抑制遺伝子「REIC」でがん治療=世界初、70代男性に−岡山大病院
岡山大学病院(岡山市)で25日、県内に住む70代の前立腺がん患者の男性に対し、がん抑制遺伝子「REIC」を投与する治療が行われた。REICは少ない副作用でがん細胞を死滅させる抑制遺伝子として期待されており、病院によると、人体に投与するのは世界で初めてという。
病院によると、REICは体内のがん細胞を死滅させ、抗がん免疫を高めるたんぱく質を作り出してがんの再発を防止する。2000年に病院の研究チームが発見し、今回の治療には英国の製薬会社に依頼して製剤化したものを使用した。(時事通信 2011/01/25)抗がん剤:微小カプセルで患部に直接 動物実験成功、「薬剤耐性」に効果
抗がん剤を微小カプセルに入れて、抗がん剤が効きにくいがん細胞に直接届け、増殖を抑えるとともに細胞内で働く様子を観察することに、片岡一則・東京大教授らのチームが動物実験で成功した。6日付の米医学誌に発表した。
抗がん剤の多くは、使い続けるうちに薬の働きを抑える物質が細胞内に作られるなどして効きにくくなる。同チームが開発した手法はこうした薬剤耐性がんにも有効で、患部に直接届けることから副作用も軽いという。欧州では人への臨床試験も始まっている。
チームは、高分子で作った直径約40ナノメートル(ナノは10億分の1)の微小カプセルに抗がん剤を入れ、その抗がん剤に耐性を持った大腸がんマウスに注射。カプセルががん細胞内で壊れる様子が観察できた。同じ耐性を持つマウスに、抗がん剤をカプセルに入れずに投与したところ、25日後にがんの体積が約50倍に増えたが、カプセルに入れて投与したマウスは約2倍にとどまった。
カプセルは細胞内の核の近くで壊れて薬を放出するため、薬の働きを抑える物質の影響を受けにくいと考えられる。【永山悦子】(毎日新聞 2011/01/06)動脈硬化を早期発見 名工大が新測定法、4年後実用化へ
心筋梗塞や脳梗塞などにつながる動脈硬化の進み具合を正確に計測する方法を、名古屋工業大の松本健郎教授(生体力学)らのグループが開発した。密閉された箱に腕を入れて空気を抜き高血圧のような状態にし、超音波で血管を測定する。2015年に計測器の実用化を目指している。
動脈硬化では、体内を流れる動脈の壁の弾力性が失われる。この結果、血管内にプラークと呼ばれる「あか」がたまる。これが血管をふさぐことで血流が停滞し、心臓や脳などに重病を引き起こす。
血圧が80〜120と普通の状態で超音波検査した場合、血管が硬化しかけていても「血管が頑張る」(松本教授)ため、初期段階だと兆候が表れない。
初期段階で劣化しているかどうか分かるようにするには血管を安定的に拡張する必要がある。このため血圧を200程度にまで上げなければならないが、人為的に血圧を制御するのは極めて難しい。
そこで、研究グループは逆に血管の周りの気圧を下げることを着想。密閉式の箱に腕を入れ、周りの空気を抜いて血管を膨らませ、腕の一部で血圧が200の状態を人工的につくり出す。拡張した血管の弾力性を超音波で測ると、初期の劣化状態を突き止められるという。
愛知県が重点開発する「知の拠点プロジェクト」の1つとして研究は進められてきた。松本教授は「動脈硬化の予防には早期発見と対策が必須。装置が普及すれば救われる命も増えると思う」と話している。厚生労働省の統計によると、09年の急性心筋梗塞の死亡者は4万3000人、脳梗塞は7万2000人。それぞれ、人口10万人当たり34.3人、57.4人が亡くなっている計算になる。(中日新聞 2011/01/06)がんの「種」退治可能に 九大・中山教授の研究班
特定タンパク質弱める手法 完治へ新薬開発期待
がんの増殖や転移を引き起こすとされ、抗がん剤や放射線が効かない「がん幹細胞」を、治療可能な状態に変えるための鍵を握るタンパク質を、九州大生体防御医学研究所の中山敬一教授(分子医科学)の研究グループが特定した。現在の治療法では、通常のがん細胞を死滅させても、幹細胞が残る限り再発の恐れがあるが、このタンパク質を活用すれば、がんを元から絶つことが可能。特効薬開発につながれば、がんの完治も夢ではなくなるという。
中山教授によると、がん幹細胞は、がん細胞を生み出す「種」とされる。がん細胞は常に分裂して増殖しており、抗がん剤などで治療可能。しかし、幹細胞は分裂の周期から外れた「静止期」の状態で、治療に対する抵抗力が強く、化学療法が効かないという。
研究グループは白血病のマウスを利用し、幹細胞を「静止期」に引き留めるタンパク質の働きを遺伝子操作で弱めた。その結果、幹細胞が「静止期」から「増殖期」に移り、抗がん剤で死滅。通常の白血病マウスは3−5週間で死亡したが、遺伝子操作したマウスは白血病が治り、生き残ったという。
中山教授は、この仕組みを、がん幹細胞の「追い出し療法」と命名。薬品でタンパク質の働きを一時的に弱め、白血病患者を完治させる方法を考えている。大手製薬会社も関心を示し、治療薬開発の検討に入った。応用研究を経て、5年前後で実用化を目指す。
がん幹細胞は乳がんや前立腺がん、脳腫瘍、消化器系のがんなどでも存在が確認されている。中山教授は「根っこから除去するのが追い出し療法の強み。がん発生のメカニズムが同じならば、ほかのがん治療にも生かせる可能性が高い」と話している。<がん幹細胞> 遺伝子に異常が生じ、無制限に分裂、増殖を繰り返すがん細胞の「種」とされる細胞。その存在は数十年前から議論されていたが、1997年にカナダの研究グループが血液のがんである白血病の細胞で発見した。その後、世界的に研究が進められ、脳腫瘍や乳がんなど、ほかのがんでも報告が相次いだが、発生のメカニズムなど現在も不明な点が多い。(西日本新聞 2011/01/03)
薬効かないがんに効果 極小カプセル投与法を開発
抗がん剤を封じ込めた極小のカプセルを使って、通常の方法では薬が効かなくなったがん細胞に効率的に抗がん剤を送り込む方法を開発したと、片岡一則(かたおか・かずのり)東京大教授らが5日付の米医学誌に発表した。
カプセルは、標的となる細胞の核の近くに到達後に壊れ、抗がん剤が出てくるよう設計しており、抗がん剤を効かなくするタンパク質の影響を避けられるという。片岡教授は「本丸の近くで一気に敵をやっつける『トロイの木馬』のようなものだ」と話している。
片岡教授らは、抗がん剤の"容器"として、直径が約40ナノメートル(ナノは10億分の1)の球状のカプセル「高分子ミセル」を利用した。抗がん剤を入れる内側は水になじみにくい「疎水性」、外側は水になじみやすい「親水性」になっており、異物を攻撃する体の免疫機構から逃れられるという。
通常の抗がん剤が効かなくなった大腸がんのマウスに蛍光物質で着色したカプセルを注射すると、12時間後にがん細胞の中にカプセルが侵入、抗がん剤を放出したことが顕微鏡で観察できた。
がんは、通常の方法で抗がん剤を投与した場合の5分の1程度に小さくなったという。
こうした詳細な仕組みはこれまで不明だったが、カプセルを利用した4種類の製剤の臨床試験が既に始まっている。(共同通信 2011/01/06)抗がん物質:自生キノコから発見 県立保健大が特許出願──県と共同研究 /青森
◇薬などへの応用も期待
県立保健大(青森市)は、県内に自生するキノコから抗がん作用のある生理活性物質を発見し、特許出願したと発表した。今後、動物実験などで作用が確認されれば、薬などへの応用も期待できそうだ。【矢澤秀範】栄養学科の乗鞍敏夫助教(生活科学)のグループが県産業技術センターとの共同研究を進め、中国で食用とされるキノコ・ボタンイボタケから発見した。
アルコール抽出物に含まれる「テレファンチンO(オー)」は正常な肝細胞などには影響ないが、肝がん細胞や大腸がん細胞と交ぜると、増殖を抑えたという。
また、抗がん作用が確認されている「バイアリニンA」がボタンイボタケに含まれていることも確認、抽出に成功した。抗アレルギー作用に加え、細胞死を起こすたんぱく質(カスパーゼ)を阻害する作用がある。
食品成分から発見されたことは珍しく、肝疾患や虚血性疾患、パーキンソン病などの疾病対策効果への応用が期待されるという。
ボタンイボタケは直径5〜10センチ。八重咲きの花のような形をしている。松林などに多く分布するという。乗鞍助教は「地域資源を地域の知的財産とし、地域企業で商品化していきたい」と話している。今回の発見は3月末の日本農芸化学会11年度大会(京都市)で発表する。(毎日新聞 2011/01/12)イチゴから抗がん剤インターフェロンの新技術を開発 「2けた安価に」
産業技術総合研究所、北里研究所などが、植物の遺伝子を組み換えることにより、免疫の活性化に役立つタンパク質「インターフェロン」を含むイチゴが栽培できる新技術を共同開発したことが19日分かった。平成23年にも医薬品として承認申請に踏み切る方針で準備を進めている。実用化されれば、抗がん剤などとして用いられる高額なインターフェロンが安価に提供される可能性がある。
産総研などは、遺伝子を送り込む性質のある「アグロバクテリウム」という微生物に、試験管の中でインターフェロンの遺伝子を配合。その培養液に、1センチ程度に刻んだイチゴの葉の組織の細胞を約15分間浸した後、同細胞を植物体に再生させてイチゴの栽培を開始した。この方法により、約9カ月後にはイチゴが実を結び、1粒約10グラムの中に高濃度のインターフェロンが確認された。
今回の研究は、産総研北海道センター(札幌市)が保有する特殊空調などで外部と遮断され、遺伝子組み換え植物の栽培や医薬品の生産を可能とする「植物工場」で進められた。
現在、イヌの歯周病を対象に、栽培されたインターフェロン入りイチゴの効果を検証しており、小型のビーグル犬で約1週間、大型のゴールデンレトリバーでは約1カ月で、出血が止まり腫れが引くなど歯肉炎の改善に効果が認められたという。
産総研の試算では、広さ30平方メートルの栽培室で年間約300キロのイチゴを収穫することができ、イチゴに含まれるインターフェロンをイヌの歯周病の治療薬として利用すると年間100万匹分以上に相当する。
産総研では、イヌ用と同様に遺伝子を組み換えたヒト用のインターフェロン栽培にも成功しているが、ヒト用の新薬として承認されるには10年近くを要することから、承認までの期間が3年程度と短い動物薬の治験を先行させた。データを収集し、今年中にも申請する計画だ。
遺伝子組み換えによるイチゴの栽培でインターフェロンの生産が実用化されれば、現在高額なインターフェロンが将来には「1けたか2けた安価に提供できるようになる」(松村健植物分子工学研究グループ長)という。厚生労働省は「医薬品の効果的な開発につながるなら期待ができる」(医政局研究開発振興課)としている。<インターフェロン> 腫瘍細胞やウイルスの侵入に対し、免疫機能を高めるために細胞が分泌するタンパク質。B型、C型肝炎に対する抗ウイルス薬や、抗がん剤などとして用いられる。現在は細胞培養や遺伝子を組み換えた微生物などによって生産されている。(産経新聞 2011/01/19)
大腸がん転移妨げる遺伝子を突き止め 京大
大腸がんが肺や肝臓へ転移するのを抑えている遺伝子を、京都大医学研究科の武藤誠教授らのグループが突き止め、19日発行の米国の医学専門誌に発表した。転移を促すメカニズムの一端を解明、治療薬開発に役立つ可能性があるという。
大腸がんは、日本でも生活習慣の変化で患者が増えており、女性のがんによる死亡の原因の第1位。ほかの臓器への転移や悪化を防ぐ治療法の確立が急がれている。
武藤教授らは、がん細胞が血管内に侵入し、肝臓や肺に転移する過程に着目。転移した細胞ではAes遺伝子の働きが抑えられていることを見つけた。
がんのマウスにAes遺伝子が作るタンパク質を投与すると、転移が抑えられることを確認した。このタンパク質が阻害する細胞内の情報伝達の経路を調べると、細胞の分化などで働く経路(Notchシグナル)であることが分かった。
Notchシグナルは、がんの増殖との関係が注目されており、新薬開発の標的となっている。武藤教授は「転移を抑える効果的な薬の開発につながる可能性が示された」と話している。(京都新聞 2011/01/19)タンパク投与で血管形成 京大病院、患者が退院
京都大病院は20日、脚の血管が詰まり悪化すれば切断が必要となる病気の70代の男性患者=奈良県=に、血管の形成作用があるタンパク質を投与する再生医療を実施し成功、男性が退院したと発表した。
治療は、血管の形成を促すタンパク質「bFGF」を含ませたゼラチンの微粒子を、脚に注射。bFGFを徐々に放出させ、新たな血管を作る。
男性は右脚の痛みから「閉塞性動脈硬化症」と診断され、昨年12月に入院した。治療後、血行が改善し、今月10日に退院。「歩くのが楽になった」と話しているという。
脚の血管が詰まり、潰瘍ができるなどの症状が出る閉塞性動脈硬化症や「バージャー病」の患者は国内に計数百万人いるという。(共同通信 2011/01/20)脂肪肝に効果、鳥取・倉吉の「魔法の水」 鳥取大確認
鳥取県倉吉市内で湧いている天然還元水「白山命水(はくさんめいすい)」に、肝臓内の脂肪を減少させ、脂肪肝の症状を軽くする効果のあることが、鳥取大大学院医学系研究科の汐田剛史(しおた・ごうし)教授のマウス実験による研究結果で明らかになった。20日に県庁で発表した汐田教授は「脂肪肝は肝硬変や肝がんの原因にもなる。身近にある水に効果があることが分かり、非常に驚いている」と語った。
汐田教授はマウス20匹を使って実験。業者が製造しているバランスのとれた通常の食べ物を与えたマウス、ココアバターを使いコレステロール値の高い食事を与えたマウスに分け、それぞれに水道水と天然還元水を3カ月間与えた。3カ月後、マウスの肝臓を取り出して分析した。
通常の食べ物を与えたマウスは、どちらの水を飲んでも脂肪酸や総コレステロールの数値に違いはほとんどなかった。一方、コレステロール値の高い食事をした場合、天然還元水を飲んだマウスの方が脂肪酸や総コレステロール、中性脂肪とも、水道水を飲んだマウスに比べ、数値が半減したという。
汐田教授は、酸化の強さを示す酸化還元電位が一般的な水道水で500〜700ミリボルトなのに対し、天然還元水はマイナス220ミリボルトと低いのが要因と指摘。その結果、肝臓内の脂肪酸を分解する酵素と、コレステロールを肝臓から排出する酵素の活動が活発化し、脂肪肝を改善したとみている。
今後、ヒトへの効果を分析する研究に取り組む予定。汐田教授は「通常の食事をしていれば問題ないが、コレステロール値が高いむちゃな食事をする人には、かなりの効果があると想定される」と話した。
「白山命水」は、ミネラルウオーター製造会社の白山(倉吉市蔵内)が温泉を掘った際に掘り当てたという。地元で「魔法の水」と呼ばれ好評だったため、03年4月から市販。酸化還元電位が低い天然水のことを、天然還元水と呼んでいるという。(倉富竜太)(朝日新聞 2011/01/21)がん細胞の増殖促す「悪玉遺伝子」を発見、末期がん治療に期待
【1月26日 AFP】がん細胞の増殖を促す「悪玉遺伝子」を発見したとする論文が24日、英ネイチャー・パブリッシング・グループ(Nature Publishing Group)発行の医学誌「Oncogene(がん遺伝子)」に発表された。この遺伝子を封じ込める薬が開発されれば、末期がんであっても進行を止めることができると期待されている。
この遺伝子「WWP2」は、特定の酵素に働きかけ、がん細胞の増殖を防ぐ天然阻害物質を攻撃させる。
英イーストアングリア大(University of East Anglia)の研究チームは、WWP2を不活性化すると天然阻害物質の量が増え、がん細胞が再生されなくなることを発見した。
がん細胞に侵入してWWP2を封じ込める薬が開発されれば、原発腫瘍に対する従来の治療や手術を転移リスクがない状態で行うことができると、研究チームは期待を寄せている。(AFP 2011/01/26)腸の味方ビフィズス菌、O157もガード 理研など解明
腸内細菌の一種ビフィズス菌が、腸管出血性大腸菌O157による腸の炎症や死亡を防ぐしくみを、理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センターなどのグループがマウスで解明した。菌が作り出す酢酸が大腸の粘膜を保護していた。予防法の開発などに応用できると期待される。27日付の英科学誌ネイチャーで発表する。
体内に菌のいない無菌マウスにO157を感染させると7日以内に死ぬが、同センターの大野博司チームリーダーらが人間の腸内にいるビフィズス菌の一種を事前に与えると、O157を感染させても死亡せず、腸の粘膜に炎症も起きなかった。別の種類のビフィズス菌だと、死亡までの平均日数が2日延びただけだった。生き延びたマウスは死亡したマウスに比べて、腸内のビフィズス菌が作る酢酸が2倍以上あった。
酢酸は腸の粘膜を保護し、粘膜の新陳代謝を促す働きがある。ビフィズス菌は通常、腸内のブドウ糖を原料に酢酸を作るが、腸内は下部に行くほどブドウ糖が少なくなり、果糖が多くなる。予防効果が見られたビフィズス菌は果糖を菌内に取り込む遺伝子も持っているため、腸の下部でも酢酸を作ることができ、O157の被害を防げたと考えられる。(大岩ゆり)(朝日新聞 2011/01/27)HTLV-1ウイルス、フコイダンに治療効果 研究成果を公表
成人T細胞白血病(ATL)や脊髄症(HAM)を引き起こし、いずれも治療法が確立されていないウイルス「HTLV-1」に対し、コンブやワカメ、モズクなど海藻のぬめり部分に多く含まれる粘質多糖類の一種フコイダンが、ウイルス細胞の増殖を抑える作用があることがこのほど分かった。研究チームは「フコイダンはHTLV-1ウイルス関連疾患の発症予防や治療の補助として有用性が期待できる」と強調している。
このウイルスは母子感染が多く、全国で約110万人の感染者がいると推測され、特に沖縄や鹿児島に多い。抗体検査が公費負担で行われる妊婦健診の項目に2010年10月から追加されている。政府は特命チームを設け対策に取り組んでいる。
政府特命チームにオブザーバー参加している山野嘉久(よしひさ)聖マリアンナ医科大難病治療研究センター分子医科学研究部門長、おもろまちメディカルセンターの森直樹医師、金秀バイオの美里義雅社長が1月29日、糸満市で記者会見し、研究成果を明らかにした。
山野医師らは「HTLV-1」ウイルス感染者に対するフコイダンの感染細胞減少効果に着目。感染細胞などにフコイダンを添加するなどの実験をした結果、フコイダンはウイルスの細胞間感染を妨げる働きがあることが分かった。
同ウイルス関連のHAM患者13人に対し、フコイダンを6〜13カ月間投与した結果、ウイルス感染細胞数が平均42.4%減少、体内でもウイルス感染細胞の減少に効果があった。投与期間中、特に重い副作用や病状の悪化、免疫系の影響は認められなかった。
このウイルスについて理解を深めてもらおうと、市民健康講演会(NPO法人「日本からHTLV-1をなくす会」主催)が12日午後2時から那覇市の沖縄産業支援センターで開かれる。
