今市子『百鬼夜行抄』(ソノラマコミック文庫) 


 ここに出てくる妖怪は愛すべき妖怪で、人との共存ができる。 

 柳田国男の『遠野物語』などをよく読んだので、実は興味のある話なのだが、公の場ではなかなか話せない。こんな話を信じているのですか、といわれそうだからである。実際のところ、信じているかというと、かなり懐疑的なのだが、怖いだけではなく、心に染みる話が多いので、夢中になって文庫になっている限りの作品を読んだ。このところ忙しくしていたので、続きが出ているかもしれない。文庫になっていない単行本を貸してくれた人があって嬉しかった。こんなコミック知らないと思うけど、と話し始めたら、知らないどころか読みこんでいて、話の花が咲いた。

「鬼の居処」という作品がある。主人公の律の祖父、飯島伶(りょう)の若き日の話である。伶のいとこの飯島武志はよく本屋で見かける吉池清乃に恋をする。武志は彼女にラブレターを書くが、伶に心を寄せていた清乃はその手紙を伶からのものだと思い込む。「和製シラノ・ド・ベルジュラックだよ俺は!」と武志は清乃が病気で亡くなった時に嘆く。彼女が好きだったのは自分ではなく、伶の方だった、と。「俺はそれでもいいと思っておまえのふりをしてた あの人は最後までおまえからの手紙だと信じて死んでったんだ」。彼女が本屋で見たのは伶だった。手紙は武志が書いたものだった。

 どの人物(妖怪)もよく描かれているので、読み進むうちに、親近感を覚えてしまう。律の父(の姿を借りた妖怪)である「青嵐」が僕には終始気になった。

百鬼夜行抄 (1)
今 市子
4257720891

 

Posted: 木 - 8月 11, 2005 at 02:40 午前          


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