2009年4月 倉久保の谷戸のコゲラ
良く晴れた日曜日、北鎌倉と山崎を結ぶ台峯越えの道は大勢の人でにぎわった。最近台峯の写真集が出たそうで、それの宣伝で取り上げられて知られるようになった大きな桜を見物に来た人も多かったのだろう。実際、それを目当てに来た男にぶしつけな質問をされ不愉快な気分を味わった。都市近郊の自然を守っていくためにはある程度知名度が必要だし、そのシンボルも必要となる。鎌倉の自然は貴重な動物が存在し得るほどの豊かさを残していなし、めぼしい植物は盗掘されつくしているから必然的に日本人の大好きな桜、それもある程度大きな樹となれば、それこそサクラの素質は十分なのだろう。
おろちざくらと呼ばれているその桜の存在は、以前写真を撮っている私の傍らで、団体を引き連れていたガイドが得々としゃべっているのを聞いてある程度は知っていたが、その桜を見るために遠くから訪れるほどの価値があるとは思えなかった。桜を愛でるならおそらくそれにふさわしい場所がもっと他にある。だいたい「おろち」なんて名前が付けられるほどの巨木が残り得る環境ではないのだ。そんなもののために何故私が不愉快な思いをしなければならないのだろう。ひっきりなしに往来する人々に辟易して、谷戸の池のほとりに立っていると、比較的近い場所でコゲラが細い枝をカスカスとたたき始めた。美しい春、生き物が動き始める春は人々が遊山を開始する春でもある。私が雨の休日を待つ理由は、雨に濡れた風景が美しいからばかりではなく、ごく当たり前に存在する生き物の営みをゆっくり眺めることに興味のない、外観的自然が好きな人々がやってこないからなのだと、改めて気づいた春の日だった。
(大きくのび始めた若葉の中、陽の光をはじく谷戸の池を背景に)
Posted: (日) - 4 5, 2009 at 10:43
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