講演会の参加は申し込みが必要で、申し込み・問い合わせは金秀バイオ(電話)098(994)1001。(琉球新報 2011/02/02)プロポリス 血糖値低下の秘密を解明 アルテピリンCに 中部大グループ確認
ミツバチの巣から採取されるプロポリスが血糖値を低下させる作用は、含有成分の有機化合物「アルテピリンC」の働きによることを、中部大(愛知県春日井市)の禹済泰(ウゼテ)教授(49)のグループが突き止めた。論文の要旨は米国の医療系雑誌バイオケミカル・パーマコロジー電子版に掲載された。
プロポリスはミツバチが花粉や樹脂と唾液を混ぜ合わせてつくる物質で、古くから健康食品として使われている。
血糖値を下げる効果も動物実験で確認されていたが、そのメカニズムは解明されていなかった。
アルテピリンCは、一般によく消費されるブラジル産の緑色のプロポリスの主成分。
グループは細胞実験を行った結果、脂肪細胞内でタンパク質「PPARγ」と結合するなどして、血中から細胞内へブドウ糖の取り込みを仲介するタンパク質「Glut4」を増やして、血糖値を下げていた。
禹教授らは今後、動物実験に取り組むことにしており、「糖尿病改善への応用が期待できる」と話している。
アルテピリンCは、抗菌や抗がん作用などの研究も進められている。(中日新聞 2011/02/04)アルツハイマー病の原因物質、細胞にたまる仕組み解明
神経細胞の中心から末端部に様々なたんぱく質を運ぶ「キネシン1」という運搬役のたんぱく質が働かなくなると、アルツハイマー病の発症につながる物質が末端部にたまってしまうことを、名古屋大の松本邦弘教授と久本直毅准教授(生命理学)らが解明した。仕組みがわかったことで、治療法の開発につなげられる可能性がある。9日付の米科学誌で発表する。
脳が萎縮するアルツハイマー病は、神経の伝達に必要な「APP」というたんぱく質が脳内の神経細胞の末端部にたまって変異し、蓄積されてしまうことが原因だと考えられている。
APPは、神経細胞の中心部から末端部に向けてレールのように延びた微小管をキネシン1によって運ばれる。APPが末端部にたまりすぎると、通常は別の運搬役のたんぱく質によって中心部に戻され、分解される。
松本教授らは線虫の細胞を使い、キネシン1など運搬役の2つのたんぱく質を働かなくした上で、APPが往復するかどうかを観察した。その結果、中心部から末端部に運ばれはするものの、中心部には戻らず、末端部にたまってしまうことがわかった。
キネシン1はAPPのほか、復路用の別の運搬役も末端部まで運んでおり、実験でキネシン1などが働かなかったために、この復路用の運搬役が足りなくなったのが原因とみられる。往路用の運搬役がキネシン1以外に存在するらしいことも、この実験でわかった。
アルツハイマー病の患者は国内に約120万人いるとみられ、久本准教授は「こうした仕組みの理解がさらに進めば、治療につながるかも知れない」と話している。(高山裕喜)(朝日新聞 2011/02/09)がん増殖抑制の遺伝子を確認、治療法・新薬に道
がん細胞増殖の原因となっている酵素「テロメラーゼ」の生成を、人の5番染色体にある遺伝子が抑えることを、鳥取大の久郷(くごう)裕之准教授(生命科学)のグループが確認した。
様々ながんに有効な治療法や新薬の開発につながる可能性がある。成果は米科学誌「モレキュラー・アンド・セルラー・バイオロジー」電子版に掲載された。
正常な細胞は分裂を繰り返すたびに、染色体を保護する部分(テロメア)が老化し、死滅する。しかし、大半のがん細胞では、テロメアの老化を防ぐテロメラーゼが生成されるため、細胞が増殖を続けてしまう。
久郷准教授らは2000年から、マウスと人の皮膚がん細胞を使い、テロメラーゼの生成を抑える物質を探した。がん細胞に5番染色体を入れると、テロメラーゼの生成が抑制されたことがきっかけになり、この染色体にある遺伝子「PITX1」が、テロメラーゼを作る遺伝子の活動を阻害していることを突き止めた。(読売新聞 2011/02/12)花粉症への救世主か?! 和歌山のジャバラ果汁人気
花粉症などのアレルギー症状を抑制する効果が期待されるかんきつ類「ジャバラ」を地域の特産品にしている和歌山県北山村。スギ花粉の飛散シーズンを前に、村観光産業課には、ジュースやポン酢など果汁加工品の注文や問い合わせが増えているという。
ジャバラは以前から「花粉症に効果がある」といわれていたが、村が平成13年にインターネット上で通信販売を始めたところ、購入者から「効果があった」という感想が数多く寄せられた。これをきっかけに、前年度まで年間2000万円台だったジャバラ加工品の販売額が13年度は5000万円、14年度は1億円と増加した。
ジャバラには色素成分の一種のナリルチンが含まれており、県工業技術センターがアレルギーの原因を抑制する効果があることを15年に発見。岐阜大大学院の臨床実験でも、花粉症の症状が改善するという結果が得られた。
こうした研究を受け、村はジュースやポン酢のほか、あめやジャムなどの加工品を次々と発売し、21年度の販売額は10年前の約10倍の2億6700万円にまで伸びた。ここ数年、花粉シーズンの2〜4月は注文が相次ぎ、年間販売額の半分以上を占めるという。
村観光産業課の杉浦有紀さんは「3月には新商品の果汁も発売。花粉症で悩む人に試してほしい」としている。問い合わせは「じゃばら村センター」(〈電〉0735・49・2037)。(産経新聞 2011/02/14)虫歯の原因酵素、正体解明 歯周病など予防に期待
虫歯を引き起こす酵素がどんな形をしているか、静岡県立大、京都大、東京大のグループが解明し、17日発表した。この酵素は虫歯の元凶になる歯垢(しこう)=プラーク=の材料をつくる。酵素の働きを止めて虫歯や歯周病を予防する新薬が期待できるという。
静岡県立大の伊藤圭祐助教らは、口の中の虫歯菌がつくるグルカンスクラーゼという酵素を、大腸菌を使って大量に合成し、X線で形を詳しく調べた。
この酵素は、砂糖から粘りけのあるグルカンという物質をつくる。この物質が虫歯菌や歯周病菌を包みこんで歯にくっつき、歯垢になる。歯垢は有害物質を出して歯に穴をあけたり、歯茎をはれさせたりする。
これまでもこの酵素を止める薬が研究されていたが、腹をこわしたり、低血糖になったりする副作用のおそれがあった。酵素の形が突き止められたので、効果的で副作用の少ない薬の開発がしやすくなるという。
米科学誌「ジャーナル・オブ・モレキュラーバイオロジー」電子版で公開される。(鍛治信太郎)(朝日新聞 2011/02/18)脳の細胞再生成功、特殊なたんぱく質利用 名古屋市立大
病気などで失った脳の細胞を、脳内にある幹細胞から再生させることに、名古屋市立大のグループがマウスで成功した。幹細胞が脳内で作り出した細胞は通常、未熟な状態のままだが、特殊なたんぱく質を注射すると一人前の細胞に成長させることができた。脳性まひや脳梗塞(こうそく)などの治療法の開発につながると期待される。
再生できたのは、脳の神経細胞を保護したり栄養を補給したりする「グリア細胞」の一種。血流が減って酸素が不足し、この細胞が死ぬことで起きる「脳室周囲白質軟化症」(PVL)は、子どもの脳性まひの一因とされている。
脳にはグリア細胞などを生み出す幹細胞があり、細胞が失われると、新しく作ろうとする。だが、同大の澤本和延教授と大学院生の加古英介さんらがマウスやサルなどを調べたところ、幹細胞から作られた細胞の多くは成長が途中で止まってしまい、脳の機能回復につながらないことがわかった。
そこで、成長を促すたんぱく質をPVLのマウスに注射したら、未熟な細胞の成長が進み、成熟した細胞が1.5倍に増えたという。
澤本教授は「脳の細胞は自然には再生しないとよく言われるが、人の手で再生を促せる可能性を示せた」と話す。今後治療効果を詳しく調べ、サルでも同様の実験をする。
同大などでは、損傷した脳の細胞をiPS細胞を使って再生する研究が進められている。移植した脳の細胞を生着させるには、未熟な状態で移植して体内で成熟させる必要があるといい、今回の技術の活用も見込まれるという。
成果は3月1日から都内で開かれる日本再生医療学会で発表される。(福島慎吾)(朝日新聞 2011/02/21)梅成分に抗インフル作用 感染・蔓延予防に効果、“新薬”期待
梅果汁製造最大手の中野BC(和歌山県海南市)と中部大学生命健康科学部の鈴木康夫教授は、梅エキスの有効成分「ムメフラール」に、インフルエンザウイルスの人体の細胞への感染と、細胞内で増殖したウイルスの他人への感染の両方を阻害する優れた抗ウイルス作用があることを発見した。感染予防と、パンデミック(世界的大流行)につながる蔓延(まんえん)予防のそれぞれに作用する天然成分の発見は世界でも初めて。インフルエンザの大流行を食い止める新薬開発に有効な成分として注目されそうだ。(芳賀由明)鈴木教授は、梅エキスにA型インフルエンザの感染予防効果があることを平成20年に立証している。今回は中野BCと共同で、梅エキスの5つの成分を分解して精製したうえでそれぞれの機能を分析。インフルエンザウイルスの吸着(感染)と放出(蔓延)の機能を担うそれぞれのタンパク質「ヘマグルチニン」と「ノイラミニダーゼ」に対してムメフラールが阻害効果を発揮することが分かった。
鈴木教授らは研究過程のなかで、新型インフルエンザが世界的に流行した21年9〜11月にモニター実験を実施。梅エキスを凝縮した中野BCの粒状製品「梅真珠」を同社の社員や関係者に、食後3回3粒ずつ摂取させた結果、有効サンプル166人のうち新型インフルエンザにかかった人は1人(軽症)、家族に新型インフルエンザ患者がいた場合にかかった人はゼロだった。海南市では学校閉鎖が相次ぎ、関連会社にも患者が増加していた時期だけに、研究の有効性を示すエピソードとなった。
「タミフル」や「リレンザ」など化学合成物によるインフルエンザ治療薬は蔓延予防には効果があるものの、感染予防の効果は立証されていない。梅エキスそのものでは現在の治療薬の効果には及ばず、ムメフラールの成分を治療薬に応用するためには効果を数千倍高める必要がある。
鈴木教授は「ムメフラールですぐに治療薬ができるわけではないが、インフルエンザの新薬候補となるリード化合物(医薬品開発を導きだす化合物)になる可能性を示した」と成果を説明する。<ムメフラール> 農林水産省食品総合研究所の菊地佑二上席研究官らが平成11年に発見した成分で、梅の学名「mume(ムメ)」から命名。生梅に含まれる糖質の一種とクエン酸が結合した化合物で、血液サラサラ効果などの研究成果も発表されている。青梅の果汁を煮詰める梅エキスの製造過程で生成するが、生梅や梅干しには含まれていない。(産経新聞 2010/02/21)
オリーブオイルが認知症を防ぐ? オレイン酸に秘密
オリーブオイルに含まれるオレイン酸に認知機能を改善する効果があることを、名古屋市立大大学院医学研究科の岡嶋研二教授、原田直明准教授らのグループがマウスを使った実験で突き止めた。京都市で3月26日に開かれる日本農芸化学会で発表する。
岡嶋教授らは、オリーブオイルの摂取量が多い地中海の南イタリア地方の人びとが、認知症になりにくいとされる点に着目。マウスの知覚神経にオレイン酸を加えたところ、刺激を伝える伝達物質が神経細胞から放出される量が通常の2.5倍に増加した。
さらに、マウスに1日1回、計28日間オレイン酸を与えた後、記憶や学習をつかさどる脳の「海馬」で、神経や血管を再生させるインスリンの働きに似たタンパク質の濃度が2.3倍になっていることを確認した。
逆に、遺伝子操作をして伝達物質が出ないようにしたマウスでは、オレイン酸を投与しても海馬でタンパク質が増加する効果はなかった。オレイン酸により知覚神経細胞で生成された伝達物質がマウスの脳に信号を送り、タンパク質を増やしたと結論づけた。
岡嶋教授は「研究を進めれば、認知症の予防や治療に役立つ可能性がある」と話している。(中日新聞 2011/02/21)細胞がん化抑える酵素発見
細胞の形が変化してがん化するのを抑える酵素の存在を、広島大や英国がん研究所などの研究チームが酵母を使った実験で突き止め、20日付(日本時間21日)の英科学誌電子版に発表した。新しいがん治療薬の開発に役立つ成果という。
広島大大学院先端物質科学研究科の平田大教授(分子生物学)によると、がんは、染色体異常に伴う細胞の増殖や形の変化で起きる。これまで細胞の増殖を抑える機構は分かっていたが、形の変化を制御する仕組みは分かっていなかった。
平田教授たちは、増殖の仕組みが人間の細胞に近く、染色体に異常がある酵母細胞を使って実験した。細胞内の酵素「カルシニューリン」の働きを止める薬剤を与えると、細胞の形に異常が現れることを確認。カルシニューリンが細胞の形の変化を抑える役割を持つ分子へ向けて命令を出していると突き止めた。
平田教授は「カルシニューリンの働きをコントロールできれば、細胞の形の異常を抑える新薬の開発が期待できる。酵母の実験で得られた結果を、医療分野で役立ててほしい」と話している。(中国新聞 2011/02/22)長生きの秘けつは食物繊維? 〜国立がん研究所の最新報告
食物繊維を毎日たくさん食べると、早死にリスクを軽減できる可能性があることが、国立がん研究所(NCI)の最新調査で分かった。食物繊維が減量、コレステロールの抑制、心臓病の予防などに効果があることはすでに知られているが、それ以外の健康増進効果も期待できそうだ。
ロイター通信によると、NCIのイキュング・パーク氏らが、1995〜96年に51〜71歳だったアメリカ退職者協会(AARP)のメンバー40万人を平均9年間にわたって追跡調査した結果、食物繊維の摂取量が最も多かったグループ10万人(1日の平均摂取量は男性29グラム、女性26グラム)は、最も少なかった10万人(男性13グラム、女性11グラム)に比べ、調査期間中の死亡率が22%も低かった。
死因別の調査でも同様で、食物繊維を大量に取っている人は、心血管疾患、感染症、呼吸器疾患で死亡するリスクが男性で24〜56%、女性で34〜59%低かった。また、男性はがんの死亡率も低かった。
食物繊維は、果物、野菜、豆類よりも穀物から摂取した方がより効果的で、これは全粒穀物には病気を予防するビタミンやミネラルなどが豊富に含まれているためと考えられている。農務省指針では、成人女性で1日約25グラム、男性は約38グラムの食物繊維摂取が推奨されている。
ただし、NCI調査で食物繊維が早死にを防ぐ直接的な要因だと証明されたわけではなく、食物繊維を多く取る人は概して健康的な生活を送っているとも考えられる。ハーバード・スクール・オブ・パブリック・ヘルスの栄養学者フランク・フー氏は、同調査に関する論説で「要するに、植物繊維を常食にしてできるだけ多く取ることが大事」と指摘した。(US FrontLine 2011/02/28)シークワーサーの皮で「脂肪抑制」 中部大教授ら確認
沖縄県特産のかんきつ類シークワーサーの皮に含まれるフラボノイドの一種「ノビレチン」に、脂肪細胞の合成を抑制する作用があることを、中部大応用生物学部の禹済泰(ウゼテ)教授(49)のグループが明らかにした。肥満解消のかぎとなる可能性がある。論文の要旨が米国の医療雑誌ファイトメディシンの電子版に掲載されている。
健康補助食品会社エリナ(東京都港区)との共同研究の成果で、禹教授は「脂肪組織の合成を抑制することが、脂肪の燃焼促進へとつながる可能性もある」とし「肥満解消への応用が期待できる」と話している。
マウスを使った5週間の実験で、低脂肪食、高脂肪食、高脂肪食にノビレチン含有のシークワーサー抽出エキス1.5%を混ぜたえさを与える3グループで比較した。
エキスを混ぜたえさを与えたマウスは、体重と脂肪量の増加が低脂肪食とほぼ同じで、高脂肪食だけを与えた場合の半分に抑えることができた。中性脂肪の増加量は高脂肪食の約7割にとどまり、低脂肪食の数値もわずかに下回った。(中日新聞 2011/02/28)糖尿病に新治療法の可能性 東大、血管に原因突き止め
肥満に伴い、インスリンが効きにくくなって起きる2型糖尿病では、糖分の最大の貯蔵庫である筋肉で毛細血管に異常が生じ、筋肉に糖分を蓄えることができなくなることをマウス実験で突き止めたと、東京大の門脇孝教授(糖尿病学)らが2日付米科学誌セルメタボリズムに発表した。
門脇教授は「血管の働きに着目して糖尿病の原因に迫った画期的な成果だ」と強調。毛細血管の機能を回復させる薬の臨床試験を始めている。
研究チームの窪田直人特任准教授によると、インスリンは毛細血管からしみ出して外側の筋肉に届き、筋肉が糖分を取り込むのを助けている。
実験でマウスを肥満状態にすると、筋肉が取り込む糖分の量は正常なマウスの約半分になった。肥満マウスはインスリンの分泌量は変わらないが、毛細血管で必要な分子が合成されなかったり酵素が活性化されなかったりして、血管から出て筋肉に届くインスリンが少なくなっていると判明した。
酵素の働きを活発にさせる薬を投与すると、筋肉の糖分量は正常なマウスの約8割に回復した。
この薬は、閉塞性動脈硬化などの治療薬として承認され使われている。今回の臨床試験では、動脈硬化と糖尿病を併発した患者に投与している。(共同通信 2011/03/02)パーキンソン病の薬、アルツハイマーに効果? 九州大
海外でパーキンソン病患者に使われている皮下注射薬アポモルフィンがアルツハイマー病の症状を改善させる可能性のあることが、九州大学大学院医学研究院の大八木保政・准教授(神経内科学)らの動物実験でわかった。米国の神経学雑誌のオンライン版に掲載された。
遺伝子操作でアルツハイマー病の状態にしたマウスを使い、アポモルフィンを1カ月に計5回投与したグループと、投与していないグループ8匹ずつについて実験した。直径1メートルのプールで泳がせ、ゴールの位置をどの程度覚えているかを調べた結果、投与したグループでは投与前と比べ、ゴールにたどり着く時間が半分になり、回数も2倍に増えるなど記憶機能の改善がみられた。
投与したグループを解剖して脳の組織を調べると、アルツハイマー病の原因物質と考えられている異常たんぱく質アミロイドβやタウたんぱくが減っていることも確認できたという。
国内の認知症患者は200万人以上で、10年後には倍増するとみられている。アルツハイマー病は高齢者の認知症の半分以上を占める。進行を遅らせる薬はあるが、症状を改善させる根本的な治療薬は開発されていない。アポモルフィンは国内では未承認。大八木准教授は「今後、患者への有効性をみるための臨床研究をしたい」と話している。(朝日新聞 2011/03/03)自閉症は脳の神経機能低下と関係 浜松医大准教授ら発表
自閉症の人は他人の顔を認識する脳の部位で神経機能が低下し、「視線を合わせない」という症状や「相手の気持ちを読めない」という社会性の障害が起きることを突き止めたと、浜松医大の鈴木勝昭准教授らが7日付米専門誌に発表した。
