観閲部隊と受閲部隊が静々と行き交う間、東方の海上から密かに忍び寄る・・・というにはあまりに速い、2隻のフネあり。これが展示訓練第5群のミサイル艇、PG826「おおたか」(佐世保地方隊第3ミサイル艇隊・佐世保)とPG827「くまたか」(同)である。両艇は2003年3月に就役した、最新のミサイル艇である「はやぶさ」級の3・4番艇。基準排水量は200t、艦尾に国産の90式艦対艦誘導弾(SSM-1・斜めに立て掛けられた筒が発射機で、定数は4個だが写真では3つとなっている)を装備する。(24日)
「いかづち」の横で右360度ターンを決める「おおたか」。観閲艦「しらね」の前で2隻が円を描くように1回転した後、一度西方に向けて走り去り・・・(26日)
戻ってきた!2隻は40ノット(約74km/h)の高速で観閲本隊と付属部隊の間を追い抜いて行く。原速で航行する観閲部隊との速度差は実に約52km/h。(26日)
先ほど1回転を見せた「いかづち」の、今度は反対側を追い抜いてゆく「おおたか」。同艇が属するミサイル艇「はやぶさ」級はネームシップのPG824「はやぶさ」と2番艇のPG825「わかたか」が2002年3月に就役した最新の艇種で、海上保安庁が2001年に建造した高速特殊警備船「つるぎ」型と並んで、従来護衛艦などでは小回りが利かず難しかった(というか大きな「軍艦」が出ると問題が大きくなるので避けたい)某国の不審船への対処も念頭に置いて設計されている。こういったいわゆる非正規戦への対策策としては威嚇用などに小口径の銃器を装備するのが有効で、本級も艦橋の後部に12.7mm単装機銃を装備している。(26日)
お次は「くまたか」の登場。鋭いシアーで水をナイフのように切り取って行く。同級が前部に搭載するのはOTOメララ製の62口径76ミリコンパクト砲で、上の写真2枚、「やまぎり」と「いかづち」の前甲板に装備されているものと同じであるが、護衛艦のものが丸いシールドを持つのに対して、平面の板を組み合わせた複雑な形状となっている。これは電波を乱反射させるステルス性を意識した設計である。船型も全体的に今日的なステルスコンシャス構成。(24日)
我々の乗る「あさゆき」の真横、「きりしま」を追い抜いてゆく「くまたか」。ミサイル艇というのは発達学的には第二次大戦中からの駆潜艇、魚雷艇の系譜に属するが、海上自衛隊では1993年〜95年就役のハイドロフォイル形(水中翼船)ミサイル艇1号〜3号形が初めてで、本級は続いて半双胴型の船型で設計されたが不審船の高速力に対応するため通常の単胴型と改められ、さらに速力も当初予定の40ノットから44ノットへと引き上げられている。なお、海上自衛隊最高速の船舶はこのミサイル艇1号型で、46ノットとなっている。水中翼船型は速いことは速いが、特殊な船型のため使いづらいのか、アメリカ海軍も「ペガサス」級として6隻建造したが、1993年にはすべて退役している。なお、「はやぶさ」級は2004年にも2隻が竣工予定で、計6隻となる。(24日
ミサイル艇の次に現れたのは「くにさき」搭載のエアクッション形揚陸艇、LCAC(Landing Craft Air Cushion―エルキャックと読む)。(26日)
「エアクッション形」というのは、早い話がホバークラフトのことである。ホバークラフトが何のことかわからない方! ハイ、ホバークラフトというのは平らな船底の回りに袋のようにゴムのスカートを巻いて、船底に開けた穴に勢いよく空気を入れてスカートを膨らませ、海面から浮き上がって航行できる、船というか不思議な乗り物のことです。「おおすみ」級輸送艦の腹の中にはこれが2隻収容可能。アメリカ海軍では1984年より部隊配備が開始され、現在91隻が就役しているが、海上自衛隊では「おおすみ」の就役に合わせて1998年より導入され、同級輸送艦3隻に合わせてその搭載量分の6隻が就役している。もちろん用法は米海軍も海自でも大幅に異なるものではないが、米海軍が運用上独立した船舶としての籍を与えて部隊を編成しているのに対し、海自では各輸送艦の装備品扱いとなっており、写真のLA-05ともう1隻のLA-06は「くにさき」固有の装備となる。(26日)
