2004年10月30日に開催された、東京湾海上交通センター、"東京マーチス"一般公開に参加してきました。



小雨にけぶる県立観音崎公園。対岸には内房富津や君津一帯までが望め、観光客で賑わう一帯の山の上に東京湾海上交通センターは建っている。

現在海上保安庁では「海の管制塔」とも呼べる海上交通センターを全国で東京湾、名古屋港、伊勢湾、大阪湾、備讃瀬戸、来島海峡、関門海峡の7カ所に設置しているが、その中でもっとも早く1977年に完成した東京湾海上交通センターは、TOKYOwan MARitime Traffic Information Systemの頭文字を取って「東京マーチス」のコールサインで呼ばれる(正確には同コールサインを指す場合は観音埼船舶通航信号所と称する)。


標高36mの山の上に建つ東京湾海上交通センターは塔頂部の高さ83.5m、一般の観光客には横に並ぶ観音埼灯台とよく間違えられるらしい。同センターが面している浦賀水道航路は右側通航の片側700m幅の細い航路で、一日700〜800隻もの船舶が行き交う航路は通過時刻の調整を行わないと大混乱になってしまう。このため、通航船舶をレーダーによって常時監視を行うほか、特に総トン数1万トン以上の船舶や危険物船については通過予定時刻の通報を義務づけ、通過順序の把握・調整を行っている。同センターではこのメイン業務の他にも東京湾内の全海面を管制上観音崎・本牧・浦安の3エリアに分け、湾内の当所と本牧、浦安、また木更津人工島(海ほたる)の4カ所に設置されている高性能レーダーにより航行する船舶を監視・管制しているほか、海面状況や各種情報・注意などについて国際VHFや定時ラジオ放送で情報提供、気象現況・巨大船入航予定のテレフォンサービス、FAXサービス、またホームページによる情報提供なども行っている。


公園入口の駐車場に車を停めて(レストハウスに隣接する第1・第2駐車場が便利 普通車は520円+美化協力金20円7・8月は820円+20円)山の上にある東京マーチスまでは結構急な上り坂を登っていく。コケも生えているし雨の時は滑りやすいのでかなりの注意が必要・・・しかもこんな看板まで・・・

ここがセンター2階のコントロールルーム。同センターで働く職員は約50名、シフトは2交替制で常時20人ほどが勤務に就いている。たくさんぶら下がっている東京湾周辺の海図に萌え〜。一番手前の物は海図番号W1062「東京湾中部」ですね。

飛行場の管制塔ほどには見晴らしは重要ではないとは思うが、一応窓の外には浦賀水道のパノラマが広がっているはず。見学時は雨で何も見えなかった。各所からの監視カメラの映像も大型ディスプレイで見ることができるが、こちらもほぼ視界ゼロ。

入口からすぐの見学用?廊下からガラス越しに見た室内で、写真の奥にレーダー運用卓コンソールが並んでいる。もっと近くで見ることもできるが、そちらは撮影禁止。コンソールは全部で8台あり、右手前に見える予備を除いた本卓7台が窓に面して前列5台・後列2台並んでいる。前列の5台が常時使用で、観音崎エリア2台・本牧エリア2台・浦安エリア1台を使用、後列の2台はトラフィックが輻輳する夕方(貨物船は夕方ギリギリまで荷役を行って出港するのでこの時間帯はラッシュとなる)に2人以上で監視する時などに使用する。

本運用の7台とは別の場所に設置されている予備コンソール。こちらには無線が装備されていないので、再生機能を利用しての各事例のデブリーフィングなどに使用しているとのこと。中心の大きなモニタがレーダー画面。管制官のシフトは前述のように2交替制だが、1人が連続して管制を行うのは最大おおよそ3時間。右上に見えているのが後述するAISのディスプレイである。

コンソールの横には浦賀水道航路通過予定の船舶が表示されるモニタがある。この画面には通過予定時刻をはじめコールサイン、IDナンバー、総トン数、船舶の種類、国籍、その他備考などの情報が表示される。あ〜軍艦来ね〜かな〜・・・見たところ全部民間船。

