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〈日米地位協定〉機密文書入手
2004年1月1日(琉球新報)〈日米地位協定〉機密文書入手
条文超える米軍優先
日米地位協定に関する政府の基本解釈となる機密文書「地位協定の考え方」を琉球新報社は12月31日までに入手、全容が明らかになった。同文書は、表紙に「秘 無期限」と記された非公開文書。それによると、沖縄を含む日本国内の提供・施設区域における米軍の「排他的使用権」を認め、国内法の適用除外など治外法権的な地位を容認している。米兵犯罪の身柄引き渡し等を定める17条の解説では「日本側が第一次裁判権を有する事件でも公訴提起までは米側」とする点を「もっぱら米国との政治的妥協の産物」とし、「説得力ある説明は必ずしも容易ではない」と問題点を認めている。
地位協定の逐条解説書となる同文書(B5判、132ページ)は、復帰翌年の1973年4月に外務省の条約局とアメリカ局が作成。国会などでの答弁作成の基礎資料とされてきた。
公海上の米軍演習海域設定や日本政府が認める提供施設・区域外での米軍雪中訓練を、政府が「便宜上レクリエーション」と説明する答弁を「協定上の妥当性には疑問」と指摘するなど、外務省自ら解釈上の多くの課題を挙げ、対応に注意を促している。
地位協定改定問題で県は「−考え方」の存在をつかみ、複数の外務省幹部に非公式に同文書の提供を打診したが拒絶されてきた。
地位協定研究の第一人者である本間浩法政大学教授は、日本政府の対米姿勢について「条文を超える米軍優先の解釈と、過剰なまでの譲歩」と指摘している。
外務省は同文書に対する琉球新報社の照会に「秘の部内資料との位置づけとなっている由であり、対外的にコメントや説明をすることは適切でない」としている。◇ ◇ 日米地位協定
日米安保条約6条に基づき、日本に駐留する米軍の法的地位などを定めた政府間協定。全28条。1960年、安保条約とともに発効して以来、条文は一度も改定されていない。基地内への立ち入り制限や、基地返還の際、米側が原状回復を負わないことなどを規定。米兵の犯罪容疑者について起訴までの身柄は米国が拘束する規定があり、県や基地所在市町村が再三、改定を政府に要請してきた。95年の少女乱暴事件後、殺人と婦女暴行を「凶悪犯罪」として、起訴前の身柄引き渡しに米側が「好意的な考慮を払う」との運用改善合意が日米間で交わされた。これを適用して引き渡しが行われた例は3件ある。
<解説>日米地位協定の外務省機密文書外務省機密文書「地位協定の考え方」は、協定運用における実質的な「逐条解説書」といえる外務官僚の“虎の巻”だ。表紙右上に「秘 無期限」の印が押され機密扱い。無期限とは、情報公開の「対象外」を意味し、存在自体が否定されてきた。
国会審議などで存在が指摘され、公開要求や記述内容が追求された。だが、外務省は同文書について「存じていない」(川口順子外相)とのスタンスを堅持してきた。
「−考え方」は、沖縄返還に伴う在沖米軍基地への地位協定適用などに対応するため、1973年4月に外務省条約局とアメリカ局が、条項別に「法律的側面の現時点における政府の考え方を総合的にとりまとめた」(はしがき)ものだ。
公海上での米軍演習地域の設定や核問題など、締結時には想定されなかった在沖米軍・施設への地位協定適用を「本来、改定で対応すべきを、解釈で乗り切るために策定した」(外務省高官)とされる。いわば“解釈改定書”だ。
文書には具体的な事例が多数盛り込まれ、米軍優位の協定内容への疑問や過去の国会での政府答弁の矛盾、問題点も赤裸々に紹介されている。
また、同文書で「非公開」が前提の日米合同委員会の合意内容、地位協定に関する「擬問擬答集」「地位協定逐条説明」「条・条ペーパー」など多数の機密文書の存在も明らかになった。
外務省は「地位協定の解説書はない」とし、改定論議をかわしてきた。
