■我らがチームの目指すものは
 















図1:両陣営の全体配置
verdy、柏)


J2の試合も第6節となり、5節終了時点で第2位(しかも一試合少ない)のヴェルディは、ホーム味の素スタジアムに首位の柏レイソルを迎えた。柏といえば昨年の対戦にてJ2降格を決められた相手であり、また監督は昨年のヘッドコーチであった石崎氏である。昨年共にJ1だったという以外にも様々な因縁を持つ相手に対し、我らがヴェルディとしては絶対に負けるわけにはいかない試合である。

ヴェルディの先発陣はまだ微妙に固定されていない感があるものの、それでも故障者等のことを考えれば現時点においてこれがベストと思えるようなメンバーを揃えてきた。あえて云えば萩村や菅原、大橋など、ぜひとも先発で使って欲しい選手達がまだ戻ってきていないことには不満はあるものの、それに代わる選手達とて実力に大きな差があるわけではない。それに個人的に嬉しかったのは、長い間怪我で戦列を離れていた根占の名前が、ベンチメンバーの中に入っていたことである。かつての一時期には、あの天才MF小林大悟(現大宮)からスタメンを奪ってさえいたほどの逸材である、そんな彼がピッチに戻ってきてくれたことは、大いなる喜び以外の何ものでもない。一方の柏だが、ヴェルディと同様、J2降格の影響で多くの選手が別チームへと移籍してしまっていたものの、DFやFWを中心に多くの実力のある若手が残留しており、そういう意味では今のヴェルディよりもはるかに過去の資産を残している、現時点でのチームの熟成度は柏の方が上、と認めざるを得ない。





さて、試合の方を見ていこう。ヴェルディのフォーメーションは今節初めからずっと続けている4-4-2であり、また対戦相手の柏も4-4-2と、数の配置だけみればほぼ「ガッチリ四つ」という感じのする組み合わせであった(図1)。が、それはあくまで数の配置だけの問題であり、試合が始まってみれば、ヴェルディのやっている(やろうとしている)サッカーと、柏が見せたサッカーとは、そのスタイルにおいて全く異なるものであることがすぐに理解できた。

柏のサッカーを一言で云えば、「前線からの激しいプレスと密集度を上げたコンパクトな布陣」を特徴とするゾーンプレスサッカーである。相手よりも早くマークに向かい、相手よりも多くの人数で囲み、ボールを奪うと相手の布陣が整わないうちにゴール前までボールを運ぶ……もちろんそのサッカーを90分間続けるにはそれ相応の体力が必要とされるが、少なくとも試合序盤においては、ヴェルディはその柏の激しいサッカースタイルに我を失い、ボール処理にもたついている隙にとっとと先制点を奪われてしまった。




図2:実際の布陣



もう少し具体的に説明しよう。同じ4-4-2とはいえ、柏のそれは中盤のボランチ列と2列目が「横斜め」というより「縦斜め」に近い感じで並んでおり、横よりも縦方向に密度を上げていた(図2)。これは何よりトップから始まるプレッシングをより分厚くするためであり、また前線と中盤との間延びを防ぐ(=ボールを早く確実に前に運ぶ)ためでもある。すると、中盤を台形型で構成するヴェルディは、柏の高いDFラインも相まってか、特に中盤の場面場面において数的に不利な状況に追い込まれることが多くなってしまった。要するに「パスサッカー」を信条とするヴェルディの中盤のパス回しの最中に、ボールをインターセプトされる回数が多くなってしまったということだ。前半の序盤から半ばまでの劣勢は、こうした柏のゾーンプレスサッカーにヴェルディが対応しきれなかったことが原因である。

が、それも半分を過ぎると、ヴェルディの方としても柏のサッカーの「穴」らしきものが見えるようになってきた。柏のゾーンプレスは相当強力である、だがよくよく観察すれば、小さなゾーンに選手を密集させるためか、逆サイドおよびDFラインの裏にはかなりのスペースが空いているのがわかった。そこでヴェルディは、柏と同じ土俵、小さなスペースの中で戦うのをやめ、ダイナミックなサイドチェンジと隙を衝いた深い位置からのスルーパスを使って、柏の嫌がるところを攻め立て始めた。結果、柏はヴェルディに対し、効果的なプレスを次第次第にかけられなくなり、逆にヴェルディは速いワイドな攻めで柏から2点を奪うことに成功した。

