「エレファント」(2003/アメリカ)アメリカ、ハイスクール、ベートーヴェン、そして銃。なにも特別な事はない。だって現にそれはそこにあった。ただそれだけ。そしてそれを写し取っただけ。写真のような映画。
カンヌ史上初のパルムドール&監督賞ダブル受賞の快挙をなしとげたガス・ヴァン・サント作品。この人の映画、実は、他に見たこと無かった。ごめん。
![]() ごくごくありふれたアメリカの高校の日常。グランド、図書館、カフェテリア、教室、ロッカー。黄色のTシャツ、写真部、イケメン&カワイコチャンカップル、女の子仲良し三人組、ダサイ・冴えない女の子、いじめられっ子。 薄青い空に流れ行く雲。淡く美しい映像が淡々と綴るそんな「ある一日」。でもそれは「特別な一日」だった。 コロンバイン高校 での銃乱射事件。平和な学園が一瞬にして地獄と化したあの事件をネタに、しかし、それを「ただある日常の延長」として淡々と写し映す。「なんで?」とか「だから」とか、答えを織り込みはしない。「ただ淡々と」提示する。ただし、かなりクールに詩的にね。日常の狂気?狂気なんてなんにもありゃしないよ。ワイドショーがよく言うだろ?「普通のマジメそうな子でした。なのに何故あんなことを。。。?」 そうなのよね。あれは何も「特別」な出来事ではなかった。アメフトの練習や、さっき撮った写真の現像、校内公認カップルのデートや、女の子の過度なダイエット(トイレでさっき喰ったものをリバースする)・・・・ etc. そんな物事の一つに過ぎない。日常の延長だ。 「それ」を実行した二人は、学校ではあまり目立たない、いわゆる「いじめられっ子」。ヘタクソなピアノで「エリーゼの為に」を弾き、殺戮PCゲームが好き。普通過ぎる家庭。ただみんなと違うのは、通販で買った「銃」を手にしていたこと。(殺傷能力の高い武器が「はんこくださーい」と宅配されるのだ。)つまり、そこにあったのは凶器だけだ。 「決行の日」の朝。二人の男の子は「禊ぎ」の意味なのか、一緒にシャワーを浴びる。そして、「まだキスもしたことない」二人はこの世の思い出にキスしてみる。「ふーん。こんなもんか。」「男同士だけど、ま、いっか。」「それじゃ、行くか。」「うん、行くか。」そんな感じだ。 ヘタクソなピアノは、ペダルを踏みっぱなしで、やたらと響きが混ざる。そう、それぞれの生徒のありふれた日常が混ざり合い、虚無の響きを鳴らす。なんとも浮遊した気分だ。「これは、現実か?はたまた夢か?」。そういえば、カフェテリアで周りの話し声が渦を巻いて響き、思わず耳をふさごうとするシーンがある。「あー、こいつらウルセー」。ただそう思っただけなのかも。または、自分たちの自殺の道連れにちょっと多く誘いすぎただけかも。 好きでも嫌いでもない映画。だけど、目と心にしみる映画。映画というより、詩か写真のよう。受け手のための余地をたっぷり残してくれていて、そこに生まれた「黄色い象」がジワジワととてつもなく巨大になってのし掛かってくる。 見終わった後歩いた渋谷の街はまたもうるさい。飯を食いに入ったスパゲティ屋。どーでもいい話に花をさかせる女グループ。うるさい。「こいつらを消しちゃいたい」って衝動は何処の誰にでも「ふっ」と湧くもんだ。それを可能にする術、道具の一つでも持っていれば、カンタンに決行してしまいそうな、ありふれた何でもない感覚。 →エレファント http://www.elephant-movie.com/ →CinemaScape(こういう映画では、他人の感想や批評が気になるもの。みんなスゴイね。) http://cinema.intercritique.com/movie.cgi?mid=13039 Posted: 金 - 6 月 4, 2004 at 03:13 午前 |
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Total entries in this category: Published On: 5 月 07, 2008 09:11 午後 |
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