『藤沢周平の世界展』カタログが届く

 注文していた『藤沢周平の世界展』カタログが世田谷文学館から届きました。図版が盛りだくさん。決して安くはないけれど(1,200円+送料)、納得の一冊です。
 とりわけ興味深いのが「『蝉しぐれ』最終回原稿翻刻」。過日の朝日新聞でも触れられていましたが、新聞連載時の原稿と、後日加筆され単行本化された際の原稿はかなり異なっています。まさに渾身の加筆。文四郎とお福の「いのち」が激しくそしてはかなくぶつかり合うラストシーンは、この加筆の賜物だったのですね。
 さてまた「小説の周辺/音楽」には、晩年の彼がスティービー・ワンダーの「心の愛(I Just Called to Say I Love You)」を好んで聞いていたとあり、ミーハーっぽいけどiTMSでさっそくダウンロードしました。──あ、この曲だったのネ。確かに伸びやかで良い曲ですよ。

鎌田實さんの「おやじのせなか」

 25日付の朝日新聞・教育欄「おやじのせなか」は鎌田實(諏訪中央病院名誉院長)さん。良い話でした。
 30代半ばで、両親が生みの親ではないことを知った鎌田さん。進学校に進み、始めは経済的な事情もあってか医学部への進学を渋っていた「おやじ」も結局折れ、最後にはこう言ってくれたそうです。「弱い人、貧しい人がどんな気持ちで医者にかかるか。それを忘れるな」と。

 信州の地域医療。ベラルーシやイラクの医療支援に取り組む中で、僕の背骨には常にこの言葉があります。


 鎌田さんは、父の生前、くだんの事情を知らないふりで通したそうですが、成功者だったらしい実父の墓を訪れたことに触れながら、「でも僕は、貧しくても運命から逃げず、誠実に生きた父に育てられて良かった」と語っています。
 おやじの背中が息子の背骨になる……。しみじみと良い話です。

『蝉しぐれ』をダウンロード

 藤沢周平の『蝉しぐれ』が電子ブックになりました。電子文庫パブリの文藝春秋のページからダウンロードすることができます。
 嬉しくなって、ついダウンロード。『蝉しぐれ』は二度、読んだかな。もちろん本は持っているので、今さらダウンロードする必要もないのだけれど、彼の作品としては初めての電子ブック化ということもあって、まあ「記念ダウンロード」ですね。
 パソコンに入ってるって事は、いつでも好きなときに好きな部分を読めるって事です。でも、藤沢作品は一度読み始めるとやめるのが難しくなるし、仕事の合間に読むなんて、現実的ではないかもしれません。
 そして世田谷文学館では、「
藤沢周平の世界展」を開催中だとか。新聞で読みましたが、この展示で明らかになった「蝉しぐれ」のヒロイン・ふくの命名にまつわるエピソード、そしてラストの渾身の加筆に関する既述はとても興味深かったですね。

Stay Hungry. Stay Foolish.

 アエラ('05.9.19)に、Appleのスティーブ・ジョブズCEOが今年の6月、米スタンフォード大学の卒業式に招かれた行った祝賀スピーチの内容が、抄訳で掲載されていました。まるでロックスターでも登場したかのように歓迎されたと、ぼくも何かで読んだことがありますが、内容も実に感動的です。
 いくつかのホームページには全訳も掲載されています。たとえば
PLANet blog.。スタンフォード大学のHPでは英語の全文ビデオも公開されています。
 「点を結びつけること」、「愛と喪失について」、「死について」語った後、最後にスティーブはスピーチをこう締めくくったそうです。

Stay Hungry. Stay Foolish.

