V.A.《薔薇門》/東郷健《好きなんや》《ツブシタレ》「♪しあわせになーろーネッ!ツバメの来る頃まーでーに」・・・東郷健+寺山修司+J.A.シーザーとオカマ達が織りなす奇蹟の性と生の記録
1972年に「天井桟敷レコード」(当初は「てんぐレコード」)から発売された奇盤、その名も「薔薇門」。
企画・作詞:寺山修司 、音楽:J.A.シーザー、歌・演説・身上話・劇などを演じるは劇団員と東郷健をはじめ巷のゲイ、オカマたち。 ![]() 1年前の1971年に創刊された日本初の本格的ゲイ雑誌「薔薇族」にオマージュの詩を寄せたりしていた寺山修司と、70年代に入りゲイの劇団を旗揚げしアングラ演劇をやり始めた東郷健という二人の鬼才が出会うべくして出会い、このレコードが産まれたのである。内容が内容だけに、広く流通することはなく、まさに伝説のレコードとなった本盤は、後年、70'Sサイケデリックの再評価とともにサブカルシーンのマニア達から絶大な支持を得た。ネットオークションなどでは恐ろしい程高値で取り引きされたりもしたそうだが、2004年にCDとして復刻されたのである。 当然全体として寺山の臭いが漂っているが、素人とは思えない芸達者なゲイたちの素晴らしいパフォーマンスと相まって異様なまでの独特の世界を形作っている。 1:おかまの政治演説 ナチス時代のヒトラーの演説がバックに流れる中、東郷健の参院選での政見放送が始まる。常識に縛られ、資本家どもの言いなりにさせられ、戦争へ駆り立てられていた民衆を激しくアジるこの名演説は、以前のエントリーでも書いた とおり今この時代にこそ心に響くものがある。 2:薔薇の刺青 録音が古いためか、歌い手の技量のせいか、時折聞き取りづらい箇所があるが、独特の雰囲気を持った演劇的な歌唱。三島由紀夫への追悼歌であるらしい。「マドロス」「あいつの『帆柱』の薔薇の刺青」という言葉が妙にアガル。 3:転落詩集 哀愁と自嘲漂うワルツにのって歌われる地方出身のオカマの身の上告白歌。鵜飼正英の歌詞が秀逸! 4:告白録 絵に描いたようなダミ声のオカマ二人による会話。前半が一人の生い立ち告白で、後半は二人による与太話であるが、漫才じみたオカマのやりとり・節回しは今も昔も変わっていないのが感慨深い。 「だって私変態ですもの」「(ゲイだから)精神的に欠陥があるから、プレス工だったんだけどすぐ辞めて」「隠花植物だから、人目忍んで大変」等々、時代を感じさせるセリフ多数。 5:天国と地獄 オッフェンバックのメロディにのせて「男が一番、お金は二番、女は無用よ関係ないわ・・・薔薇の革命!」と歌うミュージカル調のトラック。 6:青少年のための男色入門 声変わり前の少年がピアノ伴奏にのせて、「弟求む。当方名古屋のナルシスト、サイズは勃起時20cm・・・」などとホモ雑誌の通信欄の文面を可憐に歌い上げるネタ設定がイイ。「♪しあわせになーろーネッ!ツバメの来る頃まーでーに」のリフレインが頭から離れない。 7:白波五人男 歌舞伎「白波五人男」のゲイ版口上。5人それぞれのキャラクター作りが見事で、それぞれ堂に入っていて天晴レ! 8:男娼巡礼歌 寺山の作詞が冴える一曲。「宵待草」っぽいメロディもイイ。 9:毛皮のマリー 寺山演劇の代表作「毛皮のマリー」。有名な美輪明宏のものとはまた違った魅力がある。 10:聖なるジャック キャッチーな「大人の童謡」風のチンコ賛歌。マストをゴシゴシ擦ったり、バナナをペロペロしゃぶったり。合いの手の掛け声「オー!」ってのがカワイイ。 11:どろうぼうたちのキリスト オルガンのコラールの響く中語られる男娼の懺悔。これもまた三島由紀夫へのオマージュ。「てておや」「べっかんこ」などの言葉の響きが魅力的。 12:きびくぶのほこぼもぼんば 超問題曲。タイトルを一字置きに読むと「菊の御紋」となる。菊紋→菊門=アヌス・・・これ以上は危険なので言えません。Track 4のオカマコンビが再び登場。曲間の丁々発止のやり取りが最高。 13:健さん愛してる 寺山修司 作詞/クニ河内 作曲の名曲。この健さんとはモチロン「高倉」の方。「東郷」の方ではない。 14:性解放宣言 寺山と関係の深かった森崎偏陸 がシャウトする「誰がボクに後ろ指をさせるだろうか」「結婚なんかクソ食らえだ!」が鮮烈。 15:君は答えよ この名盤を締めくくるに相応しい名曲。男の怪しい喘ぎ声をバックにJ.A.シーザー自身がボーカルをとったこの曲では、社会に隠れたゲイの姿を顕わにすべく「君は答えよ」と迫る。最後に素っ頓狂なまでに純粋な東郷健さんのアジテーション! 全編にわたって漲るドラマ性、演劇性はさすが寺山修司のものだなと感心せずにはいられないが、その他にも、70年代のゲイたちの赤裸々な性と生の記録の一つとしても後世に伝えるべき奇蹟のレコードだと言えよう。 一方こちらは東郷健が作詞し自ら歌った71年のシングル。「薔薇門」と同じく天井桟敷レコードから出ている。 作曲は「ルパン三世(第1シリーズ)」や「プレイガール」「大岡越前」「タイムショック」「アタック25」などの音楽で有名な故 山下毅雄 。山下と東郷には実は意外なつながりがあったのだった。(山下の大学の先輩で最初期に仕事をくれたのが影絵作家の藤城清治であった。藤城と東郷は従兄弟同士である。) ![]() 1:好きなんや フリージャズ風のイントロに続き、ネチョネチョした東郷のボーカルが入ってくる。ゲイの肉欲にまつわる最もイタイ部分、目を背けたい部分を真正面から歌っているワケで、哀切とも狂気ともつかない「ギリギリ・ドロドロ」の世界。唾液の臭い、精液の臭い、血の臭い、ケツマン汁の臭い、あらゆる体液の咽せるような臭いを感じさせ、ゲイのおれですら嫌悪感を抱いてしまいそうなくらい濃厚な1曲。歌詞の関西弁がまたより一層生々しさを増幅させる。 2:ツブシタレ こちらは一転してお祭り調のアジテーション歌謡。東郷健の世界とヤマタケの世界が奇蹟のコラボレーションを起こした異端の一曲である。 hiropage-blog もっともっと愛を ─ 帰ってきた東郷健 東郷健&オムニバス/ 薔薇門+ツブシタレ @TOWER.JP - Various Artists - 薔薇門 薔薇門/ V.A. えろとぐろ音源<えろとぐろの世界> 【跳びだぜ!日本の70’〜80’ロック】♪VA『薔薇門アナログ&ツブシタレCDセット』 東郷健直筆サイン色紙付 musicField - 音楽専門オークション&ショッピング ミュージックフィールド 東郷健 - Wikipedia 寺山修司 - Wikipedia 及川健二/『週刊金曜日』●「伝説のオカマ〜」は差別か 常識を越えて〈オカマの道、七〇年〉(東郷 健・著 他)○ポット出版●版元ドットコム 反骨の人、東郷健 Posted: 月 - 1 月 15, 2007 at 01:45 午前 |
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