同機密文書の存在が公になったことで、暗礁に乗り上げてきた地位協定改定問題での論議の活発化が期待されている。(編集委員・前泊博盛)◇ ◇ 平時における内容が伴わず/本間 浩・法政大教授
「地位協定の考え方」で目立つのは、外務省が平時に米軍が駐留することで地位協定を結ぶことになったと意識している点だ。基地をどういう基準で設置し、運用するかという問題は、結局米との力関係によって確定された。米国の世界戦略に引きずられ、本来の平時における地位協定の内容が伴っていない。
17条の米軍人の犯罪容疑者の身柄拘束と引き渡し問題では驚きを覚えた。米側からの引き渡しについて、両国の相互協力原則の例外と位置づけている。例外であるなら、厳格な制約原則を明確にしないと適用できないが、そうなっていない。
24条の駐留経費負担では、この「−考え方」が出る前の政府答弁は、基地の提供は日本政府の責任、運用に関する費用は米側が負担するという解釈だった。しかし、新しい建造物を造ることに、日本側の負担に問題はないとしている。
当時は円高ドル安の時期。駐留経費の水膨れ分について日本に負担させようとした米側の意図が、協定の文言解釈に反映し、従来一貫していた日本側の解釈が根こそぎ改められている。米側につけいるすきを与える危険な対応の仕方と言わざるを得ない。(談)(国際法)◇ ◇ 日米合同委に「透明性」必要/明田川 融・法大講師
機密文書「地位協定の考え方」は、地位協定全体について政府の考え方が包括的に述べられている点が一番の特徴だ。
文書の中で芋づる式に、ほかの「擬問擬答集」「逐条説明」、沖縄や本土の基地の取り決めなど(非公開の)日米合同委員会の合意も、注書きで明らかになっている。
文書の中で、外務省がある程度は原則に従おうとしている姿勢と、実際の運用の中では必ずしもそうならず、米側にかなり配慮した、そんなせめぎあいが見受けられる。特に24条の経費では、それがかなり表れている。
核を積んだ艦船の寄港や通過は、この文書の中では、事前協議の対象との解釈で政府の考え方は一貫していると書いている。しかし、実際の運用や交渉の場では、必ずしも米国に対し日本政府は貫けていない。
基地の使用条件は、協定もさることながら実施段階が沖縄には一番密接に関係している。日米合同委員会という密室で決められ、なおかつ政府を拘束する合意内容を、もう少し透明性をもたせ、基地の運用実態の解明のためにも、その公開を求めていくことも必要だ。(談)(日本政治外交史、占領史)
「地位協定の考え方」の条文解釈概要
(※注は文書内の注書き)●第2条【施設・区域の提供、返還、共同使用】
〈観念〉「『施設及び区域』そのものに関する定義は、安保条約にも地位協定にも存在しないが、(略)(安保条約6条の)規定に従い日本政府により使用を許される建物、工作物等の構築物及び土地、公有水面を中心とし、これらの運営に必要な現存の設備、備品及び定着物を含む観念」(11ページ)
〈秘密〉「個々の施設・区域に関する協定及び取極は、合同委員会関係文書であり(略)、原則として非公表扱いが日米間で合意され、公表されない」(13ページ)
〈公海の提供〉「沖縄返還に伴い(略)新規指定として公海上の訓練水域を経度緯度により示しているが、公海水域があたかも第2条により提供されたものであるかの如き印象を与える余地を残しているので、近く訂正されることになっている」(15ページ)
●第3条【施設・区域外の管理】〈排他的使用権〉「『管理権』は、施設・区域について米側が排他的使用権を意味し(略)立ち入り、使用禁止の権能、使用に必要なすべての措置をとりうる権能を意味する。これは、地位協定上の施設・区域の本質的な要素であると考えられる」(27ページ)
〈公権力にも対抗〉「立ち入り禁止は日本側公権力にも対抗しうる点に特徴がある」(27ページ)
〈国内法の適用排除〉「米軍の活動には、原則としてわが国の法令の適用がなく(略)特別の法的地位を有する」(28ページ)
