「くらやみの速さはどれくらい」
エリザベス・ム−ン著
小尾芙佐◎訳
自閉症の処方についての近未来を描いたSF。
21世紀版ダニエル・キイスの「アルジャーノンに花束を」と評されています。
なかなか奥深いお話です。
「暗闇はいつも光より先にいる、暗闇の速さは光より早いのではないか。」(本文の一部要約)
物語の主人公のルウは、自閉症の画期的治療法が確立する前の最後の世代でした。
彼が勤めている会社の彼のセクションには彼のような世代の自閉症でしかも突出した才能を持ち合わせた仲間達が働いています。
そこで、実験段階である自閉症の治療法の人体実験を会社側から強要される・・・というのがだいたいの粗筋です。
物事のパターン化と数学に天才的才能を持つ主人公ルウの、物の見方が実にユニークで新鮮です。
子供の頃から折り合いを付けて適合しながら生きてきたルウは、あくまでも純粋で、捨てがたい魅力的をもった存在でもあります。
「社会的に普通と思われていることが出来ることが普通・ノーマルなのか?」
私自身以前からそう思っていますが、物語を読んでいるうちに「何がノーマルで何がノーマルでないのか」分からなくなってきます。
彼らにとって、ノーマルとは乾燥機の設定に等しいことなのです。
ルウはたぶん、自分の中に有る暗闇の速さを感じてみたかったんだと思います。
だから・・・・・・
結末は、ある意味のハッピーエンドかな?
著者のエリザベス・ム−ンさんの息子さんが自閉症で、その経験をもとにして書いているそうです。
なのでしょうね、根底にある暖かい流れのようなものが感じられます。
自閉症についてあまり知らなかったので、ネットで調べてみました。
先天的に脳の機能障害による発育障害、言葉の発育が遅れる、情緒や対人関係が苦手、モノにこだわるなど、そしてある種の才能が突出して発達することも。
その2割ほどの人は、知能障害を伴わず仕事を持って自活しているそうです。
単なる内弁慶のだったかもしれませんが、私は、幼少の頃、人前で笑ったことが有りませんでした。
未だに、どんな表情をしていいのか判断がつかなくて顔が引きつっていることも有りますが、じぶんなりに折り合いを付けて今に至った思いがあります。
決して自閉症のような重い症状でないにせよ、その辺の境目のあやふやな線上にいたのかもしれません。
「私ってさー、自閉症で普通の生活が出来ている2割人だったもかもね」
と、イガタに言ってみたら、
「ずっと、そうだと思ってたよ」
と、イガタの返事。
いつでも、そうです。否定しない奴。
だから助かってるのかも。
未知な部分、無知な部分が暗闇だとしたら、世の中の、自分の中の光りか当たっていない暗闇は、より速い速度で進んでいるのかもしれません。
Posted: 2004-12-13 at 21:51