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ウエストワード紙 2007年6月7-13日号

新鮮な解釈

マイケル・パリア 文

間違いなく、池田誉はこの地域で誰もが認める最も興味深く重要な現代画家である。彼の作品は、デンバー・アート・ミュージアムの永久コレクションになっており、デンバー現代美術館など多くの場所で展覧されてきた。しかし、サンディ・カーソン画廊における個展は五年ぶりであり、これは何といっても素晴らしい特別なことである。そして、大当たりだ。

 

池田は1953年、日本の沖、与論島で生まれ、1970年代にアメリカに渡った。80年代にコロラド州ボルダー市に引越し、コロラド大学芸術学部で学士号と修士号を取得。1988年、ロサンジェルスに住んでいる頃、サンタフェ通りのアート地区の先駆者であった(今はなくなっている)アート・デパートメント画廊でデンバーにおける初個展を開催した。

アート・デパートメント画廊は、一風変わった場所で、美容室と画廊が一緒になっているのに、本格的な芸術愛好家のたまり場ともなっていた。事実、池田のデンバー・デビュー展の際、デンバー美術館(DAM)の創設者兼学芸員長のダイアン・バンダーリップが、彼の一作品をミュージアムのために、そして数点を自分自身のために購入している。また、ペイトン・ルール画廊の共同経営者であったシドニー・ペイトンとロビン・ルールもその場所に出入りしていたが、ロサンジェルスよりデンバーの方がずっと生活費も安いから、と池田にデンバーに引っ越してくるよう勧めた。池田はその誘いに乗り、1990年にコロラドに引っ越してきた。

DAMのバンダーリップ氏が彼の作品をすぐに認めたこともあり、池田はここのアート界に馴染むのが早かったと言う。「デンバーの芸術家がしていることはとても興味深い」と池田は言う。「でも、人々はそれに対して充分に感謝していないようだ。」 都市の持つ良さやアーチスト・コミュニティも良いが、山も良い。「山々には、刺激を受ける」と言う。「自然が近くにあり山歩きが好きなので、コロラドに住んでいるんです。」

このような感情は、池田の独特な抽象スタイルを見れば驚くことではない。「自分の絵を縦の風景だと見ています」-彼は、いつも海、大地、空にたとえる。その結果は、緻密で複雑な構成である。奇異な形と特有の華麗さにあふれた画面は、日本的とは言えない。しかし、海、大地、空の原点を縦に積み重ねる概念は、伝統的な掛け軸に見られる手法と言えないこともない。そして、もうひとつの彼の日本美への憧憬は花鳥風月の概念である。

サンディ・カーソン画廊の大半のスペースを使って展覧されている個展では、池田が今年の冬にネブラスカ州オマハ市のビーメス・現代アートセンターで居住創作活動をした際に創られた作品で構成されている。べミスのディレクター、マーク・マスオカ氏は、以前デンバーに住んでおり、過去数年、デンバーの数名の芸術家がビーメスで居住創作を行っている。マスオカ氏がデンバーに住んでいる間は、エマニュエル画廊の経営、デンバー現代美術ミュージアムの経営、そして短い間だったがサンディ・カーソン画廊の共同経営を行っており、その間は、「カーソン・マスオカ画廊」という名前になっていたが、池田の前の個展が行われたのはこの時期、2002年であった。

数ヶ月の間に多数の作品を創るというのは、普通なら驚くことではないが、池田にしては普通ではない。というのも、彼はじっくり念入りに一つの作品を仕上げるタイプであり、時には五年以上かけてひとつの作品に取り組むこともある。だから、このような短い期間で、スケッチや版画も入れて百点以上の作品を、一体どのように仕上げたのだろう。ただ、そうすることに決めたからだ。

「やりたいことは行く前から決まっていました」と池田は言う。「限られた期間でどのくらいの作品を仕上げることができるかを見てみたかった。それから、仕事というよりも遊びの感覚にしようと思いました。冬でしたし、修道院的な経験でした。自分の芸術に集中する時間と空間がありました。朝は、最低でも4,5枚の速いスケッチをし、次は水彩と版画、そして油(アクリル)絵に。絵を描くことに疲れたり行き詰ったりあいたら、水彩に戻る。ベミスは素晴らしい。どのアーチストも日々の雑事に追われることなく、ひたする自分のアートに集中できる機会を持つべきです。」

ひとつの作品が仕上がっていく猛烈な速さに拘らず、出来上がった作品は、どれも秀逸である。彼がいつも使う形は、奇異で不恰好であるが、彼なりの並べ方をしている。彼の絵の不思議さを増すのは、彼の明らかに賞賛すべき絵の具の不ぞろいな塗り方で、はっとするほどバランスを崩した配置である。一方は薄く塗られ、もう一方は盛り上がるほどの厚塗りである。

「Air in Sea」は、アクリル絵の具とワックス、油絵の具で描かれたキャンバスの作品であるが、池田は下部の中心に大胆な赤の自然発生的な形が描かれ、そこが碇となり右と左に分かれる。窮屈そうに締め付けられた形は、水を思わせる筆致の背景がある。その右上にはまた赤い色の器の影があり、その上と中央を越えた所に、有機的なイメージのでこぼこした一節がある。そして最後には、明るい色の卵形が上半分に浮かんでいるのが見える。「Air in Sea」を構成する要素はたくさんあり、その中のいくつかだけをここに述べたが、それらが、全く奇妙な視覚的経験とまでいかなくとも、特異さを創り出している。このいささかの絵画的なおかしさは、疑いなく素晴らしい。叙詩的であるが、暗い。あどけないが、非常に洗練されている。つまり、この作品の中でも多くのことが起こっているということだ。この個展の他の作品「White Breath」、「Mt. Be」、「Play」、そして縦5フィート横8フィートの大作「Telescope」の中でもそうである。

3月にベミスから戻ってからも、池田は多くの作品を作り続けており、毎日描き続けている。7月にはボルダーのデイリー・センターでもうひとつの個展も予定されており、そこでもここ数ヶ月の作品のみを展覧することになっているのだ。

画廊のディレクター、ウイリアム・ビエティは、よくこのような花形画家の出場をなぜ秋や冬ではなく夏にしたのかと聞かれると言う。彼は、「夏の間は、カリフォルニアや東海岸からも人がたくさん来ますので、質の良い個展にしたかったのです」と答えている。ビエティは、デンバーの芸術作品の値段は、全米の標準からすると桁外れに安い。この点から、良質の作品が売れていけば良いと思います。」 『これが五千ドルですか』と聞かれますが、皆、信じられないようですと言って、彼は笑う。

池田の個展を見て、ビエティは旅行客が芸術作品に支払う金額を思うのだろう。しかし、我々地元のアートファンこそ真に恩恵を受けるのだ。ぜひ、私の言うことを聞いて、池田誉展を見にサンディ・カーソン画廊に行って欲しい。


英訳:池田麻美子

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