はじめに

 インターネットの登場は、従来のマス・コミュニケーションの一方向的な伝達に代わる双方向的なコミュニケーションを可能にした。従来のメディアでは発言するのが困難だった個人にも情報発信が可能となったのだ。しかし、インターネット利用者の多くは情報発信を積極的に行うわけではなく、情報の受け手にとどまっている。このような情報発信をおこなわない利用者はROM(Read Only Member)と呼ばれてきた。
 現在のCMC(Computer Mediated Communication)研究では、個人の情報発信とその問題についての議論が中心であり、情報受信行動についてはまだ充分になされているとはいえない。さらに議論の多くは、ROMをインターネットの発展を阻害するものとしてとりあげるという一面的で否定的な傾向がみられる。
 このような傾向の背景には、情報発信の手段が与えられているにもかかわらず、それを有効に利用しない利用者へのCMC研究者のいらだちが感じられなくもない。だが、それは果たして的を射たものなのだろうか。たとえインターネットという技術が双方向的なコミュニケーションを可能にするものであっても、それが実際に社会のなかで機能しなければ何の意味ももちえない。メディア技術が社会を決定するのではなく、メディア利用者の日常的実践のなかでメディアの機能は規定されていくからである。辻(1997)によれば、ラジオは当初ワイヤレスとよばれ、双方向的なコミュニケーションが可能なメディアであった。しかし、利用者のニーズにより、双方向機能はなくなり、受信専用のものとなったという。また土橋(1998)は「メディアが日常生活へ浸透するとき、メディアはその技術特性にも、支配的な言説が語る『あるべき姿』にも還元できない、日常的な使用の中で生じる『意味』を帯びていく」と考え、「使用者の日常的実践において、常に中心的な位置を占める非功利的なメディア利用」に注目することを説いている。
 本論文では受け手の実態に基づきながら、CMCの先行研究を批判的に検討していく。

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→氈@CMC研究の問題点

目 次

はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

氈@CMC研究の問題点
   1.「能動性」概念の多次元性とその要因・・・・・・・・・・・・・2
   2.CMC研究と「テクノロジーの有効活用」という言説・・・・・・・3
   3.池田らの態度の矛盾・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
  
 CMC研究の原型としての80年代若者論
   1.情報新人類論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
   2.情報新人類論への疑問・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
   3.情報新人類論からおたく論へ・・・・・・・・・・・・・・・・・8

。 CMC研究とは何だったのか
   1.CMC研究の描くインターネット上のコミュニケーション・・・・・9
   2.理念型としての情報縁・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
   3.受信者優位のコミュニケーションのひろがり・・・・・・・・・・12

「 結び:「情報発信論」へ向けて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13

参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15

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