〈雪山訓練への疑問〉「注書 一定の活動が軍隊としての活動に該当するか否かは明確でない場合もありうるが、個々の実体により判断せざるをえない。例えば、米軍人がグループで北海道の施設・区域外の雪山でスキー訓練をする例があり、これにつき政府は、説明の便宜上レクリエーションと説明したことがあるが、米軍としては、かかる訓練を軍人としての公の訓練の一環と考えていることは明らかであり、協定上の妥当性には疑問がある」(28ページ)
〈立ち入りに厚い壁〉「施設・区域について日本政府(又は国会議員団、地方公共団体等)の立入り権(又は立入り調査権)が認められるかという問題が頻繁に提起されるが、(中略)派遣国又は当該軍隊の同意がある場合は別として、かかる軍隊の施設に立ち入って調査することができないのは一般国際法上の原則である。(これは、一般国際法にそのような具体的な規則が存在するということではなく、軍隊が第一義的には派遣国の主権の下にあることの当然の帰結であるという意味である)」(30ページ)
●第4条【施設・区域の返還に際しての原状回復、補償問題】〈ボン協定無視〉「第4条1項は、米側が施設・区域の返還に際してこれを提供された時の状態に回復し、又はその回復の代わりに日本に補償する義務を負わないという趣旨である…(中略)施設・区域返還後の個々の地主との原状回復問題は、専ら政府(施設庁)と当該地主との問題であることは明らかである。(36ページ)
※注 第4条1項については、米軍の故意又は重大な過失による形質変更にはこの規定が適用されないのではないかとの議論がある(ボン協定にはこの旨の規定がある)が、日米両政府間の問題であって、地主との関係は専ら日本政府の処理する問題である」(37ページ)
●第17条【逮捕・身柄引き渡し等の相互協力】〈例外〉「日本側当局及び米軍当局は、日本の領域内における米軍人・軍属及びその家族の逮捕及び4項までの規定に従って裁判権を行使すべき当局へのそれらの者の引き渡しについて相互に協力しなければならない(5項a)。米軍当局が日本側の第一次裁判権の対象となる者を逮捕したときはその身柄を日本側に引き渡すべきこととなるが、5項cは、その(5項aの)例外を定めたものと解される」(89ページ)
〈広義の拘束〉「被疑者の拘禁は、その者の身柄が米側の手中にあるときは、日本により公訴が提起されるまでの間、米側が引き続き行う(5項c)。米側の手中にあるときは、米側の刑事手続き上米側に拘禁されている場合のみならず、より広い意味で身柄が米側により拘束されていれば、足りるものと解される」(89−90ページ)
〈政治的妥協の産物〉「以上の点は、もっぱら米国との政治的妥協の産物であり(米議会において米国が第一次裁判権を放棄する範囲が広すぎるとの議論があり、これに対抗するためせめて身柄拘束に関しては米側権利を広くしようとしたこと)、説得力ある説明は必ずしも容易ではないが、少なくとも(イ)食事・寝具等の風俗習慣等の違いから日本側としてもこれらの者を拘禁することは不必要な手数がかかること(ロ)米側の拘禁に委ねても逃走のおそれなく、又取り調べ上は支障なく、米側による身柄拘束は日本側の公訴提起までの間という暫定的なものにすぎないこと(ハ)対象となる事件については米側にも第二次的には裁判権のあるものであり、第一次裁判権を有する側との間の均衡の問題として、米軍人等を米側に暫定的に委ねても必ずしも不当とは考えられないこと等の理由によりある程度の説明は可能と考えられる」(90−91ページ)
●第24条【日本側が負担すべき経費】〈既存施設〉「既存の施設・区域において日本側が建物等の日本側による改築(即ち、改築しなければ本来の提供目的が達し得ないごとき場合であり、通常の維持として観念し得ないもの)等は、右にいう施設・区域の提供として日本側が経費を負担して差し支えない(逆にいえば、協定上の義務として米側の経費負担とすることはできない)ということである」(125ページ)
