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| "アウトドア携帯" G'zOne TYPE-R を山で使う |
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| TYPE-RのRは |
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ケータイを替えた。
これまで使っていたのは、通称「Gショック携帯」と呼ばれていた先代のG'zOne(カシオ計算機)。とくにどこが良いというわけではないのだが、防水・対衝撃の携帯端末はこれしかなかったので、このあたりの山関係者のあいだでは"業界標準"になっていた。ところが四年ほど前に生産終了になってからは後継機種が出ず、故障がなかったせいもあるが、筆者も使い勝手が悪い時代遅れのケータイをつい先日まで使っていた。
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 「Gショック携帯」G'zOne(右)と G'zOne TYPE-R (左) |
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| ことしの夏に、新しいやつが出た、というので電器屋さんで見てみたのだが、値段が高い(¥17,000前後)こともあり、いまのやつが壊れたら替えようと、傍観を決めこんでいた。ところが先日、auから機種交換キャンペーンの「クーポン」がついた葉書が舞い込み、これまで一度も使ったことがない「ポイント」を一緒に使うと、けっこう安く交換できるというので、重い腰を上げて電器店に走った。
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| デザインは以前のものにくらべると格段に良くなっているし、大きさも手頃になった。液晶の見やすさやソフトの使い勝手も隔世の感がある。とはいえ、ケータイでメールを打つのが、気が狂いそうになるほど嫌いなデジタル音痴の筆者にとっては、ほとんど使うことのないソフトの使い勝手などは、どうでもいいことだ。山での酷使に耐えるだけの頑丈さがあればいい。ところが「アウトドア」を謳っているにしては、電源を入れたとたんに排気音とともに液晶に登場するレーシングカーのアニメなど、意味不明の、余計なお世話的な機能が多い。なんでこんなもんがついているのか調べるべく、ネットで検索を始める。
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G'zOne TYPE-RのRは、
「Revolution(革命)のRであり、Racing(レーシング)のRであり、そして開発チームにとっては、4年も歳月がかかった“Revival(リバイバル)”のRでもある」──。
という。なるほど、いきなりレーシングカーが出てくるわけだ。つまり開発者側が考える「アウトドア」とは、登山やバックカントリースキーや釣りなどではなく、オフロードバイクやラリーのようなモータースポーツのことらしい。いろいろ検索していくうちに、この携帯端末の開発にはかなりの思い入れが込められていることがわかってきた。
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| 開発チームにどんな思い入れやこだわりがあろうが、それが市場に受け入れられなければ、製品としては意味がない。という訳で、ユーザーの視点からのレビューを捜すと、これは面白そうだと思わせる記事が二つあった。ひとつは「「G'zOne TYPE-R」で水中撮影」、もうひとつは「G'zOne TYPE-Rは優れた「航海機器」だった」というもの。水中撮影のほうは防水機能とカメラの性能についての検証だが、海での使用レポートは、端末に内蔵されている電子コンパスとGPS機能に着目したレビューだ。
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| 海でもそこそこ使えるのなら、山ではどうだろうと考えるのは当然のなりゆき。という訳で山でどれだけ使えるかを確かめにさっそく山へ入ることにする。ずいぶん前置きが長くなってしまった‥‥。
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| 道がない! |
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| 10月27日。9時に家を出る。フィールドに選んだのは、美瑛の山奥にある「扇沼山」。二時間ほどで山頂に登ることができ、過去の経験から電波状況がひかくてき良いことがわかっている山だ。冷えこみが弱かったせいか、うっすらと霞がかかったような空。10月も下旬ということもあり、山麓でもすでに紅葉は終わっている。俵真布の奥で林道に入ると、道ばたのカラマツの黄葉が美しい。この時期になると、入山する人もほとんどいないせいか、林道で出会うのは動物ばかり。体長10センチほどのヤチネズミから、やや大きなエゾリス、さらには立派な角を生やしたオス鹿までもが、車の直前を横切る。