今回の一般公開一番の目玉が、初お目見えのAIS:Universal Ship-borne Automatic Identification System―自動船舶識別システム。同システムはSOLAS条約(nternational Convention for the Safety of Life at Sea,1974:1974年の海上における人命の安全のための国際条約)の改正により、陸上から船舶を安全かつ効率的に管制するため国際海事機関(IMO)によって導入が進められているもので、各船舶に搭載したGPSアンテナとVHF発信機により、船名、船舶の大きさ、針路・速度、現在位置情報などを伝送、管制センターや港湾事務所、さらに船舶相互間でも情報を共有することにより、位置を正確に把握し衝突等の事故が防止できるほか、将来的には到着時刻を港湾の荷役業者で事前に知ることによる荷役の効率化などにも活用できるシステムである。2002年7月1日よりすべての旅客船および国際航海に就航する300総トン以上・非国際航海に就航する500総トン以上の貨物船に装着が義務づけられた(2010年度まで経過措置)。東京湾周辺ではレーダーと同じく当所と本牧、浦安、勝浦、野島崎、伊豆大島、石廊崎の7カ所に地上局を設置し、東京湾内をはじめ房総沖、相模湾、伊豆半島沖(駿河湾を除く)の海域をカバーしているが、ここ東京マーチスでは装置を2003年度末に設置、2004年7月1日より運用が開始されている。

AISディスプレイの画面。「グラフィック画面」モードでレーダー画面と同じく東京湾が映し出されており、三角形のAIS搭載船舶を表すシンボルがID番号とともに表示されている。三角形の頂点には進行方向を表すヒゲがついており、舵の向きが変わるとこちらもベクトル成分で表記され、まるでゲーム感覚。各船のシンボルをクリックすると、ID番号、船名、コールサイン、船種、IMO登録番号、喫水、目的地、到着予定時刻、回頭率、航海状況、緯度・経度、速力、針路、船体長、船首方向などあらゆるデータが表示される。水域はドラッグまたは虫眼鏡ツールで拡大・縮小可能で、横浜港内や東京港の船舶の情報まで瞬時に知ることができる。AISはGPSアンテナを利用した通信システムのため、何らかの理由によりレーダーで船影を捉えられない場合でも正確な把握が可能であり、現在はレーダー管制卓のディスプレイにもAISでの情報を加味して表示しているようだ(逆にAISを搭載していない漁船や小型船舶などはこちらには表示されない)。

AIS画面の浦賀水道部分アップ。見えにくいが中ノ瀬航路北行の船舶にカーソルを合わせると、「J PIONNER」の船名とコールサインが出た。ちなみに、横須賀港に入出港する艦艇は浦賀水道航路の5番ブイを回り込んでそれるルートをとることになるが、これも夕刻のトラフィックが輻輳する時間帯は南航で合流するのは基本的に禁止で、一度浦賀水道航路の北端まで上がってから入ってもらうこともあるようだ。また、もちろん漁船やプレジャーボートはAISを搭載していないので、レーダーでは見えていてもこの画面には表示されない。プレジャーボートなどは無線も持っていないので、危険なルートを取っていたり航路内に入ってしまっても連絡・警告の手段が無く、あまりに目に余る場合は巡視艇を差し向ける手配をする(基本的に海上は航行船より操業中の漁船が優先)。また、潜水艦はIDを振っても見えなくなってしまうことも多く、特に気をつかうそうだ。


悪天候のため、本来予定されていた屋上開放は取りやめられるなど、若干寂しい内容の一般公開でしたが、観艦式等で緊迫する浦賀水道航路通過を体験している者としては、ここはぜひ見ておきたい所の一つ。観音崎散歩と合わせて訪れてみてはいかがでしょうか。ちなみに一般公開は例年7月20日の海の日近辺と、10月末の「観音崎フェスタ」に合わせた休日に行われます。


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