Architecture in Portugal       ポルトガルの建築と街  

 Pousada Dom Afonso Ⅱ

 1998

 Architect | Diogo Lino Pimentel

03-05-2006更新

 
 南にあるSado川の対岸から見る。手前は市庁舎前広場。 

 

港のある川を見下ろす丘にある。廃墟となっていた城・修道院を修復すると同時に増築を行い、ホテルと考古学研究室の2つの機能を整えた。中庭の地下にある遺構は現在も発掘調査中で、そのための考古学研究室がホテル機能とは独立して設けられている。中庭でオーバーラップしている二つの出来事が空間的に分かりやすく表現されていれば更に魅力ある建築になったと思われる。また、視点が近づくにつれ、新旧のあり方が調和から対比へと変化する設計手法は興味深い。

 

この建物の歴史

新石器時代 この頃からここに人が住んでいた。*1

8世紀 イスラム勢力による支配が始まった。既に存在していた城壁を補強した。さらに土を固めて作った2つの城壁と堀、30の塔が作られた。街は銅や銀、塩、塩漬けの魚、小麦などを輸出する港町として栄えた。*1

1158年 D. Afonso Henriquesによって攻略された。

1191年 再びイスラム勢力に奪取された。*2

1217年 Santiagoからの遠征して来た騎士団の力を借りたD. Afonso二世に攻略された。騎士でもある修道士たちは城内を邸宅とし、修道院Nossa Senhora de Ara Cæriを築いた。その後、Santiagoの騎士団がMértolaやPalmelaに拠点を移した後は使われなくなった。*1*2

16世紀後半 地元の貴族Rui SalemaがD. Sebastiãoから、使われなくなった邸宅や修道院を使用する許可を与えられた。新たに回廊や教会が設けられた。これ以前の中世の構造で残っているのは門や聖歌隊席の上段と下段の間の窓くらいである。

1834年 修道会解散令が発令されると使われなくなった修道院は荒廃してしまった。

1998年 改修工事を経てPousadaとなった。これに先立つ考古学調査で回廊の中庭でローマ時代の寺院の遺構や鉄器時代の街の遺構が、Pousadaの東側でローマ時代のフォラムが見つかった。*1*2

参考文献

*1  CASTELOS E POUSADAS DE PORTUGAL, ENATUR, 1999, p125-142

*2  Pousada D. Afonso ㈼, ENATUR, 1998, p9-21

 

 

 

 
  西側外観。 南西外観。右が旧教会、左が増築棟
 
  Pousadaのメインエントランス 考古学研究所
   
  元教会西側に設けられた階段/階段からレセプションを見る/アーチ詳細
 
    同階段 アーチの向こうがレセプション

既存建物

改修前の段階では既存建物は廃墟であった。回廊のある四角い中庭の南と西にボリュームが配置されていた。南側のボリュームは元教会である。城壁に沿って西側に横たわるボリュームが元修道院である。回廊の北側と東側には元々部屋があったかは不明だが、改修前の時点で部屋は無かった。中庭の地下にはローマ時代の寺院の遺構や鉄器時代の街の遺構が埋まっていた。

 

改修後の状況

廃墟となっていたところを修復すると同時に増築を行い、ホテルと考古学研究室の2つの機能を整えた。中庭の地下にある遺構は現在も発掘調査中で、そのための考古学研究室がホテル機能とは独立して設けられている。

中庭の南の元教会と西側の元修道院は修復された。元教会は多目的室となり、元修道院にはレセプション、ラウンジ、バー、客室が設けられた。中庭の北と東に増築が施された。増築棟の1階はレストランとサービス関係の部屋である。2階、3階は客室となった。また、西側の既存棟の上部にも1層増築が行われ、客室が設けられた。中庭の1階レベルに床が設けられ現在も調査中の地下の遺構は屋内化された。この発掘現場にはPousadaとは別に入口が設けられた考古学研究室から直接アクセスするようになっている。

この建築で一番重要な部分は明らかに中庭である。既存棟と増築棟が出会うところであり、ホテル機能はこれを中心に展開している。また、遺構の発掘現場があるのも中庭である。中庭にあるガラスのキューブから下を覗くと遺構が見えるようになっている。しかし、ガラスのキューブ自体が彫刻のように存在感を示しているので、その下に遺構があることに気がつくのは困難である。空間的な繋がりを設ける等、ホテルと発掘現場という2つの出来事がオーバーラップしていることがもっと分かりやすく表現されていれば、この建築の魅力は更に増したに違いない。

増築棟は既存の構成にあわせてボリュームを操作することで調和を図っている。増築棟の軒高は概ね既存の教会のそれに合わせてある。そして、増築棟の南東端部では角度を45度振った小さなボリュームを設けることで、それとで出会う教会の東の面と同じくらいの大きさの面を作り、バランスを取っている。同様に増築棟の北西端部にも少し角度を振った塔状に見えるボリュームを設け、塔と大きな面が並ぶ既存の構成と調和を図っている。これと同時に西側の既存棟上部の増築も塔と面によるこの構成を延長した形になっている。以上のような手法のため、遠景で見ると新旧が一体となって城壁の中に納まっている。そして、少し近づいてみると黄土色の既存棟に対して純白の増築棟が鮮やかにコントラストを描いているのがわかる。視点が近づくにつれ、新旧のあり方が調和から対比へと変化する手法は興味深い。
 
  中庭。ガラス箱の下に発掘現場がみえる。 中庭の下の遺構
 
  回廊1階 回廊2階
    
  旧教会は多目的室になった/ラウンジ・バー外観/ラウンジ・バーから回廊を見る
 
  ラウンジ・バー 西側の2つの塔の間にあるラウンジ
 
  客室 北側の庭
 
    城壁の内側に設けられた北側の庭 城壁から増築棟を見る
     

アクセス

リスボンのSete Riosバスターミナルからバス利用。Alcácer do Salバスターミナルから歩いて15分程度。

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