〈諾否〉「米側から右のごとき措置を日本側の負担で行うべき旨要請された際、いかなる基準で(略)諾否を決めるかといえば、安保条約の目的達成との関係、わが方の財政負担との関係、社会・経済的影響等を総合的に勘案の上個々の事案に即して判断する」(125ページ)
〈新規建物提供〉「施設・区域の提供が、既存の土地・建物に限られず、日本側が提供目的上、妥当と認めて合意する限り、新規の建物の提供を排除していないとすれば、かかる提供が既存の施設・区域においては禁じられるとするのは合理的ではないことは明白である」(126ページ)
〈移転に限らず〉「施設・区域の追加提供等は、リロケーション(移転)の場合に限られないことになる」(127ページ)
【関連記事】
<日米地位協定>非公開文書、「公表求める」と県幹部
外務省が1973年の作成時から現在までの30年以上、非公開にしている日米地位協定の政府解釈「日米地位協定の考え方」と題する文書の概要を琉球新報社が1日の朝刊で明らかにしたことについて、県幹部は3日「初めて文書の内容を知った」と驚いた反応を見せた。その上で外務省が県にも同文書を明らかにしていないことについて「全国75%の米軍基地を抱える沖縄県が公表を求めるのは当然のことだ」と述べ、外務省に文書の公表を求めていく立場をあらためて示した。平和・市民運動団体からは「政府の対米追随、弱腰外交を裏付けるものだ」と厳しい批判が上がった。
県は過去に同文書の存在を把握し、外務省に非公式に文書提供を打診したものの拒絶され、文書の内容を掌握できないまま現在に至っている。
今回、琉球新報社が報道した同文書の概要の中で、外務省自身が協定の解釈について「協定上の妥当性には疑問」「説得力ある説明は必ずしも容易ではない」と記すなど、矛盾点を抱えていることを認めている。
そのことについて県幹部は「日米地位協定は全国で最も沖縄で適用されている。その協定自体に外務省が不合理な点を見いだしているというのなら、適用される側から見ればいかがなものかと思わざるを得ない」と述べ、日本政府も疑問を抱く協定下に沖縄県が置かれ続けてきたことに憤りを隠さなかった。
外務省が現在まで非公開としていることについては「復帰特別措置法でも逐条解説は公開され、だれでも自由に目を通すことができる。法律には必ず逐条解説があり、それを公開しないというのは考えられない」と述べ、首をかしげた。
同文書について、沖縄平和運動センターの崎山嗣幸議長は「驚きというより、やっぱりという感じ。問題解決に当たることよりも、解釈でごまかそうという対米追随、軍事優先の外務省の姿勢が表れている」と批判。
米軍人・軍属による事件被害者の会の共同代表を務める村上有慶さんは、米兵犯罪の身柄引き渡し等を定める17条の解説について「5項cについては、アメリカの要求で強引に入れられたため矛盾していると以前から言われていた。(文書の存在で)やはりという感じだ」と指摘。改定については「これまでのような努力目標的なあいまいな表現では駄目だ。断定的な表現にしていかないと何も変わらない」と日本政府の消極的姿勢を批判した。(琉球新報 2004/01/04)<地位協定>政府、機密文書の増補版保有
【東京】政府は30日午前、琉球新報の報道で明らかになった、日米地位協定に関する政府の基本解釈となる機密文書「地位協定の考え方」 について、1980年代にあらためて作成されたとされる「増補版」の存在を認め、保有していることを明らかにした。照屋寛徳衆院議員(社民)が提出した質問主意書に回答したもので、答弁書は同日の閣議で了承された。73年版の「-考え方」原本については「保有していない」 「文書が存在しているかどうか答えるのは困難」などとし、存否への言及を避けた。存在自体が否定されてきた機密文書に関し、政府がその増補版の存在を認めたことで今後、関係文書の公開要求に拍車が掛かり、地位協定改定論議にも大きく影響しそうだ。
