Architecture in Portugal       ポルトガルの建築と街  

 Pousada da Rainha Santa Isabel

 1970,92

07-04-2006更新

 
 西側外観。中世の城壁の中にある。今も昔も街のシンボルである。 

かつて宮廷と市役所があったところに建てられた王立の兵器庫がホテルになった。外観を変更せずに転用にしている。建物内部では幾つかの基準高さに合わせてものを配置することで、既存建築と新たに置かれた家具や絵画が一体となって空間を作っている。

 

この建物の歴史

13世紀 Torre de Menagen主塔の建設が始まった。完成には数世紀を要した。*1

13〜14世紀 起源ははっきりしないがD.Dinis(1279-1325)の時代には城も胸壁も存在していた*1。城壁は街の外周と城の廻りに2種類あるがこの頃あったのは城の廻りのものである*2

17世紀後半 軍事上の理由から城塞の強化が行われた。街の外周の城壁はこの頃のもの。主塔の廻りにあった市庁舎や宮廷は兵器庫に転用された。建築家はNicolau de Langre。*1。

1698年8月17日 兵器庫になっていた市庁舎や宮廷が爆発、炎上、崩壊してしまった。主塔は多少の被害はあったが、この難を逃れた。*1。

1738-42年 D. João Ⅴの命で城の崩壊した部分を新しく建て直し、王立の兵器庫とした。Manuel da MaiaやEugénio dos Santosなどが担当者であった。城の主塔以外の建物はこのときに現在の姿になった。*1。

1808年 Kellerman将軍率いるナポレオン軍に侵略された*1。武器のコレクションが略奪された。

1950年代 商工学校として利用された。*1。

1960年代 ポウサーダへの転用のため工事が始まる。*2

1970年 ポウサーダとなる。客室は23室。*2

1992年 客室を33室に増やした。屋根裏部屋を利用した。*2

参考文献

*1 POUSADA DA RAINHA SANTA ISABEL/HISTÓRIA DAS HISTÓRIAS DE UM CASTELO, JOAQUIM VERMELHO,ELO,1992

*2 CASTELOS E POUSADAS DE PORTUGAL, ENATUR, 1999, p65-86

 

既存建物

不等辺四角形の中庭の東、北、西側をかつて王立の兵器庫だった建物が囲んでいる。この部分は元々宮廷と市庁舎であったが、18世紀に建て替えられた*1。中庭の南側には中世から残っている*1主塔が聳えている。塔の胸壁にある四角錐の頂部はイスラムの影響を示すものである。主塔以外にも小塔が5つあり外周の角やその真ん中に配置されている。

主塔の東側に当たる北側の壁に王家の紋章が彫られた大理石*1で装飾された入口がある。エントランスホールには腰壁をアズレージョで装飾された大きな階段ある。このホールは中庭へのアプローチも兼ねている。兵器庫だった建物の一階部分は天井高が約6mもあり、大理石の柱と白く塗られたアーチが天井を支えている。2階には学校として使われていた頃の間仕切りがあった*2。中庭の南には塔への階段が設けられている。

参考文献

*1 POUSADA DA RAINHA SANTA ISABEL/HISTÓRIA DAS HISTÓRIAS DE UM CASTELO, JOAQUIM VERMELHO,ELO,1992

*2 Direcção-Geral dos Edifícios e Monumentos Nacionaisのwebサイト, http://www.monumentos.pt/

 
  南側外観、主塔が聳える 東側外観
   
  入り口/エントランスホールの階段/階段の2階部分
   
   

中庭への出入口/不等辺四角形の中庭/塔の足下、2階のベランダ

   
ラウンジ・バー   レセプション/レストラン/レストラン

改修後の状況

建物の外観をほとんど変えることなくホテルに転用された。1階がレセプション、ラウンジ・バー、レストランなどの公共的な機能、2階と3階が客室になった。

半屋外だったエントランスホールは壁面の開口部にガラスを入れ内部化され、ホテルのエントランスホールとなった。レセプションとラウンジ、バーを繋ぐためこれらを仕切る壁に新たな開口が設けられた。同様にラウンジ・バーとレストランを繋ぐ開口も設けられた*2。レストランではアーチの収束部で本来なら柱があるべきところに新しい開口が開けられているが、ラウンジ・バーの既存の開口もそのような位置にある。これらの新しい開口部は高さ、材料が既存の開口に合わせてあり、位置も既存の開口の並びに対して不自然にならないように調整されている。

1階のインテリアは古風な家具や絵画(17世紀や18世紀のものも含まれている)がその雰囲気を作り出している。そこには明快な配置のルールが見られ、多くのものがあるにもかかわらず建築と家具や絵画が一体となって空間を作っている。4つの高さの基準線に合わせて様々なものを配置している。4つの高さとは柱頭の高さ(約4m)、大きめの開口の高さ(約3m)、小さい開口の高さ(約2m)、人の視線の高さ(約1.5m)である。柱頭より高い位置には何も取り付けられていない。シャンデリアは柱頭の高さに合わせて吊られている。カーテンだけでなく、絵画やタペストリーも開口の上端に高さを合わせて掛けられている。キャビネットは小さい開口と同じくらいの高さのものが置かれている。床置きの照明は概ね1.5m程の高さのものが用いられている。椅子やテーブル、ソファー、カウンターを含むその他のものは全てこの高さよりも背が低い。時折、基準線から外れた彫刻が、多くのものの中で存在感を明確に示している。

2階のインテリア(廊下)も天井高が1階よりも低いが同様な方法でまとめられている。

3階は更に天井が低い。高さの基準となる建築的要素は貧弱で、開口の上端と天井のモールディングは中途半端に近い高さにあり、うまく配置されていない。ここは1970年の時点では使われていなかったが、1992年に客室となった*1 *2。2階までのデザイン手法がうまく継承されなかったようである。さらに2階から3階に上がる階段もこのときに設置された。この階段は既存への調和を意図して古風なデザインで作られているが隣接する窓の前を横切る配置のために不自然である。

1階で見た手法はゴシックの聖堂やF.Lライトの建築など様々な例に見られる手法であるが、改修建築に於いても、改めてその有効性が確認できた。

参考文献

*1 POUSADA DA RAINHA SANTA ISABEL/HISTÓRIA DAS HISTÓRIAS DE UM CASTELO, JOAQUIM VERMELHO,ELO,1992

*2 Direcção-Geral dos Edifícios e Monumentos Nacionaisのwebサイト, http://www.monumentos.pt/

 

 
  レセプション レストラン
   
  2階エレベーター前/2階から3階への階段/3階廊下
 
  2階廊下 3階客室
   

アクセス

リスボンのSete Riosバスターミナルからバス利用。Estremozのバスターミナル(昔の鉄道の駅)から旧市街を歩いて20分くらい。

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