「運命じゃない人」(2004/日本)


ありふれた日常、ありふれた金曜の夜。ささやかなラブストーリーかと思いきや・・・!

PFF(ぴあフィルムフェスティバル)スカラシップ といえば、橋口亮輔(「二十歳の微熱」)や矢口史靖(「裸足のピクニック」)をはじめ、熊切和嘉、古厩智之、風間志織など現在第一線で活躍を続ける映画作家達を世に送り出してきたワケだが、ここにもう1人新たに加わったのが内田けんじ監督であり、その長編デビュー作「運命じゃない人」。





◎婚約者の元を去り1人で街を彷徨う女:真紀。
「これからひとりで生きていかなくちゃ」と言いながら質屋で売った婚約指輪は二束三文。今にも泣き出しそうになりながらレストランでメニューを見ている。

◎いかにも人の良さそうなサラリーマン:宮田。
半年前に恋人と同棲を夢見て買ったリッチなマンション。しかし一緒に暮らしたのは数日だけ。女は突然出て行ったきり戻らない。未だに彼女を引きずっている宮田は友人に誘われてレストランへ。

◎一匹狼の私立探偵:神田。
宮田とは中学時代からの親友。部屋に帰ってきた宮田をレストランへ誘うが、携帯の声は何故か小声でしかも焦り気味。。。。。


遅れてきた神田を待っていた宮田。一緒にメシを食い、女の話を始める。
「出て行った彼女の荷物なんて捨てちゃいなさい。同時にその女々しい期待も捨てなさい。」
「30過ぎたら、運命の出会いとか自然な出会いなんてのは無いの。絶対。」
神田の説教が始まった。
「タイミングなんていらないよ。お前がつくるんだよ。」「人と出会うのに技術なんて要らないよ。」

突然振り向いた神田はひとりでメシを食っていた女をナンパする。それは真紀だった。

その後、神田は「気を利かせて」席を立ち、宮田と真紀は宮田のマンションへ・・・・・
ここまでは良くある若者のラブストーリーなんだけど、映画はトンデモナイ方向に。(この先はネタバレ過ぎて言えません)
神田はなぜ宮田を誘ったのか??神田はなんで急にトイレに行ったのか??真紀はなんですぐ帰っちゃったのか??
この3人に、宮田のマンションに急に現れた元彼女とヤクザの組長を加えた5人のドラマ。それぞれの思惑、それぞれの時間、それぞれの金曜の夜が絶妙に交差する。
(同じ時間・同じ場面も登場人物の視点が変わると全然違う、そんでそれぞれが密接に関係しているってネタだ。これ、ゲーム「サイレン」 と似ている。)

タランティーノやガイ・リッチーと比較する人もいるでしょうが、この映画にはドンパチやバイオレンスやヤクやセックスは出てこない。多少コッパズカシクなるくらいのお茶目でコミカルなストーリー。しかし、プロットは完璧に練り上げられた時間のマジック。監督はソナタ形式における複数の主題の提示→展開という時間構成をヒントにしたと語っているが、この軽妙にして堅牢な筋立てはナカナカのモノだ。(ソナタだとしたら、モーツァルトやプーランク、あるいはプロコフィエフの古典交響曲のような洒落の効いた感じ。)
小手先の映像テクニックに頼らず(しかしそのニクイ小技の数々には唸るしかない!)、むしろ不器用なくらいに人間と時間のドラマを仕立てた監督。ブログ を読むとカナリ庶民派の人間的な人だと分かる。

そして、役者がイイ。
中でも目をひくのは神田役の山中聡 だ。
橋口監督の「ハッシュ!」では口のたつオカマの役を熱演した彼だが、今回はヒゲを伸ばし、アウトローだが友人思いの探偵を好演。パンツ一丁のシーンも多く、ファンにはちょっと嬉しい。





彼の魅力はその大きな目と独特の音高の声だと思う。特に目には力があり、将来、渋いイイ俳優になることを確実に予感させる。


超低予算、超短時間での撮影というハンデを難なく越えた脚本と俳優の力。カンヌでは4つの賞を受賞し、各国からの買い付けオファーも破格に多いとか。
新人監督の船出としてはスバラシイものだ。

是非次回作、次々回作で観客をビックリさせてもらいたい。そして、映画館で手を叩いて大笑いさせてもらいたい!


→「運命じゃない人」公式サイト
http://www.pia.co.jp/pff/unmei/

→内田けんじの「運命じゃない人」ブログ
http://uchidakenji.at.webry.info/

→山中聡のサイト「裏・そうめーん」
http://www.h5.dion.ne.jp/~somen/

Posted: 土 - 9 月 3, 2005 at 04:43 午後              


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