照屋氏は質問主意書で外務省元幹部の証言(本紙1月13日付朝刊)にある「-考え方」の増補版の存在を認めるか、と質問。これに対し、政府は「(琉球新報の)紙面で元幹部が述べたとされている80年代に作成された『地位協定の考え方』増補版に該当すると思われる文書は保有している」と回答、増補版の存在を認めた。
一方、73年に作成された「-考え方」の文書の存在と全文公表については「『-考え方』と題する文書は保有していない。政府以外の者が文書を保有しているかどうか確認できないため、その文書が存在しているかどうか答えるのは困難である」とした。
「-考え方」に基づいて地位協定の解釈運用に当たってきた事実については「文書を保有しておらず、(琉球新報に)掲載された文書が政府の文書かどうかについて確認できない」とし、文書に基づいて地位協定を運用してきたことへの言及は避けた。
一方で「地位協定については、これまで個々の事案に応じて適切に解釈運用を行ってきている」と強調した。「疑問疑答集」「地位協定逐条説明」「条・条ペーパー」の存在については「何を指すのか明らかでないので、答えるのは困難」とし、これらの文書の存在に関しても否定しなかった。◇県、文書の提供要求
政府が1980年代に作成された文書「日米地位協定の考え方」増補版の存在を認めたことを受け、県基地対策室は30日中にも外務省に対
し、同文書の提供を求める方針だ。
本紙が73年作成の同文書の存在を報道した後の今月7日、県は外務省沖縄事務所に文書の存在確認と提供を求める申し入れをしており、同事務所から県に30日朝に増補版の存在を認める回答が届いたが、文書自体は提供されていない。
久場長輝室長は「『考え方』の増補版の存在を認めたことは新たな事実なので、すぐに提示するよう外務省に要求したい。在日米軍基地が集中している沖縄にとって、地位協定の政府解釈が記されている文書を入手することは重要なこと。外交上の理由で公表できないこともあるとは思うが、外務省は積極的に公表できるものは明らかにするという姿勢を示してほしい」と話し、文書を要求する方針を示した。
県は昨年6月、衆院沖縄・北方特別委員会で同文書の存在が議論された際にも外務省に文書の存在確認を照会したが、外務省からは「地位協定の解説書なるものがつまびらかではないが、もしそれが当省の部内参考資料というものであるならば、当省の公式見解を示すものとは言えない」とする文書の存在を否定も肯定もしない答えだけが届いていた。◇公表すれば日米関係損なう/外務省
外務省は30日午前、「地位協定の考え方」増補版の公開について、「米国との交渉上、不利益を被る恐れや、信頼関係が損なわれる恐れがある」と述べ、公表しない方針を示した。
増補版の保有を認めながらも1973年版を保有していない、とした点については「増補版と思われる文書である以上、基となる文書が存在していたと推測されるが、いずれにせよ指摘の文書(73年版)は保有していない」と説明した。同省は「増補版」について「昭和50年代に作成された部内の参考資料で当時の担当者の考え方を記したもの」と位置付け、部内の考え方のほか、日米間の外交上のやりとりに関する記述などが含まれているという。◇県内関係者、改定きっかけを期待
機密文書「地位協定の考え方」増補版の存在を認め保有していることを外務省が30日、明らかにしたことについて、米軍基地所在自治体の首長、識者、平和団体のメンバーらは「存在自体を認めたことは非常に重要」とした上で、「増補版があるならその原本があるはずだ」と話し、今後、1973年作成の原本の確認と増補版の公開を政府に強く求めていく必要性を訴えた。日米地位協定の改定のきっかけになることを期待する声も上がった。
