「ブロークバック・マウンテン」(2005/アメリカ)そこは二人の男にとっての束の間の楽園で永遠の聖域。死ぬほど回顧し戻ろうとしても辿り着き得ない場所と時間。(ネタバレあるよ)
昨年12月に公開されたアメリカでは社会現象にまでなり、ベネチア、ゴールデングローブはじめ様々な映画賞で主要賞を総なめ。オスカーの作品賞が与えられなかったことに抗議の声まで上がっているとか。先週から単館先行公開の東京(全国公開は18日から)でも、ゲイ達の間で熱病の様に伝播し、賛否含めてまさにフィーバー状態の話題作。某ゲイバーではマスター含め皆BBMの話題で持ちきり。未見ではジレッタサが募るばかりだったので急遽観てきてしまった。(ほんとは来月彼氏といっしょに観る約束だったのにね。)
![]() 1963年。アメリカ西部のとある山。夏期に羊の放牧をする仕事を得るため事務所を訪れた寡黙で影のある青年イニス。そして遅れてやってきた遊び人風の青年ジャック。 人里離れた山奥、過酷ながらも美しい自然に囲まれた中で一夏を過ごした二人には揺るぎない友情が芽生えた。そしてある日、寒さに凍えそうな夜、一つしかないテントの中寄り添って寝ようとした二人が「行為」に及んでしまうのは必然だった! 何ものにも代え難い二人の愛、セックス、美しい時。それらは「ブロークバック・マウンテン」という名の結晶となって二人の心に永遠に留まった。 山を下りた二人。田畑智子似の田舎娘と結婚して二女をもうけたイニス。ロデオで食っていこうとするもなかなか芽が出ないウチに逆玉かなって一男もうけたジャック。 4年の後、募りに募った気持ちで再会した二人には辛い運命が待っていた。。。その後20年に渡る二人の男の物語。 まず二人のキャラクター、心理描写の細かい事に驚く。最初の事務所での出会いの時、親を待つ子どものように手持ち無沙汰なイニスに対し、彼をサイドミラー越しに「狙っている」ジャック。イニスは幼少時、牧場を営む同性愛カップルが無惨にもリンチされ殺された事件をトラウマとして持っている。一方、ジャックは自由奔放、性に対しても貪欲なタイプだ。彼らそれぞれの、目つき、仕草、喋り方、クセ・・・一つ一つが丁寧に細やかに描かれている。 そして注目すべきは、男二人きりの閉鎖された環境で、たとえノンケ同士であってもセックスに至ってしまう・・・という有りそうで無かった状況をこの映画は描いている事だろう。何ヶ月も射精を禁じられた状態で、隣に他人が寝ているワケだ。しかもそれは苦楽を共に過ごした大切なバディ(仲間)。その悶々とした空気は映画では薄く感じられるが、原作では「(ちんこに)唾を付ける前に、既に分泌液が出ていた」という描写がある事からも、最初に誘ったジャックだけでなく誘われて一旦拒絶したイニスまでもがちんこビン勃ちでテンパッテたのが分かる。 コトを終えた二人は互いに「これっきりだ」「二人の秘密だ」「おれはオカマじゃない」と正当化し合う。なのにお互いを愛し始めてしまった二人は、別れ際殴り合いになってしまう。(別れ際、イライラしてケンカしちゃうのって分かるなぁ・・・) 二人とも、イギリスの寄宿学校の美少年でもなければ、長年連れ添った香港人のゲイカップルでもない、「男らしい」カウボーイなのである。さらに、ゲイではないことを確かめるように結婚し子どもを作り、「男らしさ」というものにコダワリ続けるのだ。(それにしてもアメリカって国は、マッチョ信仰で保守的・排他的で暴力的で品が無いんだなぁとつくづく思う。) ![]() 二人の内、興味深いのはイニスの方だろう。 山を下りた彼が、ジャックとの別れの後、次にはもう会えないかも知れないその愛する男を思う気持ちと、例のトラウマからくるホモ否定の感情からとで嗚咽してしまうのは圧巻だった。さらに、田畑似の女房とセックスする際はバックからだったり(解説によると肛門に入れてたらしい)、離婚後にホモ事実を問いつめてくる田畑をムキになって怒鳴ったり、終盤近くにジャックと会っている時、ジャックが昔メキシコで売り専買ったと聞かされ「殺してやる」と激怒するなど、相手を女々しく愛しちゃってるのは、ゲイを自覚し先に男に目を付けて手を出してきたジャックよりもむしろ隠れゲイの自分に悩まされているイニスの方だったのだ。 保守的でホモフォビックな空気の根強い西部の街。家族や世間から見つかるまいと必死に逢い引きを続ける二人。相手を欲する押さえきれない思いと、裏腹に、のし掛かるキビシイ現実。二人が拠り所にしている「ブロークバック・マウンテン」は、実はこの世に存在していないのかもしれない。あれは若き日のまぼろしだったのだろうか? 誰からも邪魔されない愛おしい聖地は、しかし、過酷な自然環境を持つ熾烈な場所でもあるのだった。 終盤、ジャックの死を知ったイニスが実家を訪れ遺品のシャツを目にするくだりは、しんみりとした田舎の家屋の映像とも相まってジーンとくるものがある。そのシャツは、かつて山をおりる前に殴り合った際、拭った血が袖に付いているもの(つまり、血の契りの証拠)だった。ジャックのデニムシャツの中にイニスのシャツが重ねられていたものを、自分の家のクローゼットでは逆にして仕舞っているイニス。「やっぱりおれがタチなんだよ」というカワイイ主張かもしれない。かつて山でジャックを背中からジッと抱きしめていた時のように。 ![]() 文字通り「クローゼット・ゲイ」として生きていくであろうイニス。実際にこういう思いをした人、している人は世界中にゴマンと居るだろう。そういう人たちはシンクロして感極まってしまうのかもしれないが、お気楽ごく楽なノーテンキ・ゲイであるおれにはそんなに響きはしない。大自然の美しい景色と現代のカウボーイ二人のカッコヨクてカワイソウでカワイイ「キレイな思い出」が「胸キュン」の愛おしい映画なのだ。しかしこの「胸キュン」こそがこの映画の最大の魅力であり普遍性なのかも知れない。 そして丁寧に丁寧に紡がれる映像と絶妙な音楽に拍手。 →Brokeback Mountain___ブロークバック・マウンテン →Amazon.co.jp:ブロークバック・マウンテン集英社文庫(海外): 本 →はてなダイアリー - ブロークバック・マウンテンとは →Gotz BLOG for LOHAS: ブロークバックマウンテン →映画「ブロークバック・マウンテン(BROKEBACK MOUNTAIN)」観たいかも 酒焼け☆わんわん/ウェブリブログ →Brilliant Days :『ブロークバック・マウンテン』と 2回目の『クラッシュ』 →夜目、遠目、幕の内: 断背山雑感3 →隔数日刊 | Daily Bullshit: ブロークバック・マウンテンの衝撃 →隔数日刊 | Daily Bullshit: 先行公開スタートですか? →隔数日刊 | Daily Bullshit: ブロークバックの衝撃2 →隔数日刊 | Daily Bullshit: ブロークバックはただじゃ終わらない →フツーに生きてるGAYの日常 ブロークバック・マウンテンで見る世界 Posted: 日 - 3 月 12, 2006 at 06:48 午後 |
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