Architecture in Portugal       ポルトガルの建築と街
 Pousada Flor da Rosa

 

 1995

  Architect | João Luís Carrilho da Graça

17-03-2006更新

30-03-2003更新

 
南側の村の広場から見る  

廃墟となっていた修道院をホテルに転用。

増築部分と既存部分がくっきりとした対比を見せていながらも、随処に新旧をつなぐ形態や素材、動線の工夫が見られる。

 

この建築の歴史

 

1350年代初頭、修道士  Álvaro Gonçalves Pereiraの命により建立。*

1755年、大地震後の修理の際に多くの建築的刷新が行われた。*

1834年、ポルトガルにおける修道会の廃止を受け、この建物は無人となり、荒廃していった。*

1897年1月17日、嵐の影響で教会の内陣、翼廊、その他の付属部分が崩落した。*

1910年、ナショナル・モニュメントとなる。*

1923年、教区の教会となる。*

1940年代、DGEMN(国の重要建造物と記念碑の監督局)の指導のもと崩落部分の修復が始まる。*

1990年、IPPARによる考古学的調査が行われた。同年、ENATURにより、この建物をポウサーダとする転用計画が始まる*2。設計者は建築家、Joãn Luís Carrilho da Graça。

1995年、改修・増築工事が完了*2。ポウサーダとなる。ただし、一部の修復工事は未完了。

 

参考文献

* Pousada Flor da Rosa, ENATUR, 1995, p11-24

*2 De Conventos a Pousadas(872-1997), Fernando Rui de Alberto Rosado Correia, FA-Universidade Técnica de Lisboa, p128-142

 

既存部分

小さな四角い中庭を囲む形で各部屋が配置されている。中庭の南東、メインエントランスの東側の大きなボリュームが教会である。

 

 

    上、北側外観。左、増築部分テラス。右、マヌエル様式のねじれた柱のあるバー

最初期のÁlvaro Gonçalves Pereiraの住居を含んだ修道院兼宮殿にはいくつかの別棟があった。継続的な造営の結果として、細部には時代ごとに現れた建築表現があり、16世紀のマヌエル様式がその最たるものである。*

最初は中庭を囲むほぼ正方形の平面であった。その後、南東側に増築を行い教会部分が完成。構造体はゴシック。その後リブ付きボールト天井の部屋が南西側に増築された。さらにその後、中庭に回廊、東、北、西側に緒室の増築が行われ、修道院として整えられていった。西側一階の部屋(現在はバー)はマヌエル様式の柱が特徴的である。*2

防衛線上に建てられたため、スリット窓や堅牢な組積(石造)である点に修道院というよりも城砦の特徴が見られる*。

 

参考文献

*Pousada Flor da Rosa, ENATUR, 1995, p11-24

*2 opere e progetti JOÂO LUÍS CARRILHO DA GRAÇA, roberta albeiro e rita simone, Electa, 2003, p66-77

 

 

改修・増築後の状況

特徴的なのは、くっきりとした新旧の対比を見せていながら、随処に新旧をつなぐ形態や素材、動線の工夫が見られることである。

既存建物一階の回廊、回廊西側の教会の一部と回廊南側の部屋は修復されたままの状態でアプローチ空間となっている。一階回廊北側の一つの部屋がホテルのレセプションとなっている。一階回廊東側の緒室はサービス関係の部屋となっている。2階はレストラン、ラウンジ、プレイルーム、客室となっている。これらの部分で古い黄土色の石積みに対し、新しい要素は白いプレーンな表面で仕上げられている。新しい部分には主に空調、衛生設備が収まっているのだが、黄土色の石積みの壁と白い天井、壁との取り合い部には随所にスリットがもうけられ、新旧を明確に区別できる表現となっている。このスリットの一部は空調の吹き出しにも利用されている

既存建物北東の角から北に向かって客室棟が、さらにその北端から西に向かってプールが増築された。これらの増築部分と既存建物の間にはオレンジの木が植わった中庭が新たに形成された。これによって既存建物内のレストラン、客室はプールと程よい距離感を保つことができている。中庭に面するプールの隔ては横長の開口が設けられ形態的には完全に新しい要素であるが、仕上げが既存と同じ石である。白い客室棟と石の既存建物のこの部分をあえて中間的な表現とすることで、新しい部分が古い部分を圧倒することを防ぎ、新旧要素の均衡を保っている。

同様の中間的な表現要素は客室棟の南端の壁にも見られる。プレーンな壁であるが、薄いベージュの石仕上げである。垂直性のある形態で重厚感のある既存部分と水平に軽やかに延びる客室棟をつなぐ要素となっている。

客室棟と既存建物の取り合い部はレセプションの北隣で、階段とエレベータが設置された動線の要所となっている。大きな開口が新しい中庭に面して設けられ、ここが白い増築棟と石積みの既存建物に挟まれていることがうまく表現されている。ここを通るたびに全体が新旧の建物群であることが把握できる。

また、街から既存建物、客室棟に至るまでの空間体験が見事である。街側から来ると増築棟は見えず、そのまま、薄暗いエントランスに至る。その後、空の見える回廊を経て再び薄暗い空間を抜けるとレセプションである。レセプションを抜けると明るい中庭に面した階段である。ここで、新旧両方の建物が見える。階段をのぼり、明るいがほとんど外の見えない廊下を経て客室に至る。客室の入り口は狭く暗い。そのまま奥に進むと美しい景色の見える明るい部屋となっている。既存棟が作り出す、狭・広、明・暗という対比的な空間体験を増築棟でも繰り返すように動線上に並べている。ここでの空間体験は新旧が鮮やかに対比を描きながらも、分ち難い一体感を獲得している。

 
  ラウンジ プレイルーム
 
 

プールと中庭の隔て壁

客室棟の南単
 
    Flor da Rosaの 街からポウサーダを見る エントランスをくぐると回廊にでる
         
左から回廊、回廊から内部に入ったところ、レセプションの隣の階段、客室棟の廊下、客室
 

 

アクセス

まず、リスボンのSete RiosバスターミナルからバスでPortalegreまで行く。そこからタクシーで 15分から20分くらい。

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