宜野湾市の伊波洋一市長は「地位協定の改定を求めてきた沖縄に対し、取り合わなかった政府の対応が分かる。(増補版の保有を認めたことが)新たな改定に向けた取り組みのきっかけになってほしい。県軍用地転用促進・基地問題協議会(軍転協)や中部市町村会などで、文書の公開も求めたい」と述べた。
北谷町の辺土名朝一町長は「原本があるから増補されるはずだ。日米両政府が協議した内容や条文、政府が保有する文書について、明らかにするべきだ。特に沖縄は地位協定の改定を求めており、国民の権利にかかわる政府が保有する情報をすべて明らかにしてほしい」と述べた。
日米関係に詳しい我部政明琉大教授は「政府の考えをまとめた増補版の存在が明らかになったことが重要だ。まずは、増補版の公開を求め、現在の政府の考えを知ることが必要だ」と指摘。「初版が『確認できない』という文言は『文書を作成していない』ということではない。探せば出てくる可能性もある」と話した。
また、「個々の事案に応じて適切に解釈運用」という点について「どのような解釈運用だったのか、これら増補版と解釈が妥当だったか法的に検討、議論し、問題点が明確に整理されることで、日米地位協定改定に向けての一歩になるだろう」と話した。
平和運動センターの仲里正弘副議長は「これだけ明らかになっているのに増補版の存在だけを認めるのも不自然。地位協定が身柄引き渡しや補償の面で米兵側に都合のいいように運用されているのは明らか。県民の命や安全より日米安保をいかに安定させるかに主眼が置かれている。政府は自ら情報公開すべきだし、今のままではとうてい納得できない」と話した。◇政府、今なお「虎の巻」頼み
1973年に作成された日米地位協定に関する政府の機密文書「地位協定の考え方」について、文書の増補版が存在することを政府が公式に認めた。政府は、本紙が全文掲載した73年版については「保有していない」と突っぱねてきたが、増補版の存在を示唆した外務省元幹部は「(73年の作成後)10年間で増えた国会答弁などを付け加え増幅した形で改訂しているはずだ」と指摘しており、「書き換え」ではなく、“増強版”であることがうかがえる。
今回、政府が増補版の保有を認めたことは、条文の本旨を拡大解釈し、米軍に対し過剰に譲歩する内容の30年前の「虎の巻」が、今なお政府の解釈本として、外務省内に根付いていると言えよう。
「-考え方」は、在日米軍専用施設の75%を抱える沖縄側にとって、基地運用の現実を知る上で手元に置きたい公文書である。政府が増補版の保有を認めたことで今後、県や基地所在の市町村、各都道県からの公開要求が強まるのは必至だ。
「対等な地位協定」に見直すためにも、公開に向けた政府の姿勢が問われている。(東京報道部・玉城真理子)(琉球新報 2004/01/30)<日米地位協定>「考え方」弁護士が公開求め提訴
【横浜】横浜市の弁護士が外務省の秘密文書「日米地位協定の考え方」の開示を外務省に請求したが拒否されたため、非開示処分取り消しを求める行政訴訟を東京地裁に起こしていたことが22日までに分かった。大川隆司弁護士=横浜弁護士会所属=が、16日に提訴した。大川氏は「協定の行政解釈を記した文書はどこの国でも作るはずで、非開示とは驚いた。文書を作った30年前と今とで外務省の見解がより対米従属的に変わったのを知られたくないのが本音ではないか」と批判、あくまで開示を求める考えだ。第1回口頭弁論は3月中にも行われる予定。
大川氏は、家永三郎元東京教育大教授(故人)の教科書訴訟弁護団の一員で、高嶋伸欣琉球大教授の教科書訴訟弁護団では副団長を務めているほか、横浜市にある米海軍上瀬谷通信基地の市有地に関し、国に返還請求するよう住民が市に求めた裁判(上瀬谷基地返還住民訴訟、2002年7月提訴)の弁護団の1人。
その一環で「-考え方」の存在を知り、裁判の参考にしようと複製を入手したが、文面が不鮮明なため、昨年9月、情報公開法に基づいて外務省に開示を求めた。だが同11月14日、「文書の存否を明らかにすることで米国の信頼を損なうおそれがある」と、開示請求拒否の決定が下った。
