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大雪ジャーナル
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Home>フィールドノート最新号>バックナンバー一覧>2005年6月6日
バックナンバー一覧
残っていた「幻の湖」
 ことしは春先に雪が多く降り、しかも四月・五月と気温が低い状態が続いたために、雪解けが遅れている。お客さんに残雪の山を楽しんでもらおうと企画したプログラムも、解け残っている雪のために林道が通れなかったりして、やむなく中止にしたものもある。そんななか、仕事の下見を兼ねて、黒岳・白雲岳方面の残雪の状況を偵察に行った。 ↓サムネイル画像:クリックして拡大表示
 ロープウェー山頂駅(五合目)を降りた瞬間、すぐに雪の多さを実感する。いつもの年ならとうに咲いている「高山植物園」の花もキバナシャクナゲの蕾ががすこしほころびかけている程度で、あとは冬枯れ状態。職員のFさんの話では、「(雪解けが)半月くらい遅い」ということだ。 登山口
登山口で2メートルくらいの積雪
 五合目から乗ったリフトの足下には移植されたエゾコザクラの花が咲いているものの、木々の芽吹きにはほど遠く、積雪は二メートルを超えているようだ。七合目の登山口で「入林届け」に記入し、雪の上に一歩を踏み出す。 急斜面
まずはこの急斜面を登る。
 夏道はまったく出ていないので、雪の急斜面を直登する。標高1700メートル付近にかかっている雲が時どき切れて、ニセイカウシペ・平山などの北大雪の山々が、石狩川をはさんで対岸に見える。 北大雪の山々
北大雪の山々
 カッコーやルリビタキの声を聞きながら、30度はありそうな急斜面を登って行く。九合目の道標は、頭だけが雪の上に出ている。ノゴマのさえずりが聞こえる。そこだけ雪が解けている直下の階段を登り、1984メートルの山頂に出る。いきなり視界が開け、旭岳までよく見える。やはり雪は多く、雪解けが早い稜線部以外はほとんど雪におおわれている。山頂付近をぐるりとまわるが、開花している花はない。

山頂
山頂からの展望
九合目の道標
頭だけ出ている九合目の道標
 山頂から30分ほど下り、黒岳石室で昼食をとる。バイオトイレ・黒岳石室・森林管理書の管理棟と、棟つづきの建物はすべて、屋根だけが雪の上に出ているだけ。温かいトタン屋根の上に腰を降ろしておにぎりをほお張る。カッコーがすぐちかくで鳴きつづけている。 黒岳石室
屋根だけ出ている黒岳石室
 石室から北海岳への取り付き点まではひたすら雪の上を歩く。赤石川は水流が一部見えているが、北海沢は完全に雪におおわれている。秋口まで残る雪渓の上部には大きな雪庇が張り出している。 雪庇
北海沢に出現した雪の壁
 北海岳の登りではひどい目に遭った。えぐれて窪みになっている夏道に積もった雪が、地熱に暖められて地面から解けて空洞になるので、一歩踏み出すごとに股下までズボッと埋まり、足を抜くのにたいへんな労力を強いられるのだ。ようやくクジャク岩のトラバースを終え、北海岳との鞍部に着くころには足が痙攣してきた。上から見下ろすと、夏道ではなく、雪渓をそのままここまで登っている足跡が見える。30度ちかい斜度なので登るのは大変だろうが、下りはこのルートを使おうと決意する。

ストライプ
旭岳東斜面の縞模様
雪渓
雪渓づたいに北海平へ下る。
 山頂へ登る元気はとてもないので、鞍部から雪渓づたいに北海平へ下る。例年なら美しいストライプ模様を見せる旭岳東斜面の縞模様もまだ細い。夏にはふさがってほとんどわからなくなる凍結割れ目が、大きく口を開けているのが観察できて面白い。例年、大きな雪渓が残る花の沢源頭には、氷河の舌端を思わせる巨大なブロック雪崩のあとがある。ことしはスケールが大きいので迫力がある。

ブロック雪崩
ブロック雪崩が谷を埋める。
凍結割れ目
大きく口を開ける凍結割れ目

凍結割れ目2
大規模な凍結割れ目ができる北海平

白雲分岐付近
白雲岳の山腹はほとんど雪におおわれている。
エゾユキウサギ 白雲分岐付近は夏道通りに進むが、ここも雪が腐っていてズボズボ埋まり、歩きにくいことこの上ない。夏毛になりかけのエゾユキウサギが雪の上を疾走している場面を見れたのがせめてもの救いか。途中から夏道を完全に無視し、白雲岳東斜面の雪渓をトラバースして小屋に降りた。テントサイトはまだ雪原状態、水場も出ていない。