だが、良かったのはここまでだった。

後半開始直後に藤田が二枚目のイエローカードで退場になると、途端、数的不利となったヴェルディは守備の連携がガタガタに崩れてしまい、青葉を入れて守備の建て直しを図ろうとしたものの、その前に1点を追加され、またその後の66分には逆転を許してしまう。その後ヴェルディは廣山と根占を投入し、何とか点を得ようと必至の反撃を試みるが、87分にはFWのバジーリオが退場となってしまい、ヴェルディとしては万事休すという羽目になってしまった。




図3:藤田退場後
(4-3-2)


確かに二人が退場という状況では逆転は極めて難しく、云ってしまえば審判運が悪かったと云ってもいい試合ではあったものの、私的にはそんな数的不利に陥った場面でのヴェルディの対応について、「?」と首を傾げざるを得ない点がないわけではなかった。まず藤田が退場した直後、ヴェルディはボランチの金澤を藤田の左SBの位置に移動させてその場をしのごうとしたのだが、そのため中盤が3枚、しかも大野のワンボランチ状態となってしまい、それにより中盤の守備と攻撃のバランスが微妙に狂ってしまった(図3)。ああいう場面では試合を落ち着かせるために、無理に攻撃にいこうとはせず、まずは我慢して守備から入るのがセオリーだと思うのだが、はっきりいってそれがまったくできていなかった。またその後のラモス監督の選手起用(廣山と根占の投入)にも疑問が残った。確かに同点→逆転され、どうしても点を入れなければならない状況ではあったと思う。だがフォーメーションについてはあくまで中盤三枚の4-3-2のままであり、そのため両SBの守備の負担が増し、結果、前半で効果的に機能していた「逆サイドへのダイナミックなチェンジ」がほとんどできなくなってしまったのだ。個人的にはあそこではFWを一枚削ってでも、中盤の枚数を3枚から4枚に戻す(4-4-1)べきではなかっただろうか。少なくともFWの一人は(大野に守備の負担が増した分だけ)若干引き気味でボールを落ち着かせる役目を果たして欲しかった。

いずれにせよこの退場以降のグダグダ感は、ヴェルディというチームがまだ熟成しきっておらず、(ある程度の経験が必要な)こうした緊急事態にスムーズに対応できないという面を露呈してしまった。確かに最初の頃に比べればずっとチームらしくなってきたヴェルディではあるが、他の強豪チームと比べればまだまだ約束事が少なすぎる。仕方がないといえば仕方がないのだけれども……。
















■自分達のスタイルを確立し、リアクションサッカーからの脱却を
 















2006年J2リーグ戦 第6節
東京V vs 柏レイソル

・期 日

2006年4月1日
・場 所

味の素スタジアム
・得 点

東京V 2-3 柏
・得点者

東京V●バジーリオ2/柏●北嶋、小林亮、ディエゴ


とにかく今現在のヴェルディのレベルは、批判を恐れずに云えば、「ようやくサッカーらしきものができるようになってきた」という程度のでものある。そんな状態にも関わらずこれまで勝利先行でこれたのは、正直云って幸運以外の何物でもない。だが今後の強豪との対戦となれば、そうそう幸運とも云ってはいられなくなる。特に試合の入り方の悪さと、危機的状況の時の対応の拙さは、公式戦を戦いながら徐々に鍛えていく程度では決して改善できないだろう。

もちろん徳島戦での後半や、今節前半の半分以降など、相手の特長を消し自分達が優位に立てるような「試合途中での的確な修正」については光るものがあり、このチームのポテンシャルの高さをそれなりに感じさせる。だがそれだけでは単に「相手のサッカーに合わせているだけ」「リアクションサッカー」のレベルでしかない。自分達がどんなサッカーをするのか、相手がどこであれ最初から最後まで貫けるベースとなる「スタイル」、それが今のヴェルディにはまだ確立されていないのだ。それにはある程度の先発メンバーの固定も必要だろうし、練習や実戦を通じて積み上げていくものも必要だろう。しかしながら48試合は少なくはないが決して多くもない。積み上げていくだけでは間に合わないことだってあるかもしれない。

それが難しいことはわかっている。それでも私は、試合を通してしか得られないもの以上の何か、近い未来に実現すべきチームの「未来予想図」を見せて欲しい、とどうしても思ってしまうのだ。

















2006/04/03
written by 蛙王