大川氏は「地位協定締結交渉の舞台裏を記した文書なら“米国の信頼を損なう”ことも分かるが、これは行政解釈を書いただけの文書だ。どの役所も所管の法律の解説書を公刊しているのに、なぜ開示しないのか理解できない。複製は既に手元にあり、文書があるのは百も承知なのに、存否すら答えないとは珍妙だ。外務省の解釈に一貫性がない点を突かれたくないだけではないか」と批判する。
今回の非開示処分取り消し請求訴訟で、大川氏は知人の弁護士に裁判への参加を呼び掛けており、弁護団を組織して取り組む構えだ。(琉球新報 2004/02/23)<地位協定考え方>北米局長「原本は廃棄と推測」
【東京】外務省の海老原紳北米局長は16日の参院外交防衛委員会で、「地位協定の考え方」増補版の基になる文書の存在について、増補版に該当する文書の存在は同省内で確認したものの、基となる文書については省内を探したが見つからなかったと述べ、1973年作成の「―考え方」原本については保有していないことを重ねて強調した。大田昌秀氏(社民)への答弁。
大田氏は、行政機関の保有する情報の公開に関する法律に基づき設けられた同省の文書管理規程に違反するのではないかと指摘。
これに対し海老原局長は、文書管理規程では適当な保存期間を設けた上で廃棄することになっていると説明。原本は「なんらかの理由によって廃棄されたのではないかというふうに推測している」と述べた。(琉球新報 2004/03/17)米軍賠償金不払い:国内3爆音訴訟の賠償金を負担せず
極東最大の米軍基地、嘉手納飛行場(沖縄県)の飛行差し止めなどを求めた「嘉手納爆音訴訟」など、原告側の勝訴が確定した国内3つの騒音・爆音訴訟で、米政府が日米地位協定に基づく賠償金の負担分、計約19億円の支払いを拒否していることが14日分かった。日本が肩代わりしており、国民にツケが回されている実態が浮き彫りになった。
照屋寛徳衆院議員(社民党)の質問主意書に、政府が一部について書面で答えた。答弁書や外務省日米地位協定室によると、米側が負担を拒否しているのは、嘉手納爆音訴訟判決(98年5月、賠償額約15億4000万円)のほか、第1〜3次横田基地騒音差し止め等請求訴訟(93年2月〜94年3月、同計約8億8000万円)と第1次厚木基地爆音訴訟(95年12月、同約1億円)判決。いずれも国が原告側に賠償金を支払った。
地位協定は、米軍が損害を与えた民間人への賠償について、米側にのみ責任がある場合、賠償額の75%を米国、25%を日本が負担すると規定。本来は総額約25億2000万円中、約18億9000万円は米国負担となる。外務省は「規定に基づき米側に75%の負担を請求している。協議中だが、まだ妥結していない」と話す。拒否理由などについては「合衆国政府との信頼関係が損なわれる恐れがあり話せない」という。
照屋議員は「米国は未納大国だ。地位協定の明文すら守らせることができない外務省の弱腰の対米交渉が原因。不平等な地位協定を早期に抜本的に見直すべきだ」と話している。【松藤幸之輔】(毎日新聞 2004/05/14)条文超え米軍に特権 「地位協定の考え方」増補版入手
琉球新報社は、外務省が開示を拒否している機密文書「日米地位協定の考え方」増補版を、19日までに全文入手した。同文書は1983年12月に外務省条約局条約課が作成。ミグ亡命事件や米軍駐留経費の日本側負担増(思いやり予算)、米軍犯罪の増加など基地問題の「状況変化」を踏まえ、「―考え方」(73年4月作成)を大幅に補加筆し解説を加え、協定条文を超えた米軍の特権を補強している。増補までの10年間で、沖縄などで基地被害が頻発。再発防止を求める住民や自治体の声も高まった。だが、米側に改善を求めるよりも、むしろ米軍の活動が地位協定上「容認できる範囲」とする、外務省の米軍擁護の地位協定解釈に終始する姿が浮き彫りになっている。
