左手


美容師の左手

美容師は左手で仕事をする。
髪のカットの出来具合は櫛を持つ左手、或いは髪を掴む左手の指で決まる。
左手の傾きや指の反り具合、曲げ具合で出来上がりのイメージは
大きく変わってくるらしい。
同じ髪形にカットしても毎回微妙に違って仕上がるのはそのためだと
美容室“はな”のcaecoさんは言う。
私は『その微妙な違いに気がついてしまう敏感な客の一人』だから緊張するとの話に
『人が手とハサミでカットしているのだから違って当然だよ』と言ったやり取りから
美容師ならではのプロの領域の話が聞けた。

 
これは、モノ作りの熟練した職人からも同じような話を聞いたことがあるし、
私自身、むかし鍛金をやっていた頃左手の重要性を痛感した記憶もある。
鍛金も銅版を絞る時の左手の微妙な匙加減が絞りの度合いを決めて行く。
右手は金槌を決められて場所に正確に打ち込むだけの言わば機械的な
動きに対し、左手は板とその下のあて金との微妙な角度(隙間)を調整する
重要な役割を持っている。
右手に比べると動きは地味ではあるが数段高度な感覚を必要とする仕事をしている。
また、劇作家で脚本家の倉本 聰が以前、TVのトーク番組(徹子の部屋)で
左手の重要性についてこんなことを喋っていたのを思い出した。
『富良野に移ってしばらくの頃、暖炉用の薪を作っている時に、
誤って山刀で左手を深く傷つけてしまった。
そのためしばらくは左手が使えない状況になり、
左手は使えないがペンを持つのは右手。
普通に書けるだろうと思って始めたがさにあらず、
初めて左手が重要な役割を果たしていたことに気づいた。』
『左手は右手がペンを走らせている時、しっかりと原稿用紙を押さえ、
右手の動きをバランスよく補助していることに初めて気がついた。』
『左手が機能していないと全く上手く書けない!』

まさに、左手は黄金の価値を持っている。
地味で目立たないけれど、無くてはならないもの、左手は重要だ。
こう考えてくると、すべてが何かしらの役割を持っていると云う考え方が浮上する。
それぞれにそれぞれの役割を持ち、バランスよく存在している。
目立たないモノも存在感の薄いものもそれなりの役割を持っている。
生まれてきたのはそれぞれ何か役割を持っているってよく聞くけれど、
自分がどんな役割もっているかなんて、分からない。
たぶん分からなくても良いことだと思うけれど、
きっと何かの役割は持っているんだろう。
そう思っていた方が生き易いかも。
 
     シーサーは家を守る門番

Posted: 水 - 1月 7, 2009 at 10:35 åflëO      


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