で使用された中古のF形を5機購入(うち1機は部品取り用)、その後2003年よりエンジンをT58からT700に換装した新造のG形を5機導入した。というわけでこの機体はバリバリの新造機、不勉強な管理人としてはシープラがまだ製造されていることに(頼めば作ってくれることに)、それよりカマン社がまだ存在していたことに驚き! なお、オーストラリア海軍はSH-2Gを11機の他に、S-70B2(H-60系列ヘリコプターのシコルスキー社民間形名称 ただし装備は米海軍のSH-60Bとほぼ同じ)も16機保有している。
エンジンが次世代のSH-60系列と同じT700となったG型はエンジンナセル、排気口周辺の形状がF型以前とはまったく異なる。ニュージーランド海軍のシープラの特徴としては、AGM-65マーベリック空対地ミサイルの運用能力を持つことが挙げられる。恐らくIIR(Imaging Infra Red・赤外映像誘導方式)で弾頭の小さいD形だと思われるが、このミサイルは本来地上目標用で、水上艦艇を狙うという用法はあまり聞いたことがない。ま、赤外映像ホーミングなのでもちろん可能だとは思うが・・・豪海軍の方は近年の艦載ヘリとしては一般的なノルウェー製のAGM-119ペンギンMk.2を搭載しており、わざわざマーベリックというこの選択はなかなか謎・・・ペンギンは高いらしいが。米海軍のシープラはマーベリック運用できたのだろうか。機首下面のタライのような円筒はAPS-143(V)3対水上レーダー、左前部の黒いものはマーベリックのターゲッティングを行うAAQ-27FLIR(Forward Looking Infra Red)。左側面には主兵装となるMk46短魚雷が置かれている。
左:巨大なエンデヴァーの後部艦橋構造物を横目に佇むSH-2G。

右:当艦の時鐘はヘリ甲板、格納庫の左舷扉横に取り付けられていた。

ヘリ格納庫内部。右写真、空の見えているファランクス横のハッチから階段を降りると左舷前部のギャラリーに出る。ここから格納庫内を見下ろし、再び階段を降りると格納庫甲板レベル。収容機数は1機のみで、広さはおおよそ「はつゆき」型と同じ位。この奥のどん詰まりの向こう側はVLSになる。
艦尾から見たところ。ヘリ甲板周りの構成は海自DDHに似た、第2甲板の上に板をかぶせたスタイルで、船型は長船首楼形に分類できる。この艦尾第2甲板、いわゆるクォーターデッキからはSLQ-25A曳航式対潜デコイを繰り出す。
すべての見学を終えて艦を降りたのは1420、予定公開時間をとっくに過ぎていたが、行列は短くなりつつもまだ見学客が乗艦を待っていた。途中大雨で身動きがとれず、公開が事実上中断となるアクシデントがあったという事情があるにせよ、杓子定規に予定時間で切り上げず、並んだ全員が見られるようにと配慮をしてくれたニュージーランド海軍の対応には好感が持てた。ナショナルデーの大任を終えたテ・マナとエンデヴァーは公開翌々日の6日、名古屋港を出港していった。


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