研究チームの辻井正次中京大教授は「自閉症には親の育て方が悪いなどの間違った見方があり、差別や偏見をもたらしてきた。自閉症が脳の中の障害と関係していることを明らかにする研究結果であり、自閉症の人に対する理解を広げ、支援につながる」としている。
研究チームは、脳全体の活動を調節する「アセチルコリン神経」と、他人の顔を認識する「紡錘状回」という脳の部位の関係に注目。陽電子放射断層撮影(PET)で、18〜28歳の20人の自閉症の人のアセチルコリン神経の働きを調べた。
その結果、健康な人に比べ、紡錘状回での活動が約35%低下していることが判明。機能低下の程度が進むほど、「相手の気持ちが読めない」という症状が強くなることも分かった。
自閉症は神経発達障害で、相手と視線を合わせないという症状のために、相手の気持ちが読めなかったりする症状が出ると考えられていたが、どのようにして起きるかは不明だった。(共同通信 2011/03/08)化学療法きかない末期がん、ナノダイヤモンドが有効 米研究
【3月20日 AFP】米ノースウエスタン大(Northwestern University)などの研究チームは9日、末期の乳がんおよび肝がんの腫瘍(しゅよう)をナノダイヤモンド(炭素の微小粒子)を使って治療する方法を見つけたと、米科学誌「Science Translational Medicine」に発表した。
これらの腫瘍は通常、化学療法に使う薬剤への耐性を持っている。今回発明された方法は、化学療法薬ドキソルビシンをナノダイヤモンドに結合させるというもので、マウスを使った実験で効果が確認された。
実験では、マウスに、ナノダイヤモンドを結合させたドキソルビシンか、ナノダイヤモンドを結合させないドキソルビシンを投与してみた。後者は腫瘍に効果がなく、投与量を増やすと効果が強すぎてマウスが生存できなかったのに対し、前者は、ナノダイヤモンドがドキソルビシンを腫瘍に浸透させ、腫瘍を大幅に縮小させることが確認された。
転移性のがんでは化学療法薬を投与しても90%で効果がないことから、この手法は非常に有望だ。
研究チームのディーン・ホー(Dean Ho)氏によると、化学療法薬を浸透させる媒体としてナノダイヤモンドに興味を持ち始めたのは3年以上前のこと。水とよくなじむナノダイヤモンドが自動車に使用されていることに気づいたことがきっかけだという。親水性は、医学的用途においても重要な要件の1つだ。
ナノダイヤモンドは通常、採掘や石油精製の現場で起きる爆発により形成される。隕石(いんせき)の落下によっても生成されると考えられている。
ホー氏は、大型動物での実験、臨床試験を経たのち、この手法が数年以内に実用化される可能性があると話した。(AFP 2011/03/20)不整脈にヨガが効果、リスク半減しうつ軽減も=米研究
【ニューオーリンズ2日ロイター】血圧やコレステロールを下げるとして広く知られているヨガが、不整脈のリスクを半減させることが分かった。米国心臓病学会(ACC)の年次会合で新たな研究結果が発表された。
今回の研究は、高齢者に多く見られる不整脈の一種、心房細動に対するヨガの効果を初めて調べたもの。その結果、ヨガにより心房細動の件数が半減したほか、心房細動に関連する不安やうつの症状も軽減したことが明らかになった。
研究を指揮したカンザス大学病院の准教授、Dhanunjaya Lakkireddy博士は「心房細動に対する現在の一般的な治療の多くが(体に負担の大きい)侵襲性治療や望まぬ副作用のある薬物治療であることから、(ヨガの効果が示されたことは)重要な発見だ」と述べた。
博士はヨガのもたらす効果や低いコストを理由に、心房細動やほかの不整脈の治療の一環としてヨガを取り入れるべきとする一方、今回の研究結果を裏付けるには一段の調査が必要とし、患者は引き続きこれまでの治療を続けるべきと述べた。
今回の研究では、身体的制約がなくヨガの経験もない不整脈患者49人を対象に行われ、病院の調査グループが不整脈の件数を半年後に測定した。患者は最初の3カ月間は自分の好きな運動を行い、後半3カ月はプロの指導の下で45分間のヨガプログラムに週3回参加し、自宅でのヨガも推奨された。
不整脈の件数についてはモニターが実験を通して終始記録する一方、患者は不安やうつ、全体的な生活の質について短い調査に答えた。
その結果、平均で不整脈の件数は半減し、不安やうつの症状も著しく軽減したという。(ロイター通信 2011/04/04)がん細胞:「老化」させ抑制 広島大教授ら物質突き止め
細胞や血液などに含まれる「マイクロRNA」と呼ばれる物質の一種に、乳がんと子宮頸(けい)がん細胞を「老化」させ、がんの増殖や転移を抑える働きがあることを広島大の田原栄俊教授(細胞分子生物学)らのチームが突き止め、18日付の米科学誌に発表した。
田原教授は「マイクロRNAは生体内でつくられる物質で、既存の抗がん剤に比べ副作用のリスクが低い。次世代の抗がん剤としての活用が期待できる」と話している。
マイクロRNAは、細胞の増殖や分化などさまざまな生物現象の調節に関係していると考えられている。田原教授は、通常の細胞が分裂しなくなり老化するにつれて、いくつかのマイクロRNAが増加することを発見。このうち老化せずにがん化した細胞で減少していた「miR22」に着目した。
培養された乳がんと子宮頸がんのがん細胞にmiR22を加えると、老化が進み、増殖が抑えられることを確認。マウスを使った実験でも乳がんの転移を抑制することが分かった。
細胞の老化は、がん化を防ぐための生体の防御機構とみられている。田原教授は「何らかの要因で、細胞内のマイクロRNAが減少して老化が妨げられ、がん化を促すと推定される。miR22を投与することで老化のプログラムが再開され、がん細胞の増殖が抑えられた」と分析している。(毎日新聞 2011/04/19)学習機能:刺激減ると知力低下 遺伝子に悪影響証明──東大
外部からの刺激が乏しくなると、学習機能に関わる遺伝子に悪影響が及び、学習機能が落ちることを、東京大の尹喜玲(インジリン)特別研究員と広川信隆特任教授のチームがマウス実験で突き止めた。この遺伝子は人にも存在し、頭を使わないほど知力が衰えることを示す成果として注目されそうだ。28日付の米科学誌ニューロンに発表した。
チームは00年、神経細胞間で記憶や学習機能に関わるたんぱく質「NMDA」を運ぶ分子「KIF17」を発見。この分子ができないマウスを人工的に作ったところ、NMDAを主に構成する「NR2B」というたんぱく質を作る遺伝子の働きも低下することが分かった。
また、音が鳴ると足に電気刺激を与え、その後に音だけを聞かせる実験を行った。すると、NR2B遺伝子の働きが落ちたマウスの場合、音に反応して足を縮める行動を取る割合が通常のマウスの半分にとどまることが判明。学習をつかさどる脳内の「海馬」でのNR2Bの量も、通常のマウスの3割しかなかった。広川さんは「認知症の改善には刺激が大切と言われる。この成果を活用し、認知症を改善する薬剤の開発につなげたい」と話す。【田中泰義】(毎日新聞 2011/04/28)前立腺がん:再発したがんの細胞増殖、乳がん治療薬が抑制──筑波大、東京大 /茨城
再発した前立腺がんの細胞増殖を、女性ホルモン抑制剤の乳がん治療薬が効果的に抑え込むことを、筑波大と東京大の研究チームが突き止めた。新薬の開発につながる成果という。米専門誌サイエンス・シグナリング(電子版)に掲載された。
前立腺がんは男性ホルモン(アンドロゲン)の影響で進行し、この濃度を下げる女性ホルモン(エストロゲン)剤の投与が有効とされる。だが、効果は数年しか続かず、再発した場合の有効な治療法が課題だった。
研究チームは、再発したがん細胞をネズミに移植。臨床実験で有効だった事例があったことを理由に女性ホルモン抑制剤を投与したところ、腫瘍の直径が4週間で1センチから0.5センチに縮小した。その仕組みを調べたところ、前立腺がんを抑制するたんぱく質が、女性ホルモン抑制剤によってがん細胞の自滅を次々と加速していたためと判明した。
筑波大の柳沢純教授(生物機能科学)は「生活の質を落とさず、寿命を全うできる手段となりうる」と期待する。【安味伸一】(毎日新聞 2011/04/28)免疫力高め、がん退治 副作用少なく入院不要 樹状細胞ワクチン療法
患者の血液中の細胞を培養してがんに対する免疫力を高め、がん退治を目指す「樹状細胞ワクチン療法」。国内では効果を確認するための臨床試験は行われておらず、健康保険の適用外だが、抗がん剤のような副作用がほとんどなく、入院も不要な新しい治療法として注目されている。▽食欲、体力低下
千葉県で解体業などを営む丹野定美さん(71)は2009年4月、疲れが高じたのを機に病院を受診し、翌月、肺にがんが見つかった。がんは右の肺から左肺、骨、腹膜に転移しており、多発性進行肺がん(腺がん)と診断された。
既に手術や放射線療法はできない状態。抗がん剤の投与を始めたが、腰に痛みが走り、食欲も低下、体力もどんどん落ちていった。主治医には抗がん剤の副作用と説明された。「意欲が失われ、仕事もできなくなった」と丹野さん。やがて腎臓機能の悪化などで抗がん剤治療も続けられなくなった。たまたま新聞で免疫療法を知り、東京都港区のセレンクリニック東京 を受診した。
同クリニックは05年から患者約900人に樹状細胞ワクチン療法を実施している。この療法では、まず最初に2、3時間かけて、免疫の司令官のような役割をする「樹状細胞」に育つ細胞を成分献血と同じ手法で患者から採取。樹状細胞へと培養する過程で、がん細胞の表面にあり、攻撃の目印となる抗原を取り込ませる。
こうして作製した樹状細胞ワクチンを、2週間に1度の割で5〜7回、3〜4カ月にわたって患者に注射する。すると、ワクチンは免疫細胞のリンパ球に対し、がん細胞への攻撃を司令する。▽ゴルフも再開
丹野さんは抗がん剤の投与をやめた後、10年10月から11年2月までワクチン療法を受けた。しばらくして、がんの大きさには変化がなくなった。12月ごろから食欲が出てきて仕事に復帰、ゴルフも再開した。「がんは大きくも小さくもなっていない。効果は出ているなと感じる」と日に焼けた顔をほころばせる。
同クリニックの高橋秀徳院長によると、丹野さんはがんの進行が食い止められている「安定」という状態。3月の血液検査で、樹状細胞に取り込ませたがん抗原に対する免疫力が少し上がっているのが確認された。
高橋院長が行っている樹状細胞ワクチン療法では、ほとんどすべてのがんに存在する「WT1」と呼ばれる抗原を主に使う。75種類以上のがん抗原が知られているが、米国などの専門家は09年、最も優先度が高いがんワクチン用の抗原としてWT1を選んだ。同クリニックでは、WT1とほかのがん抗原を組み合わせたり、患者から採取したがん組織を使ったりして、個々の患者に合ったワクチンを作製する。▽費用は自己負担
膵臓がんや大腸がんを含むほとんどすべてのがんが対象。08年までの同クリニックの約120人の症例のうち、がんが消滅した例が6%、小さくなった例が19%あった。このほか、丹野さんのように「安定」した例もあるという。
高橋院長は「みなさん進行がんで、手の施しようがなくなった状態で来院する。多くは抗がん剤との併用で、ワクチン療法だけの効果とは言えないが、中には予想以上に良い経過をたどる患者さんがいる」と話す。
米国では食品医薬品局が10年4月、前立腺がんに対する樹状細胞ワクチン療法を承認した。一方、国内では全国17の医療機関で同様の治療が受けられるが、未承認のため治療費約170万〜230万円は自己負担だ。
丹野さんは3月、「体調はベストの状態。こういう選択肢があることを最初から知らせてくれれば良かったのに」と話した。(共同通信 戸部大)(共同通信 2011/05/02)歯:培養液で土台再生、名古屋大のチーム成功 幹細胞、移植せず
臓器や骨などのもとになる幹細胞の培養液を使い、ヒトの歯を支えるあごの骨(歯槽骨(しそうこつ))を再生することに、上田実・名古屋大教授(顎(がく)顔面外科)らのチームが成功した。幹細胞を移植する方法より安全で効率的な治療として注目される。6月に京都市で開かれる日本炎症・再生医学会で発表する。
歯周病や抜歯で歯を失うと、歯の土台となる歯槽骨が小さくなり、歯の再建が難しくなる。自分の骨や人工骨を移植するなどの方法があるが、手術時の負担が大きい。
チームは、ヒトの骨髄幹細胞を培養した液の上澄みを濃縮し、その粉末を精製水に溶かしたものを、左上の奥歯が欠損した40代女性の患部に、インプラント(人工歯根)とともに移植した。
その結果、歯槽骨が再生し、女性は約5カ月後には硬いものも食べられるようになった。チームは以前、幹細胞を移植することによって歯槽骨を再生させることにも成功しているが、幹細胞にはがん化の危険性があるため、より安全な治療法を模索していた。
幹細胞そのものでなくても骨が再生するメカニズムについてチームは、幹細胞に含まれるたんぱく質が培養液に溶け出し、そのたんぱく質の働きによって、体内にもともとある幹細胞による骨の再生が促されたとみている。上田教授は「幹細胞移植を伴わなければ、細胞を培養する施設運営のコストや、極めて厳格な管理が不要になり、治療の実用化が容易になる」と話す。【永山悦子】(毎日新聞 2011/05/10)がんのもとを食べて破壊 神戸大解明、治療法開発に
がんのもとになる異常な細胞を、周囲の正常な細胞が食べて破壊するメカニズムを神戸大大学院医学研究科の井垣達吏特命准教授(遺伝学)らのチームが解明した。がんの新たな治療法開発につながる可能性がある。
がんのほとんどは臓器の内部を覆う「上皮組織」の細胞で発生する。
チームがショウジョウバエの幼虫を使って実験した結果、上皮組織で一部の細胞ががんになりかけると、隣の正常な細胞で特定のタンパク質の働きが活発になり、ほかの細胞を食べやすいように形状を変化させていた。その後、異常細胞を生きたまま丸のみして破壊した。
チームはヒトやイヌなどの培養細胞を使った研究も進めている。井垣特命准教授は「これまではがん細胞を殺す努力をしてきたが、正常な細胞を元気づけ、食べさせる治療法も考えられる」と話している。
成果は米科学誌デベロップメンタルセルに掲載された。(共同通信 2011/05/15)前立腺がんリスク減少にコーヒーが効果、米研究
【5月18日 AFP】前立腺がんの予防については、コーヒーはたくさん飲むほど良いとする研究結果を17日、ハーバード公衆衛生大学院(Harvard School of Public Health)が発表した。
コーヒーをまったく飲まない男性に比べて、1日6杯以上のコーヒーを飲む男性のほうが、死に至る前立腺がんにかかるリスクは60%、前立腺がん自体が発現するリスクも20%低いことが、この研究で明らかになった。1日1〜3杯のコーヒーでも、死に至る前立腺がんにかかるリスクは30%低かった。カフェイン含有の有無による効果の差はなかった。研究者たちは、コーヒーの成分が持つ抗酸化作用や抗炎症作用と、前立腺がんリスクの低下に関係があるのではないかと考えている。
前立腺がんは米国の男性に最も多く診断されるがんだが、すべてが致死性というわけではなく、早期に血液検査で発見できる。
今回の研究では4万7911人の米国人男性を対象に、1986年から2008年までの間の4年ごとに飲んでいるコーヒーの量を調査した。この研究期間中に計5035件の前立腺がん診断が報告され、そのうち642件については転移や死亡が報告された。
コーヒー常用者における前立腺がんリスクの低下は、喫煙や運動不足など、がんリスクが増大するとされる他の要因を加えても認められた。(AFP 2011/05/18)骨肉腫の転移、抑える物質を発見 鳥取大
細胞の機能を抑える性質を持つ物質が、骨のがんの骨肉腫が肺へ転移するのを抑える作用を持つことを、鳥取大学大学院医学系研究科の尾崎充彦助教(腫瘍〈しゅよう〉生物学)が発見した。国立がん研究センター(東京都中央区)の落谷孝広博士との共同研究で突き止め、アメリカの科学誌で発表した。骨肉腫は10代に多い病気で、新たな治療法の開発につながることが期待されている。
この物質は、遺伝子の働きにかかわるリボ核酸(RNA)の断片の1つとされる「マイクロRNA143」。細胞増殖や生理活性物質の分泌など、細胞の機能を制御する作用を持つという。
尾崎助教らの研究グループは、約1000あるといわれるヒトのマイクロRNAのうち、肺に転移した骨肉腫細胞の中で少なかったマイクロRNA143に着目。ヒトの骨肉腫の細胞を投与したマウスを10匹ずつ2つのグループに分け、その1つのグループに3日おきにマイクロRNA143を50マイクログラム投与した。
20匹全部のひざ部分に骨肉腫が確認されたが、4週間後には、この物質を投与されなかったグループは10匹すべての肺にがんが転移していたのに対し、投与したグループで転移が確認されたのは4匹だけだった。
この実験結果などから、マイクロRNA143には、骨肉腫のがん細胞が周囲の細胞組織を壊して広がるのを抑える働きがあると結論づけた。
骨肉腫は発症患者の約6割を10代の若者が占める病気。手術や抗がん剤の投与で治療することができるが、術後5年以内に3〜4割の確率で肺に転移する。転移したがんは、病状が進行しているので治療が困難なことが多く、転移をどう抑えるかが大きな課題になっている。
尾崎助教は研究の成果について「骨肉腫の転移を予防する新しい治療法や薬の開発につながり、十分に解明されていない転移のメカニズムも明らかになる可能性もある」としている。(宋潤敏)(朝日新聞 2011/05/23)胃がんはなくせる
ピロリ菌除菌が効果
北大教授、撲滅計画提唱
かつて日本人の国民病とも称された胃がん。がんの死亡者数では肺がんの増加で1990年代に2位になったが、発症者数では依然として最も多い。近年、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の感染が主な原因と分かり、制圧も夢ではなくなってきた。北海道大の浅香正博特任教授(がん予防内科学)はピロリ菌の検査と除菌を中心とした「胃がん撲滅計画」を提唱している。▽感染で萎縮
「胃がんの大半はピロリ菌感染症だ」と浅香教授は言う。胃がんは過去、塩分やストレスなどが原因とされてきた。しかし、1982年に胃粘膜からピロリ菌が発見されて以降、研究成果が積み重なり、ピロリ菌の長年の感染で胃の粘膜が萎縮して、胃がんが発生することが明らかになってきた。ただし、数%はピロリ菌と関係のない胃がんもあるとされる。
ピロリ菌に感染したことがない人は胃がんを発症することはほとんどないが、問題は、既にピロリ菌に感染している人。除菌したら胃がんを予防できるのだろうか。
浅香教授らは、早期胃がんで内視鏡治療をした患者505人について、治療後に除菌した集団としなかった集団とに分けて3年間追跡した。いずれも切除した場所とは異なる場所に胃がんが再発した人が出たが、除菌した集団はしなかった集団に比べて発症率が3分の1になった。