右傾化

 日本がますます右傾化する。ヒステリックなナショナリズムが跋扈する。……田中真紀子さんと同じような感想を持ちました。
 郵政民営化ですべてが覆われてしまった「2005年衆議院選挙」。本来なら反発するはずの人たちのエネルギーも、「公務員憎し」に収斂されてしまったかのようです。単純すぎるよ、政治家も国民も。ツケは確実に回ってくるはずなんだが。

読み比べ

 今日の朝日新聞「読書」欄に、星の王子さま読み比べの記事が出ていました。ぼくが購入したのは池澤夏樹訳『星の王子さま』。文庫本ですけどね。そして今日、本屋さんで倉橋由美子訳『Le Petit Prince 新訳 星の王子さま』を立ち読み。従来の内藤濯訳を現代風にリフレッシュした印象。違和感はないけれど、物足りない気も。
 山崎庸一郎訳の『小さな王子さま』は、ぼくの立ち寄った本屋さんでは見つかりませんでした。よく探せばあったのかもしれないけど、最近人混みが苦手になってしまってね。長居は無用……なんです。まあ、それに、彼の訳したサン・テグジュペリの選集は持っているし、全部ではないけど読んでもいるので、だいたい想像はつきます。文学、あるいは詩としての風味が、失われていないかどうか。
 記事ではどれが一番という書き方はしていません。それこそ好き好きなんだろうけれど、「この作品の奥底に流れる詩的な響きに着目、言葉をスリムにしてリズム感を出した」池澤訳に、ぼくは一票ですね。

「さとうきび畑」が聴こえる

 ラジオから、ちあきなおみさんの「さとうきび畑」が聴こえてきて、感激しました。待っていましたから、再放送を。
 「さとうきび畑」は今や誰もが知る名曲ですが、この曲にはやはり、ちあきさんの乾いた歌声がふさわしいのです。
 ここ数年あまりさえないNHK「みんなのうた」。でもこの番組には、もう望んでも得られないような宝物がいっぱいあります。

聴く力

 聴く力   茨木のり子

ひとのこころの湖水
その深浅に
立ちどまり耳澄ます
ということがない

風の音に驚いたり
鳥の声に惚けたり
ひとり耳そばだてる
そんなしぐさからも遠ざかるばかり

小鳥の会話がわかったせいで
古い樹木の難儀を救い
きれいな娘の病気まで直した民話
「聴耳頭巾」を持っていた うからやから

その末裔は我がことのみに無我夢中
舌ばかりほの赤くくるくると空転し
どう言いくるめようか
どう圧倒してやろうか

だが
どうして言葉たり得よう
他のものを じっと
受けとめる力がなければ

「Google マップ」を楽しむ

 「Google マップ」が便利。データそのものはMapFanやMapionより古いようだけれど、なにより使い勝手が良いですね。単純明快で動作がすばやいところはさすがGoogleです。
 Macの場合なら「Google Maps widget」も出ているのでなおさら便利。最新のOS(10.4、Tigar)でしか使えない機能だが、わざわざブラウザを立ち上げてサイトにアクセスする必要がないので、思い立ったとき、すぐに調べることができます。

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 また最近は「アドレスブック」のプラグインも出て、標準添付のアプリケーション「アドレスブック」から直接マップが開けるようになりました。これがまた楽しいんですよ。もちろん実用にもなるし、また、知人の住んでいるところがどんなところなのかをぼんやりと眺めているだけでも十分に楽しい。東京都下なら衛星写真も見ることができます。

星の王子さま

 キツネはただ者ではないと前々から思っていましたが、彼の叫びがあれほど痛切に響くとは! 翻訳の力ですね。

「お願いだ……おれを飼い慣らしてくれ!」


 飼い慣らすとは、絆を作ること。でもそれは、悲しいことでもある。別れの日。

「ああ! ……きっとおれは泣くよ」 ……「じゃあ、きみは損をしたんだ!」「おれは小麦畑の色の分だけ得をしたよ」とキツネは言った。


なぜって、小麦なんかキツネには無用のものだけれど、「小麦は金色だから、おれは小麦を見るときみを思い出すようになる。小麦畑を渡る風を聞くのが好きになる……」。
 訳者の池澤夏樹さんは、『星の王子さま』(集英社文庫)の巻末にこう書いています。

人はまずもって大地を耕すものである。「王子さま」はバラの世話を通じてバラを愛するようになる。すべてはこの働きかけから始まる。この自然への積極的な姿勢をこそキツネは「飼い慣らす」と呼ぶのだ。


 鈍感なぼくにも少し、星の王子さまの秘密が分かりかけてきたようです。