『夕凪の街桜の国』(こうの史代、双葉社) 


 まだ学生だった時、初めて広島へ行った。学会を抜け出して、原爆資料館へと向かった。そこで見たものは哲学学徒だった僕を変えた。 

『夕凪の街桜の国』(こうの史代)を読む。戦争、原爆への怒り、死別の悲しみも終始、控えめに描かれるが読後に残る印象は強く、本を閉じても物語は終わらない。あとがきの言葉が注意を引いた。

「このオチのない物語は、三五頁で貴方の心に湧いたものによって、はじめて完結するものです」

 僕は過去と現代が交錯するこの物語を何度も読み返した。過去の出来事は過去のこととして完結はしない。他者の物語は他者の心の中で完結しない。

「これから貴方が豊かな人生を重ねるにつれ、この物語は激しい結末を与えられるのだと思います」

夕凪の街桜の国
こうの 史代
4575297445
 

Posted: 日 - 8月 21, 2005 at 05:58 午前          


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