つまり、感染者は胃が萎縮するなど症状が進んでいるため、除菌しても発症を完全に予防することはできない。しかし、胃がんになるほど症状が進んだ人でも除菌をすれば発症が3分の1に抑えられることから、胃がんにまで至っていない人なら、除菌で発症は3分の1以下に抑えられることを示しているという。▽50歳以上対象
除菌の効果は胃の萎縮が進んでいない若いうちほど大きく、推計では男女とも30代までに除菌をすると、ほぼ100%胃がんにならない。40代で除菌すると男性は93%、女性98%、50代では男性76%、女性92%、60代では男性50%、女性84%で予防できるという。
ピロリ菌は胃酸の分泌が未成熟の幼児期に感染し、成人では感染しないため、除菌後に再び感染することはまずない。
浅香教授が提唱する胃がん撲滅計画は、胃がんの死亡率が低い年代を除いた50歳以上が対象。ピロリ菌検査に加え、胃の萎縮を調べるペプシノゲン検査を義務付ける。いずれも血液検査で、2つ合わせて「ABC検診」と呼ばれる。両検査で問題ない人は、ほぼ胃がんにならないため以後の検診は不要。ピロリ菌に感染しているが、胃の萎縮が進んでいない人は、除菌すれば胃がんになる可能性は極めて低い。胃の萎縮が判明すれば、除菌をした上で定期的な内視鏡検査を実施する。
萎縮が進みすぎるとピロリ菌の数が減り、検査では見掛け上「なし」と判定されるが、これはがんになる可能性が最も高い状態だ。▽死者3万人に
現在、毎年約11万人が胃がんにかかり、年間の治療費は3000億円と推定される。団塊の世代が胃がん年齢を迎えたほか、高額な分子標的薬の導入などで年々の治療費は上がっており、2020年には5000億円を超える可能性がある。
浅香教授の推計では、撲滅計画を実施すると、受診率50%と仮定した場合で除菌費用などに毎年約270億円かかるが、20年を迎えても治療費は現行水準にとどまり、死亡者数は現在の年間約5万人から約3万人に減少する。その後はピロリ菌感染者数の減少とともに、胃がん発症者数もゼロに近づくとの見立てだ。
浅香教授は「肝炎ウイルス対策を基本とする肝臓がんでは死亡者数が急速に減っている。なぜ、胃がんはピロリ菌対策を行わないのか」と話している。(戸部大)(共同通信2011/05/24)がん治療、ケイ素が有効 光線力学療法で群馬大発見
早期がんを治療する光線力学療法で、治療薬にケイ素を組み込むことでがん細胞の殺傷能力が格段に高まることを、群馬大の研究チーム(代表・堀内宏明助教)が突き止めた。マウスを使った実験では、治療から6日間でがん細胞がほぼすべて消えたという。
光線力学療法は、治療薬を患部に入れ、赤色光を当て、活性酸素を発生させる。活性酸素ががん細胞を攻撃するという仕組み。
副作用が少なく、手術や抗がん剤などの化学療法と比べて患者への負担が少ないとされる。国内では治療薬「フォトフリン」や「レザフィリン」が承認されている。
実験では、がん細胞を移植したマウスに、ケイ素を組み込んだ治療薬を注射し、約4時間後に可視光を照射した。がん組織の大きさは2日後に約50%に、3日後に約25%まで減り、6日後にほぼ消えた。がん組織はかさぶたのように黒くなったという。
これに対し、同じ条件で「レザフィリン」を用いた場合、6日後、がん組織の大きさは注射前とほぼ変わらなかった。
治療薬には、光を吸収しやすい性質がある物質が使われている。この物質にケイ素を結合することで、治療薬ががん細胞に集まる効率がレザフィリンに比べ約1.2倍に高まったという。
堀内助教は「この療法がうまくいけば、体への負担が小さい、がんの治療法が完成するかもしれない」と期待する。研究チームは治療薬を改良し、実用化を目指している。
ただ、光線力学療法では、深部に赤色光が届かないため、治療できるのは初期の肺や胃がんなどに限られる。また、治療薬はがん細胞以外の細胞にも入るため、すぐに明るい場所に出ると正常な細胞も傷つける恐れもあるという。
研究成果は3月の日本化学会春期年会で発表されたという。ケイ素や炭素の働きを研究する群馬大の「エレメント・イノベーション」は27日、桐生市織姫町の桐生地域地場産業振興センターでシンポジウムを開き、研究について発表する。(新宅あゆみ)日本光線力学学会会長で新座志木中央総合病院(埼玉県)の名誉院長・加藤治文さんの話〉 現在の光線力学療法では表面にできた1センチ大のがんであれば完全に治せる。今回の発見によりさらに大きいがんに効果があると期待できる。(朝日新聞 2011/05/26)
脳梗塞治療に白血病の薬 血流回復、後遺症減る 東海大
脳梗塞(こうそく)の発症初期に、白血病治療にも使われている血液や血管になる幹細胞を増やす薬を投与することで、発症後の後遺症を大幅に軽減することに東海大の研究チームが成功した。神経細胞が死ぬのを防いだり、再生したりする効果があったと見られる。7月にも岡山大(岡山市)、藤田保健衛生大(愛知県豊明市)と共同で100人規模の臨床試験を始める。
研究結果は、28日までスペインで開催中の国際脳循環代謝学会で発表された。
脳梗塞は、脳の血管が血の塊(血栓)などで詰まり細胞が壊死(えし)する病気で、年間8万人程度が死亡する。助かっても言語障害や手足にまひが残ることが多い。短時間で血流を回復すれば、機能が戻る可能性が高まるため、急性期と呼ばれる発症後1〜2週間の治療が重要とされる。(朝日新聞 2011/05/28)がん11種共通の促進たんぱく、九大グループ発見
九州大病院先端分子・細胞治療科の高橋淳講師(血液腫瘍内科学)や同大生体防御医学研究所の谷憲三朗所長らの研究グループは14日、ほとんどのがんに共通して存在し、がんの進行を後押しする働きがあるとみられる「腫瘍促進たんぱく」を発見したと発表した。一部のがんでは、こうしたたんぱくが見つかっているが、今回は11種類で確認されており、がんの早期発見や治療・予防につながる可能性があるという。
英国の科学電子雑誌「サイエンティフィック・リポーツ」に14日掲載された。
高橋講師によると、肺がんや大腸がんなど7種類のがんの患者約170人を検査したところ、精巣以外ではほとんど検出されない特定のたんぱくが、がん細胞で異常に増加していることが分かった。
このたんぱくには不必要になった細胞の細胞死を抑制する働きがある。こうした細胞ががん化しているとみられ、たんぱくを多く含むマウスで実験したところ、40匹のうち19匹が悪性リンパ腫、14匹が肝臓がんを発症した。異常増加は11種類のがんで確認され、日本人に発症するがんの約8割を網羅できるという。(読売新聞 2011/06/15)がん抑制遺伝子に肝臓硬くする働き 阪大など発見
がんを抑制することで知られる遺伝子p53が、肝炎や肝硬変の原因になっていることを、大阪大などのグループが明らかにした。p53は体中にあり、がん化した細胞を攻撃してくれる一方、肝臓で活性化し過ぎると、細胞を硬くしてしまう物質が多く現れていた。治療が難しい肝硬変を治したり、進行を抑えたりできるようになる可能性がある。
大阪大大学院医学系研究科の小玉尚宏研究員らは、肝臓で働くp53が多いマウスと少ないマウスをつくって比較した。p53が多いマウスは生後6週間で、すでに肝臓が硬くなり機能が落ちる「線維化」が進んでいた。ヒトの肝細胞でも、重い肝硬変の細胞ほどp53が多く活性化していた。
肝炎ウイルスやアルコールの刺激でp53が活性化されると、CTGFというたんぱく質が多く現れるらしい。このたんぱく質は傷を治したり、軟骨をつくったりするのに欠かせないが、増え過ぎると細胞を硬くしてしまう。同研究科の竹原徹郎教授は「p53の発生をコントロールして線維化が抑えられれば、肝硬変の治療ができるようになるかもしれない」と話している。(朝日新聞 2011/07/14)塩分と高血圧、カギは腎臓のたんぱく質 東大教授ら解明
塩分を取りすぎると高血圧になるといわれるが、血圧が上がりにくい人もいる。その違いは腎臓でのたんぱく質の働きの差で起こることが、東京大の藤田敏郎教授(腎臓内分泌内科)らによるネズミの実験でわかった。治療薬の開発に役立ちそうだ。
藤田さんらは、ネズミに塩分過多の食事(塩分8%)を与えて3週間観察。ネズミは最高血圧(収縮期血圧)が160に達した高血圧グループと正常値の120にとどまったグループに分かれ、前者では腎臓の細胞の形の維持などに必要なたんぱく質「Rac1」が活性化していた。このたんぱく質の働きを妨げる薬を高血圧ネズミに与えたところ、塩分過多の食事でも高血圧にならなかった。
藤田さんは「Rac1の阻害薬は高血圧治療に使える可能性がある。どの程度の投与なら副作用が出ないかなどを調べたい」と話した。結果は18日付の米医学誌「ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション」に掲載された。(大岩ゆり)(朝日新聞 2011/07/20)皮膚がん 新たな免疫療法 京大グループ開発
京都大大学院医学研究科の門脇則光准教授(血液・腫瘍内科学)らのグループは19日、皮膚がんの悪性黒色腫(メラノーマ)が進行した患者に対し、がん細胞を攻撃するリンパ球の働きを活性化させる新たな免疫療法を開発したと発表した。今月から患者10人を対象に臨床研究を始め、安全性と有効性を検証する。
グループによると、メラノーマは、副作用の強い抗がん剤などの化学療法以外に治療法が乏しい。
開発された治療法は、免疫反応を高める「樹状細胞」がリンパ球を強く刺激するのが特徴。患者の血液を体外で培養して分化させた樹状細胞に、病原性のないメラノーマの細胞を投与し、さらに免疫を増強する抗がん剤を併用してリンパ球の働きを強める。副作用が少なく、治療効果の長期持続が期待できるという。
門脇准教授は「効果が確認できれば、患者の生存期間の延長につながる」としている。(産経新聞 2011/07/20)「がん抑制遺伝子」増える仕組み解明 九州大グループ
がんを抑える遺伝子を増やす仕組みを、九州大生体防御医学研究所の鈴木聡教授らのグループが突き止めた。この遺伝子を邪魔する特定の分子がわかった。この分子が少ないがん患者は5年生存率が高かった。これを応用すれば、新たな抗がん剤開発などが期待できるという。
31日付の米科学誌ネイチャーメディシン電子版に掲載された。この分子は「PICT1」。がん細胞の中でPICT1の発現が抑えられていると、がんを抑える遺伝子として知られる「p53」がよく増える仕組みがわかったという。
大阪大の森正樹教授らのグループと共同で患者から摘出したがん組織のPICT1の発現量と、5年後の生存率を調べた。食道がん患者で発現量が高かったグループは生存率が25%。一方で低かったグループは42%だった。大腸がん患者ではそれぞれ62%、81%となり、PICT1の発現量が低いと生存率が高かった。(朝日新聞 2011/08/01)動脈硬化の新たな仕組み解明=予防・治療法開発に期待−東北大
心筋梗塞や脳卒中の原因となる動脈硬化が起きる新たな仕組みを解明したと、東北大大学院医学系研究科の片桐秀樹教授らが1日付の米医学誌サーキュレーション電子版に発表した。この仕組みには、細胞内で生み出されたたんぱく質をひも状から立体的な構造に折り畳む小器官「小胞体」の異常が関与しており、心筋梗塞などの新たな予防・治療法の開発につながる可能性があるという。
小胞体に正しく折り畳めないたんぱく質がたまる「小胞体ストレス」と呼ばれる状態が悪化すると、「CHOP」というたんぱく質が働いて細胞自体が死んだり、血管に炎症を起こしたりする。
片桐教授らは、動脈が硬化した部分でCHOPが増えていたため、CHOPを作れない高コレステロール血症のマウスを遺伝子操作で生み出した。その結果、血管の炎症が抑えられ、コレステロールが高くても動脈硬化になりにくくなることが判明。CHOPの合成を妨げる方法が見つかれば、新予防・治療法になると考えられる。(時事通信 2011/08/02)アルツハイマーの原因物質 抗うつ治療で抑制 金沢医大教授ら
うつ病治療の電気けいれん療法(ECT)で、認知症などアルツハイマー病を引き起こす原因物質の作用を抑制できることを、金沢医科大の加藤伸郎教授(神経生理学)と国立病院機構宇多野病院(京都市)の山本兼司医長らの研究グループがマウスの実験で突き止めた。アルツハイマー病のメカニズム解明や治療につながると期待される。
3日の米神経科学会誌「ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス」電子版に発表した。
アルツハイマー病はタンパク質「アミロイドβ(ベータ)」が脳の神経細胞に蓄積してダメージを与え、細胞を死滅させることで脳機能を低下させると考えられている。
グループは、遺伝的にアルツハイマー病にしたマウスをもとに、アミロイドβが蓄積した神経細胞だと、情報を伝える電気信号の持続時間(活動電位)が1000分の2.3秒程度と、正常なマウスに比べ5割ほど長くなるのを確認。さらに、この細胞にECTの電気刺激を与えると活動電位が正常化し、アミロイドβの作用を抑制する効果があることが分かった。
現在アミロイドβに直接作用するアルツハイマー病の治療薬はなく、ワクチンが開発中の段階。加藤教授は「今後ECTによる治療効果が実証されると、既存の技術を応用した容易な治療法となりうる」と話している。(山森保)脳神経の機能に詳しい沢田誠・名古屋大環境医学研究所副所長(神経化学)の話 感情障害などアルツハイマー病の初期症状はうつ病に似ている。ECTの効果はある程度の予想はできたが、実際の研究事例はなかった。発症のメカニズム解明や新しい治療法につながる研究成果だ。(中日新聞 2011/08/04)
食物繊維、脳卒中予防に効果 喫煙すれば打ち消し
食物繊維をとれば脳卒中や心臓病のリスクを抑えられるが、たばこを吸うと効果は打ち消しになる──。国立がん研究センターと国立循環器病研究センターが成人男女約8万7000人を対象に約10年間追跡した調査でこんな結果が出た。喫煙の影響は、肺がんなど呼吸器系の病気にとどまらないことが改めて浮き彫りになった。
研究班は岩手、長野、沖縄県などの45〜74歳の男女を2004年まで約10年間にわたって追跡調査。食物繊維の摂取量と脳卒中、心臓病の発症リスクとの関係を調べたところ、女性では食物繊維の摂取量が多いほど脳卒中などの発症が抑えられた。食物繊維の摂取量が上位2割のグループの発症リスクは、下位2割に比べ35%低かった。
研究班は食物繊維が消化器内で膨らみ、満腹感が出て食べ過ぎを抑えたり、コレステロールの排出を促したりしたことで、脳卒中の原因となる高血圧症にかかるリスクが減った可能性があるとみている。
ただ、男性では食物繊維の効果はみられなかった。男性の喫煙率が高く、血管収縮や動脈硬化などを通じて脳卒中や心臓病のリスクが高まり、食物繊維の効果が打ち消されたと予測している。
循環器病研究センターの小久保喜弘医長は「食物繊維には循環器病の予防効果があるが、健康のためにまずは禁煙を優先すべきだ」と分析する。(日本経済新聞 2011/08/04)産総研:脳の「若返り」解明 認知症治療に応用も
老化で減る脳の神経幹細胞を増やす仕組みを産業技術総合研究所(茨城県つくば市)と筑波大の研究チームが解明し、8日発表した。運動をすると、特定の細胞から分泌されるたんぱく質の因子(Wnt3)が増え、これが起点となって神経が新生する現象をマウスの実験で突き止めた。うつ病や認知症の新治療法や創薬開発に役立つという。米実験生物学誌に掲載された。
学習や記憶を担う脳の領域「海馬」にある神経幹細胞は老化で数が減り、細胞を生み出す力も衰える。実験では、生後22カ月の老齢マウスと、9週間の若いマウスの海馬からアストロサイト細胞(神経幹細胞を支える細胞)を取り出して培養。比較すると老齢マウスのWnt3産出量は若いマウスの30分の1しかなかった。
さらに、マウスにベルトコンベヤー上で毎日10分間2回ずつ走らせる運動を2週間続けたところ、運動前と比べてWnt3産出量は若いマウスで10〜15倍、老齢マウスでは20〜30倍と飛躍的に増えた。
運動すると脳が活性化する事実は知られているが、老化で低下した神経を作る機能が復活し、脳の「若返り」につながる仕組みを細胞レベルで解明したのは初めてという。
研究チームの産総研幹細胞工学研究センターの桑原知子研究員は「創薬開発などに応用できる」と説明している。【安味伸一】(毎日新聞 2011/08/08)東京薬科大・ハーバード大、ユリ科植物の根由来化合物ががん細胞の増殖抑える仕組み解明
東京薬科大とハーバード大の共同研究チームは、ユリ科植物の根からとった化合物ががん細胞の増殖を抑える仕組みの一端を解明した。脂質輸送や代謝に関わるたんぱく質に働きかけていた。天然由来の化合物からの新しい抗がん剤開発につながるという。
化合物は「OSW─1」と呼び、コレステロールをもとに作った誘導体に糖がついた構造をしている。南アフリカ原産のユリ科のオーニソガラムサンデルシーという花の根から、東京薬科大が1992年に抽出に成功、97年に細胞に対する毒性があることを発見した。
腫瘍細胞だけを壊し、1万倍の濃度にしても健康な細胞は傷つけないことが分かっている。ただ、細胞のどこに働きかけるかなど、詳しい仕組みは分かっていなかった。(日経産業新聞 2011/08/08)脳:「若返り」解明 認知症治療に応用も──産総研
老化で減る脳の神経幹細胞を増やす仕組みを産業技術総合研究所(茨城県つくば市)と筑波大の研究チームが解明し、8日発表した。運動をすると、特定の細胞から分泌されるたんぱく質の因子(Wnt3)が増え、これが起点となって神経が新生する現象をマウスの実験で突き止めた。うつ病や認知症の新治療法や創薬開発に役立つという。米実験生物学誌に掲載された。
学習や記憶を担う脳の領域「海馬」にある神経幹細胞は老化で数が減り、細胞を生み出す力も衰える。実験では、生後22カ月の老齢マウスと、9週間の若いマウスの海馬からアストロサイト細胞(神経幹細胞を支える細胞)を取り出して培養。比較すると老齢マウスのWnt3産出量は若いマウスの30分の1しかなかった。さらに、マウスにベルトコンベヤー上で毎日10分間2回ずつ走らせる運動を2週間続けたところ、運動前と比べてWnt3産出量は若いマウスで10〜15倍、老齢マウスでは20〜30倍と飛躍的に増えた。
運動すると脳が活性化する事実は知られているが、老化で低下した神経を作る機能が復活し脳の「若返り」につながる仕組みを細胞レベルで解明したのは初。研究チームの産総研幹細胞工学研究センターの桑原知子研究員は「アストロサイト細胞を活性化させれば神経幹細胞を呼び戻すことができ創薬開発などに応用できる」と説明している。【安味伸一】(毎日新聞 2011/08/09)ヨーグルト:インフル感染率が大幅低下 佐賀の病院調査
R─1乳酸菌を含むヨーグルト飲料を飲んだ小中学生はインフルエンザの感染率が低かったとの調査結果を有田共立病院(佐賀県有田町)の井上文夫病院長が9日、東京都内のセミナーで発表した。