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 立派な角を生やしたオス鹿 |
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| 一時間ほどで登山口に到着。日陰では解け残った雪がうっすらと路面を覆っている。出発前にさっそく"新兵器"を試してみよう。G'zOne TYPE-R のGPS機能「EZナビウォーク」で「現在地マップ」を表示する。アンテナが三本立っているわりにはダウンロードに時間がかかる。ようやく現れた画面には、真ん中あたりに人影?があるだけの、白地図だ。画面左下に「100m」とあるのはスケールだと思われるので、「ZOOM OUT」キーでスケールを「1000m」にすると、「美瑛町」という文字と「丸山」というランドマークが表示されるが、道がない(ことになっている?)!どうやらこのあたりの林道は地図に登録されていないようだ。
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 表示された"白地図" |
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| ザックを背負って登山道に入る。ダケカンバの葉はほとんど落ち、降り積もった落ち葉の上にはさらに雪が積もり、水たまりには氷が張っている。登山口に車がなかったので、ヒトは入っていないようだが、雪が積もった登山道には入り口からずっとキツネか犬のものと思われる足跡がつづいている。
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 登山道上をつづく足跡 |
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| 測位の仕方に問題が‥‥ |
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一時間ほど歩くと、高山帯への入り口になる岩隗斜面がある。直径2〜3メートルの大岩がゴロゴロと積み重なっている斜面で、霧がかかるとルートがわかりにくく、コンパスで方角を定めて歩く場所でもある。さっそく電子コンパスを使ってみる。ここでひとつ問題が発覚する。海で試用した例のように、G'zOne TYPE-R本体にマーカーを付けておかないと、目標を決めて測位しようとするときに照準が定まらないのだ。ザックに収納するときのコンパクトさを優先して「ハンマーヘッドプロテクター」を付けているのだが、どうやら「ラウンドトッププロテクター」に替えたほうが良さそうだ。
 大岩が積み重なった岩隗斜面。視界が悪いときはルートを見失いやすい。 |
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 「ハンマーヘッドプロテクター」を付けたG'zOne TYPE-R
 電子コンパスで測位しているところ。マーカーがないので、照準を合わせにくい。 |
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いつも携行している普通の?コンパス(SILVA社製)と比較してみると、測位の結果が7〜8度ちがう。海で使った長浜氏の記事によると「磁方位が表示されている」――つまり「地図の北=北極」ではなく「磁石の北=磁北」を指す[註]――ということなので、いいかげんな測位による誤差なのか。ひょっとしたら、まわりが岩だらけなので、磁石が鉄分に引っ張られているのかもしれない。
SILVA社製コンパスと電子コンパスを使用中のG'zOne TYPE-R |
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[註] 磁石が指す北は実際には北極点よりも西にずれており、この値は北に行くほど大きくなる。大雪山付近ではそのずれは約8.5度で、これを「西偏8.5度」という。 |
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| 積雪を予想して履いてきた長靴だったが、底がすり減っているせいもあって、やや氷化した雪が岩の表面を覆っているところでは滑りやすく、意外に緊張を強いられた。せっかくコンパスで方角を定めて直進しようとしてもこれじゃ無理だ。安全性を考えるなら、ハイテク機器よりもまず先に、ビブラム底の登山靴を履くべきだろう。
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 凍りついたハイマツ |
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| お昼過ぎに扇沼山到着。すこし霞んではいるが、うっすらと雪をまとった十勝連峰が白く輝いている。風が多少あるが、この時期としてはずいぶん温かい風だ。快晴。360度視界有り。雪をいただいた旭岳やトムラウシもよく見える。 |
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うっすらと雪をいただいた十勝連峰と硫黄沼 |