「きりしま」を追い抜くLCAC。同艇はアメリカ・テクストロン社製、基準排水量87.2t・満載排水量は170t〜182tで、陸上自衛隊の90式主力戦車を1台、またPTMと呼ばれる人員輸送モジュール(プレハブのコンテナ)を用いることにより最大240名を輸送できる。写真ではゴムのスカートが膨らんでいるためそう見えないが、前後にランプを持ち車両をスルーで搭載することができる。1隻あたり5名のクルーで運用され、運転台(指令制御モジュール)は手前「LA-05」と書かれた上の部分。反対側にも乗員以外の人員が乗ることができる、シートを備えた人員装備モジュールを持つ。LCACは後部に推進用の大きなプロペラを持つため、航行中は甲板に出ることは禁止されている。(26日)
運転台の後部には出力4,000馬力のアブコライカミングTF40Bガスタービンエンジンを4基持ち、これで推進用プロペラとスカートに空気を送るリフトファンを駆動する。上部に2つ出ている排気口のような物は推力変更ノズルで、この排気口の向きを変えることによりカニのような横動きやバック、その場での旋回も可能。なお、船体はすべてアルミ合金製で無塗装のため銀色の地肌が輝いているが、これは金属疲労が生じやすいアルミ合金の、クラックが容易に発見できるようにするための措置である。(26日)
「しらね」を追い越すLCAC、2番手のLA-06。(24日)
艦船の展示に続いては航空部隊の第1群、第71航空隊のUS-1Aによる離着水のデモ。西方で待機していた機体は観閲部隊の後方より接近、徐々に高度を落として行く。後方に見えるのは受閲部隊―展示訓練部隊のDD103「ゆうだち」。展示部隊の各艦は展示が終わると右回りで直ちに反転、観閲部隊に同航する形になる。各艦は続々と踵を返して我々についてくるため、すでに3列の大艦隊が出来上がっている。(24日)
「きりしま」越しに降りてくるUS-1A。護衛艦の乗組員が普段見られるものでもないので、「きりしま」では甲板上はもちろん露天艦橋上でも見物。(24日)
着水。良好な低速性能を支える大面積のフラップがよくわかる。フラップの上面が黒ずんでいるが、これはBLC(Boundary Layer Control―境界層制御)と呼ばれる機構によるもの。エンジンの排気から抽出した高圧の空気をフラップ付け根のスリットから排出し、低速域での主翼上面を流れる空気流の剥離を防止、これにより揚力の低下を防ぐシステムである。実際同機の着陸を厚木のランウェイエンドで見ていると、歩いているかのような遅さに驚かされる。なお、同機の最高速度は265kt(約491km/h)。(24日)
着水後、一呼吸置いてエンジン音が高くなったと思うと、あっという間に離水。同機は前述のように戦前の97式大艇、二式大艇以来の技術を持つ新明和工業によって開発されたため、機体下面、着水時に縁となる部分の波返し加工など独自の機構がいろいろ採用されており、荒天下での離着水性能も良好で数々の海難事故での救助に活躍してきたが、観艦式などの展示ではちょっとの悪天候でもこの離着水は実施されないことも多く、事実前回2000年の観艦式本番では行われなかった。前回の本番では空自の戦闘機上空通過なども実施されず、予定通り行われるのは久しぶりのこと。(24日)
続いて航空機の展示第2群、P-3C2機による爆弾投下。機体は厚木航空基地の第51航空隊第511飛行隊・航空集団直轄)所属で、シリアルは5092・5096。(24日)
「きりしま」の横で投下した爆弾が爆発!。(24日
平成15年度観艦式、展示種目の最後を飾るのは護衛艦のフレア発射と並んでこれも初めての実施となるSH-60Jによるフレア発射。2機が隊列と並行に飛行しながら各60発ずつ発射して行く。護衛艦と同じく、航空機に対して向かってくる赤外線追尾の艦対空、空対空ミサイルを防御するために打ち出される囮の熱源で、現在イラクでC-130がポンポンと景気よく打っているもの。(24日)


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