昨年10月〜今年3月、同町内の全小中学生約1900人にR─1乳酸菌入りヨーグルトを毎日飲んでもらった。インフルエンザの感染率を調べると小学生は0.31%、中学生は0.64%で、周辺の地域(約1.3〜10%)や佐賀県全体の平均(約2.6〜4.4%)より大幅に低かった。井上院長は「驚くほど低い。乳酸菌で免疫力が上がった可能性がある」と話した。(毎日新聞 2011/08/10)「ビフィズス菌で長生き」確認 京都大など、マウスで
京都大や協同乳業などのグループは17日、ビフィズス菌「LKM512」をマウスに与えると、与えないマウスよりも寿命が延びたとする研究成果を発表した。米科学誌プロスワン電子版に掲載された。
研究では、マウスに市販のヨーグルト約150ccに含まれる量の菌を水に溶かして週3回投与。人の年齢で約70歳の時の生存率は菌を与えたマウスが約80%、生理食塩水を与えたマウスが約30%となり、大きな差が出た。菌を与えたマウスは毛並みも良く、外見も若々しい印象になるなどの効果も見られたという。
菌を与えると、大腸内でポリアミンという成分が増えて、大腸の老化抑制、抗炎症の促進などの効果があった。菌を与えずに育てたマウスの約20%に発生した腫瘍や潰瘍などの症状もほとんどなかった。(共同通信 2011/08/17)糖尿病:魚多く食べる男性ほど発症率低下
魚を多く食べる男性ほど、糖尿病になる危険性が低くなるとの調査結果を、国立がん研究センターなどのチームが17日、発表した。米臨床栄養雑誌(電子版)に掲載された。
調査は95年と98年に実施。対象は45〜74歳の健康な男女計5万2680人(男2万2921人、女2万9759人)で、魚介類を食べる頻度や量、種類を尋ね、摂取量が少ない人から順番に並べて4群に分類した。各群の真ん中に位置する人の1日当たりの摂取量は、男性の場合(1)36.6グラム(2)65グラム(3)100.8グラム(4)171.7グラムとなった。
追跡調査の結果、それぞれ5年後に糖尿病を発症していた人は男性572人、女性399人。各群の発症者の割合(発症率)は、男性で(1)2.9%(2)2.5%(3)2.4%(4)2.2%──となり、摂取量が多い群ほど発症率が低い傾向があった。発症リスクを計算したところ、摂取量が最多の(4)は最少の(1)より約3割低かった。一方、女性は摂取量と発症リスクに相関関係が見られなかった。
よく食べる魚の種類によっても違いが見られ、小・中型の魚(アジ、イワシ、サンマ、サバ、ウナギなど)と、脂の多い魚(サケ、アジ、イワシ、サンマ、タイ類など)を多く食べる男性ほど発症リスクが低下することも分かった。マグロ、カツオ、タラなどに代表される、大型で脂が少ない魚では、摂取量と発症リスクの関連は確認されなかった。
チームの南里明子・国立国際医療研究センター栄養疫学研究室長によると、魚の脂などに多く含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)、ビタミンDなどが、糖尿病を防ぐインスリンの量や効きやすさに良い効果を与えた可能性がある。女性で差が見られなかった理由として、糖尿病発症を抑える栄養素が男女で異なることや、女性は男性に比べて体脂肪が多いため、魚に蓄積された水銀などの環境汚染物質を体内に取り込みやすく、魚の栄養効果を打ち消した可能性もあるとしている。【藤野基文】(毎日新聞 2011/08/17)ビフィズス菌で長寿 京大などマウスで証明
ビフィズス菌を与え続けたマウスは大腸内が若い状態で保たれ、寿命が延びるとする研究成果を、協同乳業(東京都)や京都大などの研究グループが発表した。17日、米科学誌「プロスワン」電子版に掲載された。
松本光晴・協同乳業主任研究員らは、人間であれば30代前半にあたる生後10カ月のマウスに、通常のえさとは別に、腸内に生きて届きやすいビフィズス菌「LKM512」を週に3回与え続けて観察。約10カ月たっても8割弱が生存した。ビフィズス菌の代わりに生理食塩水を与えたマウスでは2割しか生存しなかった。
また、ビフィズス菌を与えたマウスの腸内では、抗炎症作用や抗がん作用のある「ポリアミン」という物質が増え、大腸内が若い状態に保たれていることも判明。老齢期のマウスを比べると、ビフィズス菌を与えたマウスは毛並みも良く、動きも活発だったが、生理食塩水だと潰瘍や腫瘍が多く見られた。
今回マウスに与えた量は、人間に換算すると、1週間でビフィズス菌入りヨーグルトカップ(150cc)を3つ食べたのと同等という。芦田久・京大准教授(応用微生物学)は「ビフィズス菌で寿命が延びることを証明したのは初めて。LKM512以外の菌でも、生きて腸に届けば同様の効果がある可能性がある。今後、人間でも調べていきたい」と話している。(中日新聞 2011/08/18)ピーナツでアルツハイマー予防 岐阜薬科大など効果実証
ピーナツの渋皮に脳の神経細胞を活性化する効果があることを、岐阜薬科大(岐阜市)などの研究グループが突き止めた。ポリフェノールが多く含まれており、グループは渋皮を精製した粉末も開発。健康食品などに応用することで、認知機能が低下するアルツハイマー病の予防などが期待できるという。
開発したのは、岐阜薬科大の古川昭栄教授(神経科学)と特殊高機能性化学品メーカー「岐阜セラツク製造所」(岐阜市)の研究グループ。
脳の働きを維持するのに欠かせないたんぱく質である神経栄養因子の機能が、老化やストレスなどによって低下し、記憶力や学習能力の衰えにつながることに着目。2008年から、神経栄養因子の機能を補う方法を探ってきた。
アルツハイマー病は、脳にアミノイドベータ(Aβ)たんぱく質が蓄積され、神経細胞の機能低下を引き起こすことが原因とされる。ふだんの食生活が、発症リスクの軽減や症状の進行抑制に影響する可能性があるため、野菜や果物などのほか、伝承薬として用いられてきた薬草の成分などを調査した。培養神経細胞を使った実験で、神経栄養因子と同じような働きをする物質を探した。
その結果、中国で「長生果」と呼ばれ、不老長寿の豆とされるピーナツの渋皮に、神経栄養因子と同じような作用があることを発見した。
グループは、老人斑の構成物質であるAβたんぱく質を脳に投与し、アルツハイマー病の疑似症状をつくったマウスに、渋皮から抽出したポリフェノール成分を食べさせた。迷路などを使って少し前の記憶や前日の記憶の有無を調べたところ、Aβたんぱく質による記憶障害を改善する作用がみられたという。
グループは、脳神経細胞内にポリフェノールが結びつく何らかのたんぱく質があり、神経栄養因子の活性化に関与していると推定している。しかし、活性化の詳細なメカニズムは今のところ不明で、今後、解明していくという。うつ病などの高次脳機能障害にも応用できるとみている。
古川教授は「ピーナツ渋皮の抽出物は機能低下した神経栄養因子に代わる機能を持つと思う。これまで渋皮は廃棄物として捨てられてきたが、資源の活用にもつながる」と話す。今後、食品メーカーなどと協力し、この粉末を使った健康食品の開発を目指す。(鷹見正之)(朝日新聞 2011/08/22)チョコレートが心臓病のリスク軽減につながる可能性=調査
【パリ29日ロイター】欧州心臓病学会(ESC)で29日発表された新たな調査で、チョコレートの摂取により、心臓疾患の発症リスクが3分の1減少する可能性があることが分かった。ただ、チョコレートの食べすぎには気をつける必要があるとしている。
特に血管系に良いとされる成分「フラバノール」を含むダークチョコレートなど、チョコレートの摂取による健康効果については近年複数の研究が発表されている。
英ケンブリッジ大学のオスカー・フランコ氏とその調査チームは、チョコレートの摂取と心臓血管病に対するその健康効果との関連性を調べるため、計10万人を対象にこれまで実施された7件の研究結果を分析した。今回発表の調査は英医師会誌(BMJ)の電子版に掲載されている。
それによると、7件中5件の研究でチョコレートの健康効果が示されたが、残り2件では示されなかった。総合的な結果では、チョコレートの消費水準が最も高い状態と最も低い状態を比べた場合、消費水準の高いほうが、心臓血管病のリスクが37%、心臓発作のリスクが29%低かったという。
フランコ氏によると、7件の研究をまとめた今回の調査は完全なものではなく、ダークチョコレートとミルクチョコレートの区別をつけていないほか、健康効果がチョコレートの摂取だけによるものなのか、他の要素が関係しているのかを調べるには一段の調査が必要だという。
フランコ氏は、チョコレートが心臓に良いようだということは分かったが、脂肪と糖分の多い「菓子」の持つ不健康さを考慮すると、健康効果は食べ過ぎによる悪影響で容易に打ち消される可能性があると警告。今回の調査に関与していない英国心臓財団(BHF)のビクトリア・テイラー氏も、「心臓疾患のリスクを減らしたいと思うならば、チョコレートを1箱買うよりも数段良い方法がある」と述べた。(ロイター通信 2011/08/30)進行期の肝臓がんに新治療…山口大グループ
抗がん剤が効かない進行期の肝臓がんに対し、がん細胞の増殖に必要な鉄分を除去することで進行を抑えることに、山口大の坂井田功教授らのグループが成功した。
患者の5割でがんが縮小したり進行しなくなったりしたという。抗がん剤に代わる新たな治療法で、米医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに報告した。
肝臓がんは切除しても再発しやすく、進行すれば抗がん剤の治療効果がなくなる場合も多い。
グループは、体内の鉄分を尿と一緒に排出する「鉄キレート剤」と呼ばれる薬剤を患者の肝臓動脈に直接投与する臨床研究を実施。末期の肝臓がん患者10人に対し、隔日で平均2か月間注入したところ、2人でがんが縮小し、3人で進行がほぼ止まった。重い副作用も確認されなかった。残り5人には治療効果はみられなかった。
鉄キレート剤を使った治療は、他の臓器のがんにも応用できると考えられるが、肝臓は鉄分を蓄積する性質があるため、効果が表れやすいとみられるという。
坂井田教授は「今回の方法は、今後のがん治療の選択肢の1つとして期待できる」と話している。(読売新聞 2011/09/03)動脈硬化予防、調理法に秘けつ=野菜の効率的摂取で数値低下−武庫川女子大
熱伝導率の高いアルミニウムと保温性の高いステンレスを組み合わせた「全面多層構造」の調理器具で調理した野菜の摂取で、動脈硬化の原因とされる酸化LDLの値を下げられることが、武庫川女子大学国際健康開発研究所(兵庫県西宮市)の実験で分かった。薬ではなく、食品の摂取で効果が実証されたのは初めてという。広島市で開かれる日本栄養改善学会の総会で9日、発表される。
実験は、1人暮らしの大学生90人を(1)全面多層構造の調理器具を使用し1日350グラムの野菜を摂取(2)一般的な器具で同量の野菜を摂取(3)通常の生活を続ける−の3グループに分けて実施した。
2週間後に血液と尿を検査すると、(1)のグループのみ酸化LDLの平均値が17.1%低下。動脈硬化予防に効果があるとされる血中ビタミンCとベータカロテンは(1)と(2)で増加したという。
全面多層構造の調理器具は熱効率が良く、短時間に少量の水で野菜をゆでる「無水調理」が可能。このため、水に溶けやすいビタミン類や熱に弱い栄養素を保ったまま、効率的に摂取できたとみられるという。(時事通信 2011/09/09)大腸がん、予防に「葉酸」が効果 愛知がんセンター
ホウレンソウ、春菊、小松菜、レバーなどに含まれる「葉酸」を多くとって飲酒しない人ほど、大腸がんになりにくい──。そんな調査結果を、愛知県がんセンター研究所の研究チームがまとめた。
葉酸は、緑色野菜や肝臓に含まれるビタミンBの一種。欧米人対象の研究で大腸がん予防効果が知られていた。日本人に同じ効果があるか、同研究所の疫学・予防部が検証した。
がんセンターを受診した4974人に、書き込み式で質問した。内訳は大腸がん患者が829人、がんではない人が4145人だった。ふだんの食事を詳しく尋ね、回答から個人の1日あたり葉酸摂取量を推定。摂取量が少ない人から多い人までをほぼ同じ人数で4グループに分け、各グループのがん患者の割合などを分析した。
この結果、摂取が最も少なかったグループにおける大腸がんのなりやすさ(リスク)を指数で1とした場合、摂取が最も多いグループの大腸がんリスクは0.72になった。(朝日新聞 2011/09/27)細菌の核酸物質で免疫向上 抗がん剤開発に期待
細菌の細胞内で生成される核酸由来の化合物「c-di-GMP」を投与して、哺乳類の体内にあるタンパク質に刺激を与えると、免疫機能が活性化されることを愛知工業大と北海道大などの研究チームが突き止め、28日までに英科学誌ネイチャー(電子版)に発表した。
この物質が大腸がん細胞の増殖を抑える効果も確認。マウスの実験では目立った副作用もないという。c-di-GMPには、さまざまなウイルスの感染を軽減する作用があることは知られていたが、詳しいメカニズムは解明されていなかった。
チームの早川芳宏(はやかわ・よしひろ)愛知工業大教授(バイオ環境化学)は「将来、抗がん剤やエイズの予防・治療薬の開発につながる可能性がある」と期待している。
試験管内とマウス体内のそれぞれで物質を投与し、黄色ブドウ球菌に対する効果を確かめると、マウスの方が低濃度の物質で感染を軽減する効果が見られたことにチームは着目。
物質は菌に直接作用するのではなく、レセプター(受容体)と呼ばれるタンパク質と結び付いて宿主の免疫力を高め、菌感染に対する抵抗力を増強していると考えた。
200ナノモル濃度の物質を投与したマウス15匹と、全く投与しないマウス14匹を黄色ブドウ球菌に感染させた結果、投与していないマウスは全て死亡したのに、投与したマウスは9匹が生き残った。
別の化合物を投与して免疫機能を失ったマウスの遺伝子構造を調べると「STING」というタンパク質だけが壊れており、c-di-GMPと結び付いて免疫機能を高めるレセプターがSTINGであることが分かった。(共同通信 2011/09/28)大腸がんを効果的に抑制 水溶性マグネシウム、岐阜大など発表
マグネシウムを水に溶けやすくした「水溶性マグネシウム」が大腸がんをより効果的に抑制する可能性があることが、岐阜大大学院医学系研究科の久野寿也准教授(44)=腫瘍病理学=らの研究で明らかになった。4日、名古屋市熱田区の名古屋国際会議場で開かれた日本がん学会で発表した。
発表によると、発がん性を高めたマウスに水溶性マグネシウムを13週間投与。16週間後に病理解析した結果、高濃度で投与したマウスの腫瘍の発症数は、与えない場合の4分の1程度だった。
抑制のメカニズムは分かっていないが、発がんに関係する細胞分裂時の遺伝子の異変を軽減するとみられる。発がんリスクを高める炎症自体を抑える効果も確認された。
久野准教授と、共同研究した東海細胞研究所(岐阜市)の田中卓二所長(62)によると、下剤などに使われる水酸化マグネシウムの大腸がんの抑制効果は22年前に確認されている。水溶性は体に吸収されやすく、効果が高まったとみられる。
今後、抑制のメカニズムや人への効果を調べ、来年3月のアメリカのがん学会で発表したいとしている。
会見した久野准教授らは「大腸がんにつながりやすい炎症性腸疾患はアジア諸国で増加しており、人への効果が確認されれば予防の道が開ける」と成果を強調した。(斎藤雄介)(中日新聞 2011/10/05)血糖値:自分の幹細胞で低下 鼻の奥から採取、膵臓に移植 /茨城
◇安全な糖尿病治療に期待
糖尿病のラット自身の鼻の神経幹細胞を膵臓(すいぞう)に移植し、血糖値を大幅に下げる技術を、産業技術総合研究所(つくば市)などが開発した。遺伝子を導入せず、自身の幹細胞を利用するため、より安全な糖尿病治療につながる可能性がある。7日、英学術誌「エンボ・モレキュラー・メディシン」(電子版)に掲載された。
産総研の浅島誠・幹細胞工学研究センター長らと米ソーク研究所のチームは、ラットの鼻の奥にある嗅球(においを感じる神経組織)の粘膜から、神経幹細胞を採取。培養後、膵臓に移植した。
インスリンを分泌する細胞が死滅する1型糖尿病の実験ラット(血糖値約600)では、神経幹細胞を移植しないラットは8週間後に死んだが、移植したラットは15週間後に血糖値が3分の1の約200まで下がった。
このラットの膵臓からは、幹細胞に由来するインスリンが分泌されていた。膵臓の中に点在し、インスリンを出す膵島の機能を代替したことが分かった。
生活習慣病によるインスリン分泌低下など日本人に最も多い2型糖尿病の実験ラットでは、血糖値は神経幹細胞の移植7週間後に、当初の230から約100に半減。その後も3カ月間は効果が持続した。産総研の桑原知子・主任研究員は「今後、大型動物で実験し、新たな治療法につなげたい」と話す。【安味伸一】(毎日新聞 2011/10/07)悪性リンパ腫新治療法 5薬剤投与で劇的効果確認
通常の抗がん剤がほとんど効かない悪性リンパ腫の1つ、NK細胞リンパ腫に、5つの抗がん剤を組み合わせて投与し劇的な効果を挙げる新しい治療法を名古屋大大学院医学系研究科の鈴木律朗准教授と三重大大学院医学系研究科の山口素子講師らの研究グループが開発した。米誌「ジャーナル・オブ・クリニカル・オンコロジー」の電子版に掲載された。
3種類あるリンパ球の1つ、NK細胞ががん化したNK細胞リンパ腫は、欧米での発症が少なく、日本や韓国など東アジアで多い。NK細胞は抗がん剤を細胞の外に排出してしまうP糖タンパク質を持っているため、通常のリンパ腫に有効な療法がほとんど効かない。腫瘍が小さくなって症状が安定するまで回復する割合は30%程度で、2年生存率は10%しかない。
鈴木准教授らは、P糖タンパクの影響を受けない薬剤を順々に投与する組み合わせ治療法を開発。5つの薬剤の頭文字を取って「SMILE療法」と名付けた。韓国や香港と共同で38人の患者に対して臨床試験を行ったところ、腫瘍が小さくなるなど8割に効果があり、2年生存率は55%に上った。
鈴木准教授は、「これまで非常に治りにくかった難病に苦しむ患者にとって画期的な結果」と話している。
NK細胞リンパ腫と同様に通常の抗がん剤が効きにくいT細胞リンパ腫でも、SMILE療法の有効性を探る臨床試験が現在、名古屋大を中心に進められている。(中日新聞 2011/10/14)「食べる抗体」でインフル予防=卵黄から作製、世界初−バイオ企業など
インフルエンザ感染を抑制する抗体を卵黄から作製することに、バイオベンチャー企業ファーマフーズ(京都市)と京都府立医科大の研究グループが成功した。同社とミヤリサン製薬(東京)は抗体入りのトローチを開発し、販売を始めた。ファーマフーズによると、ニワトリに作らせた抗体を食べてインフルエンザを予防する方法は、世界で初めて。
トローチはなめ終わった後も1、2時間は効果が持続する。ファーマフーズは「通勤・通学の人混みの中で特に有効。手軽に摂取できるので、感染予防に役立つ」としている。
