| 国の憲法に当たる、私共の真宗大谷派の宗憲には、第八十二条に「すべての門徒は帰敬式を受け、宗門及び寺院、教会の護持興隆に努めなければならない」という条文があります。 帰敬式を受けて、法名を授かることは門徒の証です。決して法名は死者に与えられる名前ではありません。 しかし、この法名は死後の名前だという認識は、厄介なことに今日の世間の根強い常識になってしまいました。従って多くの人たちは帰敬式というものに対して馴染みが薄いようです。 ところが、今年の二月十七日に、花坂町の越田紀雄・美代子夫妻がご自宅で帰敬式を受けられました。紀雄さんは二十年前に脳出血で倒れられて以来、ずっと寝たきりでした。お二人はかねてから機会があれば、帰敬式を受けたいと思いつつも、寺まで出向けないものですから、歯がゆい思いをなさっておられたそうです。しかし、どうしても諦めきれずその思いを同町の花市一男さんに相談したところ、早速その念願が叶うことになりました。それも、夫婦揃って受けられることに。 帰敬式は二・三十分程のものですが、お二人は終始真剣な面持ちで、時折、余程胸が一杯になつたのか、涙を流しながら受けておられましたので、私までそれを見て感動してしまいました。式後、奥さんが「うちの人はこのような体ですが、私には大切な人なんです。私一人だけでお寺に帰敬式を受に行く訳にはいかないんです」とおっしやって、私はその言葉を聞いて、また胸がつまる思いでした。 真宗では、帰敬式は報恩講と同様事な重い仏事です。帰敬式は誰でも、その人の境遇に応じて、いつ、どこでもけられます。ただし、その人本人の純粋な意志でなくてはいけません。 (本光寺 住職 多田眞) |