「ある子供」(2005/ベルギー=フランス)


ホントにどうしようもないダメニイチャンが父親になった時。(ネタバレあり!)

カンヌで史上5組目の2度のパルムドール。ま、そんなことはさておき、すんごいラストだというので超期待して見に行きました。(そういうことはあまり意識してはイケナイんだけれど。。。)





十代後半のソニアが産婦人科を退院してくるところから映画は始まる。彼女の手には赤ん坊。一緒に居るはずの赤ん坊の父親の姿は無い。
家に帰ったソニアを待っていたのは、父親ではなく、ハダカの見知らぬ男女。自分の入院中、父親が勝手に人に部屋を貸してしまっていたのだった。
やっとの思いで探し出した父親:ブリュノは二十歳そこそこのニイチャン。小銭をこそこそ恵んで貰ったり、中学生の手下を使って盗んだ品物を売りさばいたりして日銭を稼いでいるろくでなしだ。ブリュノは自分の息子を抱いてみてと言われてもどうしていいかわからない。父親になった実感も無いし、怖いのだ。
盗品を売って買った乳母車。行き当たりばったりの生活は続くが、ブリュノとソニアは無邪気にじゃれ合い幸せそうに見える。そう、彼らもまだほんの「子供」なのだ。
ある日、ブリュノは盗品売買業者が口にした言葉を思い出す。「赤ん坊を買い取ってくれる人がいるらしい」。
ついつい気軽に自分の子供を売り払って200ユーロを手にしたブリュノ。ソニアにはそのことを隠しもしない。「子供なんて、またすぐ出来るさ」。
彼女はショックのあまり卒倒してしまう。ブリュノは初めて事の重大さに気付いたのだった。。。。

とにかくこのブリュノというオニイチャンはだらしがなくてとことんダメ男だ。まともに働くなんてバカらしいと思っているし、計画性はまるでない。それでも、手下への分け前はちゃんと払うし、ソニアには愛を示している。根っからの悪人でもない。
ソニアがぶっ倒れるくらいショックを受けたのを見て、ブリュノも相当焦った。彼女を病院に連れて行って、子供を取り戻しに出かける。その後、刑事への言い訳や、完全に愛想尽かされたソニアへの「携帯貸して」「お金貸して」ってセリフは、このバカ男に対しとことん「呆れ」というものを感じさせる。





タイトルの「子供」とは、ブリュノとソニアの子供のことでもあり、彼ら二人の「子供ぶり」を表してもいる。特にブリュノが至る所で発揮する子供ぶり・・・・泥水を踏んだ靴で壁を蹴って跡を付けてみたり、鉄の棒で水面をバシャバシャやってみたり、手下の中学生が屁をこいたと言って大笑いしてみたり・・・etc.・・・まぁ、憎めないダメニイチャンなのだ。

映画はとても淡々と冷静に、しかしどこかしら「夜回り先生」 のような愛情をもってブリュノを追いかける。そのリアルさと流麗さが見る側を惹きつけて放さないのだ。

一旦売った子供をなんとか取り戻したブリュノは、関わったヤクザもんに金を要求されマズイことになったと思う。そして、中学生と共謀してやったカッパライが失敗し、中学生だけが警察に捕まってしまう。自分がこれまで適当にやり過ごしてきたことが、どうにもこうにも立ち行かなくなったのを思い知らされある決心をするのだ。
彼はなぜその決心をしたのか?なぜバックレなかったのか?
根っからの悪党ではない彼。ふと脳裏に浮かんだであろうソニアと自分の子供の事。





映画のラストは唐突にやってきてぶっきらぼうに終わる。ケン・ローチの「ケス」 の様でもあり、ミヒャエル・ハネケの「ピアニスト」の様でもあり、この映画監督の1996年作品「イゴールの約束」の様でもあった。(ちなみに、「イゴールの約束」主演の少年が、今回ブリュノ役だったことを後で知る。なるほど、イゴールのその後を見せられたようで不思議に感慨深かった。)

希望の光?厳しくも優しい目?そんな生やさしいものじゃない。この後、ブリュノはどうやって生きていくのか?決して楽では無いはずだ。むしろこれまでよりももっと辛い目に遭うかもしれない。それでも彼が大きく道を踏み外さないだろう事をスクリーンを見ている側はなんとなく確信する。彼はようやく父親になったのだから。


正直ちょっとヘビーな内容(現に日本だってニート問題やら大人になりきれない若者やらなにやら他人事ではないし!)ではあるが、主人公同様どこか憎めない。ドキュメントタッチのリアルで淡々とした語り口の中に計算しつくされた監督の職人魂が見え隠れする静かで凄い映画だった。下手な音楽が付いていないのがなにより良かった。


ある子供 (公式サイト)
『ある子供』(2005)[L' Enfant] - [映画]All About

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Posted: 月 - 12 月 19, 2005 at 12:53 午前              


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