研究グループは、ニワトリに季節性インフルエンザAソ連型と、2009年に流行した新型インフルエンザの2種類のウイルスを無毒化して注射。卵黄の中に、これらのウイルスに対する抗体を作った。
インフルエンザ感染実験で一般的に使われる細胞にウイルスを加えると約1分で感染したが、抗体入りの卵黄を粉末化して同時に入れると、ウイルスは約30秒で感染力を失った。唾液の成分で感染抑制効果が失われることもなかった。
従来の予防法は、無毒化したインフルエンザウイルスを注射して体内に抗体を作らせるワクチンだけだった。(時事通信 2011/10/17)「全面多層鍋」で動脈硬化予防 武庫川女子大など
熱伝導率の高いアルミニウムと保温性に優れたステンレスを重ねた「全面多層構造」の鍋で調理した野菜は動脈硬化の予防に効果があることが、武庫川女子大国際健康開発研究所(西宮市)などの実験で分かった。
1人暮らしの大学生と大学院生約90人を、(1)全面多層構造の鍋で調理(2)通常の鍋で調理(3)普段通りの生活を続ける−の3グループに分け、(1)と(2)に1日350グラムの野菜を摂取してもらった。
2週間後に血液と尿を検査すると、(1)と(2)のグループは、動脈硬化の発生に関わる活性酸素を減らすビタミンCとベータカロテンが増えた。(1)のグループはさらに、コレステロールの塊になって動脈硬化を誘発する酸化LDL(低比重リポタンパク)が実験前より減少。少量の水によって短時間で調理可能な(1)では、水溶性のビタミンCや熱に弱いベータカロテンなどが失われにくく、効率よく摂取できたとみられる。(佐藤健介)(神戸新聞 2011/10/21)高分子でできた微小カプセル薬 膵臓がんに効果 東大チーム発表
高分子でできた微小なカプセルに抗がん剤を閉じ込め、ヒトの膵臓(すいぞう)がん組織を移植したマウスに注射、狙い通りにがん細胞に送り込んで増殖を抑えることに東京大の片岡一則教授(臨床医工学)らのチームが成功、23日付の英科学誌ネイチャーナノテクノロジー(電子版)に発表した。
患者を対象にした臨床試験は海外で2009年から開始。これまで治療が困難とされてきた膵臓がんに対する効果的な薬になると期待される。
がん組織の毛細血管の壁には穴が開いており、血流に乗ったカプセルは穴より小さければ血管の外に出て、近くのがん細胞に入る。こうした薬は卵巣がんなどで実用化されており、少量でもがんを狙い撃ちでき、意図しない臓器に入って副作用が出る心配も少ないとして注目されている。
だが、膵臓がんの場合は血管の壁の穴がほかのがんに比べて小さい上、血管とがん細胞の間にタンパク質の線維組織(間質)が多くカプセルの移動が妨げられ、うまくがん細胞に送り込めなかった。
片岡教授らは、従来のカプセルの大きさが100ナノメートル(ナノは10億分の1)前後だったのに対し、ダハプラチンという薬が入った30ナノメートルの小さなカプセルを作製。マウスに投与すると、カプセルは血管の壁や間質を通り抜けてがん細胞に集まり数日間にわたって薬を放出した。観察した16日間でがんの増殖は見られなかったという。(中日新聞 2011/10/24)がん細胞を直接死滅 岡山大発ベンチャー、新薬開発へ
がん細胞を死滅させ、がんへの免疫力も高める治療薬づくりに岡大発ベンチャー企業が5年間4億円で取り組む。科学技術振興機構(JST)の事業に採択され、資金のめどがたった。前立腺がんや中皮腫、腎がん、乳がんへの効果が動物実験で確認された遺伝子を用いる。
事業主体の桃太郎源(岡山市北区)によると、製剤の元になるのは遺伝子「REIC(レイク)」。無毒化したウイルスに組み込み、直接がんに注射する。がん細胞にREICが増えると、たんぱく質の生産異常を起こして死ぬ。REICが普段からある正常な細胞は、少し増えても問題はない。
さらに、死んだがん細胞の断片がワクチンのように働き、がんに対する免疫を高めるという。
岡山大病院では、REICの特許権を持つ公文裕巳教授らが、ウイルスに組み込んだREICを前立腺がん患者で臨床研究中。今のところ安全性に問題は無い。今回は臨床研究中の製剤を改良する。ウイルスへのREIC遺伝子の入れ方を工夫し、薬効を10〜100倍に上げ、5年以内に腎がんでの臨床研究を目指すという。(長崎緑子)(朝日新聞 2011/11/05)がん細胞:近赤外光で破壊 マウスで成功 米チーム
体の外から光を当ててマウス体内のがん細胞を破壊する実験に、米国立衛生研究所の研究チームが成功し、6日発行の科学誌「ネイチャーメディシン」(電子版)に発表した。正常な細胞は傷つけず、効率的にがん細胞だけを破壊できる治療法として、数年以内の臨床応用を目指すとしている。【永山悦子】チームは、主にがん細胞に存在するたんぱく質と結びつく性質を持った「抗体」に注目。この抗体に、近赤外光の特定の波長(0.7マイクロメートル)で発熱する化学物質を取り付け、悪性度の高いがんを移植したマウスに注射した。
その後、がんがある部位に体外から近赤外光を15〜30分間当てた。計8回の照射で、がん細胞の細胞膜が破壊され、10匹中8匹でがんが消失、再発もなかった。一方、抗体注射と照射のどちらかだけを施したマウスや何もしなかったマウスは、すべてが3週間以内にがんで死んだ。複数の種類のがんで同様の効果を確認。注射された抗体ががん細胞と結びつき、照射によって化学物質が発する熱で衝撃波が発生、がん細胞だけを壊したと結論づけた。
がんに対する光治療には、今回と波長の異なる光を当てる方法があるが、やけどをしたり、光を受け止める物質ががん細胞以外にも結びついたりするなど、健康な細胞への影響が避けられなかった。
近赤外光を使う新しい方法では、抗体がわずかに正常細胞に結びついても、光の強さを調節することでがん細胞だけ破壊できる。また、光自体が無害なため繰り返し照射でき、体表から5〜10センチ程度の深さまで届くという。
チームの小林久隆主任研究員は「抗体は、肺、乳、前立腺、大腸、卵巣、白血病、悪性リンパ腫などさまざまながんに使えるものが承認されており、数年以内に臨床応用を実現させたい。がん細胞が血中を移動する転移がんでも、それに結びつく抗体が見つかれば応用できる」と話す。田尻久雄・東京慈恵会医大教授(消化器・肝臓内科)の話 抗がん剤や放射線治療は副作用があるが、この方法は正常な組織を傷つけない。内視鏡を使えば、深部の治療も確実にできるだろう。がんの新たな治療法として実用化が期待される。
<近赤外光> 可視光線より波長が長く、目に見えない。テレビなどのリモコンや携帯電話の通信に使われ、人体に無害なことが特徴。こたつなどに使われる遠赤外線(光)より波長が短い。(毎日新聞 2011/11/07)
肺腺がん転移抑制 メカニズム解明 名大教授ら、薬剤開発に期待
肺がんの中で最も多い肺腺がんの転移が抑制されるメカニズムを、名古屋大大学院医学系研究科の高橋隆教授(分子腫瘍学)と細野祥之研究員らのグループが解明した。本来がん細胞の増殖を促進するはずの遺伝子が、活動を抑制するタンパク質を同時に生成していることが分かった。研究成果は16日、欧州科学誌「エンボジャーナル」電子版に掲載された。
高橋教授らは2007年、TTF1という遺伝子が肺腺がん特有のがん遺伝子であることを発見。その後、TTF1を持つ肺腺がん患者の中には手術後の経過が良好な例も相次いでおり、「悪者」であるはずのがん遺伝子がなぜ良い効果をもたらすのか不思議に思われてきた。
今回、高橋教授らは肺腺がんの細胞株を使った実験で、TTF1がスイッチの役割を果たし、MYBPHというタンパク質が生成されることを発見。このタンパク質が、がん細胞の運動や転移に必要な細胞骨格の変化を抑制することが分かった。「自動車に例えるならアクセルのTTF1がサイドブレーキを引いて突っ走ろうとしているような状況」(高橋教授)という。
一方で、一定の割合でMYBPHが生成されないことも判明。「悪者」のTTF1が、本来の活動をするためにDNAを変化させてブレーキを解除することも分かった。
高橋教授は「MYBPHと同じ働きを持つ薬剤を作ることができれば、肺腺がんの転移を抑えることが可能になる」と期待している。(中日新聞 2011/11/16)カゴメ トマトの力実証 リコピン 骨粗しょう症に効果
カゴメ(名古屋市)は18日、東京農工大との共同研究で、トマトの赤い色素リコピンが、骨の破壊を抑制する効果があることを、実験で明らかにしたと発表した。リコピンを摂取すれば、骨がもろく折れやすくなる骨粗しょう症や歯周病などの予防につながるという。
実験では、体内で骨を壊す役割を担っている「破骨細胞」の形成に、リコピンがどう影響するかを調べた。マウスの骨の細胞に、破骨細胞の形成を促す化学物質とリコピンを添加、量や組み合わせを変えて試した。
結果、化学物質だけのグループに比べ、リコピンを一緒に加えたグループは作り出される破骨細胞の数が少なくリコピンの量を増やすほど少なくなった。
破骨細胞を形成するタンパクの一種「RANKL」への影響も実験。リコピンを添加したマウスの骨細胞では、添加しない場合に比べ、RANKLが発現しにくかった。(中日新聞 2011/11/19)がん成長抑える物質発見=免疫細胞が分泌−東大など
がんの成長を助長する異常な炎症反応を抑える物質を、東京大と大阪バイオサイエンス研究所、動物衛生研究所の研究チームが21日までに発見した。この物質は免疫細胞の一種が分泌する「プロスタグランジンD2(PGD2)」。働きを強めることができれば、新たな治療法になるという。研究成果は米科学アカデミー紀要電子版に発表される。
東大大学院農学生命科学研究科の村田幸久助教らは、がん組織で免疫細胞の一種「肥満細胞」にPGD2の合成酵素があることを発見。この合成酵素を作れないマウスを生み出したところ、がん組織で異常な炎症反応が起きたり、血管が新たに形成されたりして、がんの成長が速かった。(時事通信 2011/11/22)副作用ほとんどない抗がん薬、浜松医科大が開発
浜松医科大(浜松市)は22日、副作用を軽減させる抗がん剤開発を進め、動物実験で効果が得られたと発表した。今後、臨床試験に入り、実用化を目指す。
研究グループの杉原一広准教授によると、悪性腫瘍(がん)は1〜2ミリ以上になると、栄養を取り込むため「新生血管」を生じさせる性質がある。グループは、アミノ酸がつながってできる「ペプチド」の一種が、新生血管に集まりやすい特性を発見。新生血管だけに薬が運ばれるよう、ペプチドと組み合わせた抗がん剤を開発した。
同大が、米サンフォードバーナム医学研究所と行った共同研究で、この抗がん剤をがん細胞を持つマウスに投与したところ、従来の約40分の1の量で、19日目にがん細胞がほぼなくなり、副作用は全く認められなかったという。成果は、米科学アカデミー紀要(電子版)に発表される。(読売新聞 2011/11/22)ピーナツ渋皮にアルツハイマー病進行抑制の期待
ピーナツの渋皮にアルツハイマー病の進行抑制が期待されるポリフェノール成分が豊富に含まれていることが、古川昭栄・岐阜薬科大学教授(神経科学)らのグループの研究でわかった。マウスを使った実験で有効性が確認されており、研究成果を26日に岐阜市内のホテルで開かれる同大の研究講演会で発表する。
研究を行ったのは古川教授と特殊高機能性化学品メーカー「岐阜セラツク製造所」の森大輔主任研究員ら4人。アルツハイマー病は、脳内に神経細胞の機能低下を引き起こすアミロイドベータたんぱく質が蓄積されるのが原因とされている。
古川教授らはアルツハイマー病の治療方法を研究する中で、老化やストレスなどで脳の機能を正常に保つのに必要なたんぱく質(神経栄養因子)の機能が低下したり産出量が減ったりして、記憶力が衰えることに注目。神経栄養因子の機能を高める効果のある植物成分を探した。
野菜や果物など60種類の成分を調べたところ、中国で不老長寿の豆と呼ばれるピーナツの渋皮に含まれるポリフェノールに神経栄養因子と類似の働きがあることを確認。アミロイドベータたんぱく質をマウスの脳に投与してアルツハイマー病の状態を引き起こし、渋皮から抽出したポリフェノールを食べさせると、食べさせないマウスよりも記憶力が高く保たれることが判明した。
ただ、なぜピーナツの渋皮のポリフェノールだけに神経栄養因子とよく似た働きがあるのかは分かっていないという。古川教授は「神経細胞が活性化するメカニズムを解明するのが今後の課題。予防薬として活用できるように努力したい」と話している。(大隅清司)(読売新聞 2011/11/22)がん細胞:増殖を半減させる酵素特定 東大・児玉教授らチーム
がん細胞の増殖速度を半分に抑える酵素を、東京大先端科学技術研究センターの児玉龍彦教授と大沢毅・特任助教(システム生物医学)らのチームが特定した。この酵素は、ほとんどのがん細胞にあり、応用範囲の広い新薬になる可能性がある。米科学アカデミー紀要電子版に発表した。
がん細胞は、正常細胞に比べ、低酸素や低栄養状態になりやすく、新しい血管を作って栄養を確保している。チームは、人やマウスのがん細胞の栄養状態をさらに悪化させ、細胞内の成分を調べた。その結果、「ヒストン脱メチル化酵素」と呼ばれる酵素が生じていることを突きとめた。
その上で、子宮頸(けい)がんや皮膚がんなどさまざまながん細胞にこの酵素を注入し、マウスの皮下に移植した。すると、この酵素が血管の伸びを鈍らせたため、酵素を加えた細胞は、酵素なしのがん細胞に比べ、増殖の速さが半分から5分の1に抑えられた。大沢さんは「がん細胞の中で、この酵素の働きを高める技術を開発したい」と話す。【久野華代】(毎日新聞 2011/12/06)インフルエンザに「ビタミンD有効」
インフルエンザについて多くの人が怖いと思っている半面、正しい知識を持った人は少ないことが、トレンド総研(東京都渋谷区)の調査で分かった。「予防にはビタミンDが有効」(専門家)で、簡単にビタミンDを摂取できるサプリメントも多く販売されている。
20〜39歳の男女500人を対象にした調査によると、全体の10%が昨シーズン、インフルエンザに感染しており、「家族・友人・職場の同僚など、周囲の人が感染した」人の割合は3割強だった。対策として、「手洗い」(76%)、「うがい」(71%)が7割を超えて主流となっているが、ビタミンDの効果にも注目が集まっている。
東京慈恵会医科大学の浦島充佳准教授は「予防には手洗いとうがいをし、ストレスをためないことやバランスの取れた食事で栄養をしっかり取ることが大切」と指摘。そのうえで、6〜15歳の334人対象の調査で、ビタミンD入りの錠剤と入っていない錠剤を半数ずつに冬の4カ月間投与したところ、「ビタミンDを服用したグループの発症率は、服用しないグループの約半分に抑えられた」と話す。
ただ、食事だけでビタミンDを摂取するのは難しく、「サプリメントを活用することも手段の1つ」(浦島准教授)。ドラッグストアなどにはビタミンDのサプリメントが数多く販売されており、「インフルエンザがはやりだす少し前から飲み始め、ピークを過ぎる3月くらいまで飲み続けるのが効果的だ」(同)という。(産経新聞 2011/12/20)がん治療:ニキビのアクネ菌でがん細胞減少 三重大が成功
三重大(津市)は22日、皮膚がんの一種・悪性黒色腫にニキビの原因となるアクネ菌を投与し、がん細胞を減少させる治療実験に世界で初めて成功したと発表した。
実験した同大大学院医学系研究科の山中恵一講師のグループによると、がん細胞を移植したマウスにできた腫瘍部分に移植直後と14日後の2回、アクネ菌を注射で投与したところ、がん細胞がほぼ消失したという。アクネ菌に抵抗するため、白血球が腫瘍に集中し、その際、がん細胞も食べて破壊するためだという。白血球はアクネ菌を消化するまでに時間を要するため長時間、腫瘍に群がるという。
国内では年に約2000人が悪性黒色腫にかかるといい、末期のステージ4まで進行した場合、10年後の生存率は約10%とされる。山中講師は「人への治療では菌を直接注射できないが、今後、アクネ菌の細胞のどの部分が、がん細胞減少に最も効果を発揮するのか解明できれば、効果的な治療法の確立につながる」と話している。【谷口拓未】(毎日新聞 2011/12/23)各種ビタミンとオメガ3脂肪酸で脳を若く、米調査
【12月30日 AFP=時事】ビタミンやオメガ3脂肪酸の血中濃度が高いお年寄りは、ジャンクフードを食べる人よりも認知能力テストの成績がよい−米オレゴン州立大学(Oregon State University)などの研究チームによるこのような論文が28日、米国神経学会(American Academy of Neurology)の学会誌「Neurology」に掲載された。
米オレゴン州立大とオレゴン健康科学大学(Oregon Health and Science University、OHSU)の研究者たちは、米国人の平均的な食生活を送るお年寄り104人を対象に、血液中のさまざまな栄養素を調べた。質問票形式での調査は、信頼性に欠けるため行わなかった。被験者となったお年寄りの平均年齢は87歳。
調査では、血液中のバイオマーカー30項目を調べたほか、被験者42人については磁気共鳴画像撮影装置(MRI)で脳の容積も測った。
その結果、血液中にビタミンB、C、D、Eやオメガ3脂肪酸が多いと、認知能力テストの反応が速く脳も大きいことが分かった。魚類に多く含まれるオメガ3脂肪酸は、アルツハイマー病の原因となる脳の収縮を抑える働きがあるとされている。一方、血液中に揚げ物やファストフードに多く含まれるトランス脂肪が多いと、認知能力テストの結果はあまり良くなかった。
この結果から研究チームは、年齢や教育状況の影響もあるとしつつ、認知能力テスト結果に及ぼす影響の17%、脳の大きさに及ぼす影響の37%は栄養素によるとの結論を導いた。
共著者の1人、マレット・トレーバー(Maret Traber)氏は、「食生活の改善を新年の目標にしようと考えている人がいれば、この研究は果物と野菜をもっと食べる理由をもうひとつ付け加えるだろう」と話した。同じく共著者のジーン・ボウマン(Gene Bowman)氏も、「食生活をちょっと変えるだけで、脳が縮むことを防ぎ、頭脳が明晰(めいせき)なお年寄りが増えると考えると、とてもわくわくする」と期待を示している。(AFP 2011/12/30)遺伝子立体構造を初解明=インフルウイルス、「新型」で−増殖防ぐ新薬に・東大など
インフルエンザウイルスの粒子内にある8本の遺伝子分節の立体構造を初めて解明したと、東京大医科学研究所や兵庫大などの研究チームが24日付の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに発表した。観察対象は2009年に流行した「新型」(A型H1N1亜型)だが、さまざまなインフルエンザでウイルスの増殖を防ぐ画期的な新薬を開発する手掛かりになると期待される。
ウイルス粒子は、ヒトや動物の細胞への侵入・脱出に使うとげ状たんぱく質が表面にたくさんあるウニのような球形(直径約100ナノメートル=ナノは10億分の1)をしている。この球形の殻の中に、かりんとうに似た形の遺伝子分節(太さ12ナノメートル)が8本、束になって入っている。
