ラヴェル《シェエラザード》


夏、アジア、アンニュイな風、海、シンドバッド・・・・。ラヴェルの妄想の結晶は隠れた名曲でした。

モーリス・ラヴェルと言えば、例の《ボレロ》があまりにも有名過ぎて紹介しづらいのですが、魔術的とも言えるオーケストレーション(管弦楽法)の名手として、また、ドビュッシーと並ぶフランス印象主義の立役者として、音楽史に名を連ねる天才作曲家であります。(以上一般的なコメント)

いやいや。ラヴェルは結構曲者な男ですよ。完璧主義、異常なまでの神経質さ、化粧までしてたっていうオシャレ度、生涯独身を貫いたっていうことから、ホモ説も絶えません。(《亡き王女のためのパヴァーヌ》や《マ・メール・ロワ》なんて曲はホモでないと書けないかもね。)
ドビュッシーはどちらかというと「天才・才能湧き出る型」なのに対して、ラヴェルは「秀才・コツコツ計算型」。機械仕掛けのモノが好きで、幻想的・怪しげな曲も結構多い。狂気じみた超絶技巧の曲もいっぱい書いてる。ちょっと危ない人のニオイがしますね。

この人の趣味・好みっていうのも多岐にわたっていて、その一つに挙げられるのが「異国趣味(エキゾチシズム)」というやつです。その代表例は何故か歌曲・歌モノに多い(《マダガスカルの歌》とか、オペラ《子供と魔法》とか)んですが、この決定版と言えるのが「トリスタン・クリングゾールの詩篇による声とオーケストラのための3つの詩」という長ったらしい副題を持つ歌曲《シェエラザード》です。

「シェエラザード」と言えば、リムスキー=コルサコフの交響組曲(シンドバッドの冒険活劇、壮大雄壮な一大絵巻音楽)がまっさきに思い浮かぶでしょう。でもラヴェルのはまた全然違う雰囲気の音楽。
「アジー、アジー」と歌い始める(「アジー」てのは「アジア」の事で、決して「暑ぃー」っていうわけではありません)一曲目の「アジア」は、未だ行ったことのない東洋の異国を夢見る歌。一応、クライマックスも用意されていて、壮大な海の音楽なんだけれども、描かれている「アジア」が幻であるように、とりとめなくて不思議な曲。
二曲目の「魅惑の笛」では、極上の美しさで歌うフルートのソロが絶品の小品。昼寝するご主人様(ヒゲのおっさん)の横で、奴隷の少女が聴く恋人(イケメン青年)の笛の音。「この笛を吹くのは、いとしのあの人〜。窓に近づくと、笛の音が私の頬にキスしてくれてるみたいなのぉ〜。」だって。ろまんちっく〜。
三曲目の「つれない人」は、終始、曖昧模糊とした雰囲気でとにかくアンニュイな曲。少女につれなくする異国の青年の様子が描かれているらしいんですが、彼の仕草はどうも「女」っぽい・・・。「『娘の目みたいにやさしい』瞳の異国から来た若いお方。こんもり蓄えたおひげ。せっかく酒で誘っても、女みたいにクネクネした動きの腰つきで行ってしまうの・・・。」(女なんか興味ねーんだよっ!)

この曲でのラヴェルのオーケストレーションはマサに極上!弦やハープ、木管の扱いが上手すぎ。歌に寄り添いつつ、場を盛り上げたり背景に回ったり変幻自在。《ダフニスとクロエ》や《ラ・ヴァルス》みたいな大がかりな曲よりも、むしろこういうシットリとした慎ましい曲の方が腕がわかるねぇ。

とにかく、夢のように儚く、夏の風のように気怠い、海の音楽。この季節の昼寝にはピッタリでございます。ほえぇ〜〜。

アバド/ロンドン交響楽団(ソプラノ:マーガレット・プライス)のラヴェル管弦楽集か、EMIのラヴェル歌曲集(プラッソン/トゥールーズ・キャピタル/ソプラノ:テレサ・ベルガンサ)がおすすめ。ブーレーズ も入れてるので、こっちが入手しやすいかも。





→モーリス・ラヴェル
>「シェエラザード」

→タワーレコードで検索してみた





Posted: 火 - 8 月 3, 2004 at 12:43 午前              


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