小屋
雪渓をトラバースして小屋に降りる。
 蝶番が外れて開けにくくなっている冬期用の二階入り口から小屋へ入ると、先客が二名。学生さんらしい男性パーティーだ。2リットル入りのペットボトルにきれいな水をもっていたので、雪を解かして作ったのかと尋ねると、「旭岳温泉から背負ってきた」という答え。ずいぶん"高い"水だ。
 雪を解かすにも、黄砂で汚れているので、どこかに水が出ているところがないか探しまわる。小泉岳側の斜面に残る急な雪渓の末端を掘ると、やや濁ってはいるが、水が流れていたので、ここから水を汲むことにする。
 煮沸した水で夕飯を作り、まだ明るいが七時過ぎに寝袋に入った。
↓サムネイル画像:クリックして拡大表示
 夜通し強い風が吹いていたが、朝方になってすこし治まったようだ。学生さんパーティーは三時過ぎに出発した。トムラウシや十勝連峰・芦別岳まで見えて視界はいいが、高曇りで靄がかかったようなすっきりしない天気。トムラウシの頭が少しかすんで見える。六時半に小屋を出る。 トムラウシ
トムラウシの山頂が少しかすんで見える。
 小屋の裏側の斜面でしきりに鳴くナキウサギの声を聞きながら雪渓をトラバース気味に登り、30分で白雲分岐に到着。風が強く、風速7〜8メートルはあろうか。夏道づたいに一段登り、大きく残っている雪渓を超えると、通称グランドと呼ばれている古い火口の底に水がたまっているのが見えた。「幻の湖」だ。雪解け水が、水を通さない永久凍土層に遮断されて地表にあふれたためにできた一時的な水たまりで、例年は五月の中旬から下旬にかけてできる。「湖」の大きさは満水時の半分ほどだが、六月も十日にちかい時期に残っているは珍しい。いかに雪解けが遅れているかがよくわかる。

「幻の湖」
これが「幻の湖」
 雪庇状に解け残っている巨大な残雪を登って山頂へ到着。風上側は10メートルちかい強風だ。旭岳の残雪のストライプを写真に撮ったりするうちにだんだん山頂部から雲に包まれてきた。しばらく待っても雲がとれないので、諦めて山頂を後にする。

旭岳の残雪のストライプ
旭岳斜面にできた残雪のストライプ
巨大な残雪
雪の壁を越えると白雲岳山頂。
 白雲分岐へは戻らずに、雪渓をまっすぐ下って花の沢の源頭を横切り、北海平へ出る。北海岳も山頂へは登らず、雪渓をクジャク岩との鞍部に突きあげる。ここからは、来るときに確認したように、夏道を通らず、枝沢をまっすぐ降りて北海沢に出るルートをとる。ハイマツが出てきているので、このルートもここ一日か二日しか使えないだろう。 雪渓
この雪渓をまっすぐ降りて、北海沢(写真中央を横断している沢)へ。
 30分ほどで夏道の取り付き点に出合う。北海沢左岸にできている30メートルちかい巨大な雪の壁を見上げながら、沢づたいに黒岳石室へ。

巨大な雪の壁
北海沢左岸にできた巨大な雪の壁
 ちょと腹が減ったので石室で行動食を食べる。ノゴマのさえずりに混じってナキウサギの声も聞こえる。なぜかここの上空だけ青空が見ている。
 黒岳山頂へむかう尾根上に出るとまたまた強風になる。山頂ちかくで層雲峡ビジターセンターのPさんに会い、二言三言立ち話をする。お鉢平の展望台まで行くという。Pさんと別れて山頂に到着すると、高山植物パトロールの若い男性が登ってきた。きょうが仕事始めだそうで、監視小屋の入り口を固定していたボルトを外して、仕事の準備を始めた。

白雲岳
白雲岳が見えてきた。
 白雲岳方向に目をやると、さっきまで山頂部をおおっていた雲がなくなり、青空になっている。ちょっと悔しいが仕方ない。"全面滑走可"の黒岳斜面をグリセードで滑り降り、20分ほどで七合目の登山口に着く。