Architecture in Portugal       ポルトガルの建築と街  
 Pousada Santa Maria de Bouro

 

 1997

 Architect | Souto de Moura  

 

22-03-2006更新

30-03-2003更新

 
回廊

廃屋となっていた修道院を増築、改修してホテルに転用。

この建築は新しいプランを既存部分に由来する建築言語で完成度高く構成した希有な例である。

 

この建築の歴史

12世紀後半か13世紀前半 建設*

15〜16世紀 修道院ごとの自治や資産管理を認めない制度の影響で荒廃。*

16世紀末〜17世紀初頭 自治権の回復に伴い再建。*

1582年 馬車用の門がある修道院南棟の西端の要石設置。*

16世紀末 回廊の西側の棟が完成。回廊にはアーチの載った28本の御影石の柱が設置された。この頃、給排水設備も整えられた。溝は石で作られていた。*

17〜18世紀 修道院東側の厨房、食堂が増築された。さらに教会の祭服室、参事会室の増築も行われた。西側に図書室等を含む新しい棟を増築。*

1715年 祭服室の装飾(タイルと絵画)が完成。*

1834年 修道会の廃止により競売にかけられた。教会は教区教会となり、修道院は廃墟となった。*2

1976年 Amares市が修道院部分を買収。*2

1980年 政府観光局がポウサーダへの転用を提案。*2

1989年 ポウサーダへの転用計画開始*2。建築家はEduardo Souto de Moura。

1994年 改修工事開始。*2

1994〜95年 考古学調査。*2

1997年 改修工事完了*2。ポウサーダとなる。

 

参考文献

* Pousada Sta. Maria do Bouro, ENATUR, 2000, p7-15

*2 De Conventos a Pousadas(872-1997), Fernando Rui de Alberto Rosado Correia, FA-Universidade Técnica de Lisboa, 2003, p51-77

 

 

既存建物

教会、修道院ともに大部分が17世紀に再建されたものでバロックの影響を受けている。オリジナルはロマネスクだったが現在はほとんど残っていない。外観では教会の南側立面だけがオリジナルのものである。*

北側に教会、南側に修道院が配置されている。修道院と教会南面で中庭を構成している。中庭は二層分の高さで、その周りに回廊が設けられていた。修道院の南側には庭が広がり、さらにその先には谷や山が一望できる。

教会正面と修道院北面に面するように細長い広場が設けられている。広場は数件のカフェが並ぶ幹線道路に面していて村の中心になっている。

教会には4角形平面の塔が2つある。正面には広場に面して大階段が設けられている。正面の3つの壁のくぼみには聖母と2人の聖人の像が置かれている。身廊は単一で木製のヴォールトに覆われている。相互に向き合った礼拝堂は側面の壁に設けられ、中央のアーチによって特徴づけられている。擬似的な翼廊にはオリジナルの建物から引き継がれている聖水盤があり、17世紀のタイルで装飾されている。聖歌隊席は木製の手すりで教会部分と隔てられている。そこにある本棚付きの木製の椅子は18世紀のものであるが、金泥塗りの木製曲面パネルは17世紀中頃のもので聖人の生涯を描いている。*

修道院北側の立面の窪みには初代ポルトガル王Dom Afonso Henriquesを含む5人の王族の像が据えられている。これらも再建時のものである。*

参考文献

* Pousada Sta. Maria do Bouro, ENATUR, 2000, p7-15

 

 
  敷地南側のプール オレンジの植わった中庭
 
  左/エントランスホール/中、新しいベランダ/右、レストラン外観、手前は新しい外壁
 
教会前広場、ここからアプローチする 教会は今も現役
   
  教会内部  

 

改修、増築後の状況

この建物は新しいプランを既存部分に由来する建築言語で完成度高く構成した希有な例である。

この計画では復元による建物価値の回復というよりも現代の建物として新たな価値を創造することに力点が置かれている。このため、既存建物内に多数の変更が見られる。まず回廊の屋根を無くし外部化することで建物の主動線を建物本体内に移動している。さらにホテルとしての機能をより充足するため、既存部分の積石の内壁やドアの位置にも多数変更が加えられている。

だが、ほとんどの部分はあたかも昔からそこに在ったかのような不思議な魅力をたたえている。

今回新しくデザインされたサッシや天井などには徹底して既存に無かった形態、材料、工法が用いられている一方で、既存建物に由来するドア枠やアーチ等には旧来と同じ形態、材料、工法が用いられている。一見簡単そうであるが、この方法は職人技術が衰退している現代においては一般化の難しい特殊解である。

以下に、改修、増築後の詳細を示す。

教会はそのまま教会として使われている。元修道院部分にホテルの客室、レセプション、バー、レストランなどの主要機能を納めている。その南側の地下にサービス関係緒室と空調機械設備室を増築している。増築部分は地下に納められ、立面はかつてあった石垣のように仕上げられているので、一見増築部分だとは分からない。小さな横長の窓がかすかに新しい部分であることを示している。修道院の外装はかつて何回か異なる色で石の上に塗装が施されていたが、今回は石の素地仕上げである。

かつての厨房は厨房、薬局はバー、図書室は講堂、食堂はレストラン、個室は客室になった。

特筆すべきは回廊の扱いである。修道院中庭に面したかつての回廊は上階の床や屋根が無い状態で、さながら遺跡のように表現されている。かつてのような主要な動線としての機能は与えられていない。主階の動線は、レセプション、ラウンジ、バー等の部屋を連続的に通過していくよう設定された。これらの部屋は大きくなりすぎないようにアーチや壁で程よく分節されており親密感のある空間となっている。実際、他の元修道院のポウサーダに比べて回廊周りの部屋でくつろぐ人が多く見られた。もし回廊が内部化し主動線としていれば、それぞれの部屋は回廊から一つ奥まった行き止まりの部屋となり、現在ほどの立ち寄りやすさはなかったであろう。

新しく加わった要素で目立つ部分をあえてあげるとサッシと天井ぐらいである。サッシは真鍮製でミニマムなデザインでまとめられている。天井は錆仕上げの鉄製である。グリット状にリブが配置された鉄板は厚さ10センチのコンクリートと合成床板を形成している*。下階のアーチと上階の窓の下枠の間に床を納めなければならないが、既存の寸法は厚さ3〜4センチの木製床に併せてできていたので、通常のコンクリートスラブ(仕上げまで含めて30センチほど必要)では対応できなかった*3。そこで、床板を薄くするために合成床板を採用している*。この合成床板でも納まらなかった部分はアーチ自体を10〜20センチ下げているらしいが*3見た目には判別できなかった。

空調は最下階の床下にダクトを這わせ、そこから各部屋に立ち上げている。このため、一部最下階の床がかつてより高くなっている部分がある。一部の部屋で柱脚と床の取り合い部にそのことが現れているが、こういった部分的なところを除くと、これもまた見た目にはほとんど判別できない。

 

参考文献

*3 Santa Maria do Bouro. Eduardo Souto de Moura, White and Blue, 2000

 

 
  左/バーの開口/中、共用部分をつなぐ開口/右バーのアーチ
 
レストラン 客室
 
  回廊、天井、2階床は修復されなかった ラウンジ
 
  プレイルーム、天井は鉄板 左、客室前廊下/右、サッシ詳細
 
    基壇のような所が増築されたサービス関係緒室 このテラスの下がサービス関係緒室
  

 

アクセス

BragaからバスでBouroまで行く。バス停の前がこの建物。

左、客室前廊下/中、階段/右、コート掛け  
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