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| 山頂からは旭川をはじめ美瑛や富良野の町もよく見えるのだが、なぜかアンテナは二本しか立たない。ここでも「現在地マップ」を表示してみる。「500m」スケールでは現在地の他に眼下に見えている「硫黄沼」が表示され、「1000m」スケールでは「美瑛町」と「丸山」が表示されるほかは道すらない。ここでは「EZナビウォーク」の別メニュー「現在地メール」を送信してみた。本文に現在地の緯度と経度が書かれたメールだ。二回ほど試みるが、なぜか「送信できませんでした」ので、帰りがけに再度トライすることにした。
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| 帰宅後にパソコンのブラウザで地図のURLを開いてみると、右の写真のような地図が表示された。真ん中の星マークが現在地(扇沼山)、左下の水色の半円が硫黄沼と思われる。また、国土地理院のサイトで扇沼山頂のおおよその緯度と経度を調べてみると、ほぼ一致した。
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山頂では、G'zOne TYPE-Rの電子コンパスとSILVA社製のコンパスで対岸のオプタテシケ山を測位も行った。結果はほぼ一致。岩隗斜面での測位とは結果が違ってしまったのは、いい加減な測定の仕方に原因がありそうだ。
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 まずはSILVA社製のコンパスで測位
つづいてG'zOne TYPE-Rで測位
←結果はほぼ一致 |
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| 先行者にバッタリ |
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せっかく天気もいいので、トムラウシ方向へすこし進んでみる。登山口からずっと続いているキツネらしき足跡がさらに先へとつづいている。足跡を追って東進すると、足跡がいきなりウサギに変わった。エッ、こんなことが?と思いつつ、ひょいと視線を先に送ると、当の"本人"といきなり視線が会う。すっかり冬毛に衣替えしたキツネがじわりじわりとこちらに近づいてくるのだ。まったく逃げる様子はなく、ときおり鼻をクンクンさせている。まさかこんなところにヒトの餌をあてにした「おねだりキツネ」がいるとは思えないのだが‥‥。結局、キツネのほうが道を空けてくれて、すれ違うことになった。こんなのは初めてだ。
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 キツネの足跡が‥‥
 アレッ、ウサギに変わった。
←そして"本人"登場。 |
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三十分ほど歩き、辺別川源流部を見下ろす地点まで行く。トムラウシと兜岩にしばしの暇(いとま)乞いをして山頂へ戻る。お茶を飲みながら今シーズン最後の景色をしばし楽しみつつ、さきほど送れなかった「現在地メール」を送信する。まだ午後二時前だというのに光の強さは夕方のように弱々しい。気温が下がると、日中の暖気でいちど緩んだ岩隗斜面の雪が再度氷化するので、まだ日が高いうちに通過したほうが無難と判断し、下山をはじめた。
 辺別川源流部越しに見るトムラウシと兜岩 |
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| 評価 |
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| 今回はじめてG'zOne TYPE-Rを山で使ってみて「これは意外に使えるかも」という印象を抱いた。「EZナビウォーク」の地図は、道なき道を歩くような使い方はおそらく想定されていないので山では使えないが、電子コンパスはちゃんと照準を合わせられれば、かなりの精度で方角が分かる。いろんな山での検証が必要になるが、GPSの位置確認システムも使えそうだ。ただし、山の中ではケータイの「圏外」が多いので、道に迷って「現在地メール」で助けを求めるような使い方には向かないかも知れない。とはいえ、電波が届きさえすれば、遭難者自身は現在地がわからなくても、GPSが場所を特定し、それに導かれて救助隊が来る――というような、シュールだが21世紀的な遭難救助が増える可能性もある。
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| 気になるのは、気温が低い冬のフィールドでの電池性能だ。すべてをGPSに頼るデジタル派アウトドアーズマン(「なんちゃってアウトドアーズマン」と言うべきか)にとっては、電池の切れ目が命の切れ目になりかねないからだ。冬の山でもさらなるフィールドテストを重ねてみたいところだ。 |
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