増補版は「―考え方」から10年を経た83年12月に外務省条約局条約課の「担当事務官」が作成。「―考え方」(全135ページ)を259ページに増補し、10年間の「状況の変化」を踏まえ、主要条文について国会答弁や事例、解釈、解説などを「補加筆」している。注釈も117から214項目と、大幅に増えたのが特徴だ。
増補版「はしがき」で外務省は「政府としての考え方を総合的にとりまとめた執務上の基本的資料として重用されてきている」と記述。同文書を地位協定の重要な逐条解説書と位置づけている。
本文で外務省は地位協定の多くの矛盾、問題点も自ら指摘。「改定」でなく「解釈」で乗り切ろうとする姿勢や、国会で追及された場合、答弁に苦慮することが予測される点なども記載。外務省の本音や弱音、対米姿勢、日米関係の実態も詳述している。
第27条「改定手続」(256ページ)では、駐留経費の軽減要求から国会での改正を求める質問の増加を指摘。その上で、外務省は「改正は考えていない」との政府答弁を紹介し、当時から否定的な見解を示している。
増補版について、日米関係の研究者らは「中身は事実上の解釈改定。しかも米軍優先の基地使用を強化している」(本間浩・法政大教授)「安保を前提に米軍の活動を当然視し、日本の法支配の外に置くもの」(我部政明・琉大教授)と、あらためて外務省の対米追従姿勢を批判している。
「―考え方」は今年1月1日に、本紙がその全容を報道。外務省は1月30日に、増補版の保有を認めたが、「日米関係に悪影響が出る」などとして、県や県出身国会議員らによる公開要求を拒んでいた。(琉球新報 2004/07/20)本紙にJCJ大賞 地位協定改定キャンペーンで
日本ジャーナリスト会議(JCJ)は30日、優れたジャーナリズム活動・作品を顕彰する2004年のJCJ大賞(グランプリ)に、琉球新報社の地位協定取材班と北海道新聞の道警裏金問題取材班を選んだ。応募作は86件。琉球新報社の大賞受賞は初めてで、県内の新聞では初。
琉球新報の受賞作は「外務省機密文書の暴露と地位協定の改定を目指すキャンペーン報道」。
本紙の選出理由として、JCJは「在沖米軍基地などの占領軍的な特権を最大限存続させた外務省の秘密解釈書『地位協定の考え方』やその増補版をスクープし、今に至る不平等の源流をたどり、地位協定の抜本的改定を促した」と評価した。
北海道新聞に対しては、「道警の裏金づくりを600本の記事で実証し、全部署対象の内部調査や特別監査に至った」とした。
地位協定改定キャンペーンは、今年1月1日付朝刊で、外務省機密文書「日米地位協定の考え方」(1973年)をスクープしたのを皮切りに、連載「検証 地位協定 -不平等の源流」を56回にわたり連載。米軍優位の地位協定解釈に走る外務省の姿を照らし出し、基地被害解決の壁となる地位協定の弊害を追及。改定の課題を探った。
また、米軍私有車両(Yナンバー)の車庫法違反や、基地爆音訴訟での米側の賠償分担拒否、「-考え方」増補版(83年)の全容もスクープし、外務省による米軍特権補強の実態を暴露した。◇地位協定問題の徹底検証続ける/宮良健典編集局長の話
沖縄だけの問題ではなく、地位協定改定を全国の問題としてとらえてもらい、JCJ大賞を受賞したことは光栄だ。今後とも地位協定問題について、徹底した検証を続けていきたい。◇JCJ
1955年に設立。「自由な言論は健全な民主主義を支える礎」をモットーとする国内で最も古い、各分野のジャーナリストの統一組織。会員は約800人。58年以来、年間の優れた言論・報道活動にJCJ賞を贈っている。JCJは「JAPANCONGRESSOFJOURNALISTS」の略。(琉球新報 2004/07/31)
【関連サイト】
機密文書「地位協定の考え方」目次(琉球新報)
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