東大医科研の河岡義裕教授や野田岳志准教授らが電子顕微鏡を使い、コンピューター断層撮影(CT)に似た方法で調べたところ、1本の遺伝子分節は棒状のたんぱく質にリボ核酸(RNA)が巻き付いてできていることが判明。遺伝子分節同士は、数本の細いひも(太さ2ナノメートル)で結ばれていた。このひもができないようにする薬を開発すれば、ウイルスは遺伝子分節を束ねられず、増殖できなくなる。(時事通信 2012/01/25)糖尿病:睡眠5時間以下で発症リスク5倍 旭川大など分析
1日の平均睡眠時間が5時間以下の人は、7時間超の人と比べて糖尿病発症の危険性が5倍以上高くなることが、旭川大や北海道大などの分析で分かった。喜多歳子・旭川大助教(地域看護学)は「適切な睡眠が発症予防につながる可能性がある」と指摘する。米糖尿病専門誌「ダイアベーテス・ケア」電子版に掲載された。
研究チームは03年度、糖尿病ではない35〜55歳の地方公務員の男女3570人を対象に睡眠時間や眠りの満足度などを調べた。その結果、07年度までの4年間で121人が糖尿病を発症していた。
うち、親や兄弟姉妹に糖尿病患者がいない人の発症リスクは、睡眠が5時間以下の人は7時間超と比べて約5.4倍高かった。また、睡眠不足を感じている人は感じていない人より約6.8倍、「夜中に目が覚めることが深刻な問題だ」と答えた人は、そうでない人より約5倍、それぞれリスクが高かった。
欧米の研究でも、睡眠時間が極端に短かったり長かったりすると、発症リスクの上昇が指摘されている。今回の調査では、睡眠が5時間以下の人には長時間労働や、シフト勤務のケースが多かったという。喜多助教は「糖尿病予防には食生活の改善や運動など、個人や家庭ごとの努力が重視されがちだ」と指摘したうえで「質のいい適切な時間の睡眠を確保できるような職場環境や社会全体の理解も重要ではないか」と話している。【大場あい】(毎日新聞 2012/01/29)チョコレートに結腸がんの予防効果、スペイン研究
【1月31日 Relaxnews】チョコレートの効用は、とろけるような甘さを楽しむことだけではなかった。その原料のカカオに結腸がんなどの腸疾患予防に効果があるとする論文を、スペインの研究チームが24日、発表した。腸病理学に関連した研究としては初めての研究だという。
研究チームは、カカオ含有率が12%の餌を8週間、ラットに与えた後、がんの誘発要因を加える実験を行った。その結果、カカオを多く含む餌を摂取していたラットは、結腸がんの兆候である異常陰窩巣の形成が大幅に低下していた。陰窩(いんか)とは、直腸や結腸の内壁表面に見られる管状の腺で、正常に機能しているときは常に腸の内壁を再生し粘液を生産する。
また、抗酸化機能も高まり、発がん性物質による酸化損傷が減少していた。こうした実験結果から研究チームは、体内で腫瘍を発生させる細胞増殖に関連した細胞シグナルの伝達経路をカカオが遮断し、体の防御システムとして機能しうると結論付けた。カカオを多く摂取する食生活は老化細胞や不健康な細胞が自然死する「アポトーシス(機能的細胞死)」を促し、新細胞が生じる余地を作る効果があることも突き止めた。これが、がんの進行を防ぐ「化学予防メカニズム」になるという。
この論文は専門誌「Molecular Nutrition & Food Research」に掲載されている。(Relaxnews/AFPBB News 2012/01/31)「腸内菌が健康の源」ベンチャー企業が研究発表 山形
人の大腸内に常在する腸内菌には、健康に役立つ活性アミノ酸を生み出したり免疫を活性化させたりする働きがある──。山形県鶴岡市の慶応大先端生命科学研究所から生まれたバイオベンチャー企業が、腸内菌の代謝物質が健康に影響している可能性を示す研究成果を発表した。検便による疾病予測などにつながる可能性があるという。
鶴岡市に本社があるヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ(HMT、菅野隆二社長)が発表した。
大腸内の腸内菌が生み出す代謝物質は血液中に直接取り込まれるため、免疫や脳の発達など健康に深く関与すると推測されてきた。同社は2009年から協同乳業(メイトー、本社・東京)と共同で、慶大先端研の研究者が開発した技術を用いて、実験マウスの大腸内に残っている代謝物質を網羅的に解析。無菌マウスと生後4週目に腸内常在菌を移植した有菌マウスを対照し、大腸内の代謝物質を計2回分析した。(朝日新聞 2012/01/31)がん増殖制御の酵素発見=転移防ぐ治療に有用−東京医科歯科大
がん細胞は一般の細胞に比べて細胞分裂のサイクル(細胞周期)が異常に速く増殖するが、東京医科歯科大の研究チームは、細胞周期を制御する酵素を発見し、6日付の米医学誌電子版に発表した。がん細胞の速い増殖は死亡に至る転移の原因にもなっており、仕組みの解明は新たな治療法開発に役立つという。
細胞分裂の周期はG1、S、G2、Mという4段階からなり、がん細胞ではG1期が異常に短いことが分かっている。
東京医科歯科大の吉田清嗣准教授らはこれまでの研究で、細胞核の中でがん抑制遺伝子を働かせるスイッチの役割を果たしていることが分かった酵素 「DYRK2」に着目。核の外側での働きを調べるうちに、DYRK2を人為的に取り除くと、細胞周期のうちG1期だけが短くなり、細胞の増殖が活発になる ことが分かった。
また、DYRK2のない細胞をマウスに移植すると腫瘍が大きくなることも判明。初期のがんよりも進行したがん細胞でDYRK2が少なくなっていた。(時事通信 2012/02/08)粘液中の物質が胃がん抑制 信大などのチームが解明
胃の粘液中に含まれる特殊な糖鎖(とうさ)が、2通りの方法で胃がんの発生を抑制していることを、信大大学院医学系研究科(松本市)の中山淳教授(54)=病理学=らの研究チームが突き止め、7日、信大本部で記者会見した。がん患者の粘膜ではこの糖鎖が無いか少なくなっていることも判明。この糖鎖を作る遺伝子の働きを高める薬を作るなどすれば、胃がんの新しい予防法につながる可能性がある。
胃粘膜の細胞は粘液を分泌して表面を覆い、強酸性の胃液から自らを守っている。表面に近い表層粘液細胞が分泌する「表層粘液」と、その内側にある腺(せん)粘液細胞が分泌する「腺粘液」が層状に重なっている。中山教授らはこれまでの研究で、腺粘液には「α1,4結合型N−アセチルグルコサミン(αGlcNAc)」という糖を先端に持つ糖鎖が含まれ、このαGlcNAcが胃がんの原因となるピロリ菌の増殖を抑えることを突き止めた。
今回、働きをさらに調べるため、遺伝子改変でαGlcNAcを体内で生産できないようにしたマウスを作り、変化を調べた。その結果、改変マウスはすべて、ピロリ菌に感染していないのに胃粘膜に炎症を起こし、胃がんを発症した。一方、ヒトの胃がんとその前段階の腫瘍で、αGlcNAcの量を調べたところ、全くないか少なくなっていた。これらからαGlcNAcは(1)ピロリ菌の増殖を抑える(2)がんにつながる粘膜の炎症を抑えるという2通りで胃がんの発症を抑えていると結論づけた。
研究成果は米医学誌「ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション」(電子版)に発表。中山教授は7日の会見で「体質的にαGlcNAcが少ない人はピロリ菌に感染しやすく、胃がんになる可能性が高い。遺伝子検査でリスクが高い人を調べ、早めにピロリ菌を除菌したり、薬や食品でαGlcNAcを増やしたりすることで予防も可能になる」とした。(信濃毎日新聞 2012/02/08)「断食」はがんを弱体化させる、米マウス研究
【2月9日 AFP=時事】がんを患っているマウスに絶食させたところ、腫瘍が弱体化し、化学療法の効果も上がったとする研究結果が、8日の米医学誌「Science Translational Medicine」に掲載された。
人間でも同様の結果が表れるかどうかは分からず、安全性も不明だが、がん治療の効果を高める研究に、有望な新しい道が開けるかもしれないと研究者らは期待している。
論文を発表した米・南カリフォルニア大(University of Southern California)のバルター・ロンゴ(Valter Longo)教授(老人学・生物科学)らは2008年に、絶食は正常細胞を化学療法から守るとした研究成果を発表している。ただし、対象は1種類のがんと1種類の化学療法薬に限定されていた。
同教授のチームは今回、絶食によってがん細胞が脆弱になることを示すため、がんの種類を乳がん、悪性黒色腫(メラノーマ)、神経膠腫(グリオーマ)、ヒト神経芽細胞腫に広げてマウスで実験した。
その結果、すべてのがんで、絶食と化学療法を組み合わせた場合は、化学療法だけの場合よりも生存率が高く、腫瘍の成長が遅く、さらに(または)腫瘍の転移の程度が低かった。
2010年には、乳がん、尿路がん、卵巣がんなどの患者10人を対象にした研究で、化学療法の前2日間と後1日間に絶食した場合、化学療法の副作用が少なかったとする自己申告データが報告されている。
ロンゴ氏は「がん細胞を打ち負かす方法は、がん細胞を狙い撃つ薬を開発することではなく、正常細胞だけが直ちに順応できる絶食などで極端な環境を作り、がん細胞を混乱させるということなのかもしれない」と述べた。(AFPBB News 2012/02/09)トマトの成分、中性脂肪減らす 京大がマウスで確認
肝臓内の脂肪を燃やして中性脂肪を減らすトマトの成分を京都大の河田照雄教授らが見つけ、マウスで効果を確かめた。トマトですでに知られている成分にはなかった効果だという。健康食品などへの応用が期待される。米科学誌プロスワンで10日発表した。
トマトを食べると中性脂肪が下がることは動物実験でわかっていた。だが、その効果はリコピンなどトマトの健康成分にはなく、何が効いているのかは不明だった。
河田教授らはトマトの成分を細かく分け、脂肪を燃やす酵素をつくる遺伝子にかかわる物質を探した。その結果、脂肪酸の一種「13−oxo−ODA」がその遺伝子のスイッチになっていることを突きとめた。トマトの中でリノール酸からできるらしい。(朝日新聞 2012/02/10)トマト、メタボ予防に効果=脂肪燃焼の新成分発見−京大
血液中の脂肪増加を抑える新成分がトマトに含まれていることを、京都大大学院の河田照雄教授らの研究グループが発見した。マウスを使った実験で、血液などの中性脂肪量を抑制することが確認された。メタボリック症候群の予防に効果が期待されるという。10日付の米科学誌プロス・ワンで発表した。
河田教授らは、トマトの実とジュースの成分を精密に分析。脂肪の燃焼を最も活性化させる成分として、不飽和脂肪酸のリノール酸に類似した物質を特定した。
この物質を化学的に合成し、肥満マウスの餌に0.05%加えた結果、4週間で血液と肝臓の中性脂肪が約30%減少した。脂肪燃焼に関わるたんぱく質の増加やエネルギー代謝の向上、血糖値の低下も見られた。
河田教授は「人間の場合、毎食コップ1杯(約200ミリリットル)のトマトジュースを飲むことで同様の効果が得られる」と話している。(時事通信 2012/02/10)皮膚がん治療薬がアルツハイマー病に効果 マウス実験で
(CNN) 皮膚がんの治療薬をアルツハイマー病のマウスに投与したところ、症状が急激に改善した。アルツハイマー病を研究する米国の科学者らが偶然これを発見した。
米ケース・ウェスタン・リザーブ大学の研究者らが、皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)と呼ばれる皮膚がんの治療薬ベキサロテンをアルツハイマー病のマウスに大量に投与したところ、72時間以内にマウスの記憶力が劇的に改善し、さらにマウスの脳からアルツハイマー病の顕著な特徴であるアミロイド斑が50%以上除去されていた。
アルツハイマー病のマウス(および人)の脳にはアミロイドベータと呼ばれる物質が大量に蓄積されるが、アルツハイマー病のマウスにベキサロテンを投与したところ、このアミロイドベータの値が低下し、逆にアミロイドベータの分解を助けるアポリポタンパクEの値が上昇した。
研究員らは、アルツハイマー病のマウスにベキサロテンを投与し、投与前と投与後の記憶力をテストした。例えば、アルツハイマー病のマウスは以前電気ショックを浴びたことのあるケージにも真っすぐに入っていたが、ベキサロテンの投与後は電気ショックを浴びたことを思い出し、ケージに入るのを拒んだ。
またケージ内にティッシュペーパーを置くと、正常なマウスは本能的にティッシュを使って巣を作るが、アルツハイマー病のマウスはティッシュで何をすべきか分からない。しかし、ベキサロテンの投与後はアルツハイマー病のマウスはティッシュを使って巣を作った。
ベキサロテンはすでに米食品医薬品局(FDA)の認可を受けており、臨床試験の早期実施も可能だ。ケース・ウェスタンの主任研究員ゲーリー・ランドレス氏は2カ月以内にベキサロテンを健康な人で試し、マウスの場合と同様の効果があるか見極めたいとしている。(CNN 2012/02/11)アスピリンでがんの転移を抑制、豪州研究論文
【2月15日 AFP】アスピリンなどの家庭薬は、腫瘍に栄養を送り込む「幹線道路」の遮断を助けることにより、がんの拡散を阻害できる可能性があるとする論文が、14日の医学誌「Cancer Cell」に発表された。
これまでも、アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬にがんの転移を抑制する可能性があるとの指摘はあったが、その仕組みは分かっていなかった。今回、論文を発表したオーストラリア・メルボルン(Melbourne)のピーター・マッカラムがんセンター(Peter MacCallum Cancer Centre)の研究チームは、がんの転移に重要な役割を果たすリンパ管ががんに反応する仕組みを説明する上で、生物学上の進展があったとしている。■リンパ管の拡張を抑制するアスピリン
研究チームは、リンパ管内の細胞の研究により、ある特定の遺伝子ががんの転移時には発現するが転移していない間は発現しないことを見出した。分析の結果、この遺伝子が体中のリンパ管で炎症と拡張を起こすことが可能と考えられるため、腫瘍(しゅよう)の成長と転移経路との関連が示された。
いったん拡張されたリンパ管は、転移巣への「補給ライン」としての能力が増し、がん細胞が転移する効率的なルートになってしまう。以上のことから、リンパ管の拡張を抑制する働きを持つアスピリンは、「リンパ管の拡張を抑えることでがん細胞の拡散抑制に効果的に働く可能性がある」と、研究者は述べている。
今回の発見は、乳がんや前立腺がんなどの固形がんの抑制を可能にする新薬の開発につながる可能性がある。また、がんが転移を始める前の「早期警報システム」としての役割も期待できる。■長所と短所
前年、英医学専門誌「ランセット(The Lancet)」には、アスピリンを毎日服用すると大腸がん、前立腺がん、肺がん、脳腫瘍、喉頭がんの発症率が低減するとした研究結果が発表されている。
現在、多くの医師が、心臓病、脳血栓、その他の血流障害のリスクを下げる目的で、アスピリンの定期的な服用を推奨している。ただしこれには、胃疾患のリスクが高まるという欠点もある。(AFP 2012/02/15)抗がん剤の副作用大幅抑制…ビフィズス菌で新薬
官民共同投資ファンドの産業革新機構が出資し、信州大医学部教授らが設立したバイオ新興企業「アネロファーマ・サイエンス」(東京・中央区)が、ビフィズス菌を使って抗がん剤の副作用を大幅に抑える新薬を開発した。
動物実験で効果を確認済みで、3月にも米国で臨床試験を始める。3年半程度をかけて新薬をがん患者60人に投与し、人体への有効性や安全性を確認する。
この新薬は、薬効を患部に効果的に届けるドラッグデリバリーシステム(DDS)という技術を活用する。ビフィズス菌が低酸素状態を好む点と、がんの患部が低酸素状態になっている点に着目した。
治療の対象は胃がんなどの固形がんで、〈1〉がん患者に新薬を静脈注射する〈2〉ビフィズス菌の作用で新薬ががん患部に集積する〈3〉新薬と組み合わせて初めて抗がん作用を発揮する抗がん剤を口から飲む(経口摂取)〈4〉がん患部のみで抗がん作用を発揮する──ことになる。(読売新聞 2012/02/19)パーキンソン病のサル、人のES細胞で症状改善 京大など世界初
人為的にパーキンソン病にしたカニクイザルに人間のES(胚性幹)細胞を移植して症状を改善させることに京都大などのグループが世界で初めて成功した。■iPS細胞で3年後にも臨床試験へ
iPS(人工多能性幹)細胞など幹細胞による移植治療の有効性を裏付ける成果で、早ければ3年後の臨床試験を目指すとしている。米科学誌ステム・セルズで21日までに発表した。
グループは、京大再生医科学研究所の高橋淳准教授、土井大輔研究員たち。
パーキンソン病は、運動の調節をつかさどる神経伝達物質ドーパミンを作る神経細胞が減ることで進行する。高橋准教授たちは、ES細胞から作製したドーパミン神経細胞をカニクイザルの脳に移植、手足の震えや歩行状態などを観察した。
3カ月後から手足の震えがなくなったり、動きが増えるなど症状が改善、1年後も維持された。ドーパミン神経細胞が生着し、ドーパミンを合成していることも確認した。
人間のES細胞から作った神経細胞で症状の改善を確認したのは霊長類では初めて。
グループは、iPS細胞から作製したドーパミン神経細胞についてもカニクイザルに移植、半年間生着して機能していることを確かめており、iPS細胞でも今回と同様に症状の改善が期待できるという。
移植した細胞の中にはドーパミン神経細胞以外の細胞も混在しており、「より安全で効果的な治療には、ドーパミン神経細胞を選別して移植する必要がある」(高橋准教授)としている。
今後、パーキンソン病の患者から細胞の提供を受けてiPS細胞を作製、カニクイザルに移植して効果と安全性を確かめる。iPS細胞による治療が認められれば、2015〜17年に京大で最初の臨床試験を実施したいとしている。(京都新聞 2012/02/21)歯周病治療で肝機能改善 非飲酒者も発症の脂肪肝炎
飲酒しない人も発症する非アルコール性脂肪肝炎(NASH)患者が歯周病菌を保有する割合は健康な人の約4倍と高く、歯周病の治療で肝機能が大幅に改善することを22日までに、横浜市立大や大阪大などの研究チームが突き止めた。
研究チームによると、歯周病と心臓病や脳卒中との関連は指摘されているが、肝炎では初めて。チーム長の中島淳・横浜市立大教授(消化器内科)は「脂肪肝の人は肝炎に進行させないように、口腔(こうくう)内の衛生を保つことが大切だ」と話している。
NASHは成人男性の3人に1人程度とされる脂肪肝の人のうち1〜2割を占める。進行すると肝硬変や肝臓がんを引き起こし、肥満との関連が指摘されているが、発症メカニズムは解明されていない。
