くるり《アンテナ》


くるり通算5枚目のアルバム。新ドラマーを迎えアコースティック回帰。よい意味での脱力。よい意味での力作。

フォークみたいなロックみたいなテクノみたいな、ジャンルの垣根なんか悠然と気にせず、音楽性の高さと詩の充実さと圧倒的なパフォーマンス力で独自のポジションを確立してきたバンド、くるり。前作「THE WORLD IS MINE」(特に「ワールズエンド・スーパーノヴァ」)や前々作「TEAM ROCK」(特に「ワンダー・フォーゲル」や「ばらの花」)でピコピコしつつも歌心ある楽曲でブレイクした感じだったが、そのピコピコは、本来持っていた音作りへのこだわりと遊び心の一つの実験の結果にすぎなかった。この新作「アンテナ」では、ピコピコは影をひそめ、ギターやドラムやベース、またストリングスの生音に磨きをかけ、さらに随所に遊び心を含ませた音細工を忍ばせた曲が並んだ。情念の暗さとアコースティックサウンドと細かい音へのこだわり、これは2作目の「図鑑」に通じる世界だが、ボーカルの岸田くんは「回帰じゃない」と言う。新しい世界に踏み込んだのだ。





しょっぱなの「グッドモーニング」の、ゆったりとした情緒にまずヤラレる。夜行バスがパーキングエリアの出口を悠々と旋回するような、そしてトンネルのオレンジのライトを車窓に映し、明け方の東京へと到着するという詩の世界を乗せた音楽。旅情である。サビの最後、2回だけサブドミナントマイナーを使うのもニクイ。(普通、毎回使いたくなるもんだ。)
3曲目「Race」8曲目「花の水鉄砲」は、日本の俗謡か、はたまたフォルクローレみたいな感触。これはくるりにしか出せない味だ。
アルバムの目玉は、なんといっても4曲目「ロックンロール」になるだろうか。1曲目の♭の多いキー(=夜中〜夜明け)から比べて、Aメジャーという日の高い世界に躍り出ているのがまず爽快。シンプルな曲なんだけど、胸を打つメロディとしっかり地に足付けたギターのオスティナート。本当にイイ曲だ。
一方、全曲中、一番暗く長い、7曲目「黒い扉」では、キース・ジャレットの「ケルン・コンサート」を彷彿とさせる深い世界を聴かせる。
ラストナンバーの「How To Go」も名曲だ。シングルでは打ち込みだったらしいが、新ドラマーを迎えたバンドで取り直したアルバムバージョン。おれはこっちしか聴いてないけど、こっちの方がきっと良いんだと思う。「さっきまで気にしてた How to play the guitar 灰になる」。
そう、小手先のテクニックの凄さだけではないと吹っ切れた。他の曲も、派手とは無縁の、どっしりした質感と何かしら暗い雲のようなものを携えている味わい深いアルバム。全体に短めの曲が多い、アルバム全体も45分程度と短めだ。これくらいが丁度いい。綺麗なまとまりを感じる。

今回から参加したドラマー、クリストファー・マクガイアはイイ感じだ。一部ゲスト・ドラマーにクリフ・アーモンドを迎えている(これは、矢野顕子がらみの縁だろう)が、名人クリフにも決して引けを取っていないクリストファー・マクガイアを加えたくるりの今後に期待が高まる。

くるりはまた一人強力な仲間を手に入れ新しい境地に。そして旅はまだ続くのであった。

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Posted: 金 - 4 月 30, 2004 at 01:21 午前              


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