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Home>ウォッチング最新号>バックナンバー一覧>2002年7月9日号
山の"ゴキブリ"カメラマン

 「なぜ山に登るのか」と問われて「そこに山があるから」と答える人はまずいない。
「山頂に立ったときの気分がなんともいえないから」とか「高山植物が見たいから」とか「百名山のひとつだから」とか、たいてい具体的な理由がある。十人十色の山の楽しみかたがあっていいし、他人の趣味にケチをつける気はさらさらないが、山に登る人たちのあいだでゴキブリのごとく忌み嫌われている"種族"がひとつある。それが「カメラマン」だ。

 それほどまでに嫌われる理由は行儀の悪さが目に余るからだ。目的の花を撮るために、足下の植物を踏みつぶしても平気だし、登山道上に三脚を立てて登山者の通行をさえぎる。立ち入り禁止のロープなどおかまいなしに植物帯に侵入する。行状の悪さを咎められると"逆切れ"して食ってかかる。‥‥など等まともな大人の振る舞いではない。

 筆者も写真は好きで以前から撮ってきたのだが、近頃はカメラや三脚はザックのなかに入れ、さも写真などとりませんよという顔をして山を歩くようになった。カメラマンだと思われたくないからだ。それほどまでにカメラマンは嫌われ軽蔑されている。

 彼ら/彼女らの行動のなかでいちばん問題なのが、植物の踏みつけだ。写真の入門書に「被写体にできるだけ近づいて」「一歩前へ踏み込んで」 撮れと書かれていたりするので忠実に従っているのだろうか?最近はズームレンズが一般的なので、それほど近づかなくても撮れると思うのだが……。

 「高山植物を踏んではならない」などと雑誌や著書に書いていながら、現場では植物などおかまいなしに写真を撮りまくる"プロ"カメラマンは最悪の例だろう。職業倫理以前の人間性に問題がある。踏みつけられる側から見れば、犯人がプロであろうがアマチュアであろうが、下手な写真一枚のために痛めつけられることに変わりはない。ましてやプロとして"自然"で飯を食わせていただいている身であればこそ、自然にたいするダメージは最小限に抑えければならない。そんなことを考える脳ミソさえないという意味でもゴキブリ以下の存在と見なしていい。

 ゴキブリは「一匹見つけたらその数十倍はいる」のが定説だが、カメラマンも同じ時期に同じ場所に大量発生する。開花期や紅葉の時期に集中的に発生し、百花繚乱の花畑や、雑誌に紹介された"。定番構図"の場所に群がる。それ以外の時期や場所にはひかくてき少ない。"巨匠"や"大家"が撮った定番構図をまねして撮るだけのカメラマンが多いからだろう。

 彼ら/彼女らをけして写真家と呼ばないのは、プロ・アマを問わず、独創性がなによりも重視される芸術家としての写真家とはちがい、カメラマンの行動は他人と同じモノ(写真)を欲しがるだけの非独創的行為だからだ。ガイドブックに書いてある観光スポットをなぞるだけの観光旅行と似ている。同じ被写体を永続的に撮り続けるのであれば、記録としての意味をもつのだろうが、それともちがう。

 著名人が決めた「百名山」を競って登る近年の百名山ブームや、最近のワールドカップ・サッカーでの熱狂ぶりのように、皆とおなじものを欲しがる、皆とおなじことをしたがる、しかもすでにあるお手本をなぞるだけで自分が主体的になにかを成し遂げたような錯覚に陥ることができる--のが日本人好みらしい。こんな日本的土壌が"ゴキブリ"カメラマンを育んでいるのではないか。

 話がずいぶん脱線してしまったが、山でゴキブリ扱いされないために次の点だけは守ってほしい。
・植物帯を歩かない、ザックを置かない、三脚を立てない。
・登山道に三脚を立てるときは登山者の通行を最優先させる。
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