研究チームがNASH患者102人の歯周病菌を調べたところ、保有率は52%で、健康な人と比べて約3.9倍だった。また肥満状態のマウスに歯周病菌を投与すると、3カ月後に肝臓が平均約1.5倍に肥大化。肝炎が悪化するなどした。
歯周病のNASH患者10人に歯石を除去したり抗生物質で歯茎の炎症を抑えたりして治療した結果、3カ月後には平均すると肝機能の数値がほぼ正常になった。
研究成果は16日付英医学誌の電子版に掲載された。(共同通信 2012/02/22)かんきつ類たくさん食べる女性、脳卒中リスク低下
【2月24日 AFP=時事】オレンジやグレープフルーツなど、かんきつ類を日常的に食べる女性は、脳卒中の原因となる血栓リスクが低くなる可能性があるとの研究結果が23日、米国心臓協会(American Heart Association)の学術誌「脳卒中(Stroke: Journal of the American Heart Association)」に発表された。
英イーストアングリア大学(University of East Anglia)医学部のエーディン・カシディ(Aedin Cassidy)教授(栄養学)率いる研究チームは、女性6万9622人を含む米国の看護士を対象に4年ごとに行った食生活に関する調査データ14年分を検証し、摂取した食物についての詳細な報告を調査した。
調査の目的は、野菜や果物に含有されるフラボノイドの効能を調べることだったが、典型的な米国人の食事に含まれる6種類のフラボノイドの総摂取量では脳卒中予防効果に変化は見られなかった。一方で、果汁を含めオレンジやグレープフルーツを多く摂取していた人では、脳卒中リスクが19%低下していることが分かった。
「野菜や果物、厳密に言えばビタミンCの摂取が、脳卒中リスクの低下に関連している。フラボノイドは血管機能の向上や抗炎症作用といった面で予防効果があるとみられる」とカシディ教授は述べ、糖類の過剰摂取を防ぐためジュースを避けつつ、オレンジやグレープフルーツを多く食べるよう女性たちに呼びかけている。
これまでの研究では、かんきつ類に含まれるフラボノイドに、2型糖尿病や心臓病リスク増につながる肥満やメタボリック症候群の予防効果があることが示唆されている。(AFPBB News 2012/02/24)ダチョウが花粉症救う?反応抑える抗体をマスクに
ダチョウの卵からスギやヒノキの花粉によるアレルギーを抑える抗体を取り出すことに京都府立大のチームが成功したことが28日、分かった。企業と共同で、抗体を使ったマスクやエアコンフィルターなどを開発し、3月にも販売を始める。
チームの塚本康浩京都府立大教授(獣医学)は「多くの日本人が花粉症に苦しんでおり、仕事の効率も下がっている。ダチョウが日本の経済を救う」と期待している。
チームは、神戸市内の施設で飼育しているダチョウが春先にまぶたが腫れたり、涙目になったりすることに着目。40羽の血液を調べると、27羽がスギとヒノキの抗体値が高く「花粉症」であることが判明した。
この花粉症のダチョウの卵から抗体を抽出。花粉症を引き起こすアレルゲンと一緒にヒトの皮膚に塗ると、アレルギー症状が抑えられたという。ヒトの抗体が反応する前に、ダチョウの抗体がアレルゲンの分子を覆うためと考えられる。
卵1個から取り出せる抗体は約4グラムで、染み込ませたマスクは4万〜8万枚作れる。ダチョウは年に約100個の卵を産むため大量生産でき、哺乳類の抗体を使った場合に比べるとコストも安いという。(共同通信 2012/02/28)がん:5つの生活習慣の実践でリスク4割低下
禁煙や塩分控えめの食事など5つの生活習慣を実践すると、がんのリスクが4割程度減少するという研究結果を国立がん研究センター(東京都中央区)がまとめ、5日発表した。5つの習慣のうち1つでも多く実践するほどリスクは減少していくという。オランダの医学誌に掲載された。
90年代後半に45〜74歳だった7万8548人(男性3万6964人、女性4万1584人)を06年まで追跡し、がんのリスクを下げると言われている5つの生活習慣とがんの発生率との関係を調べた。
その結果、禁煙▽節酒(1日日本酒1合以下を週6日以内)▽塩分控えめの食事(タラコ4分の1腹を月1回程度)▽活発な活動(1日に男性でスポーツ1時間以上、女性で立ったり歩いたり3時間以上)▽適正な体重(体格指数=BMI=が男性で21〜27、女性で19〜25)の5つの生活習慣のうち、2つを実践しているグループは、ゼロまたは1つだけ実践しているグループに比べ、がんのリスクが男女とも14%低下した。さらに実践している生活習慣の数が多いほど、男女ともリスクが直線的に低下し、5つすべてを実践すると、男性で43%、女性で37%低下することが分かった。
調査結果を分析した同センターの笹月静予防研究部室長は「今より1つでも生活習慣を変えられれば、がんのリスクは確実に低下する。生活を見直すきっかけにしてほしい」と話している。【斎藤広子】(毎日新聞 2012/03/05)インフルエンザウイルス:増殖たんぱく質、ヒト細胞で特定 全型対応薬に道──東大医科研
インフルエンザウイルスが増殖する際に重要な役割を果たすたんぱく質を、東京大医科学研究所の河岡義裕教授(ウイルス学)のチームがヒトの細胞で発見した。ウイルスの型によらず有効で薬剤耐性ができにくい抗ウイルス薬開発につながる可能性があるという。5日付の米国科学アカデミー紀要に発表した。
インフルエンザウイルスは自身では増殖できないため、宿主(ヒトなど)の細胞に侵入して増殖し、広がる。
河岡教授と同研究所の大学院生、五来武郎(ごらいたけお)さんらは、感染したヒトの細胞を調べ、細胞表面にある「F1ベータ」と呼ばれるたんぱく質に着目。この量を減らすと、細胞から出てくるウイルスの量が減った。F1ベータを含むたんぱく質の複合体が、増殖したウイルスを細胞外に放出する手助けをしていると見ている。09年に大流行した新型(H1N1)など、どの型のウイルスでもF1ベータが増殖に重要な役割を担うことも確かめた。
こうしたたんぱく質の存在は、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)などでは特定されているが、インフルエンザウイルスで特定したのは世界で初めて。
「タミフル」などの治療薬は、ウイルス表面のたんぱく質の働きを抑えるが、ウイルスが変異すると効きにくくなる。河岡教授は「ヒトの細胞にあるたんぱく質を標的にすることで、より有効な治療薬の開発が期待できる」と話す。【久野華代】(毎日新聞 2012/03/06)1日数粒のベリー、脳機能の改善効果 米研究
【3月14日 Relaxnews】1日数粒のベリー摂取が精神機能低下など、加齢に伴う疾患の予防に役立つとする研究が、米専門誌「Journal of Agricultural and Food Chemistry(農業・食品化学ジャーナル)」に掲載された。
研究は前週、米国化学会(American Chemical Society)が発表した。イチゴやブルーベリー、ブラックベリーなどのベリー類の摂取が鮮明な記憶の維持に役立つとともに、ベリーに含まれる抗酸化物質が、有害なフリーラジカルから細胞を保護するのに役立ち、精神機能低下を予防すると論文は結論づけている。
また、研究チームは、ベリーが動物やヒトの認知機能に及ぼす影響を調べた論文群を再検討した結果、ベリーには、ニューロン(神経細胞)の情報伝達方法に変化を及ぼす作用があることを突き止めた。これが結果的に脳の保護に役立っていた。
このニューロンの変化は、運動制御や認知機能を向上させるだけでなく、ニューロンを損傷させる脳内の炎症を予防する効果もあった。
過去の研究では、ベリー類が脳内の毒性物質を清掃しリサイクルする「ハウスキーパー(世話係)」として活動し、記憶障害を予防する効果があることも分かっている。(AFPBB News 2012/03/14)スギ花粉症:乳酸菌「フェカリス菌」に緩和効果
スギ花粉症の症状を緩和させる効果が、乳酸菌の一種「フェカリス菌」を含んだ乳飲料にあることが、大手飲料メーカー伊藤園の研究で分かった。詳しい内容は、月刊誌「薬理と治療2012年2月号」(ライフサイエンス出版)に掲載された。
フェカリス菌は人の体内から抽出、加熱処理をして乾燥させた乳酸球菌。整腸やアトピー性皮膚炎改善の作用などがあるとされる。
試験は昨年10〜12月に実施。スギ花粉症患者20人に、フェカリス菌の入った乳飲料を毎日1本(200ミリリットル)2カ月間飲んでもらった。その後、研究室内でスギ花粉を3時間飛散させ、症状の変化を観察。飲用開始前と飲用後の自覚症状を▽鼻かみ回数▽鼻づまり▽目のかゆみ▽流涙──などの項目で比較した。
その結果、3時間経過した時点での鼻かみの平均値が飲用前は2.7回だったが、飲用後は1.8回に減少した。鼻づまりや目のかゆみなどでも緩和効果が確認された。【小野博宣】(毎日新聞 2012/03/21)アスピリンにがん予防効果〜コストは1日わずか3セント
医学の祖、ヒポクラテスが生きた古代ギリシャ時代まで起源がたどれるという鎮痛剤のアスピリンに、がんを予防する効果があることが、英オックスフォード大学の研究で分かった。
ブルームバーグ・ニュースによると、研究を主導したのは同大のピーター・ロスウェル教授(神経科学)。1錠わずか3セントのアスピリンを毎日少量服用するだけで、3年後のがん発症率が非服用者より24%低いことが確認された。さらに、毎日服用した場合、量や男女に関係なく5年後のがんによる死亡率が37%低いことも分かった。研究論文は英医学誌ランセットの最新号に掲載された。
2007年に発表された報告で、アスピリンにがん死亡リスクの長期的な軽減効果があることは知られていたが、効果が表れるには少なくとも8年を要すると考えられてきた。今回の研究で短期的な効果もあると立証されたことになり、特定の腫瘍(しゅよう)の治療に利用できる可能性も示されたと、ロスウェル氏は話している。
研究ではこのほか、アスピリンの副作用と考えられている内出血も、3〜4年常用すれば少なくなることも確認された。その後は、出血によって死亡する率が服用しなかった場合より低かったという。
ロスウェル氏によると、がん発症率は45歳前後から「急激に」上昇する。47歳の同氏も3、4年前から毎日アスピリンを飲んでいるという。(U.S. FrontLine 2012/03/22)「うつ」防ぐタンパク質 名城大グループ発見
うつ病を抑える作用があるタンパク質を、名城大大学院薬学研究科の鍋島俊隆教授や毛利彰宏研究員らのグループがマウスを使った実験で発見した。うつ病治療薬の開発につながる可能性がある。28日発行の米脳科学誌「ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス」で発表した。
脳の神経細胞は情報を伝達する際にセロトニンと呼ばれる神経伝達物質をやりとりする。うつ病患者はそのやりとりに異常があり、情報伝達がうまくいかなくなっている場合があると考えられている。
グループは、脳の神経細胞内にあるタンパク質「MAGE−D1」に着目。このタンパク質を作れないように遺伝子操作したマウスを観察すると、活発な動きをしないうつ状態になった。
マウスの神経細胞は、タンパク質がなくなったことで、セロトニンを必要以上に掃除機のように吸い込んでいた。このため、正常に情報伝達ができなくなった。
タンパク質は、セロトニンの吸引作用を調整する働きがあると分かった。タンパク質を補うことで、新たな治療薬ができる可能性がある。毛利研究員は「タンパク質の量の変化は血液中にも表れる。血液検査でうつ病診断が可能になるかもしれない」と話している。
厚生労働省によると、うつ病の患者は2008年の統計で100万人を超えた。(中日新聞 2012/03/30)放射線治療後のがん再発を解明 京大発表
一部細胞が血管へ移動し栄養摂取
放射線を当ててがんを治療すると、特定のがん細胞は栄養や酸素を得られる血管近くに移動し、生き永らえることを京都大グループがマウスで解明し、17日付の英オンライン科学誌ネイチャーコミュニケーションズに発表した。がん再発の原因と考えられ、移動を抑制する薬剤で再発を抑えることにも成功した。
原田浩京大講師(放射線腫瘍生物学)は「移動を阻んだり、移動前にこの種のがん細胞をたたいたりする治療法が開発できる」としている。
グループによると、がんの中の血管の周りにある「有酸素がん」は、栄養や酸素を得やすいため活発に増殖している。
これに対し、血管から比較的遠くにある「低酸素がん」は十分な酸素を得られないが、遺伝子「HIF1」が働くと低酸素環境に適応。HIF1が働かない低酸素がんも、辛うじて生きている。
グループは低酸素がんは放射線が効かず、再発率が高いことに着目。ヒトのがん細胞をマウスに移植し、放射線を照射。HIF1が活発に働くがん細胞と、働かないがん細胞を観察した。すると、HIF1が働かないがん細胞は、働く方の約3倍生き残った。細胞の分裂周期が異なるため、放射線が効きにくくなるとみられる。
働かないがん細胞は放射線照射の翌日から血管に向け移動。血管から栄養などを取り込み、がん再発につながるという。(中日新聞 2012/04/18)トウガラシにコレステロール抑制効果か、中国研究
【5月1日 Relaxnews】トウガラシの辛味成分に、コレステロール値を下げ、心臓の健康を向上させる効果のある可能性が示された。
食品飲料業界の専門家に情報を提供するサイト「NutraIngredients.com」が27日に伝えた栄養学会誌「ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ニュートリション(European Journal of Nutrition)」の掲載論文によると、中国の研究チームがマウスを使った実験で、高コレステロールの食餌にトウガラシの辛味成分であるカプサイシノイドを添加したところ、対照群のマウスよりも総コレステロール値が下がるという結果が表れた。またカプサイシノイドは、心疾患の前兆となる炎症の抑制とも関連していた。
一方、カプサイシノイドの添加によって総コレステロール値、トリグリセリド(中性脂肪)値、非HDLコレステロール値(いわゆる悪玉コレステロール)が下がったが、その効果は添加した分量には関連していなかった。(AFPBB News 2012/05/01)カレーのスパイス、大腸がん治療に有効か 英大が調査へ
【5月8日 AFP=時事】進行性の大腸がん治療で、カレーに用いられるスパイス成分クルクミンに効果があるかどうかを調べる研究が、英レスター大学(University of Leicester)で実施される。
クルクミンは、数百年も前からインド料理やタイ料理に用いられてきたスパイス、ターメリックの成分。鮮やかな黄色をしており、カレーなどの色や香り付けに使われる。
レスター大のがん医療研究センターECMC(Experimental Cancer Medicine Centre)の研究チームは、標準的な大腸がん治療にクルクミン錠剤の処方を安全に追加することが可能かどうかを調べる予定だ。
英国立健康研究所(National Institute for Health Research)とともにECMCに共同出資している英NGO、英国がん研究所(Cancer Research UK)によると、これまでの研究で、クルクミンが、抗がん剤の持つ大腸がん細胞の殺傷力を高めることが実験室レベルで確認されている。
ECMCのウィリアム・スチュワード(William Steward)所長によれば、大腸がんでは、副作用を伴う抗がん剤治療は患者への負担が大きく長期間は続けられないため、転移が広がった後では治療が難しいという。
「クルクミンにがん細胞を抗ガン剤に効きやすくさせる効果があるという見通しは刺激的だ」とスチュワード氏は語る。仮にそうであれば抗がん剤の量を減らすことができ、その結果、患者の副作用も減って治療を今までより長く続けることが可能となる。
大腸がんは世界で3番目に多いがんで、2008年には124万人が大腸がんと診断されている。英国では2番目に多いがんで、2010年には1万6000人が大腸がんで死亡した。(AFPBB News 2012/05/08)睡眠不足は肥満のもと、仏大研究
【5月11日 AFP=時事】睡眠不足は肥満につながる──このような研究論文が10日、仏リヨン(Lyon)で開かれた欧州肥満症会議(European Congress on Obesity)で発表された。
リヨン大学(University of Lyon)のカリーン・シュピーゲル(Karine Spiegel)博士率いるチームの論文によると、睡眠時間が不十分だと、満腹感をつかさどるホルモンの働きが妨げられ、食欲を刺激するホルモンが分泌されるため空腹感が25%増加する。
カロリー換算では、睡眠時間が減るとカロリー摂取量が1日350〜500カロリー増える計算になるという。
研究では、肥満や睡眠時間に関する様々な研究を幅広く調べた。結果は子どもや若年層により当てはまるという。論文は、夜の睡眠時間を長くするといった簡単な方法で、慢性的に睡眠不足な若者たちの肥満を防ぐことができると結論づけている。
成人の場合、健康的な睡眠時間は7〜8時間で、6時間以下は睡眠不足とされる。(AFPBB News 2012/05/11)悪玉コレステロール撃退 新薬物、マウスで4割低下
特定の遺伝子の働きを抑えて、血中の悪玉コレステロールの量を下げる新しい薬物を、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)や大阪大、東京理科大のチームが開発し、15日付の米科学誌電子版に発表した。
チームによると、高コレステロール血症の治療は一般的に、コレステロールを低下させるスタチン系の薬が使われるが、一部の遺伝性の患者では効きにくかった。新たな薬物はマウスで悪玉コレステロールが約40%減ったが、ヒトでも期待できるとしている。
この薬物は、遺伝子から作られるリボ核酸(RNA)とくっつき、遺伝子の働きを抑制する「アンチセンス」という薬物を改良したもの。
チームは、悪玉コレステロールが減るのを邪魔する遺伝子の働きを抑えるため、「架橋型人工核酸(BNA)」という物質を利用して新型アンチセンスを作った。
マウスに2週間、高コレステロール食を与えた後、6週間に計12回新型アンチセンスを注射。その結果、生理食塩水を注射したマウスと比べ、悪玉コレステロール量が43%減った。副作用は確認されなかったという。
国立循環器病研究センターの斯波真理子病態代謝部特任部長は「3年後にはヒトで臨床応用したい」としている。働きを抑えたい遺伝子の情報が分かれば、がんや感染症など他の病気にも応用できるという